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Q 14040:2010 (ISO 14040:2006) 

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

目 次 

ページ 

序文 ··································································································································· 1 

1 適用範囲························································································································· 2 

2 引用規格························································································································· 3 

3 用語及び定義 ··················································································································· 3 

4 ライフサイクルアセスメント(LCA)の一般········································································· 8 

4.1 LCAの原則 ·················································································································· 8 

4.2 LCAの各段階 ··············································································································· 9 

4.3 LCAの主要な特徴 ········································································································· 9 

4.4 製品システムの一般的な概念 ·························································································· 10 

5 方法論の枠組み ··············································································································· 11 

5.1 一般要求事項 ··············································································································· 11 

5.2 目的及び調査範囲の設定 ································································································ 12 

5.3 ライフサイクルインベントリ分析(LCI) ········································································· 13 

5.4 ライフサイクル影響評価(LCIA) ··················································································· 14 

5.5 ライフサイクル解釈 ······································································································ 16 

6 報告······························································································································ 16 

7 クリティカルレビュー ······································································································ 17 

7.1 一般 ··························································································································· 17 

7.2 クリティカルレビューの必要性 ······················································································· 17 

7.3 クリティカルレビューのプロセス····················································································· 17 

附属書A(参考)LCAの用途 ································································································ 18 

参考文献 ···························································································································· 20 

Q 14040:2010 (ISO 14040:2006) 

(2) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法に基づき,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本

工業規格である。 

この規格及びJIS Q 14044:2010は,JIS Q 14040:1997,JIS Q 14041:1999,JIS Q 14042:2002及びJIS Q 

14043:2002を再編するものである。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に

抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許

権,出願公開後の特許出願,実用新案権及び出願公開後の実用新案登録出願にかかわる確認について,責

任はもたない。 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格 

JIS 

Q 14040:2010 

(ISO 14040:2006) 

環境マネジメント−ライフサイクルアセスメント−

原則及び枠組み 

Environmental management-Life cycle assessment- 

Principles and framework 

序文 

この規格は,2006年に第2版として発行されたISO 14040を基に,技術的内容及び構成を変更すること

なく作成した日本工業規格である。 

なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。 

環境保護の重要性及び製造され消費される製品に付随して生じ得る影響に対する意識の高まりが,それ

らの影響をよりよく理解し,対応するための方法の開発への関心を増大させている。この目的のために開

発された技法の一つが,ライフサイクルアセスメント(以下,LCAという。)である。 

注記1 この規格では,“製品”という用語は,サービスを含む。 

LCAは,次の事項を支援できる。 

− 製品のライフサイクル中の種々の時点における環境パフォーマンスの改善余地の特定 

− 産業界,政府又は非政府機関(NGO)における意志決定者への情報提供(例えば,戦略的な計画立案,

優先順位の設定,製品若しくは工程の設計又は再設計を目的とする情報提供。) 

− 測定の技法を含む環境パフォーマンスの適切な指標の選択 

− マーケティング(例えば,環境ラベル制度の実施,環境主張の実施,又は製品の環境宣言の作成。) 

LCAの実施者のために,JIS Q 14044にLCAを実施するための要求事項が詳細に記載されている。 

LCAは,原材料の取得から製造,使用及び使用後の処理,リサイクル及び最終処分(すなわち,ゆりか

ごから墓場まで)に至るまでの製品のライフサイクルの全体を通じた環境側面及び潜在的な環境影響(例

えば,資源利用及びリリースによる環境影響。)を取り扱う。 

注記2 “潜在的な環境影響”は,実際の影響と比較した表現である。それらは,製品システムの機

能単位に関連する。 

LCA調査には,次の四つの段階がある。 

a) 目的及び調査範囲の設定の段階 

b) インベントリ分析の段階 

c) 影響評価の段階 

d) 解釈の段階 

システム境界及び詳細の程度を含むLCAの調査範囲は,その調査の課題及び意図している用途による。

LCAの深さ及び広がりは,そのLCAの目的によって大幅に異なることがある。 

ライフサイクルインベントリ分析(以下,LCIという。)の段階は,LCAの第二の段階である。この段

階は,調査対象システムに関連するインプット/アウトプットのデータの収集分析の段階に当たる。この

Q 14040:2010 (ISO 14040:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

段階は,設定された調査の目的を達成するのに必要なデータの収集を含む。 

ライフサイクル影響評価(以下,LCIAという。)の段階は,LCAの第三の段階である。LCIAの段階の

目的は,製品システムにかかわるライフサイクルインベントリ分析結果(以下,LCI結果という。)の環境

面の重要度をより良く理解するために,その結果の評価に資する追加情報を提供することである。 

ライフサイクル解釈は,LCAの手順の最終の段階である。この段階において,LCI及びLCIAの結果の

いずれか,又はその両方が,目的及び調査範囲の設定に従って,結論,提言及び意志決定のための根拠と

して要約され,かつ,議論される。 

LCAの目的がインベントリ分析及び解釈だけの実施によって達成されてもよい。これは,通常,ライフ

サイクルインベントリ調査(以下,LCI調査という。)という。 

この規格は,2種類の調査を扱う。すなわち,LCA調査及びLCI調査である。LCI調査は,LCA調査に

類似しているが,LCIAの段階を除外する。LCIは,LCA調査のLCIの段階と混同してはならない。 

一般的に,一つのLCA調査又はLCI調査で得られた情報は,より包括的な意志決定のプロセスの一部

として利用することができる。異なるLCA調査又はLCI調査の結果は,それぞれの調査の前提条件及び

分析方法が同等の場合だけ比較可能である。この規格は,これらの事柄の透明性を確実にするための幾つ

かの要求事項及び提言を含む。 

LCAは,幾つかある環境マネジメントの技法(例えば,リスクアセスメント,環境パフォーマンス評価,

環境監査及び環境影響評価)のうちの一つであり,あらゆる状況下で最適の技法として利用できるもので

はない。LCAは,一般に製品の経済的又は社会的な側面を取り扱うものではないが,この規格で説明する

ライフサイクルアプローチ及び方法論は,これらの他の側面に適用してもよい。 

この規格は,他の規格と同じく非関税障壁を設けたり,又はいかなる組織の法的な義務をも増大させ,

若しくは変更するために用いることを意図するものではない。 

適用範囲 

この規格は,LCAに関する原則及び枠組みについて規定する。また,次の事項を含む。 

a) LCAの目的及び調査範囲の設定 

b) LCIの段階 

c) LCIAの段階 

d) ライフサイクル解釈の段階 

e) LCAの報告及びクリティカルレビュー 

f) 

LCAの限界 

g) LCAのそれぞれの段階の間の関係 

h) 価値観の選択及び任意の要素の使用のための条件 

この規格では,LCA調査及びLCI調査を扱う。ただし,この規格は,LCAの技法の詳細を記載するも

のではなく,LCAの各段階に関する方法論を規定するものでもない。 

LCA結果又はLCI結果の意図した用途は,目的及び調査範囲の設定によって考慮されるが,用途自体は,

この規格の適用範囲の外である。 

この規格は,契約若しくは法令の目的,又は登録及び認証を意図するものではない。 

注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。 

ISO 14040:2006,Environmental management−Life cycle assessment−Principles and framework

(IDT) 

Q 14040:2010 (ISO 14040:2006) 

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なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ

とを示す。 

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。この引用

規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS Q 14044 環境マネジメント−ライフサイクルアセスメント−要求事項及び指針 

注記 対応国際規格:ISO 14044,Environmental management−Life cycle assessment−Requirements and 

guidelines(IDT) 

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。 

3.1 

ライフサイクル(life cycle) 

連続的で,かつ,相互に関連する製品システムの段階群,すなわち,原材料の取得,又は天然資源の産

出から最終処分までを含むもの。 

3.2 

ライフサイクルアセスメント,LCA(life cycle assessment) 

製品システムのライフサイクルの全体を通したインプット,アウトプット及び潜在的な環境影響のまと

め,並びに評価。 

3.3 

ライフサイクルインベントリ分析,LCI(life cycle inventory analysis) 

製品に対する,ライフサイクルの全体を通してのインプット及びアウトプットのまとめ,並びに定量化

を行うLCAの段階。 

3.4 

ライフサイクル影響評価,LCIA(life cycle impact assessment) 

製品システムに対する,製品のライフサイクルの全体を通した潜在的な環境影響の大きさ及び重要度を

理解し,かつ,評価することを目的とした,LCAの段階。 

3.5 

ライフサイクル解釈(life cycle interpretation) 

インベントリ分析若しくは影響評価のいずれか,又はその両方から得られた知見を,LCAの結論及び提

言を得るために,設定した目的及び調査範囲に関して評価するLCAの段階。 

3.6 

比較主張(comparative assertion) 

ある製品と同一の機能をもつ競合の製品に対する優越性又は同等性に関する環境主張。 

3.7 

透明性(transparency) 

開かれた,包括的で分かりやすい情報の提示。 

3.8 

環境側面(environmental aspect) 

Q 14040:2010 (ISO 14040:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

環境と相互に影響し得る,組織の活動,製品又はサービスの要素。 

[JIS Q 14001:2004の3.6] 

3.9 

製品(product) 

すべての製品又はサービス。 

注記1 製品は,次のように区分することができる。 

− サービス(例えば,輸送) 

− ソフトウェア(例えば,コンピュータプログラム,辞書) 

− ハードウェア(例えば,エンジン機械部品) 

− 素材製品(例えば,潤滑剤) 

注記2 サービスには,有形及び無形の要素がある。サービスの提供は,例えば,次のものがある。 

− 顧客が提供した有形の製品に対して行われる活動(例えば,自動車の修理) 

− 顧客が提供した無形のものに対して行われる活動(例えば,税金の還付に必要な収入情報

の整理) 

− 無形のものの提供(例えば,知識を伝達するという意味をもつ情報の提供) 

− 顧客のための雰囲気造り(例えば,ホテル及びレストラン内) 

ソフトウェアは,情報で構成され,一般に無形であり,アプローチ,処理又は手順の形を

とり得る。 

ハードウェアは,一般に有形で,その量は整数で数えることができる特性をもつ。素材製

品は一般に有形で,その量は,整数で数えられない連続的な特性をもつ。 

注記3 用語の定義は,JIS Q 14021:2000及びJIS Q 9000:2006から引用。 

3.10 

共製品(co-product) 

同一の単位プロセス又は製品システムからもたらされる二つ又はそれ以上の製品のうちのそれぞれの製

品。 

3.11 

プロセス(process) 

インプットをアウトプットに変換する,相互に関連する又は相互に作用する一連の活動。 

[JIS Q 9000:2006の3.4.1(注記を除く。)] 

3.12 

基本フロー(elementary flow) 

調査対象のシステムに入る物質若しくはエネルギーで,事前に人為的な変化を加えずに環境から取り込

まれたもの,又は調査対象のシステムから出る物質若しくはエネルギーで,事後に人為的な変化を加えず

に環境へリリースされるもの。 

3.13 

エネルギーのフロー(energy flow) 

単位プロセス又は製品システムへのインプット又はそこからのアウトプットで,エネルギー単位で定量

化されるもの。 

注記 インプットであるエネルギーのフローは,エネルギーのインプットと呼ばれることがある。ま

た,アウトプットであるエネルギーのフローは,エネルギーのアウトプットと呼ばれることが

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ある。 

3.14 

フィードストックエネルギー(feedstock energy) 

製品システムへの原材料のインプットのうち,エネルギー源としては使われない燃焼熱,高位発熱量又

は低位発熱量で表現される。 

注記 原材料のエネルギー含有量が,二重に計算されないことを確実にするための注意が必要である。 

3.15 

原材料(raw material) 

製品を製造するために使用される一次材料又は二次材料。 

注記 二次材料には,リサイクル材料が含まれる。 

3.16 

補助のインプット(ancillary input) 

製品を生産する単位プロセスで使用される物質のインプットであるが,製品の含有物にならないもの。 

3.17 

配分(allocation) 

プロセス又は製品システムのインプット又はアウトプットのフローを,調査対象の製品システムと一つ

以上の他の製品システムとに振り分けること。 

3.18 

カットオフ基準(cut-off criteria) 

調査から除外されている,物質若しくはエネルギーのフローの量又は単位プロセス若しくは製品システ

ムにかかわる環境面での重要度の仕様。 

3.19 

データ品質(data quality) 

設定された要件への適合性を示すデータの特性。 

3.20 

機能単位(functional unit) 

製品システムの性能を表す定量化された参照単位。 

3.21 

インプット(input) 

単位プロセスに入る製品,物質又はエネルギーのフロー。 

注記 製品及び物質には,原材料,中間製品及び共製品を含む。 

3.22 

中間フロー(intermediate flow) 

調査されている製品システムの単位プロセス間で発生する製品,物質又はエネルギーのフロー。 

3.23 

中間製品(intermediate product) 

システム内で更に加工・変化を必要とし,他の単位プロセスにインプットされる単位プロセスからのア

ウトプット。 

3.24 

ライフサイクルインベントリ分析結果,LCI結果(life cycle inventory analysis result) 

Q 14040:2010 (ISO 14040:2006) 

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システム境界を横断するフローを一覧し,かつ,LCIAの出発点となるLCIの成果。 

3.25 

アウトプット(output) 

単位プロセスから出る製品,物質又はエネルギーのフロー。 

注記 製品及び物質には,原材料,中間製品,共製品及びリリースを含める。 

3.26 

プロセスエネルギー(process energy) 

単位プロセス内の設備又はプロセスを作動させるのに必要なエネルギーのインプットであり,そのエネ

ルギー自体の生産及び輸送のためのエネルギーのインプットを除くもの。 

3.27 

製品のフロー(product flow) 

別の製品システムからの製品の流入又は別の製品システムへの流出。 

3.28 

製品システム(product system) 

基本フロー及び製品のフローを伴い,一つ以上の定義された機能を果たし,かつ,製品のライフサイク

ルをモデル化した単位プロセスの集合体。 

3.29 

基準フロー(reference flow) 

機能単位で表される機能を満たすために必要とされる,製品システム内のプロセスからのアウトプット

を定量的に表した量。 

3.30 

リリース(releases) 

大気への排出物,並びに水及び土壌への放出物。 

3.31 

感度分析(sensitivity analysis) 

方法及びデータに関して行った選択が調査の成果へ及ぼす影響を見積もるための系統的な手順。 

3.32 

システム境界(system boundary) 

単位プロセスが製品システムの一部であることを規定する一連の基準。 

注記 システム境界という用語は,この規格ではLCIAに関連して使用されていない。 

3.33 

不確実性分析(uncertainty analysis) 

モデルの不適格さ,インプットの不確かさ,及びデータの変動性の累積効果によってLCIの結果に生じ

た不確かさを,定量化するための系統的な手順。 

注記 結果の不確かさの確認には,変動範囲又は確率分布のいずれかが用いられる。 

3.34 

単位プロセス(unit process) 

インプット及びアウトプットのデータが定量化される,LCIで考慮する最小要素。 

3.35 

廃棄物(waste) 

Q 14040:2010 (ISO 14040:2006) 

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保有者が処分しようとするか,若しくは処分を要求される物質又は物体。 

注記 定義は,“有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約”(1989年

3月22日)から採用されているが,この規格では,有害廃棄物に限定されない。 

3.36 

影響領域内エンドポイント(category endpoint) 

着目されている環境関連事項を特定する自然環境,人の健康若しくは資源の属性又は側面。 

3.37 

特性化係数(characterization factor) 

LCI結果を,領域指標の共通の単位に換算するために適用する特性化モデルから導かれる係数。 

注記 共通の単位によって,結果として得られる領域指標の計算が可能となる。 

3.38 

環境メカニズム(environmental mechanism) 

一つの任意の影響領域において,LCI結果を領域指標及び影響領域内エンドポイントへ結び付ける物理

学的,化学的及び生物学的なプロセスのシステム。 

3.39 

影響領域(impact category) 

LCI結果が割り振られる,着目されている環境関連事項の分野。 

3.40 

影響領域指標(impact category indicator) 

影響領域を定量化して表現したもの。 

注記 略称である“領域指標”は,この規格において,読みやすさを改善するために使用している。 

3.41 

完全性点検(completeness check) 

LCAの段階からの情報が,目的及び調査範囲の設定に従った結論を導くのに十分であることを検証する

プロセス。 

3.42 

整合性点検(consistency check) 

結論に達する前に,前提条件,方法及びデータが,調査の全体にわたって一貫して適用され,かつ,目

的及び調査範囲の設定に従っていることを検証するプロセス。 

3.43 

感度点検(sensitivity check) 

感度分析から得られた情報が,結論を導き,かつ,提言を示すのに適切であることを検証するプロセス。 

3.44 

評価(evaluation) 

LCAの結果に対する信頼を確立することを意図するライフサイクル解釈の段階における要素。 

注記 評価には,調査の目的及び調査範囲の設定に従って要求されるであろう完全性点検,感度点検,

整合性点検,及びその他の妥当性確認を含む。 

3.45 

クリティカルレビュー(critical review) 

LCAと,LCAに関する規格の原則及び要求事項との間の整合性を確実にすることを意図したプロセス。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

注記1 原則は,この規格で規定されている(4.1参照)。 

注記2 要求事項は,JIS Q 14044で規定されている。 

3.46 

利害関係者(interested party) 

製品システムの環境パフォーマンス若しくはLCAの結果にかかわりをもつか,又はそれらによって影響

を受ける個人又は団体。 

ライフサイクルアセスメント(LCA)の一般 

4.1 

LCAの原則 

4.1.1 

一般 

この規格で規定する原則は,基本的なものであり,かつ,LCAの計画立案及び実施の両方にかかわる決

定に当たっては,手引として使用することが望ましい。 

4.1.2 

ライフサイクルの全体像 

LCAは,原材料の抽出及び取得から,エネルギー及び物質の生産及び製造を経て,使用,並びに使用後

の処理及び最終処分に至る製品のライフサイクルの全体を考慮する。このような系統的な概観及び全体像

を通じて,ライフサイクルのそれぞれの段階の間又は個別的なプロセスの間での潜在的な環境負荷の変化

を認識することができ,かつ,回避することができる場合がある。 

4.1.3 

環境上の焦点 

LCAは,製品システムの環境側面及び環境影響を扱う。経済的かつ社会的な側面及び影響は,一般に,

LCAの調査範囲外である。より広範な評価のためには,その他の手段をLCAに組み合わせてもよい。 

4.1.4 

相対的なアプローチ及び機能単位 

LCAは,相対的なアプローチであり,機能単位に基づいて体系化される。機能単位は,調査されている

ものを明確にする。その後のすべての分析は,機能単位に関連しており,LCIのすべてのインプット及び

アウトプット,並びにその結果としてのLCIAプロフィールは,機能単位に関連付けられる。 

4.1.5 

反復的なアプローチ 

LCAは,反復的な技法である。LCAのそれぞれの段階において,他の段階の結果を使用する。 

それぞれの段階の内部,又はそれぞれの段階の間において,反復的なアプローチを行うことによって,

その調査及び報告された結果の包括性並びに整合性が確実となる。 

4.1.6 

透明性 

LCAに固有の複雑さから,透明性は,LCAの実行に当たって,結果の適切な解釈を確実にするための重

要な指導原則である。 

4.1.7 

包括性 

LCAでは,自然環境,人の健康及び資源のすべての属性又は側面を考慮する。複数の方法にまたがる視

点に立って一つの調査内ですべての属性及び側面を考慮することによって,潜在的なトレードオフが特定

され,かつ,評価することができる。 

4.1.8 

科学的なアプローチの優先性 

LCA内での決定は,自然科学に基づくことが望ましい。これが可能でないときには,その他の科学的な

アプローチ(例えば,社会科学及び経済学からのアプローチ)を使用するか,又は国際的な慣習を参照し

てもよい。科学的な根拠が存在せず,かつ,他の学問的なアプローチ又は国際的な慣習に基づく正当化も

できない場合は,決定は,適切であれば,価値観の選択に基づいてもよい。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

4.2 

LCAの各段階 

4.2.1 

LCA調査は,次の四つの段階で構成する。それぞれの段階の間の関係を,図1に示す。これらの

段階は,次による。 

− 目的及び調査範囲の設定 

− インベントリ分析 

− 影響評価 

− 解釈 

4.2.2 

LCI 調査は,次の三つの段階で構成する。 

− 目的及び調査範囲の設定 

− インベントリ分析 

− 解釈 

4.2.3 

LCAの結果は,種々の意志決定のプロセスへの有用なインプットとしてもよい。 

LCA調査又はLCI調査の結果の直接の用途,すなわちLCA調査又はLCI調査の目的及び調査範囲の設

定において意図される用途を,図1に示す。LCAの用途の分野に関するより多くの情報を,附属書Aに示

す。 

図1−LCAの段階 

4.3 

LCAの主要な特徴 

LCA方法論の幾つかの主要な特徴を要約したものを,次に示す。 

a) LCAは,設定された目的及び調査範囲に従って,原材料の取得から最終処分に至るまでの製品システ

ムの環境側面及び環境影響を,系統的な方法で評価する。 

b) LCAの相対的な本質は,方法論上の機能単位の特徴に起因する。 

c) LCAの詳細度及び対象期間は,目的及び調査範囲の設定によって大幅に変更してもよい。 

d) LCAの意図した用途によっては,機密保持及び所有権にかかわる事項を尊重するための規定を設定す

ることがある。 

e) LCA方法論は,最新の科学技術に照らした新しい科学的な知見及び進歩を含めることを認めている。 

LCAの枠組み 

目的及び調査 

範囲の設定 

インベントリ 

分析 

影響評価 

 
 
 
 
 

解釈 

直接の用途 

− 製品の開発及び改善 
− 戦略的な計画立案 
− 公共政策立案 
− マーケティング 
− その他 

10 

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f) 

一般に開示することを意図する比較主張に用いようとするLCAには,特定の要求事項を適用する。 

g) LCAを実施するための単一の方法というものは,存在しない。組織が意図した用途及び要求事項に従

って,この規格で定められているように,組織は,LCAの実施に対する柔軟性をもつ。 

h) LCAは,機能単位に基づく相対的なアプローチであり,(環境パフォーマンス評価,環境影響評価及

びリスクアセスメントのような)他の多くの技法とは異なる。しかし,LCAは,これらの他の技法で

集めた情報を利用してもよい。 

i) 

LCAは,潜在的な環境影響を取り扱う。LCAは,次の理由によって,絶対的又は正確な環境影響を予

測しない。 

− 基準単位に対する潜在的な環境影響の相対的な表現 

− 空間及び時間を横断する環境データの統合 

− 環境影響のモデル化における固有の不確かさ 

− 幾つかの生じ得る環境影響は,明らかに未来の影響であるという事実 

j) 

LCIAの段階は,他のLCAの段階と関連して,一つ又は複数の製品システムに対する環境及び資源の

事項について,システムの全体像を提供する。 

k) LCIAは,LCI結果を影響領域に割り振る。それぞれの影響領域について,一つのライフサイクル影響

領域指標を選び,かつ,結果として得られる領域指標(結果として得られる指標)を計算する。結果

として得られる指標を収集したもの(LCIA結果)又はLCIAプロフィールは,製品システムのインプ

ット及びアウトプットにかかわる環境関連事項についての情報を提供する。 

l) 

重み付けには,価値観の選択が要求されるため,LCAの結果を単一の包括的な評点又は数値に換算す

る科学的な根拠は,存在しない。 

m) ライフサイクル解釈は,調査の目的及び調査範囲に記述された用途に対する要求事項を満たすために,

LCAの知見に基づいた結論を特定し,定性化し,点検し,評価し,かつ,提示する系統的な手順を使

用する。 

n) ライフサイクル解釈は,解釈の段階の内部とLCAの他の段階との間で反復的な手順を使用する。 

o) ライフサイクル解釈は,調査の目的及び調査範囲の設定に関するLCAの長所及び限界を強調すること

によって,LCAと他の環境マネジメントの技法との連携の方向性を示す。 

4.4 

製品システムの一般的な概念 

LCAは,製品のライフサイクルを,一つ以上の定義された機能を果たす製品システムとしてモデル化す

る。 

製品システムの基本的な特性は,その機能によって特徴付けられ,かつ,単に最終製品だけによって定

義付けることはできない。図2に製品システムの例を示す。 

製品システムは,一連の単位プロセスに細分化される(図3参照)。単位プロセスは,中間製品,最終製

品,及び/又は処理される廃棄物のフローによって相互に結び付けられ,他の製品システムに対しては製

品のフローによって結び付けられ,かつ,環境に対しては基本フローによって結び付けられる。 

製品システムをその構成部分である単位プロセスに分割することは,製品システムのインプットとアウ

トプットとの識別を容易にする。多くの場合,幾つかのインプットは,アウトプット製品の構成部分とし

て使用されるが,一方,単位プロセスの内部で使われるものでもアウトプット製品の一部とはならないも

のもある(例えば,補助のインプット)。単位プロセスは,それが稼動した結果として,他のアウトプット

(基本フロー及び/又は製品)も産出する。調査の目的に満足するのに必要なモデル化の詳細の程度が,

単位プロセスの境界を決める。 

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11 

Q 14040:2010 (ISO 14040:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

基本フローは,システムに関連する資源利用,並びに大気,水,及び土壌へのリリースを含む。LCAの

目的及び調査範囲によっては,これらのデータから解釈を導き出してもよい。これらのデータは,LCI結

果となり,かつ,LCIAのためのインプットになる。 

例 単位プロセスに流入する基本フロー:地下からの原油及び太陽光放射 

単位プロセスから流出する基本フロー:大気への排出物,水又は土壌への放出物及び放射線 

中間製品のフロー:素材及び半組立品 

システムに入るか,又はシステムから出る製品のフロー:リサイクルされた材料及び再使用向け

の構成部品 

図2−LCAのための製品システムの例 

図3−製品システムにおける一連の単位プロセスの例 

方法論の枠組み 

5.1 

一般要求事項 

LCAを行う際は,JIS Q 14044の要求事項を適用しなければならない。 

単位プロセス 

インプットフロー 

アウトプットフロー 

中間フロー 

単位プロセス 

インプットフロー 

アウトプットフロー 

中間フロー 

単位プロセス 

インプットフロー 

アウトプットフロー 

システム境界 

システムの環境 

他の 

システム 

製品の 
フロー 

輸送 

原材料の取得 

生産 

使用 

リサイクル 

/再使用 

廃棄物処理 

エネルギー

供給 

基本フロー 

基本フロー 

製品の 
フロー 

他の 

システム 

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Q 14040:2010 (ISO 14040:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

5.2 

目的及び調査範囲の設定 

5.2.1 

一般 

5.2.1.1 

LCAの目的には,次のことを記述する。 

− 意図する用途 

− 調査をするための理由 

− 意図する伝達先,すなわち,調査の結果を伝えようとしている相手 

− 一般に開示することを意図する比較主張において結果を用いようとするかどうか 

調査範囲は,調査の広がり,深さ及び詳細さの両立が可能であり,かつ,設定した目的に満足な形で取

り組めることを確実にするために十分適切に設定されることが望ましい。 

5.2.1.2 

調査範囲には,次の項目を含める。 

− 調査対象の製品システム 

− 製品システム又は比較調査のときは,複数の製品システムがもつ機能 

− 機能単位 

− システム境界 

− 配分の手順 

− 選択された影響領域,影響評価の方法論及び引き続いて使用される解釈の方法 

− 必要とされるデータ 

− 前提条件 

− 限界 

− 初期のデータ品質要件 

− 実施する場合には,クリティカルレビューの種類 

− 調査に要求される報告書の種類及び書式 

LCAは,反復的な技法であり,かつ,データ及び情報が収集されるに従って,調査の当初の目的を達成

するために,いろいろな側面の調査範囲の修正を要求してもよい。 

5.2.2 

機能,機能単位及び基準フロー 

一つのシステムは,多くの機能をもってよく,かつ,調査のために選択されるそれらの機能は,LCAの

目的及び調査範囲に依存する。 

機能単位は,製品の特定された機能(性能特性)を定量化するものである。機能単位の第一の目的は,

インプットとアウトプットとを関係付ける基準を与えることである。この基準は,LCAの結果の比較可能

性を確実にするのに必要である。LCAの結果の比較可能性は,異なったシステムを評価しているときに,

比較が共通の基準に基づいていることを確実にするために,とりわけ重要である。 

意図した機能を満たすために,すなわち,その機能を満たすために必要な製品の量のように,それぞれ

の製品システムにおいて,基準フローを決定することが重要である。 

例 手を乾かすという機能について,紙タオル及びハンドドライヤの両システムで考える。選択され

た機能単位は,それぞれのシステムが乾かす同一の手の数で表現してよい。それぞれのシステム

の基準フローを,例えば,両手を乾かすのに必要な紙の平均質量,又は熱風の平均体積のように,

決定することが可能である。これらの基準フローに基づいて,両システムにおけるインプット及

びアウトプットのインベントリをまとめることができる。紙タオルの場合,最も単純には,紙の

消費量に関連付けられる。ハンドドライヤの場合,手を乾かすのに必要な熱風の量に関連付けら

れる。 

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Q 14040:2010 (ISO 14040:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

5.2.3 

システム境界 

LCAは,物理的なシステムの主要な要素を記載するモデルとして,製品システムを設定することによっ

て実施される。システム境界は,システムに含まれる単位プロセスを設定する。理想的には,その境界に

おけるインプット及びアウトプットが基本フローとなるような手法で,製品システムをモデル化すること

が望ましい。しかし,調査の包括的な結論が重大な変化をしないようなインプット及びアウトプットの定

量化に,資源を費やす必要はない。 

モデル化される物理的なシステムの要素の選択は,調査の目的及び調査範囲,その意図する用途及び伝

達先,設定される前提条件,データ及びコストの制約,並びにカットオフ基準に依存する。使用されるモ

デルは記載されることが望ましく,かつ,これらの選択を根拠付ける前提条件は,特定されることが望ま

しい。調査において使用されるカットオフ基準は,明確に理解し,かつ,記載することが望ましい。 

使用される基準は,調査の結果の信頼の程度,及び調査の目的の達成の可能性のために,システム境界

を設定する際には,重要である。 

システム境界を設定する際には,例えば,次に示すとおり,幾つかのライフサイクルの段階,単位プロ

セス及びフローを,考慮することが望ましい。 

− 原材料の取得 

− 主要な一連の製造/処理の工程におけるインプット及びアウトプット 

− 配送/輸送 

− 燃料,電気及び熱の製造及び使用 

− 製品の使用及び保守 

− プロセス廃棄物及び製品の処分 

− 使用済みの製品の回収(再使用,リサイクル及びエネルギー回収を含む。) 

− 補助材料の製造 

− 資本設備の製造,保守及び解体 

− 照明及び暖房のような付加的な運転 

多くの場合,初期設定されたこのシステム境界は,後になって精査されることになる。 

5.2.4 

データ品質要件 

データ品質要件は,一般的な条件で,調査に必要なデータの特性を規定する。 

データ品質に関する記載は,調査結果の信頼性を理解し,かつ,調査の成果を適切に解釈するために重

要である。 

5.3 

ライフサイクルインベントリ分析(LCI) 

5.3.1 

一般 

インベントリ分析は,製品システムに関連するインプット及びアウトプットを定量化するためのデータ

収集及び計算の手順を伴う。 

インベントリ分析を実施するプロセスは,反復的なものである。システムに関して,データが収集され,

かつ,より多くのことが明らかになるにつれて,調査の目的に合致するようにデータ収集の手順の変更を

要する新しいデータの要件,又は限界が特定されてもよい。場合によっては,調査の目的又は調査範囲の

変更を要求する問題が特定されてもよい。 

5.3.2 

データ収集 

システム境界内における各単位プロセスのためのデータは,次を含む主要な項目の下に分類することが

できる。 

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Q 14040:2010 (ISO 14040:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

− エネルギーのインプット,原材料のインプット,補助のインプット,その他の物理的なインプット 

− 製品,共製品及び廃棄物 

− 大気への排出物,水及び土壌への放出物 

− その他の環境側面 

データ収集は,多大な(人的・物質的・経済的)資源を必要とするプロセスとなることがある。データ

収集における実際上の制約は調査範囲の中で考慮し,かつ,調査報告の中で文書化することが望ましい。 

5.3.3 

データ計算 

データ収集の後,定義されたシステムのインベントリ結果を導き出すために,モデル化すべき製品シス

テムの各単位プロセス,及び設定した機能単位に対応する,次の事項を含む計算の手順が必要となる。 

− 収集データの妥当性確認 

− データの単位プロセスへの関連付け 

− データの機能単位の基準フローへの関連付け 

エネルギーのフローの計算では,エネルギーの発生及び使用にかかわるインプット及びアウトプットと

ともに,エネルギーのフローにおいて,使用した異なる燃料及び電源構成,変換効率並びに配送効率を考

慮することが望ましい。 

5.3.4 

フロー及びリリースの配分 

工業プロセスが,単一のアウトプットを産出すること,又は原材料のインプット及びアウトプットと線

形関係をなす場合は少ない。事実,大多数の工業プロセスは,一つ以上の製品を産出し,かつ,中間製品

又は使用済みの製品を原材料として再生する。 

複数の製品,及びリサイクルシステムが含まれているシステムを扱う場合は,配分の手順の必要性を考

慮することが望ましい。 

5.4 

ライフサイクル影響評価(LCIA) 

5.4.1 

一般 

LCAの影響評価の段階は,LCI結果を使って,潜在的な環境影響の重要性を評価することを目的とする。

一般に,このプロセスは,インベントリデータを特定の環境影響領域及び領域指標と関連付け,それによ

ってこれらの影響の理解を試みることである。 

LCIAは,ライフサイクル解釈の段階のための情報も提供する。 

影響評価には,調査の目的を満たしている場合にLCA調査の目的及び調査範囲を再確認すること,又は

評価が目的を達成できないことを示している場合にはその目的及び調査範囲を修正する反復プロセスを含

んでもよい。 

影響領域の選択,モデル化及び評価のような問題は,LCIAの段階に主観性を導入することができる。

したがって,前提条件が,明確に記載され,かつ,報告されることを確実にするために,透明性は影響評

価にとって重要である。 

5.4.2 

LCIAの要素 

LCIAの段階の要素を,図4に示す。 

注記 LCIAに関する用語の説明は,JIS Q 14044に記載されている。 

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15 

Q 14040:2010 (ISO 14040:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

図4−LCIAの段階の要素 

LCIAの段階を異なった要素に分割することは,次のような幾つかの理由から,有用であり,かつ,必

要となる。 

a) それぞれのLCIAの要素は異なり,かつ,それぞれ明確に定義できる。 

b) LCAの目的及び調査範囲の設定の段階では,それぞれのLCIAの要素を分けて考慮することができる。 

c) LCIA方法,前提条件及びその他の決定に関する品質評価を,それぞれのLCIAの要素ごとのために実

施することができる。 

d) クリティカルレビュー及び報告のために,それぞれの要素内におけるLCIAの手順,前提条件及びそ

の他の作業を透明化することができる。 

e) クリティカルレビュー及び報告のために,それぞれの要素内における価値観及び主観性の使用(以下,

“価値観の選択”という。)を透明化することができる。 

詳細の程度,評価される影響の選択及び使用される方法論は,調査の目的及び調査範囲による。 

5.4.3 

LCIAの限界 

LCIAは,目的及び調査範囲で特定された環境関連事項だけをとり上げている。そのために,LCIAは,

調査対象である製品システムの環境関連事項の完全な評価ではない。 

LCIAは,代替の製品システムの間の影響領域と関連する結果として得られた指標との間の有意差を,

常には,明らかにできない。この原因として,次のような場合がある。 

− LCIAの段階での特性化モデル,感度分析及び不確実性分析の限定された開発 

− 例えば,カットオフ及びデータギャップが存在するため,製品システムについて考え得る単位プロセ

スすべてを包含していないか,又は各単位プロセスのすべてのインプット及びアウトプットを含まな

いシステム境界を設定するというようなLCIの段階の限界 

− 例えば,配分及び集約の手順の不確かさ又は相違が原因とされてもよい不十分なLCIデータ品質のよ

うなLCIの段階の限界 

必す(須)要素 

ライフサイクル影響評価(LCIA)

影響領域,領域指標及び特性化モデルの選択 

LCI結果の割り振り(分類化) 

結果として得られた領域の計算(特性化) 

結果として得られた領域指標,LCIA結果(LCIAプロフィール)

任意の要素 

結果として得られた領域指標を基準情報と比較した 

強度の計算(正規化) 

グルーピング 

重み付け 

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Q 14040:2010 (ISO 14040:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

− それぞれの影響領域のための,適切,かつ,代表性のあるインベントリデータの収集における限界 

LCI結果が空間的かつ時間的な次元を欠いていることが,LCIA結果に不確かさをもち込む。不確かさは,

それぞれの影響領域の空間的かつ時間的な特性とともに変化する。 

インベントリデータを,特定の潜在的な環境影響に整合的に,かつ,正確に関連させるための一般に受

け入れられた方法論は存在しない。複数の影響領域に関する複数のモデルは,それぞれ異なる開発の段階

にある。 

5.5 

ライフサイクル解釈 

解釈は,インベントリ分析及び影響評価から得られた知見が一緒に考慮された,又はLCI調査の場合に

は,インベントリ分析だけから得られた知見が考慮されたLCAの段階である。解釈の段階は,設定された

目的及び調査範囲に整合し,結論に到達した結果の提供,限界の説明並びに提言を用意することが望まし

い。 

この解釈は,LCIA結果は,相対的なアプローチに基づいているということ,それらは潜在的な環境影

響を示していること,及びそれらは影響領域内エンドポイントの実際の影響,しきい(閾)値若しくは安

全性の許容範囲からの超過分又はリスクを予測するものではないことを反映することが望ましい。 

この解釈での知見は,調査の目的及び調査範囲と整合した意志決定担当者に対する結論及び提言の形式

をとってもよい。 

ライフサイクル解釈は,調査の設定された目的及び調査範囲に従って,理解しやすく,完全で,かつ,

整合のとれたLCAの結果の説明を提供することも意図している。 

解釈の段階には,設定された調査の目的に整合した方法で収集されたデータの特性及び品質と同じよう

に,LCAの調査範囲をレビューし,かつ,修正を行う反復プロセスを含んでもよい。 

ライフサイクル解釈の知見は,それぞれの評価の要素の結果を反映することが望ましい。 

報告 

報告についてのストラテジーは,LCAの主要な部分である。効果的な報告では,考慮中の調査の様々な

段階が取り扱われることが望ましい。 

LCAの結果及び結論は,適切な形式で,意図した伝達先に報告される。調査において適用されたデータ,

方法及び前提条件,並びにそれらの限界が報告書で取り扱われる。 

調査が,LCIAの段階に広がり,かつ,第三者に報告される場合,次の事項を報告することが望ましい。 

− LCI結果との関係 

− データ品質の記載 

− 考慮された影響領域内エンドポイント 

− 影響領域の選択 

− 特性化モデル 

− 係数及び環境メカニズム 

− 結果として得られる指標のプロフィール 

LCIA結果の相対的な特性及び領域内エンドポイントにおける影響を予測するに当たってのそれらの不

十分さについては,報告書に記載することが望ましい。報告書には,特性化モデル,正規化,重み付けな

どに関連して,調査のLCIAの段階で使用された価値観の選択についての参照及び記載も含まれる。 

一般に開示することを意図した比較主張に調査結果を用いようとするときには,JIS Q 14044で与えられ

るその他の要求事項を含む。さらに解釈の段階の報告では,JIS Q 14044は,価値観の選択,論理的な根拠

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Q 14040:2010 (ISO 14040:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

及び専門的な判断についての完全な透明性を要求している。 

クリティカルレビュー 

7.1 

一般 

クリティカルレビューは,LCAが,方法論,データ,解釈及び報告の要求事項を満たしているかどうか,

並びに原則に整合しているかどうかを検証するためのプロセスである。 

一般に,LCAのクリティカルレビューでは,概略が記載されている7.3のいずれかのレビューの選択肢

を用いてもよい。クリティカルレビューは,調査責任者によってLCAのために選択された目的,及びLCA

結果が使用される方法を検証し,かつ,妥当性確認をすることはできない。 

7.2 

クリティカルレビューの必要性 

クリティカルレビューは,例えば,利害関係者の参画によって,LCAの理解を促進させ,かつ,その信

頼性を高めてもよい。 

比較主張を支援するためのLCA結果の使用は,その使用がそのLCAにかかわっていない外部の利害関

係者に影響を与える可能性があるので,特別な注意を要し,かつ,クリティカルレビューが要求される。

しかし,クリティカルレビューを実施したという事実は,いかなる場合においてもLCA調査に基づいた比

較主張の是認を意味する手段でないことが望ましい。 

7.3 

クリティカルレビューのプロセス 

7.3.1 

一般 

望まれたクリティカルレビューの範囲及び種類は,LCAの段階の調査範囲において設定する。範囲には,

クリティカルレビューを実施した理由,実施した範囲及び詳細さの程度,並びにこのプロセスに参画させ

る必要のある者を特定することが望ましい。 

レビューは,分類化,特性化,正規化,グルーピング及び重み付けの要素が十分であり,かつ,LCAの

ライフサイクル解釈の段階が実行可能となるように文書化することを確実にすることが望ましい。 

LCAの内容に関する守秘協定を,必要に応じて,結ぶことが望ましい。 

7.3.2 

内部又は外部の専門家によるクリティカルレビュー 

内部又は外部の専門家は,LCAの要求事項に精通し,かつ,適切な科学的及び技術的な専門知識をもつ

ことが望ましい。 

7.3.3 

利害関係者の委員会によるクリティカルレビュー 

レビュー委員会は,少なくとも3名で構成し,レビュー委員会の委員長として職務を果たす外部の独立

した専門家は,LCA調査の責任者によって選任されることが望ましい。そのレビューのための目的,調査

範囲及び利用できる予算に基づいて,委員長は,他の独立した適任なレビュー実施者を選定することが望

ましい。 

この委員会には,LCAから得られた結論によって影響を受ける,政府機関,非政府団体,競合者及び産

業界のような他の利害関係者を含めてもよい。 

18 

Q 14040:2010 (ISO 14040:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書A 

(参考) 

LCAの用途 

A.1 用途の領域 

A.1.1 意図するLCAの用途は,4.2(図1)に規定しているが,それらだけには限られない。これらのLCA

の用途をこの附属書で記載する。ただし,この規格の適用範囲の外である。 

環境マネジメントシステム及びその手段の分野における用途には,更に次のようなものがある。 

a) 環境マネジメントシステム及び環境パフォーマンス評価(JIS Q 14001,JIS Q 14004,JIS Q 14031及

びISO/TR 14032)。例えば,組織の製品及びサービスの重要な環境側面の特定 

b) 環境ラベル及び宣言(JIS Q 14020,JIS Q 14021及びJIS Q 14025) 

c) 環境適合設計(TR Q 0007) 

d) 製品規格に環境側面を導入するための指針(JIS Q 0064) 

e) 環境コミュニケーション(JIS Q 14063) 

f) 

温室効果ガスの組織及びプロジェクトのレベルでの排出量及び吸収量の定量化,監視及び報告,並び

に妥当性確認,検証及び認証(JIS Q 14064-1,ISO 14064-2及びISO 14064-3) 

民間及び公共組織には,更に可能な様々な用途が考えられる。次の技法,方法及び手段のリストは,こ

れらがLCAの技法に基づいていることを示すものではないが,ライフサイクルのアプローチ,原則及び枠

組みは,有益に適用される。 

− 環境影響評価(EIA) 

− 環境マネジメント会計(EMA) 

− 政策の評価(リサイクルに関するモデルなど) 

− 持続可能性評価。経済的な側面及び社会的な側面はLCAに含まれないが,手順及び指針は適切な所管

の関係者によって適用することができる。 

− 物質及びマテリアルフロー分析(SFA及びMFA) 

− 化学物質の有毒性及びリスクアセスメント 

− 設備及びプラントのリスク分析及びリスクマネジメント 

− 製品スチュワードシップ及びサプライチェーンマネジメント 

− ライフサイクルマネジメント(LCM) 

− 設計概要及びライフサイクル思考 

− ライフサイクルコスティング(LCC) 

これらの異なった用途のための説明,考察,実施,簡略化及び選択肢も,この規格の適用範囲の外であ

る。 

A.1.2 意志決定を行う状況において,どのようにすればLCAが最良に適用されるのかに関するただ一つ

の解は存在しない。それぞれの組織が,特に,組織の規模及び文化,製品,戦略,内部システム,手段及

び手順,並びに外部の圧力に応じて,その時々に解決し,かつ,決定しなければならない。 

LCAは,広範な領域に及ぶ用途のために使用してもよい。すべての潜在的な用途のためのLCAの個別

的な使用,適用及び実施は,この規格及びJIS Q 14044に基づく。 

さらに,適切な正当性をもつLCAの技法は,LCA及びLCI調査以外の調査に適用できると考えられる。

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Q 14040:2010 (ISO 14040:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

これらの調査は,次のようなものがある。 

− ゆりかごから製品までの調査 

− ある製品からそれによって産出される製品までの調査 

− ライフサイクルの特定部分 (例えば,廃棄物管理,製品の構成品) 

これらの調査については,この規格及びJIS Q 14044の大部分の要求事項(例えば,配分及びクリティ

カルレビューと同様に,データ品質,収集及び計算)は適用できるが,システム境界に関するすべての要

求事項は適用できない。 

A.1.3 特定の用途については,LCIAの一部として,各単位プロセス若しくはライフサイクルの各段階の

結果として得られる指標をそれぞれ個別に決定すること,又は異なる単位プロセス若しくは段階の結果と

して得られる指標を加算することによって,全体の製品システムの結果として得られる指標を計算するこ

とが適切である場合がある。 

この手順は,次を条件としてこの規格の枠組み内に含まれる。 

− この手順が,目的及び調査範囲の設定の段階において設定されている。 

− このようなアプローチの結果が,この規格及びJIS Q 14044に従った手順で行われたLCAの結果と同

じであることが論理的に示されている。 

A.2 用途のアプローチ 

LCAの調査範囲を設定する際は,意志決定の状況を考慮する必要がある。すなわち,調査される製品シ

ステムが,意図する用途によって影響を受ける製品及びプロセスを適切に表現することが望ましい。 

この附属書で例示されている用途は,ISO 14000ファミリー全体の目的でもある,環境改善を目指す決

定に関連する。したがって,LCAで調査される製品及びプロセスは,LCAが支援しようとする決定によっ

て影響を受ける。 

一部の用途は,製品のライフサイクルに関する教育又は情報のために使用されるLCAのように,改善を

直接表さなくてもよい。しかし,この様な情報が実際に適用されるとすぐに,それは改善に向かう状況に

おいて使用される。したがって,適用されるとみられる状況に情報を使えることを確保するための特別な

配慮が必要である。 

近年では,LCAについて可能な二つの異なるアプローチが開発されてきた。これらは,次のとおりであ

る。 

a) 一般的に,製品の歴史の説明として,特定の製品システムに基本フロー及び潜在的な環境影響を割り

振るアプローチ 

b) 複数の代替の製品システムの間で生じ得る(将来の)変更による環境への影響を調査するアプローチ 

20 

Q 14040:2010 (ISO 14040:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

参考文献 

[1] 

JIS Q 0064:1998 製品規格に環境側面を導入するための指針 

注記 対応国際規格:ISO Guide 64:1997,Guide for the inclusion of environmental aspects in product 

standards(IDT) 

[2] 

JIS Q 9000:2006 品質マネジメントシステム−基本及び用語 

注記 対応国際規格:ISO 9000:2005,Quality management systems−Fundamentals and vocabulary

(IDT) 

[3] 

JIS Q 14001:2004 環境マネジメントシステム−要求事項及び利用の手引 

注記 対応国際規格:ISO 14001:2004,Environmental management systems−Requirements with 

guidance for use(IDT) 

[4] 

JIS Q 14004:2004 環境マネジメントシステム−原則,システム及び支援技法の一般指針 

注記 対応国際規格:ISO 14004:2004,Environmental management systems−General guidelines on 

principles, systems and support techniques(IDT) 

[5] 

JIS Q 14020 環境ラベル及び宣言−一般原則 

注記 対応国際規格:ISO 14020,Environmental labels and declarations−General principles(IDT) 

[6] 

JIS Q 14021 環境ラベル及び宣言−自己宣言による環境主張(タイプII環境ラベル表示) 

注記 対応国際規格:ISO 14021,Environmental labels and declarations−Self-declared environmental 

claims (Type II environmental labelling)(IDT) 

[7] 

JIS Q 14025 環境ラベル及び宣言−タイプIII環境宣言−原則及び手順 

注記 対応国際規格:ISO 14025,Environmental labels and declarations−Type III environmental 

declarations−Principles and procedures(IDT) 

[8] 

JIS Q 14031 環境マネジメント−環境パフォーマンス評価−指針 

注記 対応国際規格:ISO 14031,Environmental management−Environmental performance evaluation

−Guidelines(IDT) 

[9] 

JIS Q 14050 環境マネジメント−用語 

注記 対応国際規格:ISO 14050,Environmental management−Vocabulary(IDT) 

[10] 

JIS Q 14063 環境マネジメント−環境コミュニケーション−指針及びその事例 

注記 対応国際規格:ISO 14063,Environmental management−Environmental communication−

Guidelines and examples(IDT) 

[11] 

JIS Q 14064-1 温室効果ガス−第1部:組織における温室効果ガスの排出量及び吸収量の定量化及

び報告のための仕様並びに手引 

注記 対応国際規格:ISO 14064-1,Greenhouse gases−Part 1: Specification with guidance at the 

organization level for quantification and reporting of greenhouse gas emissions and removals(IDT) 

[12] 

TR Q 0007 環境適合設計 

注記 対応国際規格:ISO/TR 14062,Environmental management−Integrating environmental aspects 

into product design and development(IDT) 

[13] 

ISO/TR 14032,Environmental management−Examples of environmental performance evaluation (EPE) 

注記 この規格は,現在廃止されている。 

21 

Q 14040:2010 (ISO 14040:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

[14] 

ISO/TR 14047,Environmental management−Life cycle impact assessment−Examples of application of 

ISO 14042 

[15] 

ISO/TS 14048,Environmental management−Life cycle assessment−Data documentation format 

[16] 

ISO/TR 14049,Environmental management−Life cycle assessment−Examples of application of ISO 

14041 to goal and scope definition and inventory analysis 

[17] 

ISO 14064-2,Greenhouse gases−Part 2: Specification with guidance at the project level for quantification, 

monitoring and reporting of greenhouse gas emission reductions or removal enhancements 

[18] 

ISO 14064-3,Greenhouse gases−Part 3: Specification with guidance for the validation and verification of 

greenhouse gas assertions