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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

R 1626-1996 

ファインセラミックス粉体の 

気体吸着BET法による比表面積の測定方法 

Measuring methods for the specific surface area of fine ceramic powders 

by gas adsorption using the BET method 

1. 適用範囲 この規格は,ファインセラミックス粉体表面への液体窒素温度における気体の単分子層吸

着量からファインセラミックス粉体の比表面積を測定する方法について規定する。 

備考 この規格の引用規格を,次に示す。 

JIS K 0114 ガスクロマトグラフ分析通則 

JIS R 1600 ファインセラミックス関連用語 

2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS R 1600によるほか,次のとおりとする。 

(1) 吸着 気体分子が粉体の粒子表面にとどまっている現象。 

(2) 物理吸着 気体分子が粉体の粒子表面に物理的相互作用によってとどまっている現象。 

(3) 化学吸着 気体分子が粉体の粒子表面に化学的相互作用によってとどまっている現象。 

(4) 吸着質 粉体に吸着される気体分子。 

(5) 吸着等温線 一定温度で,吸着平衡に到達したときの気体の圧力,又は相対圧と吸着量との関係を示

す曲線。 

(6) 単分子層吸着量 粉体の粒子表面を吸着分子が一層で完全に覆うのに必要な吸着量。 

(7) 比表面積 単位質量の粉体がもつ表面積。 

(8) 死容積 吸着量測定装置において,吸着質が吸着せずに気体として試料と共存している連続空間の容

積。 

(9) BET法 Brunauer,Emmett及びTellerの3名が提出した多分子層吸着理論から誘導されたBET式に

基づく粉体の比表面積の解析方法。 

(10) 分子断面積 吸着質が粉体表面に吸着しているとき,吸着質の分子一つが粉体表面で占有している面

積。 

(11) 平衡相対圧 吸着温度における吸着質の気体の飽和蒸気圧 (P0) に対する吸着平衡にある吸着質の気

体の圧力 (P) の比 (P/P0)。 

3. 測定の原理 ファインセラミックス粉体の清浄表面に吸着質を吸着させ,その単分子層吸着量と分子

断面積から,ファインセラミックス粉体の単位質量当たりの表面積を求める方法である。 

一定温度において,ファインセラミックス粉体表面に吸着した気体の物理吸着量と気体の平衡圧の関係

は吸着等温式で表される。BETの理論は式(1)(BET式)の吸着等温式で示され,これは式(2)のように書

R 1626-1996 

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き替えることができる。 

(

)

(

)

[

]

(

)(

)

[

]

0

0

0

/

1

1

/

1

/

P

P

C

P

P

P

P

C

V

V

m

+

=

 ··················································· (1) 

(

)=

−P

P

V

P

0

C

V

C

m

−1  

0P

P

C

Vm

+

1

············································ (2) 

 (縦軸) (こう配)(横軸)(切片) 

ここに, 

P: 吸着平衡にある吸着質の気体の圧力 (Pa) 

P0: 吸着温度における吸着質の飽和蒸気圧 (Pa) 

V: 吸着平衡圧Pにおける吸着量で,標準状態(温度0℃,圧力

101.3kPa)に換算した気体の体積 (m3) 

Vm: 単分子層吸着量で,標準状態(温度0℃,圧力101.3kPa)に換

算した気体の体積 (m3) 

C: 固体表面と吸着質との相互作用の大きさに関する定数で,次の

式で示される。 

C=e (E1−E2) /RT 

ここに, E1: 第一層の吸着熱 (kJ/mol) 
 

E2: 吸着質の測定温度における液化熱 (kJ/mol) 

R: 気体定数 (8.31×10−3kJ/mol・K) 

T: 測定温度 (K) 

式(2)が成立すると,縦軸(

)

P

P

V

P

0

と横軸

0

P

Pとの関係を表すBETプロットは,直線で示される。実測

値をBETプロットとすると,ミクロ細孔(円筒形細孔の場合直径3nm以下)がなければ,通常平衡相対

圧 (P/P0) が0.05〜0.35の範囲で直線性を示す。したがって,この領域において,吸着等温線はBET式で

表せることになる。測定には,次に示す多点法と一点法がある。 

(1) BET多点法 吸着量を,BET式が成立する平衡相対圧領域内 (0.05<P/P0<0.35) で3〜5点測定し,

それら測定値のBETプロットを作成すると直線が求められる。直線のこう配と,直線の外挿によって

求めた切片の和は式(3)で示される。 

C

V

C

V

C

V

m

m

m

+

=

1

1

1

 ·································································· (3) 

単分子層吸着量Vmは,式(3)の逆数として算出される。 

(2) BET一点法 式(2)において,C値が非常に大きい場合,例えばC>100のとき,式(4)のように簡略化

することが可能となる。 

また,式(4)は式(5)と書き替えることができる。 

(

)

P

P

V

P

0

m

V

1

=

   

0P

P

 ·························································· (4) 

(縦軸)  (こう配)(横軸) 

=

0

1PP

V

Vm

 ········································································· (5) 

式(4)のBETプロットは原点を通る直線となるので,単分子層吸着量Vmは,直線のこう配の逆数と

して求められる。すなわち単分子層吸着量Vmは,ある平衡相対圧 (P/P0) における吸着量の一測定か

ら,式(5)を用いて算出される。 

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4. 測定装置 ファインセラミックス粉体の比表面積を測定する装置は,容量法装置,流動法装置のいず

れかとする。 

(1) 容量法装置 容量法による気体吸着量測定装置の概略を付図1に示す。 

(a) 試料容器 試料容器は,ガラス製で,加熱,減圧・排気などの処理が行え,また,試料が大気中の

水分を再び物理吸着することなく,その質量を0.1mg又は試料量の有効数字4けたまで正確にひょ

う量できるような構造が望ましい。 

なお,試料容器の容積は,試料量や試料表面積の大小に応じ,測定誤差が小さくなるようにでき

るだけ小さいものを使用する。 

(b) ガスビュレット 吸着質の導入量を簡便に制御するために装置内にガスビュレットを取り付ける場

合がある。ビュレットは表面積の大小によって,吸着質気体の導入量や死容積の大きさを適宜変え

られるような構造のものとする。 

(c) 死容積 死容積は,試料を採取した後,吸着質が,試料容器,圧力計,ガスビュレット及びそれら

を連続して結ぶ系で占める全空間容積を指し,吸着量の測定精度を上げるために装置内の可能な箇

所において小さくする。 

(d) 真空ポンプ 真空ポンプは,試料の加熱によって物理吸着している水分や不純物質を脱離除去し,

粉体表面を清浄にするため,0.1Pa以下の減圧が可能なポンプとする。 

(e) 圧力計 圧力計は,少なくとも有効数字3けたまで読み取れるものとする。 

(f) 試料容器冷却装置 試料容器冷却装置は,比表面積の測定中試料容器を液体窒素温度に冷却保持で

き,また,液体窒素液面の高さを制御しやすい構造のものとする。 

(g) 飽和蒸気圧セル 飽和蒸気圧セルは,吸着測定温度において,吸着質の気体と液体が共存する状態

での飽和蒸気圧を測定するので,耐圧性容器であることが望ましい。 

(h) ガス流量調節器 ガス流量調節器は,吸着質の急激な導入や排気によって圧力計の破損,試料粉の

飛散を防ぐことが可能な構造のものとする。 

(2) 流動法装置 流動法による気体吸着量測定装置の概略を付図2に示す。 

(a) 試料容器 試料容器は,ガラス製で,本体装置との着脱が簡単に行え,試料充てん(填)時でもヘ

リウムなどの不活性気体の洗浄システムによって,試料の前処理が容易にできる構造のものでなけ

ればならない。 

また,試料が大気中の水分を再び吸着することなく,質量を0.1mg又は試料量の有効数字4けた

まで正確にひょう量できるような構造が望ましい。 

(b) ガス濃度検出器 ガス濃度検出器は,0.1容量%の濃度変化を検知できるものとする。 

(c) 試料容器冷却装置 試料容器冷却装置は,測定中試料を液体窒素温度に保持できる構造のものとす

る。 

(d) ガス混合器 ガス混合器を使用する場合,混合器は,吸着質気体の混合比率を5〜35容量%の範囲

で容易に混合できる構造のものとする。 

(e) ガス流量調節器 ガス流量調節器は,JIS K 0114によって規定するガス流量調節器に準じるもので,

混合ガスの流量を0.25〜0.33cm3/sの範囲に制御でき,また,測定中の流量変動範囲は,±1容量%

以内のものとする。 

background image

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5. 吸着質の種類及びその選定 純度99.9%以上の窒素を吸着質として用いる。粉体の比表面積が小さい

とき,アルゴン,クリプトンを吸着質として用いた方がよい。液体窒素温度下における吸着において,吸

着質の分子断面積,及び測定可能な標準的比表面積の範囲を表1に示す。 

表1 吸着質の種類及びその選定と測定可能な粉体の比表面積 

吸着質 

吸着質の分子断面積σ (10−20m2) 粉体の比表面積Sw (m2/g) 

窒素 (N2) 

16.2 

0.5以上 

アルゴン (Ar) 

13.8* 

0.15〜1 

クリプトン (Kr) 

22.0* 

0.02〜1 

注* 

アルゴン,クリプトンについては,表中の分子断面積値と異なった値を
用いてもよいが,根拠を明示する。 

6. 測定方法 

6.1 

容量法 容量法には,試料系内に導入した吸着質気体の容積を一定に保ち,吸着前後の気体の圧力

変化を測定することによって吸着量を求める定容法と,導入した吸着質気体を一定圧力に保ち,吸着前後

の気体の容積変化を測定することによって吸着量を算出する定圧法とがある。 

(1) 試料の採取量 試料は,吸着している水分や不純物を前処理によって除去した後,試料の表面積が表

2に示す範囲になるように採取し,試料容器ごと0.1mg又は試料量の有効数字4けたまで質量を測定

する。 

表2 吸着質の種類,及び測定に必要な表面積の範囲 

吸着質 

採取試料の表面積 (m2) 

窒素 (N2) 

5 〜100 

アルゴン (Ar) 

1.5 〜 30 

クリプトン (Kr) 

0.2 〜 5 

(2) 前処理 前処理は,吸着測定に先立って試料表面を清浄にするために行うが,物理吸着した不純物,

化学吸着した水,酸素,炭酸ガスを脱離させる条件,すなわち前処理温度,処理時間,雰囲気などは,

試料によって異なるので,あらかじめ十分な調査を行い,試料に最適な前処理条件を決定する必要が

ある。 

(3) 測定操作 付図1に基づいた測定操作例を,次に示す。 

(3.1) 装置の部分容積の測定 吸着装置の部分容積Vpの測定は,次の手順によって行う。 

(a) バルブC1,C2,C6,C7,C9,C10を開け,他のバルブを閉めた状態で,系内の圧力が0.1Pa以下

になるまで真空ポンプで排気する。 

(b) バルブC1,C2,C7,C10を閉め,次にC3を開け,Heガスを部分容積Vp内に取り込んだ後,C3

を閉める。取り込んだHeガスの圧力Pを圧力計で測定する。 

(c) ガスビュレット内の水銀面を上昇させ,部分容積内のHeガスを圧縮したときの圧力変化からVpを

算出する。例えば,圧縮後のHeガスの圧力を2Pにしたとき,水銀面の上昇による気体体積の減少

量は,(b)でHeガスを取り込んだときの部分容積Vpの半分に等しいことから算出する。 

(3.2) 見掛け死容積の測定 見掛け死容積Vaの測定は,次の手順によって行う。 

(a) 表1に従って試料を試料容器に採取する。 

(b) (2)によって試料の前処理を行う。 

(c) バルブC1,C2,C6,C7,C8,C9,C10を開け,他のバルブは閉めた状態で,系内の圧力が0.1Pa

以下になるまで真空ポンプで排気する。 

R 1626-1996 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

(d) バルブC1,C2,C7,C8,C10を閉め,次にC3を開け,Heガスを部分容積Vp内に取り込んだ後,

C3を閉める。取り込んだHeガスの圧力Pを圧力計で測定する。 

(e) バルブC8を開け,液体窒素温度の試料系内にHeガスを導入する。導入後のHeガスの圧力をPHe

とすると,見掛け死容積Va(Vp+C7以下の見掛け容積)は

He

p

P

PVで算出できる。 

備考 (3.1),(3.2)の操作は,吸着測定の後に同一の測定条件で行ってもよい。 

(3.3) 定容法 

(a) バルブCl,C2,C6,C7,C8,C9,C10を開け,他のバルブは閉めた状態で,系内の圧力が0.1Pa

以下になるまで真空ポンプで排気する。 

(b) バルブC1,C2,C7,C8,C10を閉め,次にC4を開け,吸着質を部分容積Vp内に取り込んだ後,

C4を閉める。そのときの圧力Pを圧力計で測定する。この圧力P,部分容積Vp,室温Tを用いて

気体の状態方程式から標準状態 (0℃,101.3kPa) に換算した吸着質の取り込み量を算出する。吸着

質の取り込み量の調節は,ガスビュレットの容積を変動させることによって行う。 

(c) C8を開け,吸着質を試料容器内に導入し,液体窒素温度の試料に吸着させる。 

(d) 吸着平衡になったときの圧力(平衡圧)を圧力計で測定する。 

(e) C8を閉めた後,(b),(c),(d)の操作を繰り返し行う。 

(f) 吸着質の飽和蒸気圧P0の測定は,次の操作によって行う。バルブC8を閉じ,C7を開け,吸着質を

その飽和蒸気圧力近くになるまで系内に取り込む。ガスビュレットの水銀面を上昇させ,吸着質を

圧縮していったとき,圧力が一定になればその圧力が飽和蒸気圧P0である。 

(g) 試料の採取量の精ひょう(秤)を行う。 

(h) 吸着量の計算は,見掛け死容積Vaに導入した吸着質の全量から,そのとき気体として系内に残存し

ている吸着質の量を減じることによって求める。 

最初に見掛け死容積Vaに導入した吸着質の標準状態に換算した全量Vr (m3) は,次の式によって

求める。 

0

0

1

TP

T

V

P

V

p

T=

ここに, P1: 最初にVpに取り込んだ吸着質の圧力 (Pa) 
 

P0: 吸着温度における吸着質の飽和蒸気圧 (Pa) 

T0: 273.2 (K) 

T: 室温 (K) 

平衡後に気体として系内に残存している吸着質の標準状態に換算した量V'T (m3) は,次の式によ

って求める。 

0

0

TP

T

V

P

V

a

e

T=

ここに, Pe: 試料容器に吸着質を導入した後の平衡圧 (Pa) 

したがって,平衡圧Peにおける吸着量Veは,次の式によって求める。 

Ve=VT−V'T 

このような計算を繰り返すことによって,それぞれの平衡圧における吸着量を算出する。 

(3.4) 定圧法 

(a) バルブC1,C2,C6,C7,C8,C9,C10を開け,他のバルブは閉めた状態で,系内の圧力が0.1Pa

以下になるまで真空ポンプで排気する。 

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(b) 測定をする圧力をPeとする。バルブC1,C2,C7,C8,C10を閉め,C4を開け,吸着質を部分容

積Vp内に圧力がPeになるように圧力計を見ながら取り込んだ後,C4を閉める。そのときの圧力Pe,

取り込んだ吸着質の容積Vp,室温Tを用い,気体の状態方程式から標準状態に換算した吸着質の取

込み量を算出する。吸着質の取込み量の調節は,ガスビュレットの容積を変動させることによって

行う。 

(c) C8を開け,吸着質を試料容器内に導入し,液体窒素温度の試料に吸着させる。 

(d) C8を開けることによる気体の占める体積の増加及び吸着による圧力の減少が起こるので,圧力計を

見ながら測定希望圧力Peになるようにガスビュレットの水銀面を徐々に上昇させる。圧力の変動が

認められなくなったとき平衡に達したものとする。ガスビュレット内の水銀の上昇による気体体積

の減少量をVHgとする。 

(e) C8を閉めた後,(b),(c),(d)の操作を繰り返し行う。 

(f) 吸着質の飽和蒸気圧P0の測定は,次の操作によって行う。バルブC8を閉じ,C7を開け,吸着質を

その飽和蒸気圧近くになるまで系内に取り込む。ガスビュレットの水銀面を上昇させ,吸着質を圧

縮していったとき,圧力が一定になればその圧力が飽和蒸気圧P0である。 

(g) 試料の採取量の精ひょうを行う。 

(h) 吸着量の計算は,見掛け死容積Vaに導入した吸着質の全量から,そのとき気体として系内に残存し

ている吸着質の量を減じることによって求める。 

最初に見掛け死容積Vaに導入した吸着質の標準状態に換算した全量VT (m3) は,次の式によって

求める。 

0

0

1

TP

T

V

P

V

p

T=

ここに, P1: 最初にVpに取り込んだ吸着質の圧力 (Pa) 
 

P0: 吸着温度における吸着質の飽和蒸気圧 (Pa) 

T0: 273.2 (K) 

T: 室温 (K) 

平衡後,気体として系内に残存している吸着質の標準状態に換算した量V'T (m3) は,次の式によ

って求める。 

0

0

TP

T

V

P

V

a

e

T=

ここに, Pe: 試料容器に吸着質を導入した後の平衡圧 (Pa) 

したがって,平衡圧Peにおける吸着量Veは,次の式によって求める。 

Ve=VT−V'T 

備考 (3.4)において測定中における試料容器冷却装置(デュワー瓶)内の液体窒素の液面は,試

料温度が液体窒素温度になるように少なくとも試料粉体から3cm上で維持し,また,液体

表面の上下の変動による死容積の変化が無視できるように液面の変動幅は,2.5mm以内に

抑えることが望ましい。 

(3.5) 多点法 多点法は,(3.3),(3.4)において,平衡相対圧 (P/P0) が0.05〜0.35の範囲内で,吸着量を3

〜5点測定する。 

(3.6) 一点法 一点法は,平衡相対圧 (P/P0) が0.30付近における吸着量を一点測定する。 

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6.2 

流動法 流動法は,キャリアガスであるヘリウムと吸着質気体からなる混合ガスの雰囲気下,液体

窒素温度における吸着質の吸着量を,混合ガス中の吸着質の濃度変化から測定する。濃度の測定にはガス

濃度検出器を用いる。混合ガス中の吸着質気体の濃度を適宜変えて,それぞれの濃度における吸着質の吸

着量を測定することによって吸着等温線を求めることができる。 

(1) 試料の採取量 試料の採取量は,試料の表面積が表3に示す範囲になるように採取することが望まし

い。 

表3 吸着質の種類及び測定に必要な試料表面積の範囲 

吸着質 

採取試料の表面積 (m2) 

窒素 (N2) 

1 〜100 

アルゴン (Ar) 

0.2 〜 5 

クリプトン (Kr) 

0.02 〜 0.5 

試料は,吸着している水分や不純物を前処理によって除去した後,試料容器ごと0.1mg又は試料量

の有効数字4けたまで質量を測定する。 

(2) 前処理 6.1(2)に準じて行う。 

(3) 測定操作 測定操作は,次による。 

(3.1) 検量 ガスシリンジ,又は既知容積の検量管を用いて既知量の吸着質気体を導入し,導入気体量と

ガス濃度検出器で記録された濃度変化のピーク面積との間の関係を検定しておく。 

(3.2) 混合ガスの流量 混合ガスの流量は,0.25〜0.33cm3/sとする。 

(3.3) 測定手順 測定手順は,次による。 

(3.3.1) 装置に混合ガスを設定流量で流し,装置内が一定温度に達した後,試料を充てんした試料容器を測

定部へ装着する。 

(3.3.2) ガス濃度検出器の指示が安定したことを確かめた後,試料容器を試料容器冷却装置に入れた液体窒

素中に浸す。 

(3.3.3) 物理吸着が起こって混合ガス中の吸着質濃度が一時減少するが,吸着平衡に達すると再び初期のガ

ス濃度に戻る。吸着量に対応するガス濃度検出器の信号が付図3に示すようにピーク波形として記

録される。 

(3.3.4) 吸着信号が基線まで復帰した後,試料容器を試料容器冷却装置から取り外すと,物理吸着していた

吸着質が脱着し,その濃度は増大するので逆方向のピークが記録される。 

(3.3.5) この吸着質濃度下における吸着質気体の吸着量Vは,脱離ピークの面積と検量結果との対応から次

の式によって求める。 

RT

V

P

V

A

A

V

st

at

0

0

=

ここで, 

A: 吸着ガスの脱離信号の積算値 

A0: 検量信号の積算値 

V0: 検量ガスの容積 (m3) 

Pat: 大気圧 (Pa) 

R: 気体定数 (8.314 Pa m3/K mol) 

T: 検量ガス採取時の室温温度 (K) 

Vst: 標準状態(温度0℃,圧力101.3kPa)における気体1molの容

積2.241×10−2 (m3) 

備考 吸着測定中の試料容器冷却装置の液体窒素の液面は,試料温度が液体窒素温度になるように少

なくとも試料粉体より3cm上で維持することが望ましい。 

R 1626-1996 

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(3.4) 多点法 多点法では,混合ガス濃度を容量5〜35%(P/P0=0.05〜0.35に相当)の範囲で変化させ,

上記と同じ測定操作を繰り返し,種々の濃度における吸着量を3〜5点測定する。 

(3.5) 一点法 一点法では,混合ガス濃度30容量%(P/P0=0.3に相当)付近における吸着量を一点測定

する。 

7. 測定結果の整理 測定値は次のBET多点法,又はBET一点法のいずれかの方法で整理し報告する。 

(1) BET多点法 BET式が成立する平衡相対圧範囲 (0.05<P/P0<0.35) 内で3〜5点測定した吸着量 (V) 

と平衡相対圧 (P/P0) 値を用いて,式(2)のBETプロット図を作成する。単分子層吸着量Vmは,BET

プロットの直線部分のこう配と直線の外挿によって求めた切片の値を式(3)に代入して算出する。 

(2) BET一点法 平衡相対圧 (P/P0) が0.3付近で測定した吸着量 (V) と平衡相対圧 (P/P0) を用い,式(5)

から単分子層吸着量 (Vm) を算出する。 

8. 計算 試料の比表面積Swは,次の式によって計算する。 

W

V

NV

S

st

m

W

σ

=

ここに, 

σ: 分子断面積 (m2) 

N: アボガドロ数 6.022×1023 

Vst: 吸着質分子1molの標準状態(温度0℃,圧力101.3kPa)に

おける気体の体積2.241×10−2 (m3) 

W: 採取試料量 (g) 

9. 記録 記録は,次の事項を記載する。付表1,付表2に多点法と一点法の例を示す。 

(1) 試料名 

(2) 試料の前処理方法(処理温度,圧力及び時間) 

(3) 試料の採取量 

(4) 吸着量の測定方法(定圧法,定容法又は流動法) 

(5) 使用した吸着質及びその分子断面積 

(6) 測定圧力 

多点法の場合:測定した平衡相対圧 (P/P0) 又は吸着平衝にある吸着質の気体の圧力 (P) の範囲,

及びBETプロットが直線を示す圧範囲とBETのC値 

一点法の場合:測定した平衡相対圧 (P/P0) 又は吸着平衡にある吸着質の気体の圧力 (P) 

(7) 比表面積の値 

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R 1626-1996 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

付表1 測定結果の記載例(多点法) 

項目 

内容 

(1) 試料名 

酸化ジルコニウム 

(2) 試料の前処理方法 

処理温度 

300℃ 

圧力 

0.1Pa以下の減圧下 

時間 

2h 

(3) 試料の採取質量 

(前処理後測定) 

4.667g 

(4) 吸着量の測定方法 

定容法 

(5) 吸着質及び分子断面積 

N2,16.2×10−20m2 

(6) 平衡相対圧 (P/P0) の測

定範囲及びBETプロット
の直線範囲とC値 

測定範囲 

0.001〜0.443 

直線範囲 

0.022 4〜0.369 

C値 

114 

(7) 比表面積の値 

15.85m2/g 

付表2 測定結果の記載例(一点法) 

項目 

内容 

(1) 試料名 

酸化ジルコニウム 

(2) 試料の前処理方法 

処理温度 

300℃ 

圧力 

N2ガスフロー,大気圧 

時間 

30min 

(3) 試料の採取質量 

4.667g 

(4) 吸着量の測定方法 

定容法 

(5) 吸着質及び分子断面積 

N2, 16.2×10−20m2 

(6) 測定平衡相対圧 (P/P0) 

0.3 

(7) 比表面積の値 

15.64m2/g 

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10 

R 1626-1996 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

付図1 容量法による気体吸着量測定装置の概略 

付図2 流動法による気体吸着量測定装置の概略 

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11 

R 1626-1996 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

付図3 吸着及び脱離ピークの記録例 

ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法 

原案作成委員会 構成表 

氏名 

所属 

(委員長) 

奥 田   博 

財団法人ファインセラミックスセンター 

(委員) 

谷   重 男 

通商産業省生活産業局 

倉   剛 進 

工業技術院標準部 

(小委員会主査) 

○ 近 沢 正 敏 

東京都立大学 

○ 西 村 健 次 

株式会社島津製作所 

○ 浅 野 鐵 夫 

住友金属テクノロジー株式会社 

○ 荒 川 敏 彦 

東ソー株式会社 

○ 森 本 昌 文 

ユアサアイオニクス株式会社 

○ 武 岡 純 明 

株式会社村田製作所 

波田野   拓 

日清製粉株式会社 

渡 辺 祥二郎 

電気化学工業株式会社 

長谷川   光 

昭和電工株式会社 

卯 木   稔 

社団法人日本ファインセラミックス協会 

山 田 貞 夫 

社団法人日本ファインセラミックス協会 

(事務局) 

○ 吉 川 豊 祐 

社団法人日本ファインセラミックス協会 

備考 ○印は小委員会委員