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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

Z 2273-1978 

金属材料の疲れ試験方法通則 

General Rules for Fatigue Testing of Metals 

1. 適用範囲 この規格は,繰返し数104回以上の疲れ寿命を対象として室温大気中で行う標準試験片に

よる金属材料の疲れ試験方法の通則について規定する。 

引用規格: 

JIS Z 8401 数値の丸め方 

2. 用語の意味 

2.1 

応力及び繰返し数に関する用語 

2.1.1 

呼び応力 切欠きその他による応力集中を考えないで,弾性的に計算した応力。垂直応力をσ,せ

ん断応力をτで表す。 

2.1.2 

変動応力 大きさが時間的に変化する応力(図1)。 

2.1.3 

繰返し応力 一定の極大値と極小値の間を単純に,かつ周期的に変動する応力(図2)。 

図1 変動応力 

図2 繰返し応力 

2.1.4 

最大応力σmax,τmax 繰返し応力の代数的最大値(図2)。 

2.1.5 

最小応力σmin,τmin 繰返し応力の代数的最小値(図2)。 

備考 最大応力及び最小応力は,符号を考慮に入れて,引張・圧縮応力の場合には,引張応力を正,

圧縮応力を負にとる。せん断応力の場合には,一方向を正にとれば,逆方向を負にとる。 

2.1.6 

平均応力σm,τm 繰返し応力の最大応力と最小応力の代数和の21(図2)。 

2.1.7 

応力振幅σa,τa 繰返し応力の最大応力と最小応力の代数差の21(図2)。 

2.1.8 

応力の範囲σR,τR 繰返し応力の最大応力と最小応力の代数差(図2)。 

2.1.9 

振幅平均応力比A 応力振幅の平均応力に対する代数比。 

A=

m

a

σ

σ又はA=

m

a

τ

τ 

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Z 2273-1978  

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2.1.10 最小最大応力比R 最小応力の最大応力に対する代数比。 

R=

max

min

σ

σ

又はR=

max

min

τ

τ

2.1.11 両振り応力 正負等大値間を繰り返す応力(σm=0又はτm=0の場合。図3)。 

2.1.12 部分両振り応力 絶対値の異なる正の最大値と負の最小値との間を繰り返す応力(0<|σm|<σa又は

0<τm<τaの場合。図4)。 

図3 両振り応力 

図4 部分両振り応力 

2.1.13 片振り応力 0と最大値又は0と最小値との間を繰り返す応力(|σm|=σa又はτm=τaの場合。図5)。 

2.1.14 部分片振り応力 同符号の最大値と最小値の間を繰り返す応力(|σm|>σa又はτm>τaの場合。図6)。 

図5 片振り応力 

図6 部分片振り応力 

2.1.15 繰返し数n 疲れ試験中の応力の繰返しの回数。 

2.1.16 繰返し数N 疲れ破壊を生ずるまでの応力の繰返しの回数。 

2.1.17 繰返し数比n/N 同一応力における応力の繰返し数nの破壊までの繰返し数Nに対する比。 

2.1.18 形状係数α 切欠き試験片に荷重を負荷したとき,応力集中部について弾性的に計算した最高応力

をその部分の呼び応力で除した商。 

2.2 

疲れ強さに関する用語 

2.2.1 

S−N線図(応力−繰返し数線図) 縦軸に応力,横軸に破壊までの繰返し数(破壊せずに試験を

終了した場合の繰返し数を含む。)をとって描いた線図。 

2.2.2 

疲れ限度 無限回数の繰返しに耐える応力の上限値。試験の種類により,2.2.3〜2.2.10のように表

す。 

備考 上記の用語の意味は,試験値にばらつきのない理想的な場合である。通常,疲れ限度付近の試

験値にはばらつきがあるので,疲れ限度は,統計的に求めなければならない。 

2.2.3 

両振り引張・圧縮疲れ限度σw 両振り引張・圧縮応力が作用するときの疲れ限度。応力振幅で表す。 

2.2.4 

片振り引張疲れ限度σu 片振り引張応力が作用するときの疲れ限度。応力振幅の2倍で表す。 

2.2.5 

片振り圧縮疲れ限度σ−u 片振り圧縮応力が作用するときの疲れ限度。応力振幅の2倍で表す。 

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2.2.6 

回転曲げ疲れ限度σwb 回転曲げ応力が作用するときの疲れ限度。応力振幅で表す。 

2.2.7 

両振り平面曲げ疲れ限度σwp 両振り平面曲げ応力が作用するときの疲れ限度。応力振幅で表す。 

2.2.8 

片振り平面曲げ疲れ限度σup 片振り平面曲げ応力が作用するときの疲れ限度。応力振幅の2倍で

表す。 

2.2.9 

両振りねじり疲れ限度τw 両振りねじり応力が作用するときの疲れ限度。応力振幅で表す。 

2.2.10 片振りねじり疲れ限度τu 片振りねじり応力が作用するときの疲れ限度。応力振幅の2倍で表す。 

2.2.11 疲れ限度線図 疲れ限度が平均応力又は応力比の影響によって変化する状態を示す線図。 

2.2.12 疲れ限度比 疲れ限度を引張強さで除した商。 

2.2.13 時間強さ 指定された回数の繰返し数に耐える応力の上限値。時間強さについても,2.2.3〜2.2.12

を準用する。この場合,末尾に繰返し数を括弧を付けて記入するものとする。 

2.2.14 疲れ強さ 疲れ限度及び時間強さの総称。 

2.2.15 切欠き試験片の疲れ強さ 呼び応力で表した切欠き試験片の疲れ強さ。 

2.2.16 切欠き係数β 平滑試験片の疲れ強さを切欠き試験片の疲れ強さで除した商。 

2.2.17 切欠き感度係数η 切欠き試験片の形状,寸法及び材質による切欠き係数と形状係数との一致の程

度(切欠きに対する感度)を表す係数。 

1

1

=αβ

η

3. 試験片 

3.1 

試験片は,原則として円形断面又は板状とする。 

3.2 

試験片を切削又は研削により機械加工する場合には,試験片にむしれや著しい加工ひずみを生じな

いように,また試験片が加熱されることのないように注意しなければならない。機械加工を終えた試験片

は,切削又は研削による条こんを除去するために,順次細かい粒度の研摩布紙を使用し,最後に320番よ

り細かいものを使用して,研摩するものとする。 

3.3 

板状試験片の縁部には,適当な丸みを付けることが望ましい。 

3.4 

試験片は,仕上げた後,さびたり,傷つけたりしないように,十分注意して取り扱わなければなら

ない。 

3.5 

試験片の断面寸法は,少なくとも0.5%よりよい精度で測定しなければならない。ただし,寸法が2mm

以下の場合には,0.01mmの精度で測定するものとする。 

3.6 

円形断面試験片の直径は,同一断面の互いに直交する2方向について測定し,その算術平均をその

断面の直径とする。 

3.7 

円形断面試験片が平行部を有し,かつ,その平行部が一様な応力を受ける場合は,原則として,そ

の平行部の数箇所で3.6のように直径を測定し,その最小値を試験片の直径とする。 

3.8 

板状試験片の板幅及び板厚の測定は,3.6及び3.7に準ずる。 

4. 試験機 試験機は,試験片に所要の荷重をできるだけ速やかに加えることのできるものであって,加

えた荷重が安定なものでなければならない。試験機は,試験片が破断するまでの繰返し数が求められるよ

うな装置を備えなければならない。また,試験機は,停電その他の理由により試験機が停止した場合に自

動的に再起動することがないように,再起動防止のための機構を備えなければならない。 

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5. 試験方法 

5.1 

試験片は,偏心を避け,かつ,試験中緩むことのないよう強固に,試験機に取り付けなければなら

ない。ただし,取付けに際し,試験片の試験部分に大きな応力を与えないように,また,工具などにより

傷つけないように注意しなければならない。 

5.2 

試験を開始するときは,衝撃なく,かつ,速やかに所定の荷重になるようにする。 

5.3 

試験中,荷重はなるべく一定になるように調整するものとする。この際,調整中の応力が,所定の

最大応力・最小応力間の範囲を超えないように注意しなければならない。 

5.4 

S−N線図を求めるため,多くの応力段階において試験を行う場合は,相隣る二つの応力の比がS−

N線図の傾斜部分では1.05〜1.5,また,疲れ限度付近では1.02〜1.05となるように,等間隔の応力段階を

それぞれ選ぶことが望ましい。また,6.11.2の方法によって時間強さを求めるため,時間強さ付近のいく

つかの応力段階で試験を行う場合は,相隣る二つの応力の比が1.02〜1.05となるように,等間隔の応力段

階を選ぶことが望ましい。 

5.5 

一連の試験は,同一の繰返し速度で行うことが望ましい。 

5.6 

試験は,原則として,同一試験片について,開始から終了まで休止することなく行うものとする。

試験を途中で休止した場合は,休止までの繰返し数及び休止時間を記録しておくものとする。 

5.7 

特に指定された場合を除き,繰返し数107まで試験して破壊しなかった場合には,試験を打切ること

ができる。 

5.8 

破壊しなかった試験片は,再使用してはならない。 

6. 試験結果の取扱い 

6.1 

呼び応力は,最大の応力を生ずる断面について計算された値を用いる。 

6.2 

応力に疑義を生じやすい場合には,算出方法を明示しておかなければならない。 

6.3 

応力の単位はkgf/mm2又はN/mm2とし,応力値は,JIS Z 8401(数値の丸め方)によって,原則とし

て有効数字3けたに丸める。 

6.4 

繰返し数は,原則として,試験片への負荷が所定の試験荷重に達したときから数え始める。 

6.5 

破壊までの繰返し数には,原則として,破断までの繰返し数をとる。 

6.6 

6.5以外の場合には,破壊までの繰返し数の定め方を,試験結果の報告に付記しておかなければなら

ない。 

6.7 

試験結果の繰返し数は,例えば2.34×106のように,10nの倍数で表し,有効数字3けたに丸める。 

6.8 

S−N線図は,縦軸に応力振幅,応力の範囲又は最大応力を,横軸に繰返し数をとって描く。横軸の

目盛は対数目盛とし,縦軸の目盛は対数目盛又は等間隔目盛とする。 

6.9 

S−N線図において,破壊しなかった試験片に対する試験結果を表す点には,右向きの矢印を付ける

(図7)。 

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図7 S−N線図の一例 

備考 この規格の中で{ }を付けて示してある単位及び数値は,国際単位系 (SI) によるものであ

って,参考として併記したものである。なお,1N/mm2=1MPaである。 

6.10 時間強さを求める場合の繰返し数は,原則として,次のいずれかに指定する。 

104,2×104,5×104,105,2×105,5×105,106,2×106,5×106,107,2×107 

6.11 時間強さの決定は,次の二つの方法のいずれかによる。 

(1) S−N曲線により時間強さを決定する方法 S−N曲線を,試験結果を表す各点のほぼ中央に引き,指

定された繰返し数に対応する応力をS−N曲線上に求め,時間強さとする。ただし,S−N曲線は,外

そうによって引いてはならない。この時間強さには,Aの記号を付けて,例えば,σ (A105) =

28.0kgf/mm2 {274.6N/mm2} のように示す。また,使用したS−N線図は,試験結果の報告に明示しな

ければならない。 

(2) S−N曲線によらず時間強さを決定する方法 破壊までの繰返し数が指定の繰返し数付近となるよう

ないくつかの応力段階(5.4参照)で,各応力段階ごとに2個以上の試験片を試験した結果から,次の

いずれかによる応力を時間強さとする。 

(a) 応力段階ごとの試験片の半数以上が指定された繰返し数で未破壊であった応力段階のうち,最大の

応力。ただし,それより低い応力段階で,指定の繰返し数で未破壊の試験片が過半数でなければな

らない。 

(b) (a)で,時間強さとして求められる応力段階での試験片が,指定の繰り返し数ですべて未破壊であっ

た場合は,その応力段階とその1段階上の応力段階との平均の応力。ただし,それより低い応力段

階では,指定の繰返し数までに破壊した試験片があってはならない。 

なお,必要な場合には,当事者間の協議により,応力段階ごとの試験片の個数を決め,統計的処理によ

って時間強さを求めるものとする。この方法による時間強さには,Bの記号を付けて例えばσ (B105) =

28.0kgf/mm2 {274.6N/mm2} のように示す。また,この方法により時間強さを求めた場合には,試験した応

力段階の間隔を,試験結果の報告に付記することが望ましい。 

6.12 S−N曲線が水平となる場合には,水平線の表す応力を疲れ限度とする。ただし,水平線の表す応力

は,5.4に示す応力段階ごとに2個以上の試験片を試験した結果から,次のいずれかによって求めた応力と

する。 

(1) 応力段階ごとの試験片の半数以上が未破壊であった応力段階のうち,最大の応力。ただし,それより

低い応力段階で,未破壊の試験片が過半数でなければならない。 

(2) (1)で,水平線を表す応力として求められる応力段階での試験片が,すべて未破壊であった場合は,そ

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

の応力段階とその1段階上の応力段階との平均の応力。ただし,それより低い応力段階では,破壊し

た試験片があってはならない。 

なお,必要な場合には,当事者間の協議により,応力段階ごとの試験片の個数を決め,統計的処理によ

って疲れ限度を求めるものとする。 

6.13 疲れ強さが指定された値以上であることを保証すればよい場合には,その指定された繰返し応力で3

個の試験片を試験し,いずれの試験片も所定の繰返し数で未破壊であることを示せばよい。 

6.14 疲れ限度線図又は時間強さ線図は,原則として,縦軸に応力振幅を,横軸に平均応力をとって表す

(図8)か,又は縦軸に最大応力を,横軸に最小応力をとって表す(図9)。 

図8 疲れ限度線図及び時間強さ線図の一例 

図9 疲れ限度線図の一例 

7. 試験結果の報告 試験結果の報告には,次の事項について詳細な記録を付記することが望ましい。 

(1) 材料の製造業者名 

(2) 材料の種類,名称,溶解番号及び履歴 

(3) 化学成分 

(4) 素材からの試験片採取条件 

(5) 熱処理条件 

(6) 引張強さ,降伏点又は耐力,伸び及び絞り 

(7) 真破断力,硬さ,衝撃値などの機械的性質 

(8) 試験片の形状,寸法及び仕上げ条件 

(9) 試験機の名称,形式及びひょう量 

(10) 応力の種類,繰返し速度などの試験条件 

(11) 温度,湿度などの試験環境条件 

(12) 試験年月日,試験場所及び試験者名 

(13) 試験結果の一覧表 

(14) S−N線図,疲れ限度又は時間強さ 

(15) 疲れ限度線図又は時間強さ線図 

(16) その他 

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鉄鋼部会 疲れ試験方法専門委員会 構成表(昭和49年5月1日制定のとき) 

氏名 

所属 

(委員会長) 

川 田 雄 一 

都立工科短期大学 

榎 本 信 助 

成蹊大学工学部 

遠 藤 吉 郎 

京都大学工学部 

中 沢   一 

東京工業大学 

市 橋 利 明 

工業技術院標準部 

西 島   敏 

科学技術庁金属材料技術研究所 

宮 尾 公 美 

工業技術院計量研究所 

吉 田 道 一 

社団法人日本鉄鋼協会 

福 原 章 男 

新日本製鉄株式会社生産管理部 

志 熊 平治郎 

日本発条株式会社 

竹 内 勝 治 

住友軽金属株式会社 

中 田 米 蔵 

株式会社森試験機製作所 

西 岡 邦 夫 

住友金属工業株式会社中央研究所 

福 井 彰 一 

大同製鋼株式会社中央研究所 

松 井 暲 吉 

株式会社東京衡機製造所 

吉 武 進 也 

日本冶金工業株式会社技術本部 

飯 田 宗四郎 

科学技術庁航究宇宙技術研究所 

植 田 晴 夫 

運輸省船舶技術研究所 

上 田 輝 之 

財団法人日本海事協会 

多 田 美 朝 

社団法人溶接協会 

大内田   久 

株式会社日立製作所日立研究所 

岸 本 秀 弘 

トヨタ自動車工業株式会社第2技術部 

雑 賀 喜 規 

石川島播磨重工業株式会社技術研究所 

(事務局) 

吉 枝 正 明 

工業技術院標準部材料規格課 

橋 本 繁 晴 

工業技術院標準部材料規格課 

(事務局) 

竹 森 文 夫 

工業技術院標準部材料規格課(昭和53年7月1日改正のとき) 

土 居 修 身 

工業技術院標準部材料規格課(昭和53年7月1日改正のとき)