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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

R 1627-1996 

マイクロ波用ファインセラミックス 

の誘電特性の試験方法 

Testing method for dielectric properties 

of fine ceramics at microwave frequency 

1. 適用範囲 この規格は,主にマイクロ波フィルタ及び発振器に用いる低損失誘電体共振器用ファイン

セラミックス材料の,マイクロ波帯における誘電特性の試験方法について規定する。 

備考 この規格の引用規格を,次に示す。 

JIS B 0601 表面粗さ−定義及び表示 

JIS B 7502 マイクロメータ 

JIS R 1600 ファインセラミックス関連用語 

2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS R 1600によるほか,次のとおりとする。 

(1) 複素比誘電率εr (Complex relative permittivity)  ベクトル表示による交流電界の強さE (V/m) と交流

電束密度D (C/m) の複素比を,真空の誘電率ε0 (8.854×10−12F/m) で除した値。 

E

D

r

ε=

 ················································································· (1) 

複素比誘電率の実数成分をε′(比誘電率という。),虚数成分をε″とすると,εrは,次の式で表さ

れる。 

εr=ε′−jε″ ············································································ (2) 

(2) 誘電正接tanδ (Loss factor)  誘電体損失角δの正接。複素比誘電率の実数成分・虚数成分を使うと,

tanδは,次の式で表される。 

ε

ε

δ

′′

=

tan

 ················································································ (3) 

(3) 誘電率の温度係数 TCε (Temperature coefficien of permittivity) 

誘電率の温度による変化率を,対応する温度の変化分で除した値。 

6

10

)

(

×

=

ref

ref

ref

T

T

T

TC

ε

ε

ε

ε

 (ppm/K) ················································ (4) 

ここに, 

εT: 温度Tにおける誘電率 (F/m) 

εref: 基準温度Trefにおける誘電率 (F/m) 

(4) 共振周波数の温度係数 TCF (Temperature coeficient of reasonance frequency)  共振周波数の温度に

よる変化率を,対応する温度の変化分で除した値。 

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6

10

)

(

×

=

ref

ref

ref

T

T

T

f

f

f

TCF

 (ppm/K) ················································ (5) 

ここに, 

fT: 温度Tにおける共振周波数 (kHz) 

fref: 基準温度Trefにおける共振周波数, (kHz) 

備考 TCFは,誘電体材料に固有の値であり,誘電率の温度係数TCεと近似的に次の式で表される。 

α

ε−

=

TC

TCF

2

1

 ····································································· (6) 

ここに, 

α: 誘電体の線膨張係数 

(5) 表面抵抗Rs (Surface resistance)  導体の表面から内部へ流れ込む電磁場の散逸を表す等価抵抗。導体

板の導電率をσとすると,Rsは次の式で表される。 

σ

μ

π0f

Rs=

 (Ω) ····································································· (7) 

ここに, 

μ: 導体板の透磁率 (H/m) 

(6) 比導電率σr (Relative conductivity) IEC 28に規定する国際標準軟銅の20℃における導電率σ0 (=5.8000

×107S/m) に対する導体板の導電率σの比。 

0

σ

σ

σ=

r

 ·················································································· (8) 

3. 試験項目 試験項目は,比誘電率ε′,誘電正接tanδ,共振周波数の温度係数TCF及びtanδの温度依

存性とする。 

なお,この試験が適用できる測定周波数,ε′及びtanδの範囲は,次のとおりである。 

また,特に指定がない限り,TCF及びtanδの温度依存性の測定温度範囲は,−40〜+85℃とする。 

測定周波数 : 2〜20GHz 

ε′ 

: 5〜500 

tanδ 

: 10−5〜10−2 

4. 測定原理 この方法では,誘電体円柱試料の両端面を2枚の平行導体板で短絡して,TE011*モードの

誘電体共振器を構成する。誘電体共振器の共振周波数 (f0) と無負荷Q (Qu) は,試料のε′,tanδ,寸法及

び導体板の比導電率によって決定される。したがって,共振周波数 (f0) と無負荷Q (Qu) を測定して,ε′

とtanδを求める(図1参照)。 

また,TE011モードの−40〜+85℃におけるf0とQuを測定し,TCF及びtanδの温度依存性を求める。 

注* 導波路の軸に垂直な平面上に電界があるモードを横電界姿態 (Transverse Electric Mode) といい,

TEモードと略称する。これについているサフィックスは,左から順に円筒座標の軸回り方向,

径方向,軸方向の電界強度の節又は腹の数を示している。 

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図1 平行導体板によって両端が短絡された誘電体円柱試料 

5. 試験環境 特に指定がない限り,試験環境の温度は25±2℃とし,相対湿度は (50±10) %とする。 

6. 装置及びジグ 

6.1 

装置 装置の構成例を図2に示す。高安定な標準信号発生器(シンセサイズ制御された掃引発振器

が望ましい)から出たRF信号は,電力分配器で2分割され,その方は基準信号としてネットワーク・ア

ナライザへ戻り,他方はテスト信号として試料を装着したジグへ到達する。試料を透過したテスト信号は,

基準信号との振幅比として,縦軸に透過減衰表,横軸に周波数の形でディスプレイ上に表示される。この

測定においては,透過電力の振幅情報だけが必要であり,位相情報は不要である。 

TCF及びtanδの温度依存性を測定する場合には,測定温度において±1℃の制御ができる恒温槽を使用

する。 

図2 試験装置 

6.2 

ジグ 

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6.2.1 

ε′とtamδの試験用ジグ ε′とtanδの試験用ジグは,2枚の導体板と2本の結合励振ケーブルで構

成する(図3参照)。2枚の導体板は,互いに平行を保ちつつ間隔を調整することが可能でなくてはならな

い。 

表1に導体板の寸法と材質を示す。導体板は高い導電率をもつ必要があるため,その表面粗さをJIS B 

0601に規定する0.100μmRa以下にしておく。このため,導体板は適宜研磨しながら使用する。 

結合励振ケーブルは,特性インピーダンスが50Ωで,ふっ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)で絶

縁された同軸ケーブルとし,直径が3.58mm,2.20mm,1.20mmのいずれかのものを,試料高さに応じて使

い分ける。結合励振ケーブルの先端には,直径2mm程度のループアンテナを形成し,ループ面を導体板

の面と平行に固定する。2本の結合励振ケーブルは互いに左右に移動して,間隔を調整することができる

構造にする。結合励振ケーブルと導体板を直流的に同電位にするため,ケーブルの外導体が導体板に軽く

接触する構造にする。基準レベル測定ケーブルは全透過レベルを測定するためのもので,その長さは上記

の結合励振ケーブル2本分の長さとする。 

図3 ε′とtanδの試験用ジグ 

表1 導体板の寸法及び材質 

項目 

規定 

直径 試験試料の直径の3〜4倍程度 
厚さ 3〜5mm 
材質 銀,銅又は厚み5μm以上の銀めっきを施した導体 

6.2.2 

TCF及びtanδの温度依存性の試験用ジグ TCF及びtanδの温度依存性の試験用ジグは,6.2.1の装

置の導体板をばねで抑えた構造とする。ジグの一例を図4に示す。 

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図4 TCFとtanδの温度依存性の測定用ジグ 

7. 標準試料による導体板の比導電率の測定 測定は,試験試料の測定に先立って,導体板の比導電率 (σr) 

を測定する。 

なお,数日にわたって測定する場合は,試験試料の測定に先立って毎日必ず標準試料を用いてσrの測定

を行う。 

(1) 標準試料 標準試料は,直径が等しく,一方の高さが他方の高さの整数倍(通常は3倍)に等しい一

組の誘電体円柱試料を使用する(図5参照)。これらの試料は互いにε′とtanδが等しくなくてはなら

ず,試料の端面は軸に垂直でなくてはならない。このため,通常は2個の標準試料を一つの誘電体円

柱から切り出すなどの工夫をする。 

標準試料の具体例を表2に示す。試料の材質には,tanδ及びTCFが小さい誘電体共振器材料や,2個

の試料間の特性差が小さいAl2O3単結晶が用いられる。 

図5 導体板の比導電率の測定に用いる標準試料 

表2 標準試料の寸法例と共振周波数 

材質 

ε′共振モード 

直径(mm) 高さ(mm) 

f0 (GHz) 

(Zr, Sn)TiO4 

38 

TE011 

10.0 

4.7 

7.035 

TE013 

10.0 

14.1 

7.035 

Ba(Zn, Ta)O3 

30 

TE011 

10.0 

4.7 

7.914 

TE013 

10.0 

14.1 

7.914 

Ba(Mg, Ta)O3 

24 

TE011 

10.0 

4.7 

8.844 

TE013 

10.0 

14.1 

8.844 

Al2O3単結晶 
(端面⊥C軸) 

9.4 

TE011 

10.0 

5.0 

13.554 

TE013 

10.0 

15.0 

13.554 

(2) 測定条件 

(a) 導体板の表面にきずがついたり,酸化膜が発生した場合は,測定に先立って導体板表面を化学研磨

剤などで鏡面研磨する。 

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(b) 測定中2個の標準試料は同一温度に保つ。 

(3) 測定手順 

(a) 図3の基準レベル測定ケーブルを図2の試験装置に接続し,測定する周波数範囲の透過減衰表を測

定し,基準レベル(全透過レベル)とする。 

(b) 高さが低い方の標準試料を図3の試験ジグの導体板の中央部に置く。このとき,試料と左右の結合

ループ間の距離が互いに等しくなるように調整する。 

(c) 上部導体板を静かに下げて,試料上面に接触させる。このとき,余分な圧力によって導体板の表面

が損傷を受けないように注意する。 

(d) ネットワーク・アナライザの画面上でこの共振器のTE011モードの共振ピークをみつける。試料の

外径と高さの比 (d/h) が1.8〜2.3の場合には,低周波側から数えて2番目の鋭いピークが求めるモ

ードである(図6参照)。このモードは,上部導体板を試料からゆっくりと離すと,低周波側にシフ

トすることでも確認できる。 

(e) 周波数掃引幅を狭くしてTE011モードの共振ピークだけをディスプレイ上に表示し,試料と結合ル

ープの間隔を調整して,挿入損失 (IA0) を約30dBにする(図7参照)。このときの共振周波数f01 

(kHz) ,電力半値幅△f1 (kHz) 及び挿入損失IA01 (dB) を測定する。 

(f) 高さがl倍高い方の標準試料について(c)から(e)の手順を繰り返し,TE01lモード(l=3の場合はTE013

モード)の共振周波数 (f0l) と電力半値幅△flを測定する。f0lは,図5の高さが低い標準試料のTE01l

モードの共振周波数 (f01) に一致し,かつ,上部導体板を試料からゆっくりと離すと,低周波側に

シフトする。 

(g) 標準試料のf01,△f1,IA01,△f1及びIA0lの測定は複数回(例えば,5回)行い,その平均値を算出

する。 

(h) 高さが低い方の標準試料の直径dと高さhを,JIS B 7502に規定するマイクロメータを用いて,1μm

の精度で測定する。 

図6 TE011共振モードの出力波形(試験試料:ε′=37.5,d=8.0mm,h=3.3mm) 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

図7 挿入損失 (IA0) ,共振周波数 (f0) 及び電力半値幅 (△f)  

(4) 導体板の比導電率の計算 導体板の比導電率は,次の手順で計算する。 

(4.1) 高さが低い標準試料の比誘電率と無負荷Q 高さが低い標準試料の比誘電率と無負荷Q (Qu1) は次

の手順で算出し,有効数字は6けた以上求める。 

(a) 共振波長 

01

0

f

c

=

λ

 ·················································································· (9) 

ここに, 

λ0: 共振波長 (m) 

f01: 共振周波数 (Hz) 

c: 真空中の光の速度 (c=2.9979×108m/s) 

(b) 誘電体伝送線路の伝播波長 

λg=2h ··················································································· (10) 

ここに, 

λg: 誘電体伝送線路の伝播波長 (m) 

h: 標準試料の高さ (m) 

(c) v2 

=

1

2

0

2

0

2

g

d

v

λ

λ

λ

π

 ······························································ (11) 

ここに, 

v2: 比誘電率を計算するためのパラメータ 

d: 標準試料の直径 (m) 

(d) u 式(11)によって求めたvの値を次の超越方程式に代入して,uの値を求める。 

)

(

)

(

)

(

)

(

1

0

1

0

v

K

v

K

v

u

J

u

J

u

=

 ··································································· (12) 

ここに, 

u: 比誘電率を計算するためのパラメータ 

K0 (v) :  0次の第2種変形ベッセル関数 

K1 (v) :  1次の第2種変形ベッセル関数 

J0 (u) :  0次の第1種ベッセル関数 

J1 (u) :  1次の第1種ベッセル関数 

任意のvの値に対して複数個のuの解が存在するが,求める解は,u01<u<u11の範囲に存在する。

ただし,u01とu11は,それぞれJ0 (u) =0とJ1 (u) =0を満足する1番目の解である。 

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(e) 比誘電率 

1

)

(

2

2

2

0

+

+

=

v

u

d

π

λ

ε

 ····························································· (13) 

ここに, 

ε′: 比誘電率 

(f) 試料の外部と内部に蓄えられている電界エネルギーの比 

)

(

)

(

)

(

)

(

)

(

)

(

)

(

)

(

2

0

2

1

2

1

2

0

2

1

2

1

u

J

u

J

u

J

v

K

v

K

v

K

v

K

u

J

W

×

=

 ················································ (14) 

ここに, 

W: 試料の外部と内部に蓄えられている電界エネルギーの

比(全電界エネルギーが試料内部に集中したときにW
=Oとなる) 

K2 (v) :  2次の第2種変形ベッセル関数 

J2 (u) :  2次の第1種ベッセル関数 

(g) 無負荷Q 

20

1

01

1

01

10

1

IA

u

f

f

Q

=

 ······································································ (15) 

ここに, 

Qu1: 高さが低い試料の無負荷Q 

△f1: 電力半値幅 (Hz) 

IA01: 挿入損失 

(4.2) 高さが高い標準試料の無負荷Q 高さが高い標準試料の無負荷Qは,次の式によって算出し,有効

数字6けた以上を求める。 

20

0

01

10

1

IA

i

i

ui

f

f

Q

=

 ······································································ (16) 

ここに, 

Qui: 高さが高い試料の無負荷Q 

f0i: 共振周波数 (Hz) 

△fi: 電力半値幅 (Hz) 

IA0i: 挿入損失 

(4.3) 導体板の比導電率 導体板の比導電率は,次の手順で算出し,有効数字3けたまで求める。 

(a) 導体板の表面抵抗 導体板の表面抵抗は,次の式によって算出する。 

+

+

=

ui

u

c

g

s

Q

Q

l

l

W

W

R

1

1

1

1

30

1

3

2

ε

λ

λ

π

 ······································· (17) 

ここに, 

Rs: 導体板の表面抵抗(Ω) 

(b) 導体板の比導電率 導体板の比導電率は,式(7)及び式(8)から導かれる次の式によって算出する。 

0

2

2

10

825

.0

f

Rs

r

×

=

σ

 ······························································ (18) 

なお,式(7)においてμは,導体板の透磁率で,導体板として使用する銅や銀の透磁率は,真空の透

磁率(4π×107H/m)と等しい。 

また,f0は共振周波数をGHzの単位で表した値である。 

R 1627-1996  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

8. 試験試料の測定 

8.1 

試験試料 試料は円柱形とし,その上下面を平行に,かつ,軸に垂直になるように研磨する。直径d

は,5〜20mmの範囲,高さhは, (d/h) の比が1.8〜2.3の範囲になるように選ぶ。それが困難な場合は,

0.8〜1.2の範囲に選ぶ。 

8.2 

手順 

8.2.1 

ε′及びtanδの手順 

(1) 図3の基準レベル測定ケーブルを図2の試験装置に接続し,測定する周波数範囲の透過減衰表を測定

し,基準レベル(全透過レベル)とする。 

(2) 試料を図3の試験用ジグの導体板の中央部に置き,試料と左右の結合ループ間の距離が互いに等しく

なるように調整する。導体板は7.(3)の手順でσrを求めたものとする。 

(3) 7.(3)(c)〜(e)の手順で,試料のTE011モードの共振周波数f0と電力半値幅△fを測定する。 

(4) 試料の直径dと高さhを,JIS B 7502に規定するマイクロメータを用いて,1μmの精度で測定する。 

8.2.2 

TCFの測定手順 

(1) 図4の試験用ジグに試料を固定し,TE011モードの共振ピークの挿入損失 (IA0) を約30dBに調整する。 

(2) 試験用ジグ及び試料を恒温槽に入れ,試料温度が基準温度Tref (24±3℃) に達した後,TE011モードの

共振周波frefを測定する。 

(3) 恒温槽の温度を任意温度Tに設定し,試料の温度が設定温度になるだけの十分な時間が経過した後,

温度TにおけるTE011モードの共振周波数frを測定する。 

備考 測定誤差を低減するため,恒温槽内の相対湿度を60%以下に保つ。 

また,槽内の温度ばらつきを十分小さくする。 

8.2.3 

tanδの温度依存性の手順 8.2.1と同様の手順で,所要の温度範囲における試料のf0,△f及びIA0

を測定する。Quは湿度の影響を受けやすいため,室温以下の温度における測定では,恒温槽内の相対湿度

が60%以上にならないように留意する。 

8.3 

計算 

8.3.1 

比誘電率 比誘電率は,次の手順で計算し,有効数字6けた以上を求める。 

(1) 共振波長 

0

0

f

c

=

λ

 ················································································· (19) 

ここに, 

λ0: 共振波長 (m) 

f0: 共振周波数 (Hz) 

c: 真空中の光の速度 (c=2.9979×108m/s) 

(2) 誘電体伝送線路の伝播波長 

λg=2h ··················································································· (20) 

ここに, 

λg: 誘電体伝送線路の伝播波長 (m) 

h: 試験試料の高さ (m) 

(3) v2 

=

1

2

0

2

0

2

g

d

v

λ

λ

λ

π

 ····························································· (21) 

ここに, 

v2: 比誘電率を計算するためのパラメータ 

10 

R 1627-1996  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

d: 試験試料の直径 (m) 

(4) u 式(21)によって求めたvの値を次の超越方程式に代入して,uの値を求める。 

)

(

)

(

)

(

)

(

1

0

1

0

v

K

v

K

v

u

J

u

J

u

=

 ··································································· (22) 

ここに, 

u: 比誘電率を計算するためのパラメータ 

K0 (v): 0次の第2種変形ベッセル関数 

K1 (v): 1次の第2種変形ベッセル関数 

J0 (u): 0次の第1種ベッセル関数 

J1 (u): 1次の第1種ベッセル関数 

任意のvの値に対して複数個のuの解が存在するが,求める解は,u01<u<u11の範囲に存在する。

ただし,u01とu11は,それぞれJ0 (u) =0とJ1 (u) =0を満足する1番目の解である。 

(5) 比誘電率 

1

)

(

2

2

2

0

+

+

=

v

u

d

π

λ

ε

 ····························································· (23) 

ここに, 

ε′: 比誘電率 

8.3.2 

tanδ 

(1) 試料の外部と内部に蓄えられている電界エネルギーの比 

)

(

)

(

)

(

)

(

)

(

)

(

)

(

)

(

2

0

2

1

2

1

2

0

2

1

2

1

u

J

u

J

u

J

v

K

v

K

v

K

v

K

u

J

W

×

=

 ················································ (24) 

ここに, 

W: 試料の外部と内部に蓄えられている電界エネルギーの比

(全電界エネルギーが試料内部に集中したときにW=0
となる)。 

K2 (v): 2次の第2種変形ベッセル関数 

J2 (u): 2次の第1種ベッセル関数 

(2) 無負荷Q 

20

0

0

10

1

IA

u

f

f

Q

=

 ········································································ (25) 

ここに, 

Qu: 無負荷Q 

f0: 共振周波数 (Hz) 

△f: 電力半値幅 (Hz) 

IA0: 挿入損失 

(3) tanδ 

r

u

B

Q

A

σ

δ

=

tan

 ···································································· (26) 

ここに, 

σr: 導体板の比導電率 

また,

ε′

+

=

W

A1

 ····································································· (27) 

0

0

2

3

0

30

1

σ

μ

π

ε

π

λ

λ

f

W

B

g

×

+

=

 ························································· (28) 

ここに, σ0=5.800×107S/m 
 

μ=μ0=4π×10−7H/mである。 

11 

R 1627-1996  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

8.3.3 

TCF TCFは,次の式によって算出する。 

6

10

1

×

×

=

ref

ref

T

ref

T

T

f

f

f

TCF

(ppm/K) ·············································· (29) 

ここに, 

Tref: 基準温度 

fref: Trefにおける共振周波数 

T: 測定する任意の温度 

fT: Tにおける共振周波数 

8.3.4 

tanδの温度依存性 任意の温度において測定したf0,△f及びIA0を用いて,8.3.2に示した手順で

各温度におけるtanδを計算する。 

このとき,σrには各測定温度における値を用いる必要がある。標準試料を用いて各測定温度における導

体板のσrを求めてもよいが,通常は基準温度におけるσrを求めておき,導体板に用いた金属の標準的な導

電率の温度係数を近似的に適用する。 

導体板に純銅を用いた場合には,国際標準軟銅の導電率温度依存性が次の式で与えられる。 

)

(

10

93

.3

1

)

(

3

ref

r

r

T

T

T

×

+

=

σ

σ

 (T>100K) ····································· (30) 

導体板に純銀を用いた場合は,次の導電率温度依存性を用いることができる。 

)

(

10

08

.4

1

)

(

3

ref

r

r

T

T

T

×

+

=

σ

σ

 (T>100K) ····································· (31) 

9. 記録 試験結果の記録には,次の事項を記載する。 

(1) 試験試料の記号 

(2) 試験試料の寸法 

(3) 試験条件(温度,湿度) 

(4) 電気特性 

(a) 測定周波数 

(b) 比誘電率 

(c) 誘電正接 

(d) 共振周波数の温度係数 

(e) tanδの温度依存性(ただし,必要な場合に限る。) 

12 

R 1627-1996  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

マイクロ波用ファインセラミックスの誘電特性の試験方法 

 原案作成委員会 構成表 

氏名 

所属 

(委員長) 

○ 小 林 禧 夫 

埼玉大学 

(委員) 

○ 加賀田 博 司 

松下電器産業株式会社 

○ 田 村   博 

株式会社村田製作所 

○ 三 浦 太 郎 

TDK株式会社 

○ 中 山   明 

京セラ株式会社 

○ 鵜 澤 幸 一 

住友金属鉱山株式会社 

椿   淳一郎 

名古屋大学 

山 本 英 夫 

創価大学 

西 條   豊 

株式会社堀場製作所 

竹 内   和 

株式会社島津製作所 

大 角 道 夫 

株式会社セイシン企業 

田 中 大 介 

日清製粉株式会社 

松 尾 康 史 

日本特殊陶業株式会社 

依 田 晴 行 

株式会社村田製作所 

内 藤 牧 男 

財団法人ファインセラミックセンター 

○ 平 野 正 樹 

通商産業省生活産業局ファインセラミックス室 

○ 岡 林 哲 夫 

工業技術院標準部繊維化学規格課 

○ 加 山 英 男 

財団法人日本規格協会 

○ 菅 野 隆 志 

ファインセラミックス国際標準化推進協議会 

○ 卯 木   稔 

社団法人日本ファインセラミックス協会 

(事務局) 

○ 杉 本 克 晶 

社団法人日本ファインセラミックス協会 

備考 ○印は小委員会委員を兼ねる。 

文責 原案作成小委員会