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K 8825:2020  

(1) 

目 次 

ページ 

1 適用範囲························································································································· 1 

2 引用規格························································································································· 1 

3 種類······························································································································· 1 

4 性質······························································································································· 1 

4.1 性状 ···························································································································· 1 

4.2 定性方法 ······················································································································ 1 

5 品質······························································································································· 2 

6 試験方法························································································································· 2 

6.1 一般事項 ······················································································································ 2 

6.2 純度[CH3(CH2)4CH3](GC) ·························································································· 2 

6.3 密度(20 ℃) ················································································································ 3 

6.4 水分 ···························································································································· 3 

6.5 不揮発物 ······················································································································ 3 

6.6 残留農薬・PCB試験適合性 ······························································································ 3 

7 容器······························································································································· 7 

8 表示······························································································································· 7 

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(2) 

まえがき 

この規格は,産業標準化法第16条において準用する同法第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人

日本試薬協会(JRA)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,産業標準原案を添えて日本産業規格を

改正すべきとの申出があり,日本産業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本産業規格で

ある。これによって,JIS K 8825:2012は改正され,この規格に置き換えられた。 

なお,令和2年8月19日までの間は,産業標準化法第30条第1項等の関係条項の規定に基づくJISマ

ーク表示認証において,JIS K 8825:2012を適用してもよい。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。 

  

日本産業規格          JIS 

K 8825:2020 

ヘキサン(残留農薬・PCB試験用)(試薬) 

Hexane for pesticide residue and polychlorinated biphenyl tests (Reagent) 

CH3(CH2)4CH3  FW:86.18 

適用範囲 

この規格は,残留農薬及びPCB試験用に試薬として用いるヘキサンについて規定する。 

警告1 ヘキサンは,引火性が強いので火気を避け,また,有害なので蒸気を吸入しないように注意

し,皮膚,粘膜などに付着しないようにする。 

警告2 この規格に基づいて試験を行う者は,通常の実験室での作業に精通していることを前提とす

る。この規格は,その使用に関連して起こる全ての安全上の問題を取り扱おうとするもので

はない。この規格の利用者は,SDS(安全データシート)などを参考にして,各自の責任に

おいて安全及び健康に対する適切な措置をとらなければならない。 

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS K 0050 化学分析方法通則 

JIS K 0061 化学製品の密度及び比重測定方法 

JIS K 0067 化学製品の減量及び残分試験方法 

JIS K 0068 化学製品の水分測定方法 

JIS K 0114 ガスクロマトグラフィー通則 

JIS K 0117 赤外分光分析通則 

JIS K 8001 試薬試験方法通則 

種類 

種類は,濃縮300,濃縮1 000,濃縮3 000及び濃縮5 000とする。 

注記 濃縮とは,濃縮に続く数値で示す体積比の倍率まで濃縮しても,分析の妨害となる濃度の成分

を含まないことを示す。 

性質 

4.1 

性状 

ヘキサン(残留農薬・PCB試験用)は,無色の揮発性の液体で特異な臭いがあり,エタノール(99.5)

及びジエチルエーテルに極めて溶けやすく,水にほとんど溶けない。沸点は約69 ℃である。 

4.2 

定性方法 

試料の赤外吸収スペクトルをJIS K 0117によって測定すると,波数2 958 cm-1,2 924 cm-1,2 860 cm-1,

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1 460 cm-1,1 379 cm-1及び725 cm-1付近に主な吸収ピークを認める。この場合,試料調製は,JIS K 0117

の5.4 c)(ATR法)による。ATRプリズムに臭化タリウム・よう化タリウム(KRS5)を用いたときの赤外

吸収スペクトルの例を図1に示す。 

図1−赤外吸収スペクトルの例 

品質 

品質は,箇条6によって試験したとき,表1に適合しなければならない。 

表1−品質 

項目 

規格値 

試験方法 

濃縮300/1 000/3 000/5 000 

純度[CH3(CH2)4CH3](GC) 面積分率 % 

96.0以上 

6.2 

密度(20 ℃) 

g/mL 

0.658〜0.662 

6.3 

水分 

質量分率 % 

0.01以下 

6.4 

不揮発物 

質量分率 ppm 

2以下 

6.5 

残留農薬・PCB試験適合性 

− 

試験適合 

6.6 

試験方法 

6.1 

一般事項 

試験方法の一般的な事項は,JIS K 0050及びJIS K 8001による。 

6.2 

純度[CH3(CH2)4CH3](GC) 

純度[CH3(CH2)4CH3](GC)の試験方法は,次による。 

a) 器具及び装置 主な器具及び装置は,次による。 

1) ガスクロマトグラフ 装置の構成は,JIS K 0114に規定するもの。 

2) マイクロシリンジ又は液体試料導入装置 0.2 µLが採取できるもの。 

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b) 分析条件 分析条件は,次による。 

なお,別の分析条件でも同等の試験結果が得られることが確認されている場合には,その条件を用

いてもよい。 

1) 検出器の種類 水素炎イオン化検出器 

2) 固定相液体名 メチルシリコーン 

3) 固定相液体の膜厚 5 μm 

4) カラム用キャピラリー 

・ 材質 石英ガラス 

・ 内径 0.32 mm 

・ 長さ 30 m 

5) 設定温度 

・ カラム槽 50 ℃から150 ℃に達するまで毎分10 ℃で昇温する。 

・ 試料気化室 200 ℃ 

・ 検出器槽 250 ℃ 

6) キャリヤーガス 

・ 種類 ヘリウム 

・ 流量 3 mL/min 

7) 試料の導入方式 スプリット注入法(スプリット比=1:100) 

8) 試料の導入量 0.2 µL 

c) 操作 操作は,次による。 

1) 試料をマイクロシリンジ又は液体試料導入装置を用いてガスクロマトグラフに導入してクロマトグ

ラムを記録する。 

2) クロマトグラムのピーク面積の測定は,JIS K 0114の11.3 a)(データ処理ソフト又はデータ処理装

置を用いる方法)による。 

d) 定量法 検出したピークの面積を測定し,JIS K 0114の11.5(面積百分率法)によって純度

[CH3(CH2)4CH3](GC)を求める。 

6.3 

密度(20 ℃) 

密度(20 ℃)の試験方法は,JIS K 0061の7.2(比重瓶法)又は7.3(振動式密度計法)による。 

6.4 

水分 

水分の試験方法は,JIS K 0068の6.3(容量滴定法)又は6.4(電量滴定法)による。 

・ 容量滴定法の場合,試料20 g(30.3 mL)をはかりとり,滴定溶媒は,メタノールとする。 

・ 電量滴定法の場合,試料5 g(7.6 mL)をはかりとり,滴定溶媒は,メタノール又は装置に適切なも

のとする。 

6.5 

不揮発物 

不揮発物の試験方法は,JIS K 0067の4.3.4(1)(第1法 水浴上で加熱蒸発する方法)による。この場

合,試料500 g(758 mL)をはかりとり,残分は0.1 mgの桁まではかる。用いる蒸発皿などの容量に応じ

て,試料を数回に分けて入れてもよい。 

6.6 

残留農薬・PCB試験適合性 

6.6.1 

一般 

残留農薬・PCB試験適合性の試験方法は,6.6.2又は6.6.3のいずれかによる。 

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6.6.2 

溶媒自動濃縮法 

溶媒自動濃縮法は,次による。 

a) 試薬及び試験用溶液類 試薬及び試験用溶液類は,次による。 

1) ヘキサン この規格の品質を満たすもの。 

2) γ-HCH標準液(4 ng/mL) 1,2,3,4,5,6-ヘキサクロロシクロヘキサン[γ-HCH,(γ-BHC)](質量分率

99 %以上)10.0 mgをはかりとり,全量フラスコ100 mLに入れ,ヘキサンを加えて溶かし,更にヘ

キサンを標線まで加えて混合し,その10 mLを,全量フラスコ100 mLに正確にとり,ヘキサンを

標線まで加えて混合する。この液2 mLを全量フラスコ100 mLに正確にとり,ヘキサンを標線まで

加えて混合する。その1 mLを全量フラスコ50 mLに正確にとり,ヘキサンを標線まで加えて混合

する。 

b) 器具及び装置 主な器具及び装置は,次による。 

1) マイクロシリンジ又は液体試料導入装置 5 µLが採取できるもの。 

2) 溶媒自動濃縮装置 図2 a)に例を示す。 

3) 試料容器 図2 b)に例を示す。 

4) ガスクロマトグラフ 6.2 a) 1)による。 

c) 分析条件 分析条件は,次による。 

なお,別の分析条件でも同等の試験結果が得られることを確認した場合には,その条件を用いても

よい。 

1) 検出器の種類 電子捕獲検出器 

2) カラム充塡剤 粒径150 μm〜180 μmの酸洗浄・シラン処理けい藻土を担体に用い,それにシリコ

ーン系固定相液体を2 %含浸させたもの,又はこれと同等の分離能をもつもの。 

注記 酸洗浄・シラン処理けい藻土には,クロモソルブW,AW-DMCSなどがあり,シリコーン系

固定相液体にはOV-17,OV-1などがある。 

3) カラム用管の内径及び長さ 

・ 内径 2 mm〜4 mm 

・ 長さ 2 m〜3 m 

4) 設定温度 

・ カラム槽 190 ℃〜210 ℃ 

・ 試料気化室 240 ℃〜260 ℃ 

・ 検出器槽 240 ℃〜260 ℃ 

5) キャリヤーガス 

・ ガスの種類 高純度窒素 

・ 流量 40 mL/min〜60 mL/min(γ-HCHの保持時間が2.5分になるように調節する。) 

6) 試料溶液及びγ-HCH標準液(4 ng/mL)の注入量 5 μL 

d) 操作 操作は,次による。 

1) 試料溶液の調製は,溶媒自動濃縮装置の試料容器に対して可能な試料の量をはかりとり,それぞれ

の濃縮倍率を示す体積まで,30 ℃〜50 ℃で濃縮する。その試料容器にヘキサンを1 mLになるよう

に加える。 

2) 試料溶液,γ-HCH標準液(4 ng/mL)それぞれ5 μLを,マイクロシリンジ又は液体試料導入装置を

用いてガスクロマトグラフに注入し,60分間のクロマトグラムを記録する。ただし,γ-HCH標準液

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(4 ng/mL)の場合は,γ-HCHのピークが記録されるまででよい。 

なお,あらかじめヘキサン及びγ-HCHの保持時間を確認しておく。 

3) クロマトグラムのピーク高さは,JIS K 0114の11.2(ピーク高さの測定)によって,試料溶液のピ

ーク高さ(h1),γ-HCH標準液(4 ng/mL)のピーク高さ(h2)を測定する。 

4) 測定結果は,試料溶液のピーク高さh1を,γ-HCH標準液(4 ng/mL)の保持時間の1/2から60分の

間に出現するγ-HCH標準液(4 ng/mL)のピーク高さ(h2)の1/2(=0.5×h2)と比較する。 

e) 判定 試料溶液のピーク高さ(h1)が,γ-HCH標準液(4 ng/mL)のピーク高さ(h2)の1/2を超えな

いとき,“残留農薬・PCB試験適合性:試験適合(規格値)”とする。 

a) 溶媒自動濃縮装置 

b) 試料容器及び密閉型セルの構成 

図2−溶媒自動濃縮装置の例 

6.6.3 

クデルナ・ダニッシュ濃縮法 

クデルナ・ダニッシュ濃縮法は,次による。 

a) 試薬及び試験用溶液類 試薬及び試験用溶液類は,次による。 

1) ヘキサン 6.6.2 a) 1)による。 

2) γ-HCH標準液(4 ng/mL) 6.6.2 a) 2)による。 

b) 器具及び装置 主な器具及び装置は,次による。 

1) マイクロシリンジ又は液体試料導入装置 6.6.2 b) 1)による。 

2) マントルヒーター 電熱線をガラス繊維製の布などで覆い,器具の形状に応じて密着する加熱器具。 

3) ロータリーエバポレーター 減圧下でフラスコを加熱し,回転させて蒸発濃縮を行う装置。 

4) クデルナ・ダニッシュ濃縮装置 例を図3に示す。 

5) ガスクロマトグラフ 6.2 a) 1)による。 

c) 分析条件 6.6.2 c)による。 

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d) 操作 操作は,次による。 

1) 試料溶液の調製は,表2の採取量の試料をはかりとり,蒸留フラスコ1)に入れ,クデルナ・ダニッ

シュ濃縮装置で減圧濃縮する。減圧濃縮は,マントルヒーターなどを用いて加熱するが,激しく沸

騰させてはならない。また,試料のほとんどが蒸発し,蒸留フラスコ内の試料が少量(10 mL以下)

になったときに,加熱を止める。濃縮された溶媒の入った受器を取り外し,ヘキサンを加えて1 mL

とし,試料溶液とする。受器に栓をし,よく振り混ぜる。 

なお,濃縮倍率が確保できる場合,試料量及び最終の試料溶液量を変更してもよい。また,あら

かじめ試料をロータリーエバポレーターなどで濃縮して蒸留フラスコに入れてもよい。 

注1) 試料の採取量に応じた容積の蒸留フラスコを用いる。 

表2−種類及び試料の採取量 

単位 mL 

種類 

濃縮300 

濃縮1 000 

濃縮3 000 

濃縮5 000 

試料の採取量 

300 

1 000 

3 000 

5 000 

2) 試料溶液,γ-HCH標準液(4 ng/mL)それぞれ5 μLを,マイクロシリンジ又は液体試料導入装置を

用いてガスクロマトグラフに注入し,60分間のクロマトグラムを記録する。ただし,γ-HCH標準液

(4 ng/mL)の場合は,γ-HCHのピークが記録されるまででよい。 

なお,あらかじめ,ヘキサン及びγ-HCHの保持時間を確認しておく。 

3) クロマトグラムのピーク高さは,JIS K 0114の11.2(ピーク高さの測定)によって,試料溶液のピ

ーク高さ(h1),γ-HCH標準液(4 ng/mL)のピーク高さ(h2)を測定する。 

4) 測定結果は,溶液試料のピーク高さh1を,γ-HCH標準液(4 ng/mL)の保持時間の1/2から60分の

間に出現するγ-HCH標準液(4 ng/mL)のピーク高さ(h2)の1/2(=0.5×h2)と比較する。 

e) 判定 試料溶液のピーク高さ(h1)は,γ-HCH標準液(4 ng/mL)のピーク高さの(h2)の1/2を超え

ないとき,“残留農薬・PCB試験適合性:試験適合(規格値)”とする。 

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A: 

B: 
C: 

D: 

E: 

F: 

G: 
H: 

蒸留フラスコ 500 mL〜2 000 mL 
濃縮物の受器 1 mL〜5 mL 
毛細管 
冷却器 
トラップ 
留液だめ 500 mL〜2 000 mL 
共通すり合わせ 
水浴又はマントルヒーター 
(ジャッキ式) 

図3−クデルナ・ダニッシュ濃縮装置の例 

容器 

容器は,気密容器とする。 

表示 

容器には,次の事項を表示する。 

a) この規格の番号 

b) 名称“ヘキサン(残留農薬・PCB試験用)”及び“試薬”の文字 

c) 種類 

d) 化学式及び式量 

e) 純度 

f) 

内容量 

g) 製造番号 

h) 製造業者名又はその略号