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K 0350-80-10:2005  

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,社団法人日本工業用水協会(JIWA)/財団法人

日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準

調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。 

この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の

実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会

は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新

案登録出願にかかわる確認について,責任はもたない。 

JIS K 0350-80-10には,次に示す附属書がある。 

附属書1(参考)鉄細菌の細胞の確認方法(染色法) 

附属書2(参考)鉄細菌の種類ごとの出現頻度の記載例 

K 0350-80-10:2005  

(2) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

目 次 

ページ 

1. 適用範囲 ························································································································ 1 

2. 引用規格 ························································································································ 1 

3. 定義 ······························································································································ 1 

4. 共通事項 ························································································································ 1 

5. 試料 ······························································································································ 1 

5.1 試料の採取 ··················································································································· 1 

5.2 試料の取扱い ················································································································ 2 

6. 試験方法 ························································································································ 2 

6.1 器具及び装置 ················································································································ 2 

6.2 試料の前処理 ················································································································ 3 

6.3 操作 ···························································································································· 3 

7. 結果の表示 ····················································································································· 4 

附属書1(参考)鉄細菌の細胞の確認方法(染色法) ······································································ 5 

附属書2(参考)鉄細菌の種類ごとの出現頻度の記載例 ······························································· 6 

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格       JIS 

K 0350-80-10:2005 

工業用水中の鉄細菌試験方法 

Testing method for detection of iron bacteria in industrial water 

1. 適用範囲 この規格は,工業用水中の鉄細菌の鉄細菌の存在を顕微鏡によって定性的に判定する試験

方法について規定する。 

2. 引用規格 付表1に示す規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成

する。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS K 0101,JIS K 0102,JIS K 0550及びJIS K 0211に

よるほか,次による。 

3.1 

鉄細菌 鉄分の多い地下水及び伏流水に広く生息し,鉄(Ⅱ)又はその化合物を鉄(Ⅲ)に酸化して菌体

の内に蓄積,菌体の外に沈着する性質をもつ細菌類の総称。 

備考 鉄細菌は,茶褐色の細胞で,属ごとに鉄の沈着形態が異なっているため,独特の外形を形作る

特徴がある。これらの外形を,顕微鏡によって確認することで直接的な判定が可能である。代

表的なものとして次の2種があげられる。 

ガリオネラ フェルギネア(Gallionella ferruginea)は,一般的に幅1〜1.5 μmのねじれたリボン

状の外形を呈し,その先端に鉄細菌の細胞が存在する。レプトスリックス オクラケア(Leptothrix 

ochracea)は,幅約2 μmの長い直線上のさや(鞘)に長かん(桿)菌が一列に並んでいる。このほか

にも,外形に特徴のある数種類の鉄細菌が報告されている。 

鉄細菌が繁殖すると,赤水又はスライムの発生,浄水処理過程におけるろ過層の閉そく(塞)

などの様々な障害の原因となる。 

4. 共通事項 共通事項は,次による。 

4.1 ガラス器具類 ガラス器具類は,一般にJIS R 3503及びJIS R 3505に規定するものを使用する。ただ

し,特殊な器具を必要とする場合には,それぞれの項目に,その一例を図示又は説明する。 

5. 試料  

5.1 

試料の採取  

5.1.1 

試薬 試薬は,次による。 

a) ホルムアルデヒド液 JIS K 8872に規定するホルムアルデヒド液[37 %(質量分率)](1)(2)を用いる。 

注(1) ホルムアルデヒド液の取扱いについては,関係法令などに従い,十分に注意する。 

(2) ホルムアルデヒド液に代えて1,5-ペンタンジアール(グルタルアルデヒド)液[25 %(質量分率)]

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を用いてもよい。 

5.1.2 

器具 器具は,次による。 

a) 試料容器 共栓ガラス瓶又は清浄なポリエチレン製瓶100〜1 000 ml。 

b) 採水器 ハイロート採水器。図 1に一例を示す。 

                                 A:ガラス瓶(100〜1 000ml) 

                                 B:栓 

                                 C:鎖 

                                 D:開栓用鎖 

                                 E:瓶の保持板の止め金具用鎖 

                                 F:瓶の保持板 

                                 G:携帯箱 

                                 H:携帯箱のふた 

                                  I:おもり 

図 1 ハイロート採水器及び携帯箱の一例 

5.1.3 

操作 試料の採取は,次による。 

a) 表層水の採取 湖沼,河川,水路,貯水槽などの表層水で,直接採取できる場合は,試料容器で試料

を採取する。直接採取できない場合は,採水器を用いて採取する。 

b) 各深度の水の採取 一定の深さの水は,採水器を用いて採取する(3)。 

注(3) ハイロート採水器による採取が困難な場合には,バンドーン採水器を用いて採取し,試料容器

に移す。 

c) 給水栓からの採取 栓を開き,配管中の水を十分に放出した後,試料容器に採取する。 

d) 配管,装置からの採取 c)と同様に操作して採取する。 

5.2 

試料の取扱い 試験は試料採取後,直ちに行う。直ちに試験ができない場合には,試料100 mlにつ

きホルムアルデヒド液3 ml[3 %(体積分率)](4)を添加し,0〜5 ℃(凍結させない。)の暗所に保存する。 

注(4) 1,5-ペンタンジアール(グルタルアルデヒド)液[25 %(質量分率)]を用いる場合は,試料100 ml

につき4 ml[4 %(体積分率)]を添加する。 

6. 試験方法  

6.1 

器具及び装置 器具及び装置は,次による。 

a) マイクロピペット 0.05〜0.1 ml。 

b) 駒込ピペット 1〜10 ml。 

c) スライドガラス JIS R 3703に規定するもの。大きさは,76×26 mmのもの。 

d) カバーガラス JIS R 3702に規定するもの。大きさは,18×18 mm,24×24 mm又は32×24 mmのも

の。 

e) 顕微鏡及びその附属品 顕微鏡は,総合倍率20〜600 倍が得られるもので,次のものから成る。 

1) 顕微鏡 JIS B 7132に規定する生物顕微鏡(5)。 

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2) 対物レンズ 呼び倍率4,10,20及び40のもの。 

3) 接眼レンズ 呼び倍率5〜15 のもの。 

4) 十字標本移動器(メカニカルステージ) 顕微鏡に取り付け,スライドガラスを前後左右に移動でき

るもの。 

注(5) 位相差装置又は微分干渉装置が附属していると便利である。 

f) 

遠心管 1 mlごとに標線が入った,ねじぶた付きのガラス製の容量10〜50 mlのもの。市販の滅菌済

みのポリエチレン製のものを用いてもよい。 

g) 遠心機 JIS T 1701に規定するもの。遠心力15 000〜30 000 m/s2{約1 500〜3 000 g}で制御できるもの。 

6.2 

試料の前処理 鉄細菌が少なく,濃縮が必要とされる場合は,次による。 

a) よく振り混ぜて均一にした5.の試料の適量を,遠沈管にとり,遠心機を用いて,遠心力(6)15 000〜30 000 

m/s2{約1 500〜3 000 g}で20分間(6)遠心分離する。遠心分離を停止する場合には,沈殿物を巻き上げ

ないようにするため,自然停止させる。 

注(6) ここで示した遠心分離条件は目安であり,試験対象生物の変形,破壊がない条件を予備試験な

どで調べておく。 

b) 沈殿物を巻き上げないように注意して上澄み液を駒込ピペットなどで吸引除去し,沈殿物を含めて残

りの体積をもとの体積の21〜101(7)にする。 

注(7) 鉄細菌の存在量に応じて,適宜,選択する。鉄細菌が少ない場合は,一度濃縮した試料を集め,

再度,遠心分離して濃縮するとよい。 

c) 6.3の操作を行う直前に,沈殿物が均一になるようによく振り混ぜる。 

6.3 

操作 操作は,次による。 

a) よく振り混ぜて均一にした5.の試料又は6.2で得た試料0.05〜0.1 mlをスライドガラスにとり,カバ

ーガラスを載せ(8),顕微鏡を用いて,20〜600 倍で観察する。 

注(8) カバーガラスから試料がはみ出さないようにカバーガラスの大きさを,適宜,選択するととも

に,カバーガラスを載せる場合に,試料がはみ出さないように注意して操作する。 

b) 各視野に出現する生物のうち,生物図鑑などの資料を参考にして,鉄細菌と判断される形態をもつ生

物の有無を鉄細菌の種類ごとに確認する(9)(10)。 

注(9) 視野を移動しながら,鉄細菌の存在の有無を確認する。鉄細菌の数が多い場合は10〜20視野に

ついて検鏡し,少ない場合は,カバーガラスの全面を検鏡する。できれば,種類ごとの出現頻

度を区別して記載する。 

例 

種類ごとの出現頻度の記載例を,附属書2に示す。 

(10) 鉄細菌の存在が確認できたら,顕微鏡写真を撮影しておくことが望ましい。 

参考1. 鉄細菌の周囲に沈着している鉄分が多いと,鉄細菌の細胞の存在を顕微鏡で確認できず,試

料中の鉄分の沈着が鉄細菌によるものか,化学反応で生じたものかの判断ができないことが

ある。このような場合には,塩酸又はしゅう酸溶液を用いてこれらの鉄分を溶かし,細胞の

有無を確認する方法,又は更に染色まで行い,鉄細菌の細胞の観察を容易にする方法を併用

してもよい。 

2. 鉄細菌の細胞の確認方法は,附属書1によるとよい。 

3. 生物図鑑などの資料には,次のようなものがある。 

下水試験方法(社団法人日本下水道協会)(1997年版) 

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上水試験方法(社団法人日本水道協会)(2001年版) 

日本の水道生物−写真と解説−(社団法人日本水道協会)(1993) 

環境微生物図鑑(株式会社講談社)(1995) 

Standard Methods for The Examination of Water and Wastewater (APHA,AWWA,WEF)(20th 

Ed.,)(1998) 

Bergeyʼs Manual of Systematic Bacteriology(Williams&Wilkins)(1989) 

7. 結果の表示 結果には,試料の採取場所,採取日時,試験日時,鉄細菌の存在の有無,参考として用

いた図鑑名などを付記する。写真撮影を行った場合は,併わせて添付する。できれば,試験条件(酸処理,

染色処理の有無。),鉄細菌の種類とその出現頻度を付記するとよい。 

付表 1 引用規格 

JIS B 7132 生物顕微鏡 

JIS K 0101 工業用水試験方法 

JIS K 0102 工場排水試験方法 

JIS K 0211 分析化学用語(基礎部門) 

JIS K 0550 超純水中の細菌数試験方法 

JIS K 8872 ホルムアルデヒド液(試薬) 

JIS R 3503 化学分析用ガラス器具 

JIS R 3505 ガラス製体積計 

JIS R 3702 顕微鏡用カバーガラス 

JIS R 3703 顕微鏡用スライドガラス 

JIS T 1701 医療用遠心機 

関連規格 K 0557 用水・排水の試験に用いる水 

K 8102 エタノール(95)(試薬) 

K 8180 塩酸(試薬) 

K 8519 しゅう酸二水和物(試薬) 

K 8798 フェノール(試薬) 

K 8804 塩基性フクシン(試薬) 

K 8913 よう化カリウム(試薬) 

K 8920 よう素(試薬) 

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附属書1(参考)鉄細菌の細胞の確認方法(染色法) 

序文 この附属書は,試料中に鉄細菌の細胞が存在するか否かを染色法によって確認する方法を示したも

のであり,規定の一部ではない。 

1. 鉄細菌の細胞の確認方法 この方法は,本体6.3の試験操作で調製したスライドガラス標本,又は新

たに本体6.3によって調製したスライドガラス標本について,酸処理を行い,鉄沈着物を溶かし,更に染

色を行うことで,鉄細菌の細胞の観察を容易にするものである。 

1.1 試薬 試薬は,次による。 

a) 水 JIS K 0557に規定するA2又はA3(1)による。 

注(1) 石英ガラス又はほうけい酸ガラス-1製の蒸留器で精製したもの。 

b) 酸溶液 酸溶液は,次による。 

1) 塩酸[1+(2〜4)] JIS K 8180に規定する塩酸1容を水2〜4容を用いて薄める。 

2) しゅう酸溶液(2) JIS K 8519に規定するしゅう酸二水和物15 gを水100 mlに加える。 

注(2) 結晶沈殿が生じた場合は,上澄み液を用いる。 

c) 染色液 染色液は,次による。 

1) フェノール-フクシン溶液 JIS K 8804に規定する塩基性フクシンを乳鉢ですりつぶし,その約1.1 g

をとり,JIS K 8102に規定するエタノール(95)10 mlを加えて溶かす。これにフェノール溶液(50 

g/L)(JIS K 8798に規定するフェノール5 gを水に溶かして100 mlとする。)10 mlを加える。 

使用時に,この溶液を水で5 倍に薄めて用いる。 

2) よう素溶液 JIS K 8913に規定するよう化カリウム2 gを水50 mlに溶かし,JIS K 8920に規定する

よう素1 gを少量ずつ加えて溶かした後,水を加えて300 mlとする。 

参考 市販のグラム染色用のセットのうち,ルゴール液を用いてもよい。 

1.2 器具及び装置 器具及び装置は,次による。 

a) スライドガラス 本体6.1 c)による。 

b) カバーガラス 本体6.1 d)による。 

c) 顕微鏡及びその附属品 本体6.1 e)による。 

1.3 操作 操作は,次による。 

a) 本体6.3 によってスライドガラス標本を調製する。 

b) スライドガラス上の試料にかぶせてあるカバーガラスの片端付近に,酸溶液1滴を滴加する。 

c) カバーガラスの反対側の端にろ紙を当て,酸溶液をカバーガラスとスライドガラスとの間を通過させ

ながらろ紙に吸着されるようにする。 

d) 酸溶液が黄色に着色しなくなるまでb),c)の操作を繰り返す。 

e) 染色液1滴をカバーガラスの端に滴加する。 

f) 

カバーガラスの反対側の端にろ紙を当て,染色液をカバーガラスとスライドガラスとの間を通過させ

た後,検鏡する。 

備考 d)の操作を行った後,鉄分が溶解し,鉄細菌の細胞が明りょう(瞭)に観察できる場合は,e),f)

の操作を行わず検鏡してもよい。 

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附属書2(参考)鉄細菌の種類ごとの出現頻度の記載例 

序文 この附属書は,本体6.3において確認された鉄細菌の種類ごとに出現頻度の記載例を示したもので

あり,規定の一部ではない。 

1. 記載例 記載例は,次による。 

附属書2表 1 鉄細菌の種類ごとの出現頻度の記載例1 

記号 

出現頻度 

種類ごとのおおよその出現頻度 

ccc 

極めて多い 

おおむね 80 %以上 

cc 

非常に多い 

おおむね 45 %以上 80 %未満 

多い 

おおむね 30 %以上 45 %未満 

普通 

おおむね 15 %以上 30 %未満 

少ない 

おおむね  8 %以上 15 %未満 

rr 

非常に少ない 

おおむね  2 %以上  8 %未満 

rrr 

極めて少ない 

おおむね  2 %未満 

− 

出現しない 

 
 

附属書2表 2 鉄細菌の種類ごとの出現頻度の記載例2 

記号 

出現頻度 

おおよその判断基準 

+++ 

非常に多く出現する 

すべての視野に数個体以上 

++ 

多く出現する 

すべての視野に1個体以上 

出現する 

幾つかの視野に散見 

− 

出現しない