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T 0303 : 2000  

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,財団法人日本規格協会 (JSA) から工業標準

原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大

臣及び厚生大臣が制定した日本工業規格である。 

JIS T 0303には,次に示す附属書がある。 

附属書(参考) ピンオンディスク方式による摩耗試験方法 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

T 0303 : 2000 

人工関節用材料の 

ピンオンディスク法による 

摩耗試験方法 

Testing method for wear resistance of materials for artificial joints  

by pin-on-disk method  

1. 適用範囲 この規格は,関節シミュレーター試験の前段階において試験片レベルでの材料選択に必要

となる耐摩耗性を評価する試験方法について規定する。 

2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す

る。これらの引用規格は,その最新版を適用する。 

JIS B 0601 表面粗さ−定義及び表示 

JIS G 4303 ステンレス鋼棒 

JIS K 0557 用水・排水の試験に用いる水 

JIS K 8101 エタノール (99.5) (試薬) 

JIS Z 8807 固体比重測定方法 

3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次による。 

a) 摩耗 固体,粉体などとの摩擦による機械的作用などによって,材料がその表面から逐次離脱してい

く現象。 

b) 摩耗試験 所定の試験方法によって試験片を摩擦させ,その耐摩耗性を評価する試験。 

c) ピンオンディスク法 摩耗試験方法の一つで,円板試験片にピン試験片を一定荷重で押し付けてしゅ

う(摺)動させる試験方法。 

d) 摩擦面圧力 試験片の摩擦面に摩擦力を発生させるために作用させた押し付け荷重を,ピン試験片の

摩擦面積で除して算出する単位面積当たりの荷重。 

e) 摩耗量 摩耗試験前と試験後との試験片の質量差。 

f) 

摩耗体積 試験片の摩耗量を試験片の密度で除して算出した体積。 

g) 比摩耗量 単位荷重,単位しゅう動距離当たりの摩耗体積。 

h) 標準試験片 摩耗試験成績の比較の指標になる試験成績を得るのに用いるもので,指定する二つの材

料からなる。摩耗試験条件は,試験対照材と同一とする。

T 0303 : 2000  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

4. 試験装置 

4.1 

摩耗試験機 試験機は,試験片を保持・固定する機構,試験片に面圧を付加する荷重機構,試験片

の摩擦面をしゅう動させる駆動装置,潤滑水槽,潤滑液温度制御装置及びその周辺装置からなる。 

a) 荷重機構は,所定の摩擦面圧力を付加でき,保持できるもの。 

b) 駆動装置は,所定のしゅう動速度を保持できるもの。 

c) 潤滑液温度制御装置は,潤滑液の温度を所定の範囲に保持できるもの。 

4.2 

測定器具 

a) はかり 0.1mg以上の精度で測定できるもの。必要ならば10μg程度の精度のものを用いる。ただし,

この場合には温度条件を一定にする必要がある。 

5. 試験片 

5.1 

試験片 試験片は,相互にしゅう動して試験する2個の試験片からなり,評価の対象とする人工関

節などの摩擦面と同一の材料の組み合わせとする。また,材料の製造過程は,実際に使用されるものとで

きるだけ同じ過程によるものとし,表面粗さも同一レベルとする。試験片の形状及び寸法は,試験機の仕

様に応じて決める。 

5.2 

標準試験片 人工関節用標準試験片は,超高分子量ポリエチレン(ASTM F648準拠)とJIS G 4303

に規定するステンレス鋼SUS316Lの組み合わせとする。摩擦面の表面粗さは,JIS B 0601に規定する中心

線平均粗さ (Ra) で表し,超高分子量ポリエチレン試験片では,Ra=1μm以下,ステンレス鋼試験片では,

Ra=0.05μm以下とする。 

6. 試験方法 

6.1 

試験片密度の算出 JIS Z 8807に規定する固体比重測定方法による。又はこれと同等以上の精度を

もつ密度測定方法及び算定法を用いてもよい。 

6.2 

試験片の洗浄・乾燥 試験片の質量を測定する前には,次の手順によって試験片を洗浄,乾燥する。 

a) JIS K 0557に規定するA3の水を用いて超音波洗浄を5分間以上行う。ただし,血清を使用する場合

には,界面活性剤を用いて同様に超音波洗浄をする必要がある。 

b) JIS K 8101に規定するエタノール (99.5) を用いて超音波洗浄を約5分間行い,脱水する。 

c) 含水量及び温度を外気と平衡に保つため,ひょう量環境下(はかりを置いている室内)において,摩

耗試験前後で同程度の乾燥を行う。 

6.3 

試験前の質量測定 摩耗試験の前に,はかりで試験片の質量を測定する。 

6.4 

摩耗試験の条件 使用環境に適した条件とし,一方向に摩擦させる場合(一方向滑り試験)では,

次の条件によって行うが,しゅう動方式を,8の字状などの多方向に変化させて行った場合(多方向滑り

試験)でもこれに準じて行ってよい。 

a) 摩擦面圧力 2.5MPa以上とし,荷重はこの摩擦面圧力を保持するように負荷し,スクイズ流体膜の形

成を防ぐため,荷重を変動させないようにする。 

b) しゅう動速度 しゅう動速度は,約20mm/sとする。 

c) しゅう動距離 しゅう動距離は,約108mmとする。 

d) 潤滑液 潤滑液は,生理的食塩水,りん酸緩衝生理的塩類溶液,30vol%程度の血清を含んだ水溶液な

どを用いる。特に,血清を含む場合には,一連の実験をとおして同一ロットのものを使用する。潤滑

T 0303 : 2000  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

液の温度は,37±2℃とし,潤滑液は試験片の摩擦面が十分に浸される液面を保持する。 

備考 摩擦抵抗を測定できる場合には,摩耗試験の間に摩擦抵抗を測定してもよい。 

e) 試験条件が上記と異なる場合は,報告にその旨を付記する。 

6.5 

試験後の質量測定 しゅう動距離2×106mmの時点で,試験片の質量を測定する。この試験片を再

び用い,試験を続行し,試験終了時点で試験片の質量を測定する。測定は,6.2と同様な処理を行った後に,

はかりを用いて行う。ただし,試験片観察のために中途で停止した場合には,試験を再開するときに,接

触状態が異ならないように注意する。 

6.6 

摩耗試験回数 同一の試験条件で少なくとも3回の摩耗試験を行う。標準試験片についても同様と

する。 

7. 試験結果の表し方 

7.1 

試験片の比摩耗量 比摩耗量は,次の式によって算出する。 

なお,しゅう動距離2×106mmのときの試験片の質量と試験終了(しゅう動距離約108mm)後の試験片

の質量との差(質量減少量)が摩耗量である。 

w= (W1−W2) /P・L・ρ 

ここに, 

w: 試験片の比摩耗量 (mm2/N)  

 (mm3/N・mで表記してもよい。1 mm2/N=103 mm3/N・m) 

W1: しゅう動距離2×106mmのときの質量 (g)  

W2: 試験終了(しゅう動距離約108mm)のときの質量 (g)  

P: 荷重=p・S (N)  

p: 摩擦面圧力 (MPa)  

S: 摩擦面の面積 (mm2)  

L: しゅう動距離 (mm) =全しゅう動距離 (mm) −2×106mm 

p: 試験片の密度 (g/mm3)  

ただし,質量減少量が負 (W1<W2) の場合,比摩耗量はゼロとみなす。 

8. 試験報告 摩耗試験の結果は,次の項目について報告する。ただし,d)〜f)については,試験片及

び標準試験片に対して個々の試験ごとに組み合わせる二つの試験片について報告する。 

a) 組み合わせる二つの試験片の材質 

b) 駆動方法,荷重方法,しゅう動距離検出方法,潤滑液温度制御方法などの摩耗試験機の形式及び仕様 

c) 荷重,摩擦面圧力,しゅう動速度,潤滑液の組成,潤滑液温度範囲などの試験条件 

d) 試験片の試験前の寸法,密度,質量,表面仕上げ方法及び表面粗さ 

e) 試験片のしゅう動距離2×106mm及び試験終了(しゅう動距離約108mm)後の質量,摩耗量(質量減

少量),摩耗体積,比摩耗量 

なお,同一の試験条件での代表値が必要であれば,比摩耗量については,それぞれの算術平均値を

用いる。 

f) 

試験状況及び試験後の試験片についての特記事項 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書(参考) ピンオンディスク方式による摩耗試験方法 

この附属書(参考)は,本体に関する事柄を補足するもので,規定の一部ではない。 

次にピンオンディスク方式の例を示すが,装置,試験片の形状などについて,この例に従う必要はない。 

a) 試験片 掘り起こしによる摩耗を防ぐために,ピンの側に軟らかい材質を用いる。例えば,ピンの直

径は10mm,長さは40mmとし,固定用のつかみ具の下端から摩擦表面までの距離は,10mmとする。

この距離を大きくするとピンの折損が起きる。また,短過ぎると摩耗した際に,つかみ具が相手表面

に接触する危険がある。 

例えば,ディスクの直径は,60mm,厚さは10mm程度とする。ディスクが厚いと,質量を測定す

る際,精度が低下する。一方,薄過ぎると破損する。 

b) 装置 ピンとディスクの試験片を,附属書1図1のように配置し,ディスク側だけ回転させる。附属

書1図2のようにピンの側から空気シリンダ又は分銅などによって荷重を加え,2本の丸棒を介して,

ディスクに回転を与える。丸棒及び周囲の潤滑水槽には,ポリアセタールなどを用いることによって,

酸化及びイオンの溶け出しの影響を防ぐことができる。 

ピンの摩擦部分の中心をディスクの回転中心から20mmとし,しゅう動距離は,中心線上のしゅう

動距離で代表する。 

外界からの粉じんの混入を避けるため,ビニルシートなどで試験部分をすべて覆う。また,試験部

分の直上にある試験片の固定部分から発生する摩耗粉を防ぐために,小さな保護膜が取り付けられて

いる。 

さらに,潤滑液の濃度を一定に保つように,蒸発した水分と同量の水(JIS K 0557に規定するA3

の水)を潤滑水槽に適宜注入する。 

附属書図1 試験片形状の一例 

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T 0303 : 2000  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書図2 試験部分の模式図の一例 

インプラント材料の試験方法関係JIS原案作成委員会 構成表 

氏名 

所属 

(委員長) 

堤   定 美 

京都大学再生医科学研究所 

(委員) 

赤 松 功 也 

山梨医科大学整形外科 

桜 井 靖 久 

東京女子医科大学医用工学研究施設 

笹 田   直 

千葉工業大学工学部 

佐 藤 温 重 

昭和大学歯学部 

浜 中 人 士 

東京医科歯科大学生体材料工学研究所 

石 丸   裕  住友化学工業株式会社生産技術センター 

大 森 健 一 

小林製薬株式会社小林メディカル事業部 

佐々木 佳 男 

株式会社神戸製鋼所電子・情報事業本部 

高 橋   孝 

社団法人日本ファインセラミックス協会 

服 部 昌 晃 

日本特殊陶業株式会社総合研究所 

平 野 昌 弘 

三菱マテリアル株式会社総合研究所 

柚 木 博 行 

京セラ株式会社バイオセラム事業部 

ロイ 堀 義和 

ブリストル・マイヤーズスクイブ株式会社ジンマー事業部 

中 村 晃 忠 

国立医薬品食品衛生研究所 

川 原   章 

厚生省医薬安全局 

立 石 哲 也 

通商産業省工業技術院産業技術融合領域研究所 

宮 崎 正 浩 

通商産業省工業技術院標準部 

茂 木 保 一 

通商産業省工業技術院工業標準センター 

山 本 洋二郎 

通商産業省製品評価技術センター 

○ 岡 崎 義 光 

通商産業省工業技術院機械技術研究所 

西 村 恵美子 

通商産業省製品評価技術センター 

(事務局) 

橋 本   進 

財団法人日本規格協会技術部 

木 村   茂 

財団法人日本規格協会技術部 

増 森 かおる 

財団法人日本規格協会技術部 

○は,幹事を示す。  

T 0303 : 2000  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

JIS原案作成WG3(人工関節用材料のピンオンディスク法による磨耗試験方法)委員会 構成表 

氏名 

所属 

(委員長) 

笹 田   直 

千葉工業大学工学部 

(委員) 

池 内   健 

京都大学再生医科学研究所 

馬 渕 清 資 

北里大学医療衛生学部 

村 上 輝 夫 

九州大学工学部 

大 西 啓 靖 

国立大阪南病院 

大 森 健 一 

小林製薬株式会社小林メディカル事業部 

佐々木 佳 男 

株式会社神戸製鋼所電子・情報事業本部 

高 橋   孝 

社団法人日本ファインセラミックス協会 

服 部 昌 晃 

日本特殊陶業株式会社総合研究所 

柚 木 博 行 

京セラ株式会社バイオセラム事業部 

ロイ 堀 義和 

ブリストル・マイヤーズスクイブ株式会社ジンマー事業部 

立 石 哲 也 

通商産業省工業技術院産業技術融合領域研究所 

○ 岡 崎 義 光 

通商産業省工業技術院機械技術研究所 

宗 像 保 男 

通商産業省工業技術院標準部 

(事務局) 

木 村   茂 

財団法人日本規格協会技術部 

増 森 かおる 

財団法人日本規格協会技術部 

備考 ○は,幹事を示す。