日本工業規格
JIS
K
9803
-1993
5
´−アデニル酸(試薬)
5
´−Adenylic acid
C
10
H
14
N
5
O
7
P
FW : 347.22
1.
適用範囲 この規格は,試薬として用いる 5'−アデニル酸(
1
)
について規定する。
注(
1
)
別名 アデノシン−5´−りん酸,略名 5´−AMP
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS K 0l17
赤外分光分析方法通則
JIS K 0124
高速液体クロマトグラフ分析のための通則
JIS K 8001
試薬試験方法通則
JIS K 8008
生化学試薬通則
JIS K 8102
エタノール (95) [エチルアルコール (95) ]
(試薬)
JIS K 8116
塩化アンモニウム(試薬)
JIS K 8159
塩化マグネシウム六水和物(試薬)
JIS K 8180
塩酸(試薬)
JIS K 8295
グリセリン(試薬)
JIS K 8576
水酸化ナトリウム(試薬)
JIS K 8949
硫化ナトリウム九水和物(試薬)
JIS K 8982
硫酸アンモニウム鉄 (III) ・12 水(試薬)
2.
共通事項 この規格で共通する事項は,JIS K 8001 及び JIS K 8008 による。
3.
性質
3.1
性状 5´−アデニル酸は,白色結晶又は結晶性粉末で水に溶けにくく,アンモニア水又は水酸化ナ
トリウム溶液に溶けやすい。
3.2
確認試験 5´−アデニル酸は,リボース,有機りん及びアデニンの定性反応を示す。
2
K 9803-1993
(1)
試料 30mg を JIS K 8576 に規定する水酸化ナトリウム溶液 (1mol/l)(
2
)
に溶かし,l00ml とする。この溶
液 3ml に,オルシン・エタノール溶液(
3
)0.2ml
を加え,さらに,硫酸アンモニウム鉄 (III) ・塩酸溶液
3ml
を加え,水浴中で 10 分間加熱するとき,緑になる。
注(
2
)
水酸化ナトリウム溶液 (1mol/1) の調製は,JIS K 8576に規定する水酸化ナトリウム43g を水
1000ml
に溶かす。
(
3
)
オルシン・エタノール溶液の調製は,
オルシン 1g を JIS K 8102 に規定するエタノール (95) 10ml
に溶かす。
(
4
)
硫酸アンモニウム鉄 (III) ・塩酸溶液の調製は,JIS K 8982 に規定する硫酸アンモニウム鉄
(III)
・12 水 100mg を JIS K 8180 に規定する塩酸 100ml に溶かす。
(2)
試料 250mg を水酸化ナトリウム溶液 (1mol/l)(
2
)
に溶かした溶液 5ml にマグネシア溶液(
5
)2ml
を加える
とき,
沈殿を生じない。
次に,
硝酸 (1+2) 20ml を加え,
10
分間煮沸後,
水酸化ナトリウム溶液 (1mol/l)(
2
)
を加えた液にモリブデン酸アンモニウム溶液(
6
)
を加えて加温するとき,黄色の沈殿を生じ,水酸化ナ
トリウム溶液 (lmol/l)(
2
)
又はアンモニア水 (2+3) を追加するとき,沈殿は溶ける。
注(
5
)
マグネシア溶液の調製は,
JIS K 8159
に規定する塩化マグネシウム六水和物5・5g 及び JIS K 8116
に規定する塩化アンモニウム7g をはかりとり,水65ml を加えて溶かし,アンモニア水 (2+3)
35ml
を加え,密栓して数日間放置した後,ろ過する。液が澄明でない場合は,使用時にろ過す
る。
(
6
)
モリブデン酸アンモニウム溶液の調製は,三酸化モリブデン 6.5g をはかりとり,アンモニア水
(1 : 1) 30ml
を加えて溶かす。この液を冷却し,冷却した硝酸 (3+4) 70ml にかき混ぜながら徐々
に加え,48 時間放置した後,ろ過する。
(3)
試料 10mg に塩酸 (1+1 000) 1 000ml を加えて溶かした液は,波長 255〜259nm に極大吸収がある(
7
)
。
注(
7
)
アデニン基由来の吸収である。紫外部吸収スペクトルの一例を,
図1に示す。
図 1 紫外部吸収スペクトルの一例
(4)
試料の赤外吸収スペクトルを JIS K 0117 によって測定するとき,波数 3246cm
-1
,3030cm
-1
,1694cm
-1
,
1194cm
-1
,1035cm
-1
及び 633cm
-1
付近に主な吸収を認める。この場合,試料調製は,JIS K 0117 の 6.2(1)
(錠剤法)による。赤外吸収スペクトルの一例を,
図 2 に示す。
3
K 9803-1993
図 2 赤外吸収スペクトルの一例
4.
品質 品質は,5.試験方法によって試験したとき,表 1 に適合しなければならない。
表 1 品質
項目
品質
純度 98%以上
モル吸光係数 (
ε257)
(15.0
±0.2) ×10
2
l
・mol
-1
・mm
-1
水酸化ナトリウム溶液溶解状態
無色澄明
吸光度比
A
250
/A
260
0.85
±0.03
A
280
/A
260
0.21
±0.02
乾燥減量 6%以下
重金属(Pb として) 0.001%以下
ひ素 (As)
1ppm
以下
類似物質 1.0%以下
5.
試験方法
5.1
純度 純度の試験は,次のとおりとする。
5.1.1
操作
(1)
試料 約 0.5g を 0.1mg のけたまではかりとり,水 10m1 及び水酸化ナトリウム溶液 (1mol/l)(
2
)30ml
を
加えて溶かし,全量フラスコ 1 000ml に移し,水を標線まで加える。これを試料溶液 A とする。
(2)
全量ピペット 10ml を用いて試料溶液 A10.0ml をはかりとり,全量フラスコ 500ml に入れ,塩酸 (1+
1000)
を標線まで加える。これを試料溶液 B とし,波長 257nm における吸光度を測定する。
4
K 9803-1993
5.1.2
計算 次の式によって純度を求める。
A
=
100
100
5
.
231
5
.
0
×
−
×
D
C
B
=
)
100
(
11575
D
B
C
−
×
×
ここに,
A
: 純度 (%)
B
: 試料の質量 (g)
C
: 波長 257nm における検液の吸光度を示す。
231.5
=
5
.
1
22
.
347
D
: 5.5 で求めた乾燥減量 (%)
5.2
モル吸光係数 (
ε257) モル吸光係数は,JIS K 8008 の 4.1.4(吸光光度法による試験法)によるほ
か,次のとおりとする。
5.2.1
試薬
(1)
塩酸 0.01mol/l JIS K 8180 に規定する塩酸 0.9l をはかりとり,水を加えて 1 000ml にする。
5.2.2
測定条件
(1)
波長 257±0.3nm
(2)
スペクトルバンド幅 2nm 以下
(3)
光路長 10mm
(4)
測定温度 25±2℃
5.2.3
操作 5.1.1(2)の試料溶液 B を,塩酸 0.01mol/l を対照として,5.1.1 の操作条件で,257nm における
吸光度を測定する。
5.2.4
計算 5.2.3 で得られた測定値について,257nm におけるモル吸光係数を,次の式によって算出し,
その平均値を求める。
)
100
(
100
22
.
347
257
257
D
S
E
−
×
×
=
ε
ここに,
ε
257
:
257nm
におけるモル吸光係数
(
×
10
2
l
・
mol
-1
・
mm
-1
)
S
:
試料溶液
B
中の
5
´−アデニル酸の濃度
(mg/ml)
E
257
:
試料溶液
B
の
257nm
における吸光度
347.22
:
5
´−アデニル酸の式量
D
:
5.5
で求めた乾燥減量
(%)
5.3
水酸化ナトリウム溶液溶解状態 試料
0.5g
をはかりとり,水酸化ナトリウム溶液
(1mol/l)
で溶かし
10ml
とした溶液について,JIS K 8001 の 5.1(外観)及び 5.2(溶状)によって試験する。
5.4
吸光度比 試料
10mg
を
0.1mg
のけたまではかりとり,全量フラスコ
1 000ml
に移し,
0.01mol/l
塩酸
を標線まで加える。この溶液の波長
250nm
,
260nm
及び
280nm
における吸光度
A
250
,
A
260
及び
A
280
を測定
し,
A
250
/A
260
及び
A
280
/A
260
の吸光度比を求める。
5.5
乾燥減量 試料
1g
を,
120
±
2
℃で
4
時間乾燥し,減量を求める。
5.6
重金属(Pb として) 試料
1g
をはかりとり,ネスラー管に入れ,水約
10ml
を加え,さらに,水酸
化ナトリウム溶液
(1mol/l)
に溶かして,酢酸
(1
+
20) 2ml
及び水を加えて
50ml
とし,試料液とする。別
のネスラー管に鉛標準液
(0.01mgPb/ml) 1ml
を入れ,酢酸
(1
+
20) 2ml
及び水を加えて
50ml
とし,比較液
とする。試料液及び比較液に硫化ナトリウム溶液(
8
)
2
滴ずつを加えて混和し,
5
分間放置後,両ネスラー管
を白色の背景を用い,上方及び側方から観察するとき,試料液の色は比較液の色より濃くない。
5
K 9803-1993
注(
8
)
硫化ナトリウム溶液の調製は,JIS K 8949に規定する硫化ナトリウム九水和物
5g
をはかりとり,
水
10ml
及び JIS K 8295に規定するグリセリン
30ml
の混液に加えて溶かし,遮光した小瓶に満た
し,密栓して保存する。調製後
3
か月以内に使用する。
5.7
ひ素 (As) 試料
1g
を水酸化ナトリウム溶液
(1mol/l)
に溶かした溶液
10ml
をはかりとり,JIS K
8001
の 5.19[ひ素
(As)
]によって試験する。ただし,ひ素標準液(
1
µgAs/ml
)
1ml
を用いる。
5.8
類似物質 JIS K 0124 によって試験し,
260nm
における各ピークの面積の総和に対する
5
´
-
アデニ
ル酸のピーク以外の面積の総和の割合
(%)
を求める。
5.8.1
試薬
(1)
溶離液 JIS K 8116 に規定する
0.24mol/l
塩化アンモニウム,
0.04mol/l
りん酸二水素カリウム,
0.04mol/l
りん酸一水素カリウム及び
10%
アセトニトリルの混液。
5.8.2
装置
(1)
装置 高速液体クロマトグラフ
(2)
検出器 紫外吸光検出器,波長
260nm
の検出感度が,
100
µV
に設定できるもの
(3)
カラム用管 ステンレス鋼製など。
(4)
記録計又はデータ処理装置 記録紙送り速度
5mm/min
可能なもの。
5.8.3
操作
(1)
一般事項 JIS K 0124 による。
(2)
試料溶液の調製 試料
100mg
を水酸化ナトリウム溶液
(1mol/l)
で中和しながら溶かし,水を加えて
100ml
とする。
(3)
分析条件の設定 分析条件は,機器によって異なるので,各機器についての最適条件で行わなければ
ならない。次に,その一例を示す。
(4)
カラム用管 ステンレス鋼製,内径
4.0mm
,長さ
150mm
。
(5)
カラム充てん剤 強塩基性アニオン交換樹脂,粒径
5
µm
参考
強塩基性アニオン交換樹脂には,
Hitachi 3013N
などがある。
(6)
カラム槽温度
40
℃
(7)
試料の導入量
5
µl
(8)
記録紙送り速度
2.5mm/min
5.8.4
計算
260nm
における各ピークの面積の総和に対する
5
´−アデニル酸のピーク以外の面積の総和
の割合
(%)
を求める。
6.
容器 容器は気密容器とする。
7.
貯蔵方法
20
℃以下で保存する。
8.
名称 容器には次の事項を表示しなければならない。
(1)
品名
5
´−アデニル酸
(
9
)
及び
試薬
(2)
化学式
(3)
式量
(4)
品質[純度(乾燥物換算)
]
(5)
内容量
6
K 9803-1993
(6)
製造年月日又はその略号
(7)
製造番号又はロット番号
(8)
製造業者名又は販売者名
(9)
必要な取扱注意事項,貯蔵方法
注(
9
)
英文表示可
JIS K 9803
原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
奥 山 典 生
東京都立大学理学部化学科
増 田 優
通商産業省基礎産業局
細 川 幹 夫
工業技術院標準部
桑 克 彦
筑波大学医療技術短期大学部
田 中 秀 興
微生物工業技術研究所細胞機能部機能制御研究室
西 末 雄
化学技術研究所化学標準部
鈴 木 正 信
通商産業検査所化学部
大 野 忠 夫
理化学研究所ジーンバンク細胞銀行
栗 原 力
財団法人化学品検査協会東京事業所
坂 田 衛
財団法人日本分析機器工業会
三 木 敬三郎
東燃株式会社総合研究所基礎研究所
角 田 勝
三菱化成株式会社ライフサイエンス室
桜 井 正 二
味の素株式会社アミノ酸部
河 崎 忠 好
ファルマシア株式会社バイオテクノロジーモレキュラーセンター
堀 尾 武 一
オリエンタル酵母工業株式会社長浜生物化学研究所
藤 島 鉄 郎
ヤマサ醤油株式会社研究開発本部特許情報室
竹 内 幸 夫
和光純薬工業株式会社
木 幡 守
協和発酵工業株式会社研究開発本部
第
1
分科会 構成表
氏名
所属
(分科会長)
桜 井 正 二
味の素株式会社アミノ酸部
鈴 木 貞 夫
田辺製薬株式会社分析化学研究所
宗 像 豊 尅
協和発酵工業株式会社生産計画センター
松 岡 学
日本理化学薬品株式会社研究開発本部
北 島 尚
第一化学薬品株式会社化学薬品事業部
第
2
分科会 構成表
氏名
所属
(分科会長)
河 崎 忠 好
ファルマシア株式会社バイオテクノロジーモレキュラーセンター
平 岡 信 次
宝酒造株式会社中央研究所バイオプロダクツセンター
前 川 宜 彦
東洋紡績株式会社生化学事業部
倉 橋 嘉 治
コスモバイオ株式会社営業一部
第
3
分科会 構成表
氏名
所属
(分科会長)
桑 克 彦
筑波大学医療技術短期大学部
藤 田 剛
オリエンタル酵母工業株式会社生化学開発センター製品開発室
宗 像 豊 尅
協和発酵工業株式会社生産計画センター
友 松 保 幸
関東化学株式会社試薬事業本部学術部
7
K 9803-1993
第
4
分科会 構成表
氏名
所属
(分科会長)
藤 島 鉄 郎
ヤマサ醤油株式会社研究開発本部特許情報室
宗 像 豊 尅
協和発酵工業株式会社生産計画センター
斉 藤 幹 彦
株式会社同仁化学研究所技術部
第
5
分科会 構成表
氏名
所属
(分科会長)
竹 内 幸 夫
和光純薬工業株式会社
井 上 肇
ナカライテクス株式会社
斉 藤 幹 彦
株式会社同仁化学研究所技術部
高 野 虞美子
東京化成工業株式会社検査部
飯 島 弘 淳
財団法人化学品検査協会化学標準部