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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

Z 9116-1990 

トンネル照明基準 

Lighting of Tunnels for Motorrized Traffic 

1. 適用範囲 この規格は,主として自動車交通の用に供する道路トンネル(以下,トンネルという。)の

照明に関する質的基準について規定する。 

備考 この規格に定める質的基準とは,トンネルに接近・進入し,通過する自動車の運転者の視覚に

起こる複雑な知覚特性の変化及び心理的反応とトンネル固有の環境条件とを考慮して,自動車

を安全に運転するために整えることが望ましいトンネル内及びトンネル前後の接続道路の照明

についての照明工学的な基礎的条件のことをいう。 

引用規格: 

JIS Z 8113 照明用語 

JIS Z 9111 道路照明基準 

2. 用語の意味 この規格に用いる主な用語の意味は,JIS Z 8113(照明用語)によるほか,次による。 

(1) トンネル関係 トンネル関係については,次による。 

(a) 設計速度 道路の設計の基礎となる自動車の速度。 

(b) 交通量 道路のある断面を一定時間に通過する自動車の台数。 

(c) 建築限界 道路上で自動車や歩行者の通行の安全を確保するため,ある一定の幅,高さの範囲内に

障害となるようなものは置いてはならないという空間確保の限界。 

(d) 視距 車道の中心線上1.2mの高さから当該車線の中心線上にある高さ10cmの障害物の頂点を見通

すことができる距離を,当該車線の中心線に沿って測った長さ。 

(2) 照明関係 照明関係については,次による。 

(a) 路面輝度 運転者の目の位置からふ(俯)角1度で見た,前方注視点付近の路面の輝度。 

(b) 野外輝度 トンネルの入口から視距だけ手前にいる運転者の目の位置から見た,トンネルを中心と

した視角直径20度の視野の平均輝度。 

(c) 連続照明 トンネル,橋りょう(梁)などを除く道路の単路部に連続的に設置する照明施設。 

(d) ちらつき 一連の光源からの光が比較的小さい周期で目に入る場合,定常的でない刺激として感じ

る現象。 

(e) グレア 過剰な輝度又は過剰な輝度対比のために,不快感又は視覚機能の低下を起こすような視知

覚。 

(f) 照明器具の配列 トンネルに沿った照明器具の配列方法。これには,向き合わせ配列,千鳥配列,

片側配列,中央配列などがある。 

(g) 照明器具の配置 照明器具の取付高さ,間隔及び配列によって定まる照明器具の配置方法。 

Z 9116-1990  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

3. トンネル照明の計画において留意する事項 トンネル照明の計画において留意する事項は,次のとお

りとする。 

(1) 入口付近の視野状況 トンネルに接近しつつある自動車の運転者の視野内の天空,路面などの人工構

造物,入口付近の地物・斜面などの輝度とそれらが視野内に占める割合。 

(2) 構造条件 トンネルの断面の形状,全長,トンネル内道路の平面・縦断線形,路面・壁面・天井面の

表面状態・反射率など。 

(3) 交通状況 設計速度,交通量,通行方式,大型車の混入率など。 

(4) 換気状況 排気設備の有無,換気方式,トンネル内空気の透過率など。 

(5) 維持管理の計画 清掃方法,清掃頻度など。 

4. トンネル照明の要件 

4.1 

運転者の見え方 トンネル及びトンネルの前後の接続道路には,自動車の運転者が路面上の障害物

などを発見し,事故の危険から回避するために十分な視認性を与えるような照明を設けることとする。 

4.2 

運転者の快適性 運転者の快適性は,次による。 

(1) 運転時の安心感 自動車の運転者が,前方道路の状況に対して安心して自動車を走行させるために,

トンネル内の路面や壁面は,明るく,かつ,その明るさがほぼ均一な状態に照明されることが望まし

い。 

(2) 運転時の不快感 トンネル内の照明施設は,自動車の運転者に不快感が生じるようなグレアが生じな

いようにするとともに,走行している自動車内へ入射する光が,運転者に不快なちらつきが生じるよ

うな光の変動が生じないようにすることが望ましい。 

4.3 

誘導性の確保と照明条件 トンネル内の照明器具の配置に当たっては,トンネル内の路面・壁面を

十分な輝度となるように照明するとともに,取付高さを路面に対して一定とし,道路の線形に沿うように

して自動車の運転者が前方の道路の線形の変化を正しく判断できるようにする。 

5. 照明設計の一般原則 

5.1 

トンネル照明の構成 

5.1.1 

機能的構成 トンネル照明は,図1に示すようにトンネル内に設ける照明と,トンネル前後の接続

道路に設ける照明によって構成する。 

トンネル内に設ける照明は,その機能に応じ基本照明,入口照明及び出口照明で構成する。 

トンネル前後の接続道路に設ける照明は,その機能によって,入口部接続道路の照明と出口部接続道路

の照明とで構成する。 

備考1. 基本照明とは,昼夜間にトンネル内における運転者の視認性を確保するためトンネル全長に

わたってほぼ均一な輝度を確保する照明をいう。 

2. 入口照明とは,昼間トンネル入口付近における視覚的問題を解決することを目的として基本

照明に付加して設ける照明をいう。入口照明は,図2に示すように境界部,移行部及び緩和

部とから構成する。 

3. 出口照明とは,昼間,トンネル出口を通して見える野外の高い輝度のグレアによって起こる

視覚的問題を解決するために,必要に応じて基本照明に付加して設ける照明をいう。 

4. 入口部接続道路の照明は,夜間にトンネル入口付近の状況,トンネルの内外での道路の幅員

の変化などを自動車の運転者が視認できるように,トンネル入口部の接続道路に設ける照明

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

をいう。 

5. 出口部接続道路の照明は,夜間にトンネル出口に接近しつつある自動車の運転者が,明るい

トンネルの内部から,トンネルに接続する暗い道路の線形の変化などを十分前方から視認で

きるように,トンネル出口部の接続道路に設ける照明をいう。 

図1 トンネル照明の構成 

図2 入口部照明の構成 

5.1.2 

トンネル内の照明の区間的構成 トンネル内の照明は,図1に示すように入口部照明,基本部照明

及び出口部照明の三つの区間によって構成する。 

備考1. 入口部照明とは,入口照明が設置されている区間の照明をいい,基本照明と入口照明から構

成する。 

2. 基本部照明とは,トンネルが一方交通の場合には,入口照明の終端と出口照明の始端との間

(出口照明がないときはトンネル出口までの区間)の照明を,また,トンネルが対面交通の

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場合には,二つの入口照明の終端間の照明をいい,基本照明だけで構成する。 

3. 出口部照明とは,出口照明が設置されている区間の照明をいい,基本照明と出口照明から構

成する。 

5.2 

ランプ・照明器具 ランプは,効率,光色,演色性,働程特性,周囲温度特性,寿命などがトンネ

ル照明に適するものを,照明器具は,配光,グレア制御,照明率,構造などがトンネル照明に適するもの

を使用する。 

5.3 

照明器具の配置及び配列 照明器具の配置及び配列は,路面及び壁面の輝度分布がほぼ均一になる

ようにし,また,自動車の運転者に不快なちらつきが生じないようにする。 

6. トンネル照明の基準 

6.1 

基本部照明 基本部照明の平均路面輝度は,設計速度によって表1のとおりとする。 

表1 基本部照明の平均路面輝度 

設計速度 

km/h 

平均路面輝度 

cd/m2 

100 

9.0 

 80 

4.5 

 60 

2.3 

 40 

1.5 

備考1. 交通量が多く,トンネル内の空気の透過率が

低い場合には,平均路面輝度をこの値より高
くすることが望ましい。 

2. 交通量が少なく,トンネル内の空気の透過率

が高い場合には,平均路面輝度をこの値より
低くすることができる。 

3. 壁面の平均輝度は,平均路面輝度の1.5倍以

上の値とすることが望ましい。 

備考 夜間においては,この値を低減することができる。ただし,その最低値は,設計速度が80km/h

以上の場合には1.0cd/m2,設計速度が60km/h以下の場合には0.7cd/m2とする。 

また,接続する道路に連続照明が設けられている場合には,夜間の平均路面輝度は,接続す

る道路の平均路面輝度の2倍以上の値とすることが望ましい。 

6.2 

入口部照明 入口部照明は,次による。 

(1) 境界部の路面輝度は,トンネル入口付近の運転者の視野状況によって決まる野外輝度の年間における

出現頻度を考慮して設定される値に,設計速度によって決まる係数を乗じた値とする。 

(2) 移行部及び緩和部の路面輝度は,境界部の路面輝度の値を100%として,図3に示すように,トンネ

ル入口からの距離に従い減少させ,基本部照明の路面輝度の値に滑らかに接続するものとする。 

(3) 入口部照明の路面輝度は,季節,天候及び時刻による野外輝度の変動に応じて調節することが望まし

い。 

(4) 入口部照明の路面輝度は,交通状況によって増減することができる。 

(5) 運転者の視野状況によって決まる野外輝度の年間の出現頻度によって設定される値は,表2を標準と

する。 

(6) 境界部の路面輝度の値を求めるために乗ずる係数は,表3によることが望ましい。 

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(7) 入口部照明の壁面の輝度は,その位置における路面輝度の値の1.5倍以上の値とすることが望ましい。 

図3 トンネル入口部の路面輝度 

表2 設定される野外輝度 

設計速度 

km/h 

20度視野**内に占める空の割合 

20以上 

20〜10 

10〜5 

5未満 

周囲の状況 

単位 cd/m2 

明 

普通 

明 

普通 

明 

普通 

明 

普通 

100 

6 000 

5 000 

5 000 

3 000 

4 000 

2 500 

4 000 

2 000 

80 
60 

5 000 

4 000 

4 000 

2 500 

3 000 

2 000 

3 000 

1 500 

40 

注** この視野は,トンネル入口から視距だけ手前にある運転者が,トンネル

を見る場合のものである。 

備考1. 周囲の状況が明とは,トンネル入口付近の地物が,白,灰色などの反

射率の高い場合をいい,入口付近に長期間積雪状態が続く場合もこれ
に含まれる。 

2. 周囲の状況が普通とは,上記以外の場合をいう。 

表3 野外輝度に乗ずる係数 

設計速度 

km/h 

係数 

100 

0.07 

 80 

0.05 

 60 

0.04 

 40 

0.03 

6.3 

出口部照明 出口部照明は,図4に示すようにトンネル内部からその出口に向かって70mにわたっ

て,トンネル内部から出口部を通して測定した野外輝度の値の10分の1以上の値の鉛直面照度を与えるこ

とを原則とする。 

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図4 トンネル出口部照明 

6.4 

トンネルの接続道路の照明 夜間,トンネルの接続道路のトンネル出入口付近の区間に設置する道

路照明の基準は,JIS Z 9111(道路照明基準)を原則とする。 

7. 維持及び管理 トンネルの照明設備は,使用に伴うランプ及び照明器具の特性の劣化・汚損,寿命・

破損などによる機能の停止などが生じないように次の事項に留意し,適切に管理維持することが望ましい。 

(1) 点灯状態 

(2) 照明器具及び自動調光装置の取付状況 

(3) 照明器具の汚れ状況 

(4) 路面,壁面の輝度又は照度 

トンネル照明JIS原案作成委員会 構成表 

氏名 

所属 

(委員長) 

成 定 康 平 

松下電器産業株式会社 

(幹事) 

荒 井 弘 志 

小糸工業株式会社 

(幹事) 

井 上   猛 

松下電器株式会社 

(幹事) 

佐 藤 博 栄 

日本道路公団 

(幹事) 

森 川 邦 雄 

首都高速道路公団 

宮 田 年 耕 

建設省道路局 

水 谷 敏 則 

建設省土木研究所 

関   武 久 

日本道路公団 

星 野 庫 三 

首都高速道路公団 

松 下 守 夫 

建設省建設経済局 

石 田 敏 郎 

早稲田大学 

今 田   徹 

東京都立大学 

小 原 清 成 

東京理科大学 

内 田 和 夫 

岩崎電気株式会社 

吉 田   博 

東芝ライテック株式会社 

高 橋 安 通 

社団法人日本照明器具工業会 

斎 藤 哲 夫 

社団法人日本電球工業会 

石 塚 直 弘 

社団法人照明学会 

鈴 木 紀 男 

工業技術院標準部 

池 田 順 一 

財団法人日本規格協会