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K 0153:2015 (ISO 23830:2008) 

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

目 次 

ページ 

序文 ··································································································································· 1 

1 適用範囲························································································································· 1 

2 記号及び略語 ··················································································································· 1 

3 概略······························································································································· 2 

4 強度目盛の繰返し性及び一定性を確認する方法 ······································································ 3 

4.1 標準試料の入手 ············································································································· 3 

4.2 試料の取付け準備 ·········································································································· 3 

4.3 試料の取付け ················································································································ 3 

4.4 強度の一定性を決定すべき分析計の設定条件の選択 ······························································ 4 

4.5 装置の操作 ··················································································································· 4 

4.6 強度及びその繰返し性の測定 ··························································································· 5 

4.7 強度の繰返し性の算出 ···································································································· 6 

4.8 相対強度目盛の一定性の定期的な決定手順 ·········································································· 8 

4.9 次の校正 ····················································································································· 10 

附属書A(参考)スタティックSIMSのための適切な操作条件の例 ··············································· 11 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工

業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済

産業大臣が制定した日本工業規格である。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。 

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日本工業規格          JIS 

K 0153:2015 

(ISO 23830:2008) 

表面化学分析−二次イオン質量分析法− 

スタティック二次イオン質量分析法における 

相対イオン強度目盛の繰返し性, 

再現性及び一定性の確認方法 

Surface chemical analysis-Secondary-ion mass spectrometry- 

Repeatability and constancy of the relative-intensity scale in static 

secondary-ion mass spectrometry 

序文 

この規格は,2008年に第1版として発行されたISO 23830を基に,技術的内容及び構成を変更すること

なく作成した日本工業規格である。 

なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。 

適用範囲 

この規格は,一般的なスタティック二次イオン質量分析法(以下,スタティックSIMSという。)におけ

る正イオンの相対強度目盛の繰返し性,再現性及び一定性を確認する方法について規定する。この規格は,

帯電中和用の電子銃を装備した装置だけに適用できる。この規格は,質量及び強度に対する応答関数の校

正を意図したものではない。応答関数の校正は,装置製造業者又はその他が定めるところによる。この規

格で規定する方法は,装置を使用するときに,相対強度の一定性を確認するデータを提供する。この規格

には,相対強度の一定性に影響する幾つかの装置設定に関する手引も含まれている。 

注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。 

ISO 23830:2008,Surface chemical analysis−Secondary-ion mass spectrometry−Repeatability and 

constancy of the relative-intensity scale in static secondary-ion mass spectrometry(IDT) 

なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ

とを示す。 

記号及び略語 

この規格で用いる主な記号及び略語は,次による。 

A1 

:C3F3及びC2F5のピーク面積の合算平均 

A2 

:C7F13及びC8F15のピーク面積の合算平均 

A3 

:C14F27及びC15F29のピーク面積の合算平均 

:ビーム径(μm) 

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:電気素量(C) 

:単位時間内のパルス繰返し数又は周波数(s−1)(飛行時間形装置だけに必要) 

:13個ある質量ピークのi番目に付けるインデックス 

Iij 

:ピーク強度マトリックスのi番目質量ピーク及びj番目スペクトル 

iI 

:七つのスペクトルにおける平均ピーク強度 

:七つのスペクトルのj番目に付けるインデックス 

:単位面積当たりの総イオンフルエンス(m−2) 

:完了したラスタフレームの回数 

Nij 

:正規化ピーク強度マトリックスのi番目質量ピーク及びj番目スペクトル 

:1ピクセル当たりに割り当てられたパルス数(飛行時間形装置だけに必要) 

Pij 

:相対ピーク強度マトリックスのi番目質量ピーク及びj番目スペクトル 

jP 

:j番目のスペクトルの九つの質量ピークにおける平均相対ピーク強度 

:パルス化されたイオンビームの時間平均電流(A)(飛行時間形装置だけに必要) 

:イオンビーム電流(A)(非パルス化ビームを使う装置及び一部の飛行時間形装置に必要) 

:相対強度の繰返し精度 

:正方形ラスタの一辺の長さ(μm) 

SIMS :二次イオン質量分析法 

:全スペクトル測定時間(s) 

ToF :飛行時間 

:統一原子質量単位 

U95(A1/A2):A1/A2における不確かさ 

U95(A3/A2):A3/A2における不確かさ 

:パルス幅値(s) 

:ラスタ線上のピクセル数 

概略 

箇条4の手順を使ってスタティックSIMSの分析計を評価するには,適切に設定された装置を使って,

選択した質量ピークの強度を測定する。その際,屋内配管のシールに使う清浄面が巻かれているPTFEテ

ープを用いる。この材料は,容易に使用でき,表面汚染が少なく,更に,優れた水準の繰返し性を達成す

ることが可能な表面均一性をもつことが,スタティックSIMSを用いて詳細に調べられている。質量干渉

がないように,質量ピークを選択する。その結果,この手順は,高質量分解能及び低質量分解能のいずれ

の装置にも適切なものである。 

4.1〜4.5に,試料の調達及び装置設定の初期ステップを記載している。また,図1に,関連のある段落

ごとに簡略化した見出しを付けた操作手順を示す。 

4.6では,質量スペクトルを連続して7回繰り返し測定し,データを取得する。このデータから,ピーク

強度群に対する繰返し性の標準偏差を算出する。この繰返し性には,測定ピーク強度の試料位置に対する

敏感性及びピークに含まれる統計的なノイズと同様に,イオン源,試料表面電位,分析計の検出器,更に,

電源供給などの安定性が寄与している。この方法においては,測定したピーク強度における統計的ノイズ

が小さくなるように,諸条件を決める。繰返し性の標準偏差は,試料の測定位置を決める手順に左右され

る可能性がある。4.6.1では,試料測定位置の決定に毎回同じ手順が必要とされ,最終校正はこの位置決定

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の手順に従った試料に対してだけ有効である。 

一般的に,スタティックSIMSにおいて,物質の同定には絶対的な強度よりは相対的なピーク強度が最

も重要である。このため,この方法の適用範囲は相対強度の一定性を決定することに限定されている。図

1の操作手順に示しているように,4.7で繰返し性を決定し,4.8で一定性の計算手順について規定する。 

実際,質量とピーク強度比とに関する分析計での応答関数は,装置の使用状況,及び,特に,同じ装置

であっても異なる操作者間で,著しく変化する可能性がある。このため,それぞれの分析者がこの手順を

実行することは有用である。この検査を繰り返す間隔は,4.9に示す。スペクトル応答の変動を最小限にす

るために,文書化された手順書に従い装置を操作することが必須である。 

図1−操作手順 

強度目盛の繰返し性及び一定性を確認する方法 

4.1 

標準試料の入手 

スタティックSIMSの分析計の校正には,ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)テープ(屋内配管のシ

ールに使われているタイプのもの)の新しい一巻を用いる。4.9での再校正のため,この一巻に印を付け,

他の標準試料と一緒に保管する。 

注記1 このPTFEテープは,通常,幅12 mm,厚さ約0.075 mmで,一巻が12 mである。 

注記2 国内ではJIS K 6885に定めるシール用四ふっ化エチレン樹脂未焼成テープが入手可能であ

る。 

4.2 

試料の取付け準備 

試料は,接着防止の粉を使用していないポリエチレンの手袋を装着し,清浄な金属性のピンセットによ

って取り扱われなければならない。クリーンルームでしばしば使用されるビニールの手袋は,成形工程で

表面に離型剤がコートされているため,使用不可である。この離型剤は,非常に可動的で,瞬時に試料を

汚染する。この影響で,測定の繰返し性は低下し,質の低下したデータとなる。 

4.3 

試料の取付け 

4.1で入手したPTFEテープから最初の20 cmを取り除いて廃棄し,その次の部分から清浄なはさみで適

度な大きさの試料を切り取る。PTFEテープが解かれて新しい表面が露出するので,これを分析表面とす

4.1 標準試料の入手 

4.2 試料の取付け準備 

4.3 試料の取付け 

4.4 分析計の設定条件の選択 

4.5 装置の操作 

4.6 強度及びその繰返し性の測定 

スタート 

4.7 強度の繰返し性の算出 

4.8 一定性の定期的な決定手順 

4.9 3か月後に次の校正(測定) 

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る。試料を拭くことはしない。平たん(坦)で均一な表面ができるように,機械的な留め金又は固定法を

用いて試料を試料ホルダに取り付ける。粘着テープは使用しない。試料の裏面は,試料ホルダと導通をも

った導電性の面に確実に密着させる。PTFE(試料)は,穴の上に置いてはならない。 

注記 試料の下に穴があると,ToF形装置又は扇形磁場形装置のような高い引出電場を使う装置にお

いて質量分解能及び繰返し性の低下を招く。 

3か月以内に4.9に記載する再測定を行う。ここでは新品の試料が必要であるが,一貫性をもたせるため

に同じ一巻のPTFEテープから採取するのが望ましい。 

4.4 

強度の一定性を決定すべき分析計の設定条件の選択 

強度目盛の一定性を決定すべき正イオン用の分析計の設定条件を選択する。4.5〜4.9の方法は確認を必

要とするイオン源ごとに繰り返されなければならない。 

注記 相対強度の繰返し性は,使用される設定の組合せによって異なる。一般には,質量分析装置の

エネルギー受容の値を50 eVかそれ以上に設定した場合に,繰返し性が最もよくなる。 

4.5 

装置の操作 

4.5.1 

装置を,製造業者の取扱説明書又は個別に作成された手順書に従って操作する。装置は,ベークア

ウト後に十分に冷却されていなければならない。操作は,イオンビーム電流,計数率,分析計のスキャン

速度,その他製造業者によって指定されたパラメータが確実に製造業者の推奨の範囲となる条件で行う。

検出器増倍管の設定が正しく調整されていることを確認する。 

4.5.2 

イオンビームが,質量分析計の検出領域の中央を通るようにする。式(1)のように,収束されたイ

オンビーム径dが,確実に十分な広がりをもつようにする。 

X

R

d

2

>

 ··················································································· (1) 

装置における最小ビーム径が,式(1)を満たさないほど小さい場合は,ピクセル数Xを増やすか又は一辺

の長さRを小さくする必要が生じる。 

4.5.3 

単位面積当たりの総イオンフルエンスJが1×1016 m−2未満となるように,パルス化されたイオン

ビームの時間平均電流q,全スペクトル測定時間T,及びRの値を選択する。Jは,式(2)で与えられる。 

2

eR

qT

J=

 ·················································································· (2) 

扇形磁場形又は四重極形装置のようなパルスを使わない装置に対しては,式(2)でqの代わりにイオンビ

ーム電流Qを用いる。 

一部のToF形装置で,qが分からず,代わりにQが表示されるものに対しては,Jは,式(3)で与えられ

る。 

2

eR

FQwT

J=

 ··············································································· (3) 

例 0.5 pAのビーム(ToF形装置のパルスビーム電流,又は四重極形若しくは扇形磁場形装置のイオ

ンビーム電流)で,200 μmのラスタサイズ,128 sの測定時間の場合,128×128でのピクセル表

示ではビーム径を3.1 μm以上に広げる必要がある。1 μmまでしか広げられない場合は,256×256

でのピクセル表示を使う必要がある。そうしないと,個々の画素での照射量が1×1016 m2のスタ

ティック限界を2倍以上超えてしまう。 

全スペクトル測定時間Tは,イオンビームが試料表面に当たっている全時間である。パルス系において

は,これは全繰返し回数を含むもので,試料表面におけるイオンパルスの時間幅そのものではない。特に,

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ToF形の一部の装置のコンピュータでは,イオンビームが試料に当たっていないときのコンピュータ処理

時間を含む“トータル時間”と,コンピュータ処理時間を含まない“測定時間”とが示される。この場合

には,“測定時間”の値を使う。市販装置で使われる用語とこの規格で使用する用語とは,必ずしも一致し

ない。 

4.5.4 

扇形磁場形及び四重極形の装置では,イメージングの目的で使われるデジタルラスタよりも,むし

ろ高速スキャン(一般的には,テレビレート)を使ったスペクトル測定モードで測定する。デジタルラス

タを使う必要がある場合には,可能であればラスタ回数(整数値)nが20以上になるような測定時間を使

う。 

ToF形装置では,可能であればラスタ回数(整数値)nが20以上になるように積算する。ラスタ回数(整

数値)nを設定して積算することができない場合には,ラスタ領域全体で確実に均一にサンプリングでき

るように,nは20以上に維持されなければならない。ただし,分析計の透過率が均一な領域で分析が行わ

れることが条件である。透過率の均一性が確かでない場合は,ラスタ100回を使う。これによって,最も

不完全なラスタとなる最終ラスタは,データに対して小さな寄与しか示さないことが保証される。ラスタ

回数nは,ピクセル当たりに割り当てられたイオンパルスの数pによって式(4)で与えられる。 

p

X

TF

n

2

=

 ·················································································· (4) 

注記 ToF形装置においては,スペクトル測定では,通常p=1である。 

4.5.5 

イオンビーム電流Qを,ラスタ可能な状態で,適したファラデーカップを使って測定する。装置

にファラデーカップが付いていない場合には,簡単かつ正確な素子を試料ホルダに小さな穴をあけること

で作製してもよい。穴はイオンビームの軸に合わせ,深さを直径の5倍以上にする。直径は0.1 mmから1 

mmとする。 

注記 ファラデーカップの挙動の詳細は,参考文献[1] を参照。 

4.5.6 

一次イオンビーム電流が高い場合,(二次イオンの)数のうちの相当数が検出器の飽和によって失

われる。一次イオンビームの電流は,検出器の飽和によって失われる分が2 %より小さくする。 

70 uを超える質量をもった一次イオン又はクラスタからなる一次イオンでは,低い一次イオン電流にお

いてもピークの飽和が起きるかもしれない。これは普通,飽和したピークに続く質量領域での強度の低下

又は完全な強度ロスから判別できる。Bi+の場合,パルスイオンビーム電流は,0.1 pAを超えないことが

望ましい。 

4.5.7 

イオン検出の効率を最大にするために,検出器表面における被検出イオンの衝突エネルギーを,バ

ックグラウンドノイズに著しく寄与しないような最大の安定な値に設定する。 

注記 高い計数率[2]又は不適切な検出器電圧[3] は,誤差の大きなピーク強度測定を引き起こすピーク

ひずみの原因となる。 

4.5.8 

適切な帯電安定化の手順は,良好な測定を行うために不可欠である。製造業者の取扱説明書又は個

別に作成された手順書を用いる。手許の取扱説明書又は手順書が明瞭で完全にそろっていることを確かめ

ておく。 

注記 帯電安定化の手引は参考文献[4], [5] に示されている。 

4.6 

強度及びその繰返し性の測定 

4.6.1 

4.3で固定したPTFE試料を,通常使用している測定位置に取り付ける。試料の位置決め手順は,

装置の製造業者が推奨する方法を取り入れた手順書に従う。 

4.6.2 

4.5で選択した設定及び式(2)又は式(3)で与えられた分析時間を選択する。ToF形装置の場合は,最

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大質量が800 u以上となる反復率を選択する。四重極形又は扇形磁場形のような走査形質量分析計の場合

は,表1に示す質量ピークだけを質量が大きい方から小さい方に順に記録する。C14F27及びC15F29ピーク

の強度が100カウント以下の場合は,強度が非常に低い場合を除き,これらのピークが100カウント以上

の強度になるよう分析時間を延長する。最大イオンフルエンスを超えないようにするため,必要があれば

ラスタ面積を広げる。最終的には,データの質及び分析にかかる時間から妥当な分析時間を設定する。設

定したパラメータを記録する。 

注記 最も強度の低いピークは,C14F27及びC15F29と考えられる。 

強度の低いスペクトルは,繰返し精度が低くなるため,スペクトルの取得時間を10分間とする。最も強

度の低い二つのピークがそれぞれ100カウントであった場合,95 %の信頼水準でこれらのピークの再現性

は20 %である。 

表1−種々の条件で記録される各フラグメントの質量の値 

インデックス,i フラグメント 

用途 

(注参照) 

質量 

CF2 

b) 

49.996 8 

CF3 

a) 

68.995 2 

C3F3 

b) 

92.995 2 

C2F5 

b) 

118.992 0 

C3F5 

a) 

130.992 0 

C4F6 

b) 

161.990 4 

C4F7 

a) 

180.988 8 

C5F7 

a) 

192.988 8 

C5F9 

a) 

230.985 6 

10 

C7F13 

c) 

330.979 2 

11 

C8F15 

c) 

380.976 0 

12 

C14F27 

c) 

680.956 9 

13 

C15F29 

c) 

730.953 7 

注a) 強度の再現性 

b) 注a) とともに質量の校正として使用 

c) 相対強度のスケールの定数としてだけ使用 

4.6.3 

正イオンの質量スペクトルを7回測定する。分析は新しい表面にて行い,いずれの場合においても

単位面積当たりの総イオンフルエンスを,1×1016 m−2以下にしなければならない。いずれの分析範囲も試

料ホルダ端から1.5 mm以上離れていなければならない。また,正方形ラスタの一辺の長さをRとした場

合,推奨されるラスタ同士の最短繰返しの間隔(ラスタ中央から中央)は,2.5Rである。 

注記 R=200 μmのラスタ領域の場合,最短繰返し間隔は500 μmであり,ラスタ領域の最小間隔は

300 μmである。 

4.7 

強度の繰返し性の算出 

4.7.1 

ToF形分析計の場合,表1の用途に注b)と表示したピークの正確な質量を用いて,それぞれのスペ

クトルの質量目盛を校正する。これらのピークを識別する場合の参考のため,校正用ピークを図2に矢印

で示す。他の分析計の場合は,各ピークの最大強度の質量が正確な質量の±0.1 u以内であることを確認す

る。質量ピークがこの範囲から外れている場合,手順書に従って装置を再校正する。 

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X 質量(u) 

Y カウント数 

矢印は,質量目盛の校正に用いたピーク位置を示す。 

図2−附属書Aで与えられた条件で,15 keVのガリウム一次イオン及びToF形質量分析計で得られた 

スタティックSIMSによるPTFEの正イオンスペクトル分析例 

4.7.2 

強度目盛の線形性が最大になるように,製造業者又は装置担当者が作成した不惑時間補正手順書を

使用する。 

4.7.3 

各質量ピークを7回測定した結果について,表1で決められた質量の±0.5 uの質量範囲で不惑時

間補正後の強度を積算する。高質量分解能装置では,この範囲における質量間隔は小さくなる。これらの

範囲を記録し,この規格で行われる分析には同じ範囲を適用する。13の質量範囲のうちi番目,7本のス

ペクトルのうちj番目の質量範囲をIijとして記録する。 

高質量分解能装置でGa一次イオンを用いている場合は,CF3+ピークにGa+(68.925 6 u)が含まれない

ようにする。 

4.7.4 

13の質量ピークについて,ピーク面積強度の7点のデータを再検証し,測定順に伴う時間依存の

系統的な変化を調べる。そのような系統的変化は,装置の立上げ後の慣らし運転の不十分さ,分析室温度

の変化,並びに検出器の電圧及び他の電源のドリフトが原因である可能性がある。このような現象が見ら

れる場合は,適切な処置(例えば,慣らし運転を長くする。)を取り,4.6の手順を繰り返す。 

4.7.5 

次に,式(5)に従い,七つのスペクトルにおける平均ピーク強度iIを求める。 

=

=

7

1

7

1

j

ij

i

I

I

 ·············································································· (5) 

次に,式(6)に従い,各ピークの相対ピーク強度Pijを求めるため,各ピーク強度Iijを該当する平均ピー

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ク強度iIで除す。 

i

ij

ij

I

I

P=

 ··················································································· (6) 

注記 全てのPijの値は,おおよそ1になる。 

4.7.6 

j番目のスペクトルについて,表1中に注a)及び注b)で示した9点のピークにおける平均相対ピー

ク強度

jPを,式(7)に従い求める。この値は,一次イオンビーム電流などの要因によって変動する。 

=

=

9

1

9

1

i

ij

j

P

P

 ·············································································· (7) 

注記 表1の最初の9点のピークだけを繰返し性算出に使用する。残りの4点のピークで求めたiIは,

後に4.8で相対強度目盛の一定性を調べるために用いる。 

ここで,i=1からi=9のピークについて求めた正規化ピーク強度Nijを,式(8)に従って算出することで,

各スペクトルの強度から平均相対ピーク強度

jPの寄与を消去する。 

j

ij

ij

P

P

N=

 ·················································································· (8) 

4.7.7 

式(9)に従い,スペクトルの相対強度の繰返し性を計算する。ここで,各ピークの相対強度のばら

つきは,i番目質量ピーク及びj番目スペクトルのNijの標準偏差で与えられる。 

[

]∑

=

=

7

1

2

2

6

)1

(

)

(

j

ij

i

N

N

σ

 ································································ (9) 

SIMSの相対強度の繰返し性rは,式(10)によって最初の9点の質量ピークについての標準偏差の平均と

して定義される。 

=

=

9

1

)

(

9

1

i

i

N

r

σ

 ········································································ (10) 

注記1 Nijは全て,おおよそ1になる。 

注記2 この方法を用いた解析例は,参考文献[5]〜[7] 参照。 

4.7.8 

相対強度の繰返し性r,装置運転上の状態,装置運転の日付を記録する。 

4.8 

相対強度目盛の一定性の定期的な決定手順 

4.8.1 

相対強度目盛の一定性を定期的に決定するためには,簡易的な手順として,分析計を,13ピーク

中6点だけを含むように800 uまでに設定する。 

4.8.2 

分析計の強度目盛の一定性を定期的に評価するために,式(11)〜式(13)に示すとおり,4.7.5で定め

られた各平均強度iIから算出される平均値A1,A2及びA3を決定する。 

)

(

2

1

4

3

1

I

I

A

+

=

 ·········································································(11) 

)

(

2

1

11

10

2

I

I

A

+

=

 ······································································· (12) 

)

(

2

1

13

12

3

I

I

A

+

=

 ······································································ (13) 

注記 これらの強度に関連するピークを表1にまとめた。また,3,4,10,11,12及び13のインデ

ックスを付けた強度は,それぞれC3F3,C2F5,C7F13,C8F15,C14F27及びC15F29の各ピーク強度

である。 

4.8.3 

図3に示すようなA3 / A2比及びA1 / A2比の管理図を作成する。使用したい装置における相対強度

K 0153:2015 (ISO 23830:2008) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

の一定性の比率(パーセンテージ)限界,±δを決定する。図3に示したような適切な管理図上に,A3 / A2

及びA1 / A2について選択した比率変化の管理限界を作図する。±0.7 δのところに警告限界を付け加える。 

注記 A1 / A2及びA3 / A2の典型的な値は,それぞれ,105及び0.045である。 

4.8.4 

A1 / A2式における不確かさU95(A1 / A2) を,式(14)で算出する。 

5.0

11

10

4

3

2

1

2

1

95

)

(7

1

)

(7

1

)

/

(

+

+

+

=

I

I

I

I

A

A

k

A

A

U

 ···························· (14) 

また,A3 / A2式における不確かさU95(A3 / A2) を,式(15)で算出する。 

5.0

11

10

13

12

2

3

2

3

95

)

(7

1

)

(7

1

)

/

(

+

+

+

=

I

I

I

I

A

A

k

A

A

U

 ··························· (15) 

式(14)及び式(15)において,95 %の信頼性レベルでkの値は,2が得られる。図3に図示したように,A1 / A2

及びA3 / A2のエラーバーとしてU95(A1 / A2) 及びU95(A3 / A2) を作図する。 

注記1 絶対値iIの相対標準偏差は,比率の相対標準偏差よりかなり大きくなっても差し支えない。

これはスペクトル中の全ピークが共通の影響を受けているようなスペクトル間で生じる系統

的な影響に起因するもので,式(14)及び式(15)で算出される相対的不確かさには影響を及ぼさ

ない。 

注記2 式(14)及び式(15)では,ピーク比における不確かさはポアソン統計に従うイオンカウンティン

グゆらぎだけに影響され,また,iI値は,イオンカウントで測定することを前提としている。 

background image

10 

K 0153:2015 (ISO 23830:2008) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

X  測定日(月) 
   01 1月 
   04 4月 
   07 7月 
   10 10月 
a  警告限界 
b  95 %の許容誤差限界 

ここでプロットされた点は,A1 / A2値の例として2003年1月の測定開始以降は調整されていない装置から得ら

れたものである。再調整することが望ましかった2004年7月に警告限界を超えて,2005年1月に初めて調整から
外れた。同様の管理図はA3 / A4用にも作成する。 

図3−装置の相対強度安定性モニタ用に10 %変動を許容誤差限界とした管理図の模式図 

(参考文献[10]に示したものと同種) 

4.9 

次の校正 

大幅な装置の改造若しくは装置調整を行った後,又は装置使用期間の3か月ごとに,4.5及び4.6に記載

した同じ条件で4.2〜4.8を繰り返して新品の試料を分析し,管理図にデータを追加する。A1 / A2値及び

U95(A1 / A2) 値の和又は差が,A3 / A2の場合も同様に,警告限界に到達したら,A1 / A2及びA3 / A2とそれら

のU95を新たに測定し,許容範囲内に十分収まるように,装置確認及び調整,又はアライメントの手順を

改訂しなければならない。 

11 

K 0153:2015 (ISO 23830:2008) 

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附属書A 

(参考) 

スタティックSIMSのための適切な操作条件の例 

A.1 一般 

この附属書は,この規格に適合して装置を操作するのに適切な操作条件の例を提供する。 

A.2 ToF形質量分析計を使ったスタティックSIMSのための値の例 

十分な質のスペクトルを得るためには,4×108個の入射イオンが必要である。 

それに,J<1016 m−2を満足するためには,式(2)から式(A.1)が導かれる。 

μm

200

R

 ·········································································· (A.1) 

ToFシステムにとって,R=200 μmは,質量分解能が過度に低下しないことを保証するために望ましい

条件である。計数統計誤差を更に少なくするためには,Rはもっと大きくする必要がある。この場合には,

質量分解能を低下させるという犠牲を払う場合もある。 

128×128ラスタでは,式(1)から,式(A.2)となる。 

μm

1.3

d

 ············································································ (A.2) 

イオンビームをこの値までにぼかすことができない場合には,ピクセルの数Xを多くしなければならな

い。典型的には,多くのToFシステムでは,パルス化されたイオンビーム時間平均電流qが0.5 pA,繰返

し周波数Fが10 kHz,正方形のラスタ領域128×128ピクセルを使っている。それに,J=1016 m−2及びR

=200 μmを満足するためには,式(2)から全スペクトル測定時間Tは,式(A.3)の値になる。 

s

128

=

T

 ·············································································· (A.3) 

ラスタ回数は,式(4)から式(A.4)の値になる。 

78

=

n

 ·················································································· (A.4) 

A.3 扇形磁場形質量分析計を使ったスタティックSIMSのための値の例 

典型的には,多くの非パルス化システムでは,パルス化されたイオンビーム電流Qを0.5 nA,正方形の

ラスタ領域5 mm×5 mmを使う。それに,J=1016 m−2を満足するためには,式(2)から全スペクトル測定時

間Tは,式(A.5)の値になる。 

s

80

=

T

················································································ (A.5) 

12 

K 0153:2015 (ISO 23830:2008) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

参考文献 

[1] GILMORE,I.S.,and SEAH,M.P.,Fluence,Flux,Current and Current Density Measurement 

in Faraday Cups for Surface Analysis,Surface and Interface Analysis,1995,Vol.23,pp.248-258 

[2] STEPHAN,T.,ZEHNFENNING,J.,and BENNINGHOVEN,A.,Journal of Vacuum Science 

and Technology A,1994,Vol.12.p.405 

[3] GILMORE,I.S.,and SEAH. M.P.,Ion Detection Efficiency in SIMS: Energy,Mass and 

Composition Dependencies for Microchannel Plates used in Mass Spectrometers,International 

Journal of mass Spectrometry,2000,Vol.202,pp.217-229 

[4] GILMORE,I.S.,and SEAH. M.P.,Electron flood gun damage in the analysis of polymers and 

organics in time-of-flight SIMS. Applied Surface Science,2002,Vol.187,pp.89-100 

[5] GILMORE,I.S.,and SEAH. M.P.,Static SIMS: Surface Charge Stabilization of Insulators for 

Highly Repeatable Spectra when Using a Quadrupole Mass Spectrometer,Surface and Interface 

Analysis,1995,Vol.23,pp.191-203 

[6] GILMORE,I.S.,and SEAH. M.P.,Static SIMS inter-laboratory study,Surface and Interface 

analysis,2000,Vol.29,pp.624-637 

[7] GILMORE,I.S.,SEAH. M.P.,and GREEN,F.M.,Static TOF-SIMS−A VAMAS interlaboratory 

study−Part 1: Repeatability and reproducibility of spectra,Surface and Interface analysis,2005,

Vol.37,pp.651-672 

[8] JIS Z 9020-1 管理図−第1部:一般指針 

注記 対応国際規格:ISO 7870-1,Control charts−Part 1: General guidelines(IDT) 

[9] ISO 7873,Control charts for arithmetic average with warning limits 

[10] ISO 24236,Surface chemical analysis−Auger electron spectroscopy−Repeatability and 

constancy of intensity scale