サイトトップへこのカテゴリの一覧へ

K 6766:2008  

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,社団法人表面技術

協会(SFJ)及び財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの申

出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。 

これによって,JIS K 6766:1977は改正され,この規格に置き換えられた。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格に従うことは,次の者の有する特許権等の使用に該当するおそれがあるので,留意すること。 

− 氏名:株式会社サンコウ電子研究所 

− 住所:神奈川県川崎市高津区久末1677 

上記の特許権等の権利者は,非差別的,かつ,合理的な条件でいかなる者に対しても当該特許権等の実

施を許諾等する意思のあることを表明している。ただし,この規格に関連する他の特許権等の権利者に対

しては,同様の条件でその実施が許諾されることを条件としている。 

この規格に従うことが,必ずしも,特許権の無償公開を意味するものではないことに注意する必要があ

る。 

この規格の一部が,上記に示す以外の特許権等に抵触する可能性がある。経済産業大臣及び日本工業標

準調査会は,このような特許権等に係る確認について,責任はもたない。 

なお,ここで“特許権等”とは,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新

案登録出願をいう。 

JIS K 6766には,次に示す附属書がある。 

附属書(参考)ライニング皮膜の試験仕様書の例 

K 6766:2008  

(2) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

目 次 

ページ 

序文 ··································································································································· 1 

1. 適用範囲 ························································································································ 1 

2. 引用規格 ························································································································ 1 

3. 定義 ······························································································································ 1 

4. 準備 ······························································································································ 2 

5. 金属面上のライニング皮膜に対する湿式試験機によるピンホール試験方法 ································· 2 

5.1 概要 ···························································································································· 2 

5.2 試験装置及び試薬 ·········································································································· 2 

5.3 試験の準備 ··················································································································· 3 

5.4 試験の手順 ··················································································································· 3 

5.5 結果の評価及び記録 ······································································································· 3 

6. 金属面上のライニング皮膜に対する乾式試験機によるピンホール試験方法 ································· 3 

6.1 概要 ···························································································································· 3 

6.2 試験装置 ······················································································································ 4 

6.3 試験の準備 ··················································································································· 4 

6.4 試験の手順 ··················································································································· 6 

6.5 結果の表示及び記録 ······································································································· 6 

7. コンクリート面上のライニング皮膜に対する乾式試験機によるピンホール試験方法 ····················· 6 

7.1 概要 ···························································································································· 6 

7.2 試験装置 ······················································································································ 6 

7.3 試験の準備 ··················································································································· 7 

7.4 試験の手順 ·················································································································· 10 

7.5 結果の表示及び記録 ······································································································ 10 

附属書(参考)ライニング皮膜の試験仕様書の例 ······································································ 11 

  

   

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

K 6766:2008 

防食用樹脂ライニング皮膜の検査方法− 

ピンホール試験方法 

Pinhole test method of lined films for corrosion prevention 

序文 この規格は,昭和38年に制定された“金属表面のポリエチレン皮膜試験方法”を,その後の改良技

術を基に改正した。対象をポリエチレン皮膜から防食用樹脂ライニング皮膜全般に広げるとともに,施工

現場において,金属面及びコンクリート面に施した完成皮膜の試験に用いる各種ピンホール試験方法を規

定した。 

1. 適用範囲 この規格は,海水,腐食性のある流体,土壌,浸透液,排水などに長期間触れている部分

の防食を主な目的として,海洋構造物,化学装置の機器・配管類,橋りょう(梁)及び大形槽,導水路な

どの土木構造物・設備において,金属面及びコンクリート面の上に被覆された樹脂ライニングの完成皮膜

の湿式(電気抵抗式)及び乾式(放電式)によるピンホール試験方法について規定する。 

適用する皮膜は,次による。 

a) 試験は,工事完了直後の,硬化した清浄な新しい皮膜に適用する。使用中の皮膜には,適用しない。 

b) 湿式は,膜厚が500 μm程度以下の皮膜に適用し,乾式は,膜厚が10 mm程度以下の皮膜に適用する。 

c) ライニング皮膜が導電性をもつ場合には適用しない。 

d) 大気中での防せい(錆)を目的とする塗装には,適用しない。 

e) 皮膜の表面が著しく汚染している場合は,適用しない。 

2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す

る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS K 3370 台所用合成洗剤 

JIS K 8102 エタノール(95)(試薬) 

JIS K 8150 塩化ナトリウム(試薬) 

JIS K 8891 メタノール(試薬) 

3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は次による。 

a) ライニング 海水,腐食性のある流体,土壌,排水,浸透液などに対する長期間の防食を主な目的と

して使用され,プラスチックが主要構成材料となっている被覆。膜厚が通常200 μm程度以下の薄い

皮膜の名称であるコーティングを含む。 

備考 コーティングは,500 μm以下までを対象とすることもある。 

b) 試験仕様書 ライニング工事を実施するときに,材質及び使用環境に応じた試験条件,試験方法など

を記載した文書。 

K 6766:2008  

   

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

c) 浸透液 構造部材表面の構造材の間を伝わって,内部に浸透した液体。 

d) 素地 腐食から保護するためにライニングで被覆される部材。 

e) 膜厚 硬化し乾燥しているライニングの皮膜の厚さ。 

f) 

公称膜厚 試験仕様書に指定した呼び膜厚。 

g) 微小欠陥 ライニング皮膜に存在し,肉眼では認めにくい大きさの,気泡の抜け跡,割れ,異物,局

部的薄膜部などの小さな欠陥。 

h) ピンホール 電気的試験方法で検出できる微小欠陥の総称。 

備考 アメリカ合衆国などでは,ライニング皮膜に存在する微小欠陥をholiday又はdiscontinuityと総

称し,その一分類として,針でついたような欠陥(気泡の抜け跡など)をpinholeと呼んでいる。 

i) 

試験液 湿式のピンホール試験において,電極に含ませる導電性の水溶液。 

j) 

通電性 ライニング皮膜施工したコンクリート素地において,含有水分などによって生じる放電電流

の流れやすさ。 

k) 通電性表示器 ピンホール試験の可否について,ライニング皮膜施工したコンクリートの通電性を試

験前に調べるための機器。 

4. 準備 試験をする前に,試験するライニング皮膜の状態,試験方法,試験条件,試験後の処置などに

ついて,試験仕様書,工事要領書などを用いてあらかじめ確認することが望ましい。試験仕様書の例を附

属書(参考)に示す。 

5. 金属面上のライニング皮膜に対する湿式試験機によるピンホール試験方法  

5.1 

概要 試験機の高電圧出力側端子をプローブに,接地側端子を試験対象の金属素地に接続し,プロ

ーブ先端の電極に試験液を含ませてライニング皮膜上を走査し,プローブから皮膜のピンホール内部に浸

透した試験液を通じて流れる電流を検出することによって,ピンホールの有無を試験する。 

5.2 

試験装置及び試薬  

5.2.1 

試験機 試験機は,次による。 

a) プローブを取り付ける電圧出力側端子及び試験対象金属素地に接続する接地側端子を備え,外部電源

又は内蔵電池によって直流を発生する湿式(電気抵抗式)のピンホール試験機。 

b) 外部抵抗が80 kΩ以下ならば検知し,100 kΩ以上ならば検知しないように設定されたランプ及び/又

はブザーによる検出器を備えているもの。 

c) 検出器は,プローブから離れた場所でも,試験者が欠陥有無の判定を行えるものとし,一つの欠陥を

検出した後,次の欠陥の検出に備えて,0.1秒間以内に検知可能な状態に復帰できるもの。 

d) プローブは,試験機本体に接続できる導電性の心棒の先端に,水にぬれやすく柔軟で形状復元性に優

れた電極を装着したもの。心棒の後部は,電気絶縁物質で巻いて,素手でつかめるようになっている。

電極を試験液でぬらしたとき,実用上無視できる程度の低い電気抵抗で,試験機本体と電気的に通じ

ていなければならない。 

備考 電極の材質は,試験液の含浸及び形状復元性の点で,海綿又はウールローラーが適している。

試験液の含浸に注意すれば独立気泡が少ないスポンジゴム,又は形状の復元に注意すれば綿製

のものを使用してもよい。 

5.2.2 

試薬 試薬は,次による。 

a) 水 上水道水又はより純度の高い水。 

K 6766:2008  

   

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

b) 塩化ナトリウム JIS K 8150に規定するもの,又は同等の市販品。 

c) 界面活性剤 JIS K 3370に規定する台所用合成洗剤,又は安全衛生に配慮した上で,JIS K 8891に規

定するメタノール若しくはJIS K 8102に規定するエタノール(95)を用いてもよい。 

5.3 

試験の準備  

5.3.1 

ライニング皮膜面の確認 試験対象のライニング皮膜面は,目で見える汚れがなく,十分乾燥して

いなければならない。試験をする前に,試験するライニング皮膜の外観を目視で観察し,割れ,膨れ,異

物,汚れなどの有無を確認し,その部位,大きさ及び個数を記録する。 

5.3.2 

試験液の調製 水に塩化ナトリウム及び界面活性剤を加え,均一になるようにかき混ぜて電解質の

試験液を調製する。塩化ナトリウム水溶液の濃度は,質量分率で約3 %が望ましい。界面活性剤は,混入

かくはん後の液が,容器の壁面近傍だけにわずかな泡を残す程度に混入することが望ましい。 

ライニング皮膜を汚染させたくない場合は,塩化ナトリウムの濃度をさらに低下させるか,質量分率

0 %としてもよい。この場合,試験機が検知できる外部抵抗値を大きくし,感度を上げないと,小さなピ

ンホールを見逃しやすくなる一方で,検出器の感度を上げると,ピンホールがなくても,ライニング皮膜

表面に吸着している水分によって検出器が作動してしまうことがありうる。あらかじめ,対象とするライ

ニング皮膜に,予想されるモデル欠陥を作り,プローブを繰り返し走査して,ピンホールが検出できる出

力電圧を確認しておくとよい。 

5.3.3 

試験機の接続 試験機本体の電圧出力側端子にプローブを接続し,試験機本体の接地側端子を,金

属素地の露出部に電気的に接続する。 

5.3.4 

試験機の校正 試験機は,製造業者の推奨する方法及び頻度で校正する。 

5.3.5 

試験液の含浸 電極に試験液を,流れ落ちない程度の量で,しかも心棒にまで達するように,含ま

せる。 

5.4 

試験の手順  

5.4.1 

導通の確認 試験機の電源を入れてから,接続した試験対象の金属素地の露出部分に電極を軽く

触れて,試験機の検出器が作動することを確認する。 

5.4.2 

試験の実施 電極に含ませた試験液でライニング皮膜の表面を軽く濡らすようにしながら,秒速

30 cm以下の速さでプローブを一方向に動かして走査する。平面部において隣接部を走査する際は,先に

走査した範囲と3 cm程度の幅で重なるように走査する。使用環境が塩酸酸性など特に厳しい場合は,同一

皮膜面を繰り返し走査してもよい。 

5.4.3 

試験液の含浸確認 試験中,電極への試験液の含浸量が十分かどうかを点検するため,対象面の走

査距離20 mごとに,5.4.1による導通の確認を行う。 

5.4.4 

試験後の洗浄 試験液として塩化ナトリウム水溶液を使用するため,試験後は,対象表面に塩分が

残らないように十分に水で洗浄する。特に,補修が必要と判定されたピンホールについては,欠陥の内部

に塩分が残留しないように,欠陥部のライニング皮膜を除去して洗浄後,補修する。 

5.5 

結果の評価及び記録 試験中,試験機の検出器が作動したとき,ピンホールを検出したと評価する。

検出した場合は,検出したライニング皮膜の上にマーキングするとともに,検出した位置を記録する。 

6. 金属面上のライニング皮膜に対する乾式試験機によるピンホール試験方法  

6.1 

概要 試験機の高電圧出力側端子をプローブに,接地側端子を試験対象の金属素地に接続し,ライ

ニング皮膜上をプローブで走査し,皮膜欠陥部に向けて生じる放電電流を検出することによってピンホー

ルの有無を試験する。 

K 6766:2008  

   

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

6.2 

試験装置  

6.2.1 

試験機 プローブを取り付ける高電圧出力側端子及び試験対象金属素地に接続する接地側端子を

備え,外部電源又は内蔵電池によって直流,交流又はパルス電流の高電圧を発生する方式の乾式のピンホ

ール試験機とし,次による。 

a) 出力波形のピーク電圧(試験電圧)を精度±10 %で表示できる電圧計を備えているもの。 

b) 放電が生じた場合に,プローブから離れた場所でも試験者が欠陥の有無を判定できる検出器(ランプ

及び/又はブザー)を備えているもの。 

c) 検出器は,一つの欠陥を検出した後,次の欠陥の検出に備えて,0.1秒間以内に検知可能な状態に復帰

できるもの。 

d) 試験機の出力両端の短絡電流は,安全上2 mA以下とする。 

備考 テスラーコイルによってプローブ先端で常時コロナ放電し,ピンホールがあると放電が集中す

る方式のピンホール試験機がある。この試験機は,放電電圧が絶えず変化するため検出の再現

性が低く,また,検出が試験者の手元でしか確認できないために,この規格の適用外とする。 

6.2.2 

プローブ 試験機本体に接続できる導電性の心棒の先端に,放電を生じさせる電極を装着したも

の。心棒の後部は,電気絶縁物質で巻いて,素手でつかめるようになっている。電極は,復元性のよい細

い針金を束ねたブラシ状のものを標準とする。ブラシ状電極は,毛並みがよくそろっているものを用いる。

使用中の形状復元性の点からは,直径0.06 mm程度のりん青銅製の針金が望ましいが,形状の復元に注意

しながら使用すれば,黄銅製の針金を用いてもよい。 

なお,皮膜が軟質であることから,りん青銅又は黄銅製の針金では傷付きやすいなどの理由がある場合

は,電極に導電性ゴムで作製した平板などを用いてもよい。しかし,平板部及びその角部は,針金状電極

に比べて放電しにくいため,欠陥の検出感度が低下する。 

6.2.3 

導電ケーブル 電源,プローブ,試験対象金属素地及び試験機を結ぶケーブルで,試験機の製造業

者が指定するもの。 

6.3 

試験の準備  

6.3.1 

試験機の準備 試験機の準備は,次による。 

a) ブラシ状電極を用いる場合は,毛並みを調べ,不ぞろいであれば毛並みをそろえる。また,電極が塗

料などで汚れている場合は,清掃する。毛ぞろえ及び清掃が困難な場合は,ブラシ状電極を取り替え

る。 

b) 試験機本体の接地側端子を,金属素地の露出部に電気的に接続する。 

6.3.2 

試験機の出力電圧の設定  

a) 試験機の出力電圧は,図1によって最小値を求める。 

background image

K 6766:2008  

   

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

図 1 ライニング皮膜の公称膜厚に対して推奨するパルス電流方式の試験機における 

ピンホール試験電圧の最小値の参考例−金属面へのライニングの場合 

b) 試験機の出力電圧は,a) によって求めた最小電圧以上とする。対象とするライニング皮膜の材質,膜

厚,使用条件,ピンホールの予想される状態(欠陥の微細構造,欠陥内壁の性質,欠陥の大きさ,湿

気など),試験機の出力特性(印加時及び放電時の電圧波形)及び電極の形状によって影響されるた

め,類似の条件の実績を参考にするとよい。また,対象とするライニング皮膜に,予想されるモデル

欠陥を作り,プローブを繰り返し走査して,確実に検出できる出力電圧を求めてもよい。この場合,

電極の種類,形状及び走査速度は,実際の測定と同一にする。 

備考 試験機の出力電圧が高すぎると,たとえ,使用上問題のないライニング皮膜であっても絶縁破

壊を起こすことがある。特に交流式は高出力の試験機が多く,比較的大きな皮膜の損傷を伴っ

た絶縁破壊を起こすことがある。絶縁破壊を防ぐため,直流,交流又はパルスのいずれの方式

の試験機であっても,設定した出力電圧の1.5倍の電圧を,実際に用いる電極で,健全な皮膜

の同じ点に1分間かけ続け,皮膜が破壊されないことをあらかじめ確認しておくとよい。 

c) 試験機の出力電圧を設定後,電極を,対象の素地の露出部に,接触しないように近付けて放電させ,

試験機の検出器が作動することを確認する。 

6.3.3 

試験機の校正 試験機は,製造業者の推奨する方法及び頻度で校正する。 

K 6766:2008  

   

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

6.4 

試験の手順  

6.4.1 

ライニング皮膜面の確認 試験対象のライニング皮膜面は,目で見える汚れがなく,十分乾燥して

いなければならない。試験をする前に,試験するライニング皮膜の外観を目視で観察し,割れ,膨れ,異

物,汚れなどの有無を確認し,その部位,大きさ及び個数を記録する。 

6.4.2 

試験の実施 ライニング皮膜にプローブの電極の先端を軽く触れるようにし,秒速30 cm以下の速

さでプローブを一方向に動かして走査する。平面部において隣接部を走査するときは,先に走査した範囲

と3 cm程度の幅で重なるように走査する。使用環境が塩酸酸性など特に厳しい場合は,同一皮膜面を繰り

返し走査してもよい。 

警告 試験実施中は,高電圧又はライニング皮膜などへ帯電した静電気によって感電しないようにす

る。試験機の接続端子,電極など,電気的な露出部に触れるほど近付いてはいけない。 

備考 パルス式試験機は,直流及び交流式試験機に比べて,ライニング皮膜面の帯電量が少なく,ま

た高電圧によって直接に感電したときの衝撃が少ない。 

6.4.3 

ライニング皮膜の損傷及び補修 放電によってライニング皮膜が損傷した場合には,その損傷部を

除去し,試験仕様書に従って補修する。 

6.4.4 

試験中の確認 6.3.2 c) によって検出器の作動状況及びプローブの点検を行う。 

6.5 

結果の表示及び記録 試験中,試験機の検出器が作動したとき,ピンホールを検出したと評価する。 

検出した場合は,ライニング皮膜の上にマーキングするとともに,検出した位置を記録する。 

7. コンクリート面上のライニング皮膜に対する乾式試験機によるピンホール試験方法  

7.1 

概要 通電性表示器によって,コンクリート素地の通電性を確かめた後,試験機の高電圧出力側端

子をプローブに,接地側端子を試験対象のコンクリート素地に接続し,ライニング皮膜をプローブで走査

し,皮膜欠陥部に向けて生じる放電電流を検出することによって,ピンホールの有無を試験する。 

7.2 

試験装置  

7.2.1 

試験機 高電圧出力側端子及び試験対象コンクリート素地に接続する接地側端子を備え,外部電源

又は内蔵電池によって直流の高電圧を発生させる方式の乾式ピンホール試験機とし,次による。 

a) 最大出力電圧を印加した場合,外部抵抗が40 MΩでも放電できるもの。 

b) 出力波形のピーク電圧(試験電圧)を精度±10 %で表示できる電圧計を備えるもの。 

c) 放電が生じた場合に,プローブから離れた場所でも試験者が欠陥の有無を判定できる検出器(ランプ

及び/又はブザー)を備えているもの。 

d) 検出器は,一つの欠陥を検出した後,次の欠陥の検出に備えて,0.1秒間以内に検知可能な状態に復帰

できるもの。 

e) 試験機の出力両端の短絡電流は,安全上2 mA以下とする。 

7.2.2 

プローブ 試験機本体に接続できる導電性の心棒の先端に,放電を生じさせる電極を装着したも

の。心棒の後部は,電気絶縁物質で巻いて,素手でつかめるようになっている。電極は,復元性のよい細

い針金を束ねたブラシ状のものを標準とする。ブラシ状電極は,毛並みがよくそろっているものを用いる。

使用中の形状復元性の点からは,直径0.06 mm程度のりん青銅製の針金が望ましいが,形状の復元に注意

しながら使用すれば,黄銅製の針金を用いてもよい。 

なお,皮膜が軟質であることから,りん青銅又は黄銅製の針金では傷付きやすいなどの理由がある場合

は,電極に導電性ゴムで作製した平板などを用いてもよい。しかし,平板部及びその角部は,針金状電極

に比べて放電しにくいため,欠陥の検出感度が低下する。 

background image

K 6766:2008  

   

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

7.2.3 

導電ケーブル 電源,プローブ,試験対象コンクリート素地及び試験機を結ぶケーブルで,試験機

の製造業者が指定するもの。 

7.2.4 

通電性表示器 コンクリート素地のライニング皮膜の上に押し当てたプローブによって,コンクリ

ートの表面から30 mm程度の深さまでの素地の通電性を表示できるもの。通電性表示器の仕様は,次によ

る。 

a) 高周波誘電率式とする。 

b) 周波数は,2.5 MHzのもの。 

c) 検出限界は,ライニング皮膜の表面から垂直方向に30 mm程度の深さまで測定できるもの。 

d) 目盛は,100等分(刻み2)とする。 

e) 校正用テストピースをもつもの。 

通電性表示器の電極部の構成及び寸法は,図2による。 
 

①測定電極 
④本体 
⑤皮膜 
⑥コンクリート素地 

①測定電極 50×5 mm R2.75 
②アース電極 130×60 mm 
③絶縁板 58×34 mm 

図 2 通電性表示器の電極部の構成及び寸法 

7.2.5 

導電性パッド 7.3.3 c) において用いる導電性パッドは,柔軟で,導電性ペーストを裏面[コンク

リートには(貼)り付ける面]に塗布した薄い金属板とする。パッドの電気抵抗は,金属に付着させたと

き,1枚当たり30 kΩ以下とする。低周波治療用健康器具に用いる有効面積15 cm2以上の導電性密着パッ

ドを利用してもよい。 

7.3 

試験の準備  

7.3.1 

ライニング皮膜面の確認 試験対象のライニング皮膜面は,目で見える汚れがなく,十分乾燥して

いなければならない。試験をする前に,試験するライニング皮膜の外観を目視で観察し,割れ,膨れ,異

物,汚れなどの有無を確認し,その部位,大きさ及び個数を記録する。 

7.3.2 

予備試験 コンクリート素地の通電性を確認するため,次の手順で予備試験を行う。 

a) 試験対象部分のライニング皮膜の公称膜厚を確認する。 

b) 通電性表示器を作動させ,0点及びフルスケールを調節する。また,試験機に附属する校正用テスト

ピースによって表示値を校正する。 

c) 通電性表示器の測定電極をライニング皮膜面に静かに押し当て,表示器の数値を測定する。ライニン

グ施工面の中で乾燥程度がほぼ同じ位置から,一辺が約30 cm角の測定部位を選び,その四隅を各1

回ずつ測定し,平均値をその部位の通電性表示値とする。この場合,四隅のいずれかの測定値が,平

均値から20 %以上異なっていた場合は,近接する別の測定部位を選び,改めて同様の測定を行う。 

d) 通電性の表示値が,ライニング皮膜の公称膜厚に対応する特性曲線よりも上部にある場合は,ピンホ

background image

K 6766:2008  

   

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

ール試験が可能であると評価する(図3)。 

e) 通電性の測定を行ってピンホール試験が可能とした場合,その測定部位の周辺のピンホール試験が可

能な範囲は,素地のコンクリートの乾燥程度が同等と見なされる範囲とする。このような考えに基づ

き,現場の状況を考慮して全ライニング施工面の中でピンホール試験の測定部位を決定する。 

図 3 ライニング皮膜の公称膜厚−通電性表示値特性曲線 

7.3.3 

試験機の準備 試験機は,7.2.1の直流高電圧方式の試験機を用いる。 

a) ブラシ状電極を用いる場合は,毛並みを調べ,不ぞろいであれば毛並みをそろえる。また,電極が塗

料などで汚れている場合は,清掃する。毛ぞろえ及び清掃が困難な場合は,ブラシ状電極を新しいも

のに取り替える。 

b) 試験機本体は,安全のため,必ず大地に接地する。大地への接地は,社団法人日本電気協会の内線規

background image

K 6766:2008  

   

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

程JEAC 8001:2000によるD種(100 Ω以下)が望ましい。 

c) 試験機の接地側測定端子を,コンクリート構造体の一部である鉄筋,鉄骨,又はコンクリート内部で

それらと電気的に接触している金属部材の露出部に接続する。このような露出部がない場合は,ライ

ニング皮膜の一部をはがしてコンクリート面を露出させ,導電性パッド(7.2.5)をその面にはり,接

地側測定端子と接続する。 

d) 試験機の接地側測定端子とコンクリート内部の鉄筋又は鉄骨などの露出部を接続する場合,その有効

範囲は,コンクリート内部の鉄筋又は鉄骨などが電気的に接続している範囲とする。 

7.3.4 

試験機の出力電圧の設定  

a) 試験機の出力電圧の設定値は,図4によって最小値を求める。又は,対象ライニング皮膜に,存在が

予想されるモデル欠陥を作り,プローブを繰り返し走査して,確実に検出できる試験機出力電圧を定

めてもよい。この場合,電極の種類,形状及び走査速度の仕様は,実際の測定と同一にする。 

図 4 ライニング皮膜の公称膜厚に対して推奨する直流方式の試験機におけるピンホール 

試験電圧の最小値の参考例−コンクリート面へのライニングの場合 

b) 試験機の出力電圧は,a) によって求めた最小電圧以上とする。対象とするライニング皮膜の材質,膜

厚,使用条件,ピンホールの予想される状態(欠陥の微細構造,欠陥内壁の性質,欠陥の大きさ,湿

気など),試験機の出力特性(印加時及び放電時の電圧波形)及び電極の形状によって影響されるた

10 

K 6766:2008  

   

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

め,類似の条件の実績を参考にするとよい。 

備考 試験機出力電圧が高すぎると,使用上問題のないライニング皮膜であっても絶縁破壊を起こす

ことがある。絶縁破壊を防ぐため,設定した試験機出力電圧の1.5倍の電圧を,実際に用いる

電極で,健全な皮膜の同じ点に1分間かけ続け,皮膜が破壊されないことをあらかじめ確認す

ることが望ましい。 

c) 試験機の出力電圧を設定後,電極を対象の素地又は鉄筋などの露出部に,接触しないように近付け,

放電させ,試験機の検出器が作動することを確認する。 

7.3.5 

試験機の校正 試験機は,製造業者の推奨する方法及び頻度で校正する。 

7.4 

試験の手順  

7.4.1 

試験の実施 ライニング皮膜にプローブの電極の先端を軽く触れるようにし,秒速30 cm以下の速

さで,プローブを一方向に動かして走査する。平面部において隣接部を走査するときは,先に走査した範

囲と3 cm程度の幅で重なるように走査する。使用環境が塩酸酸性など特に厳しい場合は,同一皮膜面を繰

り返し走査してもよい。 

警告 試験実施中は,高電圧又はライニング皮膜などへ帯電した静電気によって感電しないようにす

る。試験機の接続端子,電極など,電気的な露出部に触れるほど近付いてはいけない。 

7.4.2 

ライニング皮膜の損傷及び補修 放電によってライニング皮膜が損傷した場合には,その損傷部を

除去し,試験仕様書に従って補修する。 

7.4.3 

試験中の確認 7.3.4 c) によって検出器の作動状況の確認及びプローブの点検を行う。 

7.5 

結果の表示及び記録 試験中,試験機の検出器が作動したとき,ピンホールを検出したと評価する。

検出した場合は,ライニング皮膜の上にマーキングするとともに,検出した位置を記録する。 

11 

K 6766:2008  

   

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書(参考)ライニング皮膜の試験仕様書の例 

この附属書は,本体に関連する事柄を補足するもので,規定の一部ではない。 

試験仕様書 試験仕様書に記載する内容の例を次に示すが,これに限定されるものではない。この仕様書

は,受渡当事者間の合意のための,参考文書としてもよい。 

a) 試験の目的 試験は,防食樹脂ライニング皮膜の完成時に必す(須)であるので,以下のような例文

を最初に記載することが望ましい。 

例 当該装置・機器に施工した樹脂ライニング皮膜が,十分な防食性能をもっているかどうかを評価

するため,ピンホール試験を実施する。 

b) 試験の対象 対象装置,ライニング皮膜の種類,素地の種類,ライニング皮膜の呼び厚さなど 

c) 試験方法 ピンホール試験の種類,試験機の種類及び型番,湿式においては試験液の組成など 

d) 試験実施者  

e) 試験体制  

f) 

試験工程  

g) 試験期間  

h) 試験管理責任者,試験安全責任者,試験者の技能(証明書)など  

i) 

安全対策 足場,火気,換気,作業環境など 

j) 

異常時の連絡系統,措置及び対策  

k) 試験終了後の処置  

l) 

試験の合否判定基準及び不合格時の処置  

m) 試験報告書  

関連規格 日本電気協会 内線規程 JEAC 8001:2000 

NACE:RP0188:1999 Standard Recommended Practice: Discontinuity (Holiday) Testing of New 

protective Coatings on Conductive Substrate