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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

Z 8812-1987 

有害紫外放射の測定方法 

Measuring Methods of Eye-hazardous Ultraviolet Radiation 

1. 適用範囲 この規格は,一般の人工光及び自然の光における,人の目に対する有害紫外放射(以下,

有害紫外放射という。)の有害放射照度を物理的に測定する方法について規定する。ただし,レーザの直射

放射の測定は含まない。 

引用規格: 

JIS C 7604 高圧水銀ランプ 

JIS C 7605 殺菌用低圧水銀放電管 

JIS Z 8113 照明用語 

2. 用語の意味 この規格で用いる主な用語の意味は,JIS Z 8113(照明用語)によるほか,次による。 

(1) 有害紫外放射 人の目の角膜又は結膜に急性の傷害を与える紫外放射。その波長範囲は200〜315nm

であり,有害性の分光作用特性は,図1に示すとおりとする。 

備考 以前は有害紫外線といった。 

(2) TLV Threshold Limit Valuesの略称。波長200〜315nmの紫外放射に関して,その照射下にある作業者

が有害な影響を被らずに,繰り返して暴露を受けても差し支えない量であって,波長ごとにJ/m2で示

した値。 

なお,このTLVは安全レベルと危険レベルを分ける一線と考えてはいけない。 

(3) 相対分光有害作用 TLVの逆数で,最大値(270nmの値)を1に規準化して表した値。 

(4) 有害放射束 有害紫外放射の実効放射束。放射源の分光放射束に相対分光有害作用の値を乗じて積分

した形で求め,その強さを有害ワット [W (haz)] で表す。 

(5) 有害放射照度 有害放射束の入射面単位面積当たりの密度。単位はW/m2 (haz) 又はμW/m2 (haz) など

とする。 

(6) 法線放射照度 放射の進行方向に垂直な面上の放射照度。 

(7) 水平面放射照度 水平面上の放射照度。 

(8) 鉛直面放射照度 鉛直面上の放射照度。 

3. TLV TLV及び相対分光有害作用は,表1及び図1のとおりである。 

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Z 8812-1987  

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表1 TLVと相対分光有害作用 

波長 nm 

TLV J/m2 

相対分光有害作用 

200 

1 000 

0.03 

210 

400 

0.075 

220 

250 

0.12 

230 

160 

0.19 

240 

100 

0.30 

250 

70 

0.43 

254 

60 

0.5 

260 

46 

0.65 

270 

30 

1.0 

280 

34 

0.88 

290 

47 

0.64 

300 

100 

0.30 

305 

500 

0.06 

310 

2 000 

0.015 

315 

10 000 

0.003 

備考 TLVは,ACGIH (American Conference of Governmental 

Industrial Hygienists) の勧告値であり,この値は,1日
(8時間)を1期間として,暴露を受ける場合の許容量
である。 

ACGIH:Threshold Limit Values for Physical Agents in 

the Work Environment Adopted by ACGIH with Intended 
Changes for 1985-1986参照 

図1 相対分光有害作用曲線 

4. 有害紫外放射の測定器 有害紫外放射の測定には有害紫外放射用放射照度計(以下,放射照度計とい

う。)を使用する。受光器の分光応答度特性は図1の相対分光有害作用曲線にできるだけ近似したものとし,

最小検出能力は100μW/m2 (haz) よりよいものとする。広がりのある放射源からの受光器に対する斜め入射

光の角度特性は,受光面の法線方向と入射光とのなす角の余弦に比例すること(余弦法則)が望ましい。

もし余弦法則からの外れが著しいときは,5.2.2で述べる方法で測定値を補正する。 

備考 受光器の分光応答度特性を図1に近似させる方法としては,次のようなものがある。180〜320nm

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の波長範囲に応答度をもつ真空光電管(セシウム−テルル陰極)及び最大透過波長約270nm,

半値幅約40nmの帯域フィルタ(多層膜形など)を組み合わせる。 

5. 有害放射照度の測定方法 

5.1 

放射照度の種類 有害放射照度は,測定条件によって,法線放射照度,水平面放射照度及び鉛直面

放射照度とする。 

5.2 

法線放射照度の測定 

5.2.1 

放射照度計の設置方法 放射照度計の受光面又は受光窓を有害紫外放射を測定する場所に置き,対

象となる有害紫外放射源の中央部に対向させて測定する。 

5.2.2 

余弦法則からの外れの補正 受光器に対する斜め入射光の角度特性は,対象とする放射源を見込む

受光器角度内で,余弦法則に従うことが望ましい。 

なお,所要位置で放射源を見込む角度内で受光器に対する斜め入射光の角度特性が不十分であるときは,

放射源と受光面の距離を広げて,放射源を見込む角が余弦法則を満足する範囲以内になるようにして放射

照度を測定し,その値から所要位置での放射照度を計算する(附属書 放射照度の計算方法を参照)。 

対象の放射源が複雑な大きさや形状をもつか,又は2個以上存在するような条件のときは,測定すべき

位置の受光器は,これらの放射源を見込む入射角度内において,受光器に対する斜め入射光の角度特性が

余弦法則を満足することが望ましい。ただし,受光器の全入射角度範囲に対して,余弦法則を満足してい

ない場合は,余弦法則を満足する角度範囲内で一部分又は1個ずつに分けて測定し,計算によって求める。 

5.2.3 

有孔遮光板の使用 放射源の有害紫外放射出力を測定する場合のように,対象の放射源からくる直

射放射束だけを測定対象とするときは,他の放射源からくる放射及び周囲からの散乱放射が受光器に入射

しないよう,対象の放射源と受光器との間に適当な有孔遮光板又はそれと同等の効果をもつ遮光筒を置く。 

有孔遮光板は,一般に複数個を使用し,孔の形状は受光器の位置から見た放射源の正射影と相似である

ことが望ましいが,丸形でもよい。受光器の視野が対象の放射源に限られるよう,各有孔遮光板の孔の寸

法,外形寸法及び配置を選ぶ(図2参照)。有孔遮光板の表面は,紫外放射及び可視放射の反射率が極めて

低い黒つや消しの仕上げ(例えば,黒ビロード張り。)とし,孔の縁は刃状とする。有孔遮光板又は遮光筒

の使用が困難な場合は,周囲からの散乱放射束を含めて測定した後,放射源に近い位置の光路に黒つや消

し仕上げの遮光板(例えば,この放射源とほぼ同じ大きさのもの。)を挿入して,受光器へ向かう直射放射

束を遮断する方法で散乱放射束だけを測定し,前者から後者を差し引いて直射放射束を求める。 

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図2 有孔遮光板の用い方 

5.3 

水平面又は鉛直面放射照度の測定 

5.3.1 

直接に測定する方法 水平面又は鉛直面放射照度を測定するには,放射照度計の受光窓又は受光面

を測定箇所で水平又は鉛直に保ち,各測定器で決めた方法に従って測定する。この場合,受光器に対する

斜め入射光の角度特性は,余弦法則を満足することが望ましい。 

また,余弦法則を満足しない場合は5.2.2に準じる。 

5.3.2 

法線放射照度から計算で求める方法 5.2の方法で測定した法線放射照度の値をもとに計算する

(附属書 放射照度の計算方法参照)。 

5.4 

変動する放射照度の測定 溶接時のアークなどから放射される有害紫外放射のように,時間的に不

規則な変動をする放射照度の測定には,放射照度計の出力を記録計器に供給し,放射照度の時間的推移を

自記させて,一定時間内の平均 [W/m2 (haz)] を求めるか,又は有害紫外放射用積算放射照度計で有害紫外

放射量 [W・s/m2 (haz)] を測定した後,その時間内の平均値 [W/m2 (haz)] を計算する。 

やむを得ず,直読式の有害紫外放射用放射照度計を使用する場合には,単位測定時間内で5回以上の測

定を行い,その平均を求める。 

放射照度の瞬間的最大値を求める場合は,時定数が小さい(例えば,ms程度の)測定器を使用する。最

大値を読み取ることが困難なせん光の場合は,有害紫外放射用積算放射照度計でせん光有害紫外放射量 

[W・s/m2 (haz)] を測定する。 

6. 測定器の校正 放射照度計の校正に使う校正用放射源は,あらかじめ有害紫外放射出力に値づけをし

たJIS C 7605(殺菌用低圧水銀放電管)に規定する殺菌ランプのほか,健康線用蛍光ランプとする。 

このうち,殺菌ランプは波長253.7nmの紫外放射を,また健康線用蛍光ランプは,波長280〜315nmの

紫外放射を測定する場合の校正に用いる。 

365nm以上の長波長紫外放射に感じないことを確かめるために,JIS C 7604(高圧水銀ランプ)に規定

する高圧水銀ランプH 100から1mの距離で,受光器に短波長紫外放射遮断フィルタ(例えば,UV-35)を

かけて測定したとき,指示がほとんどゼロでなければならない。光電管などの検出素子及びフィルタは経

時変化があり得るので,放射照度計の校正は,少なくとも年1回行わなければならない。 

備考 放射照度計の分光応答度特性は,図1の相対分光有害作用と一致していることが望ましいが,

実際には多少の偏差が避けられない。この偏差に起因する測定誤差を少なくするため,例えば

次のような使い方をする。 

(1) 殺菌紫外放射が問題となるところでは,有害放射束で値づけした殺菌ランプによる校正値を

使用して測定する。 

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(2) アーク溶接時のアークのように広い波長範囲の紫外放射が問題となるところでは,有害放射

束で値づけした健康線用蛍光ランプによる校正値を使用する。 

(3) その他一般の場合には,有害放射束で値づけした健康線用蛍光ランプによる校正値を使用し

て測定する。 

7. 測定結果の表示 測定値は,原則として有害紫外放射照度で表示し,次の事項を付記する。 

(1) 放射源の種類と大きさ 

(2) 放射源と受光器との距離 (m) 及び入射角 (°)。ただし,法線放射照度の場合は,入射角の記載を省

く。 

(3) 測定放射照度の種類 

(4) 測定に用いた放射照度計の種類 

測定値の記載は,この順序で行い,(2)〜(4)の事項については,表2の記号を使用する。 

表2 付記事項の記号 

項目 

種類 

記号 

放射源と受光器との
距離及び入射角 

距離 

1m  (例) 

入射角 

30°(例) 1m (30°) 

測定放射照度の種類 

法線放射照度 
水平面放射照度 
鉛直面放射照度 

[N] 
[H] 
[V] 

放射照度計の種類 

有害紫外放射用放射照度計(直読式) 
有害紫外放射用積算放射照度計 

HM 
HIM 

測定結果の記載は,原則として次の例示による。 

例1:被覆アーク溶接150Aの有害紫外放射鉛直面放射照度を0.5mの距離,入射角20°で有害紫外放

射用放射照度計によって測定した場合 

0.57W/m2 (haz)  

被覆アーク溶接 150A 

0.5m (20°)  

[V]    HM(○○○製) 

例2:15ワット殺菌ランプの有害紫外水平面放射照度を1mの距離,入射角10°で,有害紫外放射用

放射照度計によって測定した場合 

0.15W/m2 (haz) 

殺菌ランプ 15ワット 

1m (10°)  

[H]   HM(◇◇◇製) 

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附属書 放射照度の計算方法 

1. 点放射源の場合 放射源がある大きさをもっていても,放射源の長さ又は直径が,放射照度を求める

点と放射源との距離の1/10以下であれば点放射源とみなす。放射源を完全拡散性とみなせば,点放射源か

ら距離D (m) の点の放射照度H (W/m2) は 

(

)

2

2

/m

W

D

NA

H=

ここに, N: 放射源の放射輝度 [W/ (sr・m2)]  
 

A: 放射源の面積 (m2)  

これを照度の逆二乗の法則といい,この関係を利用して,附属書図1における点放射源SからSP方向

の放射の強さをJθ (W/sr) とすると,P点の放射照度は次のようになる。 

法線放射照度 

2

SP

J

Hn

θ

水平面放射照度 

2

cos

SP

J

Hh

θ

θ

鉛直面放射照度 

2

cos

sin

SP

J

Hv

ϕ

θ

θ

 鉛直面放射照度 

(ϕ=0の場合) 

2

0

sin

SP

J

Hv

θ

θ

ここに 

θ:ふ角 

ϕ:方位角 

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附属書図1 

2. 完全拡散性直線放射源の場合 附属書図2においてSは,水平に置かれた円柱放射源で,長さL (m) に

比べて半径は極めて小さいものと仮定する。 

放射輝度をN [W/ (sr・m2)],直径をD (m) とすれば,単位長さ当たりの放射の強さJは,次のとおりであ

る。 

J=N・D (W/sr)  

直線放射源Sの軸上の一端AにおいてSと直交する平面上にP点があるとすれば,SによるP点の放射

照度は,次のとおりである。 

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 法線放射照度 

(

)

α

α

α

cos

sin

21

=J

Hn

2

2

1

2

2

2

2

2

tan

1

2

d

h

L

d

h

L

d

h

L

J

 水平面放射照度 

δ

sin

n

zH

H=

2

2

1

2

2

2

2

2

2

2

tan

1

2

d

h

L

d

h

L

d

h

L

d

h

h

J

 鉛直面放射照度 

δ

sin

n

xH

H=

2

2

1

2

2

2

2

2

2

2

tan

1

2

d

h

L

d

h

L

d

h

L

d

h

d

J

2

2

2

2

2

L

d

h

L

J

Hy

ここに, 

l:P点からSへおろした垂線の長さ (m)  

h:P点を含む水平面に対するSの高さ (m)  

d:Sの中心線ABを含む鉛直面へのP点からの距離 (m)  

α:P点がABを見張る角度 

δ:APと鉛直線とのなす角度 

附属書図2 

直線放射源Sに対するP点の位置が附属書図3(a),(b)のような場合には,P点を含む平面がSの軸AB

に直交する交点をCとする。直線放射源をCで分け,CAの長さをL1,CBの長さをL2とし,それぞれに

よる量に添字1又は2を付ければ,次の式が得られる。 

(a)  Hz=Hz1−Hz2 

Hx=Hx1−Hx2 

Hy=Hy1−Hy2 

(b)  Hz=Hz1+Hz2 

Hx=Hx1+Hx2 

Hy=Hy1,H′y=Hy2 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書図3 

このほかの完全拡散性放射源の場合については,“照明ハンドブック”(社団法人照明学会編集)を参照

のこと。 

10 

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基本部会 有害紫外線測定方法専門委員会 構成表 

氏名 

所属 

(委員会長) 

東     堯 

社団法人照明学会名誉会員 

小笠原 仁 夫 

日鐵溶接工業株式会社 

奥 野   勉 

労働省産業医学総合研究所 

乙 部 洋 一 

社団法人日本溶接協会 

河 本 康太郎 

株式会社東芝総合研究所 

小 林   実 

株式会社神戸製鋼所 

小 松 公 栄 

日本合成ゴム株式会社 

笹 谷   勇 

工業技術院 

柴 田 晴 通 

東京科学機器協会 

須 賀   蓊 

スガ試験機株式会社 

関     亮 

独協医科大学 

内 藤 栄治郎 

社団法人日本保安用品協会 

中 川 靖 夫 

埼玉大学 

野 村 治 男 

株式会社トーアボージン 

松 尾 幸 夫 

中央学働災害防止協会 

三 須 倉太郎 

株式会社理研オプテック 

山 本 為 信 

山本光学株式会社 

(事務局) 

鬼 束 忠 人 

工業技術院標準部材料規格課 

永 井 裕 司 

工業技術院標準部材料規格課