2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
M 8135-1994
鉱石中のカドミウム定量方法
Ores−Method for determination of cadmium
1. 適用範囲 この規格は,鉱石中のカドミウム定量方法について規定する。ただし,他の日本工業規格
でカドミウム定量方法が規定されている鉱石には適用しない。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS K 0050 化学分析方法通則
JIS K 0121 原子吸光分析通則
JIS M 8083 ばら積み非鉄金属浮選精鉱のサンプリング方法
JIS M 8101 非鉄金属鉱石のサンプリング,試料調製及び水分決定方法
JIS Z 8401 数値の丸め方
2. 一般事項 定量方法に共通な一般事項は,JIS K 0050及びJIS K 0121による。
3. 分析試料の採り方及び取扱い方
3.1
試料の採取及び調製 試料の採取及び調製は,JIS M 8083及びJIS M 8101による。
3.2
試料のはかり方 試料のはかり方は,次による。
(1) 試料のはかり採りに際しては,試料をよくかき混ぜて平均組成を表すように注意し,また,異物が混
入していないことを確かめなければならない。
(2) 試料は,105±5℃に調節されている空気浴に入れて乾燥し,2時間ごとに空気浴から取り出し,デシ
ケーター中で常温まで放冷する。乾燥は,乾燥減量が2時間につき0.1% (m/m) 以下になるまで繰り
返す。ただし,硫化物などを含有するため,変質しやすい試料の乾燥条件(温度,時間など)は,受
渡当事者間の協議による。
(3) 試料のはかり採りには,原則として化学はかりを用いる。
4. 分析値の表し方及び操作上の注意
4.1
分析値の表し方 分析値の表し方は,次による。
(1) 分析値は,質量百分率で表し,JIS Z 8401によって小数点以下第3位に丸める。
(2) 分析は,同一分析室において2回繰り返して行い,その差が室内許容差(以下,許容差という。)以下
のとき,その平均値を求め,JIS Z 8401によって小数点以下第2位に丸めて報告値とする。
(3) 2回繰り返して行った分析値が許容差を超えるときは,改めて2回の分析をやり直す。
(4) 許容差は,表1による。
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表1 許容差(1)
単位 % (m/m)
カドミウム含有率の区分
許容差
0.01 以上0.1未満
0.010
0.1 以上0.3未満
0.015
0.3 以上1 未満
0.040
1 以上 3 以下
0.150
注(1) 2個の分析値が二つのカドミウム含有率の区分にまたがるときは,2個
の分析値の平均値の該当する区分の許容差を適用する。
4.2
分析操作上の注意 分析に当たっては,全操作を通じて空試験を行い,測定値を補正する。
5. 定量方法 鉱石中のカドミウム定量方法は,原子吸光法による。この方法は,カドミウム含有率0.01%
(m/m) 以上3% (m/m) 以下の試料に適用する。
5.1
要旨 試料を塩酸と硝酸とで分解し,硫酸を加え加熱して蒸発乾固する。塩酸を加えて溶解し,ろ
過した後,水で一定量に薄め,原子吸光光度計を用いて吸光度を測定する。
5.2
試薬 試薬は,次による。
(1) 塩酸
(2) 塩酸 (1+1,1+5,1+19)
(3) 硝酸
(4) ふっ化水素酸
(5) 硫酸 (1+1)
(6) 標準カドミウム溶液 (20μgCd/ml) カドミウム[99.9% (m/m) 以上]0.500gをはかり採り,ビーカー
(300ml) に移し入れ,硝酸 (1+1) 20mlで分解し,冷却した後1 000mlの全量フラスコに移し入れ,水
で標線まで薄め原液とする。使用の都度,水で正しく25倍に薄めて標準カドミウム溶液とする。
5.3
試料はかり採り量 試料のはかり採り量は,0.2gとし,1mgのけたまではかる。
5.4
操作
5.4.1
試料溶液の調製 試料溶液の調製は,次の手順によって行う。
(1) 試料をはかり採り,ビーカー (200ml) に移し入れる。時計皿で覆い,塩酸10ml及び硝酸5mlを加え,
穏やかに加熱して分解する。放冷後,硫酸 (1+1) 5mlを加え,加熱して蒸発乾固する(2)。
(2) 放冷した後,少量の水を用いて時計皿の下面を洗浄し,時計皿を取り除く。塩酸 (1+1) 10ml及び水
約30ml(3)を加え,加熱して可溶性塩を溶解した後,ろ紙(5種B)を用いてろ過し,温水で十分に洗
浄する(4)。冷却した後,ろ液及び洗液は,100mlの全量フラスコに水を用いて移し入れ,水で標線ま
で薄める(5)。
注(2) 酸化鉱,焼鉱などの場合には,塩酸10mlと硫酸 (1+1) 5mlを加え,穏やかに加熱して分解し,
液量が5〜10mlとなるまで濃縮した後,硝酸5〜10mlを加え,引き続き加熱して蒸発乾固する。
(3) 試料中にアンチモン,すず,ビスマスなどを含み,加水分解するおそれのある場合は,水の代
わりに塩酸 (1+1) 25mlを加える。
(4) 残さ中にカドミウムが含まれる場合は,少量の水を用いて残さを白金皿(50番)に洗い移し,
硫酸 (1+1) 約5ml及びふっ化水素酸5〜10mlを加え,静かに加熱して,二酸化けい素を揮散
させ,乾固近くまで濃縮する。放冷後,少量の水を加えて溶解し,ろ紙(5種B)を用いてろ過
する。温水で十分に洗浄した後,ろ液及び洗液を主液に合わせる。
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(5) カドミウム量が多い場合には,検量線の直線領域で測定精度の良い濃度範囲に入るように,適
当量を100mlの全量フラスコに正しく分取し,塩酸 (1+19) で標線まで薄める。ただし,注(3)
のように操作した場合は,塩酸 (1+5) で薄める。
5.4.2
吸光度の測定 5.4.1(2)で得た溶液の一部を,水を用いてゼロ点を調整した原子吸光光度計の空
気・アセチレンフレーム中に噴霧し,波長228.8nmにおける吸光度を測定する(6)。
注(6) 精度及び正確さを確認してあれば,空気・水素,その他のフレームを用いてもよい。
5.5
空試験 試料を用いないで,試料と同じ操作を試料と並行して行う。
5.6
検量線の作成 標準カドミウム溶液0〜20ml(カドミウムとして0〜400μg)(7)を段階的に数個の
100mlの全量フラスコに取り,塩酸 (1+1) 10ml(8)を加え水で標線まで薄める。以下5.4.2の手順に従って
試料と同様に操作し,試料と並行して操作した吸光度とカドミウム量との関係線を作成して検量線とする。
注(7) 使用装置及び測定波長の感度に応じて,濃度範囲を適宜増減する。
(8) 注(3)の操作を行った場合には,塩酸 (1+1) 35mlを加える。
5.7
計算 5.4.2で得た吸光度から,5.5で得た吸光度を差し引いて得られる吸光度と,5.6で作成した検
量線からカドミウム量を求め,試料中のカドミウム含有率を,次の式によって算出する。
100
100
×
×B
m
A
Cd=
ここに,
Cd: カドミウム [% (m/m)]
A: 分取した試料溶液中のカドミウム検出量 (g)
m: 試料はかり採り量 (g)
B: 注(5)で分取した場合の分取量 (ml) ,注(5)を行わない場合は
B=100とする。
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鉱石中のカドミウム定量方法改正原案作成委員会 構成表
委員名
所属
(委員長)
奥 谷 忠 雄
日本大学理工学部工業化学教室
市 川 五 朗
住友金属鉱山株式会社
稲 垣 勝 彦
日本鉱業協会
尾 上 喬
同和鉱業株式会社
岸 野 忠 信
財団法人日本規格協会
佐 山 恭 正
三菱マテリアル株式会社
丹 野 一 雄
東邦亜鉛株式会社
中 村 靖
株式会社日鉱共石
野 村 紘 一
三菱マテリアル株式会社
宮 本 幸 夫
工業技術院標準部
渡 部 武 雄
三井金属鉱業株式会社
鉱石中のカドミウム定量方法改正原案作成委員会 構成表(順不同)
委員名
所属
(委員長)
中 村 靖
日本鉱業株式会社
池 田 重 司
大蔵省造幣局東京支局
岩 田 晶 夫
住友金属鉱山株式会社
岩 橋 康 夫
日本鉱業協会技術部
岸 肇
三菱金属株式会社
小 林 透
東邦亜鉛株式会社
清 水 博 司
同和鉱業株式会社
田 沼 滉
志村化工株式会社
束 原 巌
古河金属工業株式会社
外 岡 和 夫
古河鉱業株式会社
東 野 徳 夫
工業技術院地質調査所
中 田 勉
日曹金属株式会社
松 井 敬 二
三井金属鉱業株式会社
吉 田 信 之
工業技術院標準部