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H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が改正した日

本工業規格である。これによってJIS H 8711 : 1990は改正され,この規格に置き換えられる。 

今回の改正では,日本工業規格と国際規格との整合を図ることに重点を置き,対応国際規格の規定内容

をすべて採用し,また,旧JISの内容を変更した。 

この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の

実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。通商産業大臣及び日本工業標準調査会

は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新

案登録出願にかかわる確認について,責任はもたない。 

附属書A(規定) 結晶粒の方向性試験 

附属書1(参考) 金属及び合金の腐食−応力腐食割れ試験−第1部:試験手順の一般的解説 

附属書2(参考) 金属及び合金の腐食−応力腐食割れ試験−第2部:板曲げ試験片の作製と試験 

附属書3(参考) 金属及び合金の腐食−応力腐食割れ試験−第3部:U字曲げ試験片の作製と試験 

附属書4(参考) 金属及び合金の腐食−応力腐食割れ試験−第4部:単軸引張試験片の作製と試験 

附属書5(参考) 金属及び合金の腐食−応力腐食割れ試験−第5部:C−リング試験片の作製と試験 

附属書5A(規定) C−リング試験片の応力計算式 

附属書6(参考) 金属及び合金の腐食−応力腐食割れ試験第−6部:予き裂入り試験片の作製と試

験 

附属書6A(規定) 応力腐食試験用ノッチ入り試験片の使用 

附属書7(参考) 金属及び合金の腐食−応力腐食割れ試験−第7部:低ひずみ速度試験 

附属書7A(参考) ひずみ速度 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

H 8711 : 2000 

(ISO 9591 : 1992) 

アルミニウム合金の応力腐食割れ試験方法 

Test methods for stress corrosion cracking on aluminium alloys 

序文 この規格は,1992年に発行されたISO 9591, Corrosion of aluminium alloys−Determination of resistance 

to stress corrosion crackingを元に作成した日本工業規格であり,附属書(参考)1〜7を除いて,技術的内容

及び規格票の様式を変更することなく作成している。 

 附属書(参考)1〜7には,ISO 9591が引用規格としているISO 7539-1〜7を翻訳して記載した。これら

の引用規格は,この規格の内容を補足するものであり,この規格の利用の便と理解を助けるものである。 

 なお,この規格で点線の下線を施してある“参考”は,原国際規格にはない事項である。 

1. 適用範囲 

1.1 

この規格は,アルミニウム合金の応力腐食割れ抵抗性の試験方法を定めたものである。 

1.2 

この規格は,試験片の採取方法,試験片の形状,荷重負荷方法,腐食環境条件,及び測定結果の解

釈方法について定めている。 

1.3 

この規格は,アルミニウム合金の化学組成,製造方法及び熱処理方法の関連で,応力腐食割れ抵抗

性を調べることを目的としている。 

1.4 

この規格は,アルミニウム展伸材及び鋳物の製品,半製品,部品及び溶接加工品について適用する。 

1.5 

自然環境の大部分及び人工環境の多くは塩化物を含むので,この規格は,海洋環境下又は,破壊機

構を変化させないような塩化物を含む環境下で使用される製品の性能を比較するために用いることができ

る。ただし,この試験の結果は品質の絶対的な評価と考えないほうがよい。 

2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す

る。これらの引用規格のうちで,発効年(又は,発行年)を付記してあるものは,記載の年の版だけが,

この規格の規定を構成するものであって,その後の改正版・追補には適用しない。発効年(又は,発行年)

を付記していない引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

ISO 7539-1 : 1987, Corrosion of metals and alloys−Stress corrosion testing−Part 1 : General guidance on 

testing procedure. (金属及び合金の腐食:応力腐食割れ試験,第1部:試験手順の一般的解説) 

ISO 7539-2 : 1989, Corrosion of metals and alloys−Stress corrosion testing−Part 2 : Preparation and use of 

bent-beam specimens. (金属及び合金の腐食:応力腐食割れ試験,第2部:板曲げ試験片の作製と

試験) 

ISO 7539-3 : 1989, Corrosion of metals and alloys−Stress corrosion testing−Part 3 : Preparation and use of 

U-bend specimens. (金属及び合金の腐食:応力腐食割れ試験,第3部:U字曲げ試験片の作製と

試験) 

ISO 7539-4 : 1989, Corrosion of metals and alloys−Stress corrosion testing−Part 4 : Preparation and use of 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

uniaxially loaded tension specimens. (金属及び合金の腐食:応力腐食割れ試験,第4部:単軸引張

試験片の作製と試験) 

ISO 7539-5 : 1989, Corrosion of metals and alloys−Stress corrosion testing−Part 5 : Preparation and use of 

C-ring specimens. (金属及び合金の腐食:応力腐食割れ試験,第5部:C−リング試験片の作製と

試験) 

ISO 7539-6 : 1989, Corrosion of metals and alloys−Stress corrosion testing−Part 6 : Preparation and use of 

precraked specimens. (金属及び合金の腐食:応力腐食割れ試験,第6部:予き裂入り試験片の作

製と試験) 

ISO 7539-7 : 1989, Corrosion of metals and alloys−Stress corrosion testing−Part 7 : Slow strain rate testing. 

(金属及び合金の腐食:応力腐食割れ試験,第7部:低ひずみ速度試験) 

参考 JIS Z 0103(防せい防食用語)及びJIS H 0201(アルミニウム表面処理用語)にも,関連事項

が規定されている。 

3. 定義 ISO 7539-1(この規格の“附属書1”を参照)で与えられる定義が,この規格のために適用さ

れる。 

参考 JIS Z 0103及びJIS H 0201にも,関連用語が規定されている。 

4. 試験方法の種類 

4.1 

この規格では二つの荷重負荷方式を規定する。すなわち,“定ひずみ方式”と“定荷重方式”である。 

4.2 

この規格は,試験液への浸せき方法として次の二つの方法を規定している。 

a) 交互浸せき法。 

b) 連続浸せき法(ただし,連続浸せき法の使用は受渡当事者間の協定による)。 

4.3 

合金の応力腐食割れに対する評価基準は,以下による。 

a) σscc:下限界応力,すなわち,一定の試験期間内に割れが発生しない最大応力。 

b) τscc:破断時間,すなわち,定ひずみ条件下にある試験片に,肉眼又は30倍以下の倍率での観察で,

識別可能な割れが初めて認められる時間。 

4.4 

荷重負荷方式,応力値,腐食環境及び評価基準の選択は,受渡当事者間の協定による。これらは,

試験報告書に明記されることが望ましい。 

5. 試験装置と試験片 

5.1 

負荷装置 ヨーク,ねじ,ばね,てこなどのジグ,及び特殊な負荷装置によって,試験片に引張応

力を負荷する。 

5.2 

試験装置の構成材料 試験装置の試験液と接触する部位には,腐食によって試験液を汚染し,その

腐食性を変化させるような材料を使用してはならない。 

5.2.1 

不活性なプラスチック又はガラスを使用することが望ましい。 

5.2.2 

試験液と接触する金属部材には,耐食合金を使用することができるが,5.2を満たす適切な耐食性

皮膜で保護すべきである。 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

5.3 

試験片ホルダー 試験片ホルダーは,試験片を他の試験片及び装置内の露出金属部材から電気的に

絶縁するように設計されることが望ましい。負荷ボルトや負荷ジグを用いる場合のように,もし絶縁が不

可能な場合には,試験片と接触する露出金属部材は適切な皮膜によって腐食液から絶縁されるべきである。

その際,保護皮膜は腐食抑制イオン,腐食促進イオン,保護油を透過するものであってはならない。また,

試験片の保護皮膜のない部分に蒸気などの残留物を残すものであってはならない。特に,クロム酸塩を含

む皮膜は避けるべきである。保護皮膜を施した後,すべての試験片は脱脂することが望ましい。 

5.4 

交互浸せきのための装置 

5.4.1 

周期的な浸せきのために用いる装置は,以下の条件を満たせばよい。 

a) 試験液への浸せき及び取り出しの速度があらかじめ決められた速度である。 

b) 及び,適当な不活性材料で装置が作られている。 

− 通常用いる交互浸せきの方法には,次のようなものがある。 

a) 可動ラックに取り付けた試験片が,試験液の入った固定されたタンク中に周期的に浸せきされる。 

b) 10分間ごとに60度回転する回転ホイールに取り付けた試験片が,固定されたタンクの試験液中を通

るようにする。 

c) 大気中の静止トレーに試験片を取り付け,試験液を貯蔵タンクからトレーに空気圧,非金属製ポンプ

又はドレンによって周期的に出し入れする。 

5.4.2 

試験片の試験液への浸せきと取り出し速度は,震動しない範囲でできる限り速いことが望ましい。

標準化のためには,試験液中の浸せき時から,又は大気暴露時から,2分間以内の任意の時間を採用しな

ければならない。 

6. 試料採取方法 

6.1 

この規格は,一般に,厚い材料については3方向,薄い材料については2方向の試験片採取方向を

規定している。試料採取方向を図1に示す。図1a)の表記において,最初の方向は応力負荷方向,二番目

の方向は割れの伝ぱ(播)方向を意味する。 

6.2 

特に指定されない限り,厚い材料においては試験は厚さ方向 (S),薄い材料では幅方向 (T) に行う

ことが望ましい。断面が円形及び正方形に近い圧延材又は押出材においては,試験片は加工方向に直角(半

径方向)にとることが望ましい。 

鍛造材のように材料の方向が不明確な場合,応力腐食割れ感受性が最も高い方向(厚さ方向又は幅方向)

に試験片をとるために,結晶粒の方向性をマクロエッチ又は金属組織観察によって調べることが推奨され

る(附属書A参照)。 

6.3 

試験に供する試験片の数は,受渡当事者間の協定によって決める。ただし,単一応力で試験する場

合は,隣接して採取した4個以上の試験片について試験を行わなければならない。また,応力を変えて試

験する場合は,それぞれの応力ごとに3個以上の試験片とする。 

7. 試験片 

7.1 

種類と大きさ ISO 7539-2からISO 7539-5で定義されている試験片を使用することができる(この

規格の“附属書2〜5”を参照)。 

7.1.1 

厚板や鍛造材などのような厚肉材からは,単軸引張試験片,C−リング試験片又は曲げ試験片を採

取することができる。 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

7.1.2 

薄板のような薄肉材からは,単軸引張試験片,板曲げ試験片又はU字曲げ試験片を採取すること

ができる。 

7.1.3 

溶接部材から試験片を採取する場合,応力負荷方向が溶接方向と垂直になるようにして,溶接部が

試験片中央部にくるようにする。 

7.1.4 

合金間及び調質間の比較のための試験の場合,同一種類で同一寸法の試験片について試験を行うこ

とが望ましい。試験片は,可能ならば最終機械加工の前に熱処理を行う。それが不可能な場合は,表面酸

化膜の除去についての対策を講じなければならない(7.2.4参照)。 

7.2 

表面性状 

7.2.1 

機械的又は金属組織的な原因による表面欠陥のある試験片は,除外すべきである。 

7.2.2 

試験片の表面性状は以下の事項に従うことが望ましい。 

a) 受け入れたままの機械加工を加えない表面状態 

b) 機械加工を加えた表面状態:製品製造時の表面状態を再現する必要のある場合を除いて,中心線平均

粗さ (Ra) が1μm以下であることが推奨される。 

c) 溶接部材試験片の表面性状は,受渡当事者間の協定に基づいて決める。 

7.2.3 

機械加工条件は,試験片の金属組織に影響を及ぼさず,残留応力の発生を最少にするように設定さ

れることが望ましい。 

7.2.4 

試験片は,有機溶剤(例えば,石油エーテル又はアセトン)によって脱脂する。受渡当事者間の協

定によって,他の表面処理,例えば,酸洗又はエッチングなどを施してもよい。しかし,このような科学

的処理は,合金及び調質によっては割れの発生を導く可能性があることに注意する。そのような場合,化

学的処理はしないほうがよい。 

7.3 

試験片の識別 試験片は適切な方法(ISO 7539-1 : この規格の“附属書1”を参照)によって識別す

る。識別マークは腐食に耐えるものであること。 

7.4 

試験片に関する注意 脱脂又は酸洗の後,試験前に試験片の試験部には触れないように注意する。 

8. 試験環境 試験環境は,実際の使用環境によく対応することが望ましい。受渡当事者間での協定がな

い限り,次に挙げる試験環境が推奨される。 

8.1 

試験液に用いる薬品は,分析級の科学試薬とする。 

参考 分析級とは,JISに規定された試薬をいう。 

8.2 

試験液には蒸留水又はイオン交換水を用いる。最小の抵抗率は10Ω・mとする。 

8.3 

交互浸せきの場合,塩化ナトリウム溶 (3.5±0.1mass%) の液を用いる。このとき,新たに調整した

試験液のpHは6.4〜7.2になるように,もし,必要ならpHの調節を行わなければならない(8.5参照)。 

8.4 

連続浸せきの場合,塩化ナトリウム (2.0±0.1mass%) とクロム酸ナトリウム (Na2CrO4) (0.5±

0.05mass%) の混合溶液を用いる。この試験液のpHは3.0±0.2の範囲に入るように塩酸によって調整する。

pHは試験中定期的に確認し,必要ならば調整を行う(8.5参照)。 

8.5 

試験液のpHの調整には,塩酸又は水酸化ナトリウムの希釈液だけを用いる。 

8.6 

試験室内の温度と湿度は,交互浸せき試験においては次の浸せきまでの時間内に,試験片が乾燥す

ることを保証する条件に制御する。室内の相対湿度は,40%と75%の間に制御維持する。試験結果の再現

性を保証するためには,室内温度は25±3℃に保つことが推奨される。 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

8.7 

新たに作った試験液を用いる前に,液温が室温の±3℃内に入るようにする。その後の液温の制御は

必要ない。別の方法として,室温を制御し,試験液が周囲の温度と平衡する温度に保たれるようにしても

よい。 

8.8 

試験液の体積と浸せきする試験片の露出表面積(アルミニウム合金製の無被覆取付けジグの表面積

を含む。)の比の最小値は,交互浸せきの場合35ml/cm2,連続浸せきの塩化ナトリウムとクロム酸ナトリ

ウムの混合試験液の場合は10ml/cm2とする。 

8.9 

試験液の蒸発損失を補うため,8.2を満たす純度の水を試験液に毎日加えることが望ましい。 

8.10 新しい試験液は一週間ごとに準備することが望ましい。同時に,試験装置の試験液に接触する部位

は流水で清浄にすることが望ましい。 

9. 負荷応力 負荷応力は試験片の弾性域内であることが望ましい。弾性応力はISO 7539-2からISO 

7539-5までにおいて与えられている式によって求める(この規格の“附属書2〜5”を参照)。 

10. 試験手順 

10.1 試験片は応力負荷後,直ちに試験環境にさらされることが望ましい。 

10.2 交互浸せき試験においては,試験片は1時間のうちの10分間は塩化ナトリウム試験液中に浸せきさ

れ,その後,試験液から取り出し,室内又は大気中に50分間は保持して乾燥する。 

室内はゆっくりした換気が望ましく,換気の悪い状態は避けるべきである。 

多数の試験片を同じように乾かす条件を維持することが難しいので,強制乾燥させることは推奨できな

い。 

所定の暴露期間の間は通常,中断することなしに試験を行う。 

10.3 試験の継続時間は合金の組成と熱処理,試験片の寸法,試験環境及び応力負荷方式に依存する。通

常,試験継続時間は10日から90日の間である。 

試験の目的が,生産ロットの品質管理のため,又は合金の標準規格に定められた特性に入るかどうかを

決めるための場合,試験継続時間は,対応する仕様による要求に応じて決めるか,又は受渡当事者間の協

定に基づいて決める。 

10.4 異なる合金成分の試験片を,同時に一つの試験液中で試験を行ってはならない。 

試験結果の再現性を保つために,塩水中における陽極電位が大きく異なる試験片は,同一の試験液で試

験を行ってはならない。例えば,銅を含まないアルミニウム合金の試験片は,銅を約0.5%以上含む合金の

試験片と一緒に浸せきしないほうがよい。 

10.5 試験後,一定のひずみで破断しなかった試験片は,荷重を除去し水洗後,室温で60から70%の濃硝

酸で洗い腐食生成物を除去する。その後,詳細な検査を行う前に水洗し乾燥することが望ましい。 

11. 試験結果の評価 

11.1 定ひずみ条件下で試験液に浸せきした試験片で,洗浄後にかなりの腐食が起こっていたものは,金

属組織検査が必要となる場合がある。定荷重下で試験した試験片については,10日間以上の経過後に破断

した場合について,破断が応力腐食によるか,又は他の形態の腐食によるものかを調べるために,金属組

織検査を行ってもよい。粒内のピッティングによる腐食又はピッティングと延性破断を示しただけの試験

片は,応力腐食割れによる破断とみなしてはならない。 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

11.2 応力腐食,粒界腐食,粒内ピッティングを区別するために,試験片断面の光学顕微鏡による組織検

査を行ってもよい。粒内のピッティングよりも深い粒界割れを示す試験片は,応力腐食割れを起こしたも

のとみなす。粒界腐食が粒内ピッティングより深くない場合,応力腐食割れによる破断とみなしてはなら

ない。 

定荷重下で試験した試験片に対しては,破面の走査電子顕微鏡 (SEM) による検査により,応力腐食に

よる脆性的な粒界破断と機械的な過荷重による延性的な粒内破断とを区別することができる。定荷重下で

試験した試験片においては,破断が応力腐食に起因する場合,両方の種類の破断が起こる。 

12. 試験の報告 試験の報告には以下に挙げる情報を含むことが必要である。 

a) 合金の化学組成又は表示記号。 

b) 試験材料の形状,調質,断面の厚さ。 

c) 試験片のサイズと採取位置。 

d) 試験片の種類,寸法,結晶粒の伸長方向及び同一条件の試験数。 

e) 応力レベルと負荷方式。 

f) 

試験片の表面性状。 

g) 試験継続時間と個々の試験片の破断時間。 

h) 試験方法と腐食環境条件。 

i) 

すべての金属組織検査の結果。 

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附属書A(規定) 結晶粒の方向性試験 

A.1 マクロエッチング 

機械加工面にエッチングを施す。 

室温で1分間,次の組成の試験液に浸す。 

a) 1容積の塩酸,38mass%,密度1.19g/ml 

b) 1容積の硝酸,60mass%,密度1.38g/ml 

c) 3容積のふっ化水素酸(40mass%, 密度1.14g/ml)を水で薄めて2%vol%としたものとする。 

エッチング後,肉眼又は低倍率下で視覚による検査を行う。 

A.2 テトラフルオロほう酸(ほうふっ化水素酸)エッチング 

注意深く研磨した表面,望ましくは電解研磨の後,陽極酸化エッチングを施す。 

a) 陽極酸化処理条件:20mA/cm2,のテトラフルオロほう酸水試験 (2.5vol%) 液中,1又は2分間,室温。 

エッチング後,偏光顕微鏡を用いて検査を行う。 

図1 試験片採取方向 

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図1 試験片採取方向(続き) 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書1(参考) 

金属及び合金の腐食−応力腐食割れ試験− 

第1部:試験手順の一般的解説 

この附属書(参考)は,本体及び附属書(規定)に関連する事柄を補足するもので,規定の一部ではな

い。この附属書(参考)は,この規格の利用者の便宜を図るため,この規格に引用されているISO 7539-1 : 

1987 (E) を翻訳したものである。 

0. 序文 この第1部では,金属及び合金の応力腐食抵抗性を評価するために発達してきた様々な試験手

順の選定,利用及びその意義に関する一般的な解説を行っている。それぞれの試験手順は,次の各部に記

述している。 

第2部:板曲げ試験片の作製と試験 

第3部:U字曲げ試験片の作製と試験 

第4部:単軸引張試験片の作製と試験 

第5部:C−リング試験片の作製と試験 

第6部:予き裂入り試験片の作製と試験 

第7部:低ひずみ速度試験 

1. 適用範囲及び適用分野 この部では,金属の応力腐食感受性を評価するための試験方法を選定し,実

施するための一般的な考え方を記述している。 

注意 個別の試験方法については,ここでは詳細に扱っていない。これらはISO 7539の他の部に記述

されている。 

2. 定義 

2.1 

応力腐食 腐食環境と静的な引張応力とが同時に作用することで生じる金属への相乗的な浸食で,

通常は割れの形成に至る。この作用は,しばしば金属構造物の耐荷重特性を著しく低下させる。 

注意 応力腐食割れ(3.1)参照。 

2.2 

応力腐食に対する下限界応力 ある試験条件下において,それ以上では応力腐食き裂が発生し成長

する応力。 

2.3 

応力腐食に対する下限界応力拡大係数 塑性変形が強く拘束された状態,すなわち,平面ひずみが

支配的な状態において,それ以上では応力腐食き裂が発生する応力拡大係数。 

2.4 

試験環境 実際の使用環境又は実験室的に作られた環境であって,試験片はその環境にさらされ,

一定状態に保持されるか,又は決められた条件で変化させられる。応力腐食の場合,その環境はしばしば

非常に特定なものである(6.参照)。 

2.5 

試験の開始 応力が負荷された時間,又は環境中での暴露を開始した時間のうち,後のほうの時間

を試験開始時間とする。 

2.6 

き裂発生時間 試験開始から,採用された方法によってき裂が検知されるまでの期間。 

10 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

2.7 

破断時間 試験開始から破壊が生じるまでに経過した時間で,破壊の条件は最初の割れが生じた状

態,試験片が完全に分離した状態,又はある決まった中間の状態である。 

2.8 

低ひずみ速度試験 通常10−3〜10−7s−1のひずみ速度に制御された引張又は曲げ試験。ひずみは連続

的又は段階的に増加させられるが,周期的な変化はさせられない。 

2.9 

平均き裂進展速度 応力腐食によって発生した最大き裂深さを試験時間で割った値。 

2.10 方位 製造方法に関係して生じる製品のある特定の組織方位,例えば,板材の圧延方位に対する試

験片への引張応力の負荷方位。 

3. 背景 

3.1 

応力腐食の定義(2.1)よって応力腐食割れは応力腐食の典型的な場合であり,ある状況下では浸食が

き裂の形成に至らない場合のあることも明らかである。割れに至ることが通常の結果であることは一般的

に認められているが,応力の存在によって助長された粒界腐食及び伸長された裂け目のような,他の形態

もまた認められている。 

この解説の目的は,試験方法に依存してこのような腐食形態の違いが存在するということを理解してお

れば,腐食の文献で通常扱われているように,“応力腐食”と“応力腐食割れ”という用語を同じ意味とし

てとらえることができる,ということを示すことにある。 

この規格が関係しているのは,金属の溶解,又は腐食環境と引張応力が同時に作用する結果として生じ

た金属中への浸透水素の挙動についてのすべての現象である。ただし,液体金属及びはく離腐食によるぜ

い化は除かれる。 

注意 材質劣化による局部溶解と,水素に起因するこれらの現象とは区別することが望ましい。この

二つの現象は重なるかもしれないが,長期にわたる水素環境への暴露に直接起因した現象と混

同してはならない。 

3.2 

金属の応力腐食特性の評価方法には様々な方法がある。それぞれがある状況に応じて固有の利点を

もっている。 

3.3 

応力腐食抵抗性又は応力腐食感受性という特性との関係においては,“試験”という用語が特別な意

味をもっていると理解することは重要である。ある場合において応力腐食が生じるかどうかは,試験条件

と材料特性の両方に依存する。応力腐食に対する“感受性”という言葉は,一般的に適用できる尺度での

材料特性及び品質を意味するものではない。なぜなら,一連の合金の優位性の順序は,試験条件によって

変わるかもしれないからである。 

3.4 

理想的には,ある用途での応力腐食の危険性を実証するためには,使用環境として考え得るすべて

の条件下での実証試験を行う必要がある。これは不可能でないまでも実際的には困難で,ほとんど行われ

ていない。しかし,ある特定の用途において起こりうる使用状態についての妥当な指針を求めるための試

験結果として,多くの“標準試験方法”が提示されている。しかしながら,これらの実験室的“標準試験

方法”は,その実験条件が,例え経験的であるとしても,適正な関連性をもつことが分かっているような

使用条件の場合にだけ利用できる。ある合金が,他の合金に対して有用であることが既に分かっている試

験方法に合格するかしないかということは,なにを評価するかによって重要度が変わってくる。また,あ

る用途に用いる合金の有用性を正確に区別するような試験も,もし,暴露条件が異なれば,必ずしも安全

な指標を与えないかもしれない。そのため,経験のあるなしにかかわらず,標準試験方法の利用には確認

を必要とする。 

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H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

3.5 

この条項以降では,応力腐食の進行が暴露条件及び試験条件の小さな変化に非常に敏感であること

について,特に注意を促している。材料の使用者は,応力腐食試験が行われる条件の選定に責任を負わね

ばならない。幾つかの試験方法がこの規格に示されているという事実も,これらの試験がある与えられた

状況に対して最もふさわしい試験方法であるということを意味しない。これらの試験方法がこの規格に示

されている理由は,これらが広範囲に使用され,特定又は一般の装置−環境系において妥当であることが

証明されているということにある。しかし,依然として試験結果の解釈に対する責任は材料の使用者にあ

り,この規格の存在によって責任が軽減されるわけではない。 

3.6 

最も広く用いられている試験方法を包含したこの規格の他の部に加え,試験細目及び結果の解釈に

関してのより一般的なこの解説が必要であろうと思われる。この解説の作成に当たっては,妥当な情報に

よって最新化されたこの主題に関する今までの解説文献が利用されている。 

4. 試験方法の選択 

4.1 

応力腐食試験の計画に着手する前に,どの種類の試験が適しているかを判断しなければならない。

このような判断は試験の目的及び必要とする情報に大きく依存する。ある試験方法は使用条件を可能な限

り再現することを試みるものであって,プラント技術者にとっては有用であるが,別の試験方法は破壊の

機構的な解釈を研究するために考案されたものかもしれない。例えば,材料,場所,時間等の制約は,前

者では比較的単純な試験手順で行えるかもしれないが,別な状況においてはより複雑な実験技術が必要と

なるだろう。したがって,例えば,表面仕上げの影響を考えるには不適切であったとしても,き裂伝ぱ速

度の研究には予き裂入り試験片の使用が含まれることになる。多くの複雑な技法が利用可能であるが,よ

り精巧な技法が使えないようなある種の状況下においては,単純な試験方法の採用も非常に価値あるもの

であろう。 

4.2 

合格か否かという種類の試験方法を選択した場合,その試験方法は,特定の使用条件に使えそうな

材料に不良という判定を下すほどには厳密でなく,急速破壊が起こるだろう環境でのその材料の使用を推

奨するほどには不確かでない,ということを知っておくことは重要である。 

4.3 

応力腐食試験の目的は普通,実用試験で得られるよりもより速く情報を得ることであるが,同時に,

これは実使用の挙動を予測することでもある。最も普通に採用される条件のうちでこれを実現するのは,

高応力の利用,低速度の連続ひずみ法,予き裂入り試験片の使用,実環境よりも高濃度の試験環境の使用,

試験温度の増加,及び電気化学的な促進である。しかし,これらの方法を使うときには,破壊の機構の細

部が変わらないように制御されることが重要である。 

4.4 

使用環境を正確に再現することが非常に困難である場合,個々の段階で働く主要な因子を可能な限

り特定するために,応力腐食の進行過程を解析することは有用であろう。その場合,選ばれた応力腐食試

験は腐食機構の一段階だけを含んだものになるかもしれない。 

5. 応力負荷系 

5.1 

概要 平滑試験片,ノッチ入り又は予き裂入り試験片のいずれであろうとも,試験片への負荷方法

は,それが次のいずれの項目に該当するかによって都合よく分類できる。 

a) 定ひずみ(5.2参照) 

b) 定荷重(5.3参照) 

c) 低ひずみ速度(5.4参照) 

予き裂入り試験片の場合,臨界条件は応力拡大係数KISCCで定義され,定応力拡大係数条件でも試験で

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

きる。 

様々な試験方法の限界を知ることは,少なくとも応力の負荷方法を選択することと同程度に重要である。 

5.2 

定ひずみ試験 

5.2.1 

曲げ試験がこの分類に入るので,この試験方法はグループとしては最も普及している種類である。

さらに,この種の試験方法は,使用中の破壊にしばしば関係している構造応力をシミュレートするもので

もある。 

5.2.2 

普通は,薄板状の材料は曲げ試験によって,厚板材料は引張り又はC−リングによって試験される。

また,C−リングは管状の製品及び丸い断面の半製品の試験にも用いられる。 

5.2.3 

曲げ試験では単純な,したがって,しばしば安価な試験片及びジグを採用できるという魅力がある。

こういった試験方法の問題点は通常,応力レベルの定量測定が可能である場合においても,応力レベルの

再現性が低いことである。この状況を改善するために,例えば,3点曲げ試験に代わる4点曲げ試験とい

った,より精巧な曲げ試験が考案されてきたが,応力レベルの計算に普通用いられる単純な曲げ理論の限

界は,予測応力,特に弾性限を超えるひずみを必要とする場合における予測応力に誤差を生じることであ

る。表面応力を測定するためにひずみゲージを用いることは,ある種の状況下では有用であろう。帯状試

験片を用いてU字曲げ試験片を作ると,割れの感受性に影響を及ぼすほどの大きな塑性変形が導入される。 

5.2.4 

管状の材料は,C−リング又はO−リング形状で試験できる。前者の方法では,その切れ目を部分

的に開口させるか,又は閉口させることによって応力が負荷され,後者では内径よりも大きいプラグを差

し込むことで応力が加えられる。C−リング試験は,また,肉厚の大きな製品の試験,例えば,アルミニ

ウム合金の厚さ方向を試験するのに特に有用であることも分かっている。 

5.2.5 

定ひずみ引張試験は,応力の負荷及び計算を単純化できることから,ときには曲げ試験よりもこち

らが選ばれる。しかし,この試験方法は同じ断面積の試験片を用いた曲げ試験に比べて,より頑丈な拘束

フレームを必要とする。 

5.2.6 

不均一変形の結果として生じる残留応力のような内部応力をもつ試験片を使用すれば,拘束フレー

ムの使用は避けることができるかもしれない。残留応力は,例えば,薄板又は厚板材の張出し成形及び溶

接によって導入できる。しかし,初期応力値は降伏応力域の最大値に達する程度にまで変化させるのが普

通であるが,この種の試験では,初期応力値の系統的変化には問題がある。さらに,たとえ,その試験が

実際の状態を再現しているとしても,張出し加工した板及び部分的に平らにしたチューブに残された残留

応力による弾性スプリングバックも問題になり,溶接を含む場合には,組織的な変化が困難さを引き起こ

す。 

5.2.7 

定ひずみ試験片はときとして,従来の試験機及びそれに類似した装置にまず取り付けられた後,試

験片のひずみ状態を維持するために拘束フレームを取り付けることが行われる。試験機によってかけられ

た荷重が除去されたとき,拘束が試験機からフレームに移されることによって試験片のひずみが一定に保

たれていると仮定すると,試験片にはフレームによってもたらされる拘束力による応力が残る。これは試

験機とフレームの剛性が似ていることを意味するが,試験片に比べてフレームがかなり大きな質量をもっ

ている場合にだけいえることである。 

5.2.8 

採用される負荷フレームの剛性は,初期応力レベルに対する影響とは全く別に,試験片の破断時間

にも影響を及ぼす。なぜなら,ほとんどの定ひずみ試験,特にその中でも延性材料に対する試験では,試

験片の初期弾性ひずみは,き裂の進展とともに一部が塑性ひずみへと変化するからである。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

5.2.9 

いったん,荷重が緩和され始めたとき,その緩和が進む程度は試験片によって変わる可能性があり,

これは生じるき裂及びピットの数によって破断時間にも影響を及ぼす。き裂及びピットが多く存在する材

料では著しい荷重緩和が観察され,き裂がほんのわずかしか存在しない材料では,わずかな荷重緩和しか

観察されない。もし,たった一つのき裂しか発生しなかった場合には,そのき裂は最終的な急速破壊が起

きるまでに大きく成長する必要はないかもしれない。なぜなら,そのき裂に対する負荷応力は高く保たれ

ているからである。一方,多くの応力腐食き裂の存在による大きな荷重緩和は,そうしたき裂のあるもの

が,比較的小さな荷重での急速破壊に対応する応力状態を生じるに十分な大きさに達するまで,伝ぱしな

ければならないことを意味している。 

5.2.10 存在する多数のき裂の試験結果に影響する程度は,当然ながら今までに見てきた応力腐食系,すな

わち,材料の破壊じん性のような性質及び使用環境の材料への浸食性に依存する。また,結果は使用され

る拘束ジグの剛性にも依存する。すなわち,フレームの剛性が高いほど,リューダース帯が進展した後に

も試験片に残存するであろう弾性ひずみが減少する。したがって,ある与えられた初期応力に対する破断

時間は,その装置系の剛性によって変化する。ある場合には,き裂は破壊が起こる前に伝ぱをやめてしま

うだろう。 

5.3 

定荷重試験 

5.3.1 

この試験方法は,その負荷応力又は作用応力から見て,応力腐食破壊をより厳密にシミュレートで

きる。試験片の有効断面積は,き裂の進展によって減少するため,この試験方法は応力状態の増加条件を

含んでいる。その結果,この種の試験方法は定ひずみ試験方法よりも速い破壊の発生又は最終破断に至る

負荷状態となっている。 

5.3.2 

ある程度の断面積をもつ試験片に重なりによって荷重をかけるには,通常かなりの質量の機械を要

するが,これは圧縮バネを使うことで軽減できる。バネの特性は,試験中に起こるし緩が荷重を大きく変

化させないものが選択される。引張試験の校正に用いられる校正リングを改良したようなものが,同じ範

ちゅうに属するものである。リングに取り付けられた引張試験片に加わる軸荷重は,校正リングの直径の

変化から求めることができる。 

5.3.3 

負荷装置の大きさを小さくするための別の試みは,例えば,極細線の試験片の使用によって試験片

の断面積を減らすことである。しかし,応力腐食による破壊の起こることが確認できない限り,すなわち,

金属学的に確認できない限り,断面積を減少させることはかなり危険である。これは次の理由による。す

なわち,ある種の応力腐食環境では,有効応力を金属の引張り強さにまで高めてしまうような孔食又はそ

の他の腐食形態の発生によって,破壊の起きる可能性があるからである。非常に小さな断面積の試験片を

使用することには別の危険性もある(7.2.2参照)。 

5.3.4 

別々の試験機で試験片に定荷重をかけるコストは,一つの試験機において試験片を連ねて使用する

ことによって低減できる。また,この方法は試験チャンバに対する必要条件をも軽減する。一連の単軸引

張試験片は簡単な負荷ジグによってつなぐことができ,この方法は破壊が起こらないと予測される場合に

は,よい方法である。なぜならば,一つの試験片の破壊は残りの試験片をもだめにしてしまうからである。

開口形の予き裂入り試験片の連鎖も,負荷ジグによって接続できる。この接続は,別の様式で破壊に至る

のが必然であろう他の試験片に影響を及ぼさないように,き裂の進展に伴ってその試験片は次第に除荷さ

れるように設計されている。この方法の利用者は,誤差の生じないことを確保するために,誤差の生じる

前に,連鎖試験片を使った試験方法の続行を中止すべきである。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

5.3.5 

一つの試験片である範囲の初期応力を設定できることに大きな魅力があるテーパー形引張試験片

の使用が,徐々に一般化してきている。しかし,例えば,正確な限界応力レベルの決定などに使うといっ

たような場合には,注意が必要である。この試験方法の結果は,き裂の存在数及び残余部分の降伏などの

因子によって影響されるかもしれない。こうした試験片は,より限定的な従来試験を行う前の“分類”試

験に使うことがより相応しいであろう。 

5.3.6 

定荷重試験はき裂の進展に伴って応力が増加する要因を含んでいる。したがって,いったん生じた

き裂は,限界応力以下になった定ひずみ試験の場合のように,伝ぱが停止することはまずない。そのため,

ある特定の系においては,定変位条件下で決めるよりも定荷重条件下で決める方が,限界応力値は低くな

りやすい。 

5.4 

低ひずみ速度試験 

5.4.1 

最初は簡便な分類試験と見なされていた低速の動的ひずみ法の応用は,実際と非常に良く対応した

試験方法として使用されつつある。 

この方法は基本的に,破壊が生じるまで適切な環境下で試験片に比較的低速のひずみ速度又は変位速度

(例えば,10−6s−1)を負荷するものである。 

5.4.2 

応力腐食のき裂進展速度は通常,10−3〜10−6mm/sの範囲にある。これは通常の寸法の試験片を使

った定ひずみや定荷重試験といった実験室的試験においては,破壊が数日で生じることを意味している。

このことは,応力腐食き裂が容易に発生するような試験系であればそのとおりである。しかし,非常に長

い試験期間でも試験片の破壊しないことがあるのも,また,普通の試験結果であり,この場合には,ある

任意の時間で試験を終了させることになる。このことの重要さは,再現試験でかなりのばらつきが生じる

であろうということであり,任意の時間で試験を終了させたならば,より長く試験を続けた場合と同じ結

果がでるかどうかということに疑問の要素をもたらすことである。予き裂入り試験片の使用が応力腐食き

裂の発生を助長するのと同様,低速の動的ひずみの応用は,この試験が任意の時間で終わるのではないと

いう別の利点をもっていることは明らかである。なぜなら,この試験の結果は常に,試験片の破壊と破壊

モードに関係した割れの臨界条件とによってもたらされるからである。そのため,普通に行われる低ひず

み速度試験では,応力腐食に対する感受性の違いによって延性破壊によるか,応力腐食割れによるかの違

いはあるが,2日間程度で破壊に至って終わる。比較的短期間でこの種のある確実な結果に至るというこ

とが,この試験方法の主な特徴の一つである。 

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5.4.3 

初期のころのこの試験方法は,合金の組成及び組織又は腐食環境に対する抑制添加剤の効果といっ

た変数が比較できるデータを得るために,また,定荷重及び定ひずみ条件下の実験室試験では破壊に至ら

ないような合金と環境の組合せにおいても応力腐食割れを引き起こすために,使われてきた。そのため,

平滑試験片に応力を負荷するといった他のモードでは破壊に至らないような場合においても,実験室的に

応力腐食破壊を引き起こし得るという意味において,この試験はかなり厳しい種類の試験になり,この意

味において予き裂入り試験片を使った試験と同じ範ちゅうにはいる。近年,動的ひずみ試験のもつ意義の

理解が進み,現在では,この種の試験は単に比較するためだけの,短時間で行うためだけの,又は分類す

るためだけの試験としてよりも,もっと関連性と重要度をもつ試験方法であろうことが明らかになってい

る。低ひずみ速度下で試験片を破壊に至るまで引き裂くといった実験室的な試験は,使用中における破壊

の実体とはほとんど関係がないということが問題になるかもしれない。しかし,実は,定ひずみ試験及び

定荷重試験のいずれにおいても,き裂の伝ぱは,やはり低速の動的ひずみ下で起こっている。最も,初期

応力レベル,き裂発生時間や試験片のクリープを支配する種々の金属学的パラメーターによって,程度の

差はある。さらにいえば,ある種の系においては,応力腐食における応力の作用がひずみ速度を誘起して

おり,これが応力そのものよりもき裂の発生と伝ぱに対する重要な機械的パラメーターであることを暗示

する証拠が増加してきている。こうした場合においては,割れに対する最小クリープ速度というものが,

平滑試験片又は予き裂入り試験片についての定荷重試験から得られる下限界応力又は下限界応力拡大係数

と同様の,設計技術パラメーターとなる。 

5.4.4 

低ひずみ速度試験で必要とされる装置は,簡単にいえばひずみ速度が選択でき,発生荷重に十分対

応できる能力をもっていればよい。この目的で作られた装置は通常,かなり高い剛性をもつフレームと,

10−3〜10−7mm・s−1の範囲のクロスヘッド速度が選択できる一連の減速ギアをもった駆動系から構成され

ている。 

平滑試験片又は予き裂入り試験片を引張状態で使うことができるが,もし,試験片の断面積を大きくす

ることが必要であったり,荷重を高くすることが必要であるならば,曲げ試験片も使うことができる。 

5.4.5 

すべての系において,同じひずみ速度が同じ割れ挙動を生じさせる訳ではないということ,及び試

験したい特定の系に対応したひずみ速度が選択されねばならないということをはっきりさせておくことは

重要である。 

6. 環境因子 

6.1 

概要 応力腐食割れは合金と環境のある,特定の組合せで生じると考えられてきた。例えば,塩化

物溶液中のオーステナイトステンレス鋼及び硝酸溶液中の軟鋼などである。しかし,こうした組合せが次

第に多く見いだされ,純水中での材料の割れの事例さえも見られるようになってきている。さらに,気相

状態の物質も応力腐食機構に影響を及ぼすかもしれず,ガス環境も時には試験に使用されるということに

も注意しておくべきである。このような場合には,圧力が重要なパラメーターになることが多い。 

6.2 

温度 温度は化学反応に非常に大きな影響を及ぼし,温度の上昇に対応して一般に反応速度の増す

ことがよく知られている。これは多くの腐食過程においても同様であるが,様々な原因によって温度の影

響はしばしば非常に複雑になる。反応速度の増加を引き起こす温度の上昇も,例えば,保護皮膜の急速な

形成などによって全体的な速度を減少させるかもしれない。同様に,温度の上昇に伴う水溶液中への酸素

の溶解度の減少は,腐食速度をも低下させる。このほかにも様々な例がある。 

すでに指摘してきたように,活性な腐食と不働態化挙動のバランスを含むかなり特殊な条件下で生じる

応力腐食の場合には,この効果は特に密接にかかわってくるであろう。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

先に述べたように,試験温度は厳密に制御されねばならず,可能ならば常に実環境に対応した温度が選

択されるべきである。4.3において,温度の増加はしばしば試験結果を促進させるために用いられると記述

したが,この方式は明らかに注意して用いられねばならない。 

6.3 

試験液組成 

6.3.1 

応力腐食試験において環境が非常に重要な変数の一つであることは避けられないが,ある種の合金

に対しては幾つかのある特定の試験液が特に広く用いられるようになってきている。例えば,ステンレス

鋼に対する沸騰塩化マグネシウム溶液及び炭素鋼に対する沸騰硝酸溶液がその例である。この種の試験液

の使用は,多くの理由から批判されているが,その主なものは,これらの試験液がプラント条件を通常は

再現していないということである。この指摘は,広範な合金種の相対的な割れ感受性は,環境によって必

ずしも同じでないという点において,案外重要かもしれない。 

6.3.2 

しかしながら,こうした制約が留意すべきものと認識され,試験液の作製及び使用に十分な注意が

払われるとするならば,こうした一般に用いられる試験液中での試験は,有用な目的に対して使用できる。

同じ規格に基づいて実験室的に作られた試験液間で予期される比較的わずかな差異は,応力腐食試験結果

にほとんど影響を及ぼさないであろうから,雰囲気の比較的小さな変化が割れ挙動の非常に大きな変化を

引き起こすような状況が,そこにはあるはずである。ステンレス鋼に対する試験として公称42%の沸騰塩

化マグネシウム溶液を使用する際に起こり得る問題が,例えば,それである。すなわち,塩化マグネシウ

ム水和物は吸湿性があるので,質量を測ることで試験液を作ると沸点にかなりの差異を生じる可能性があ

り,これは応力腐食試験の破壊時間にも差異をもたらす。そのために,この試験液は特定の沸点に達する

まで水和物に水を加えることで作られることが望ましい。 

6.3.3 

一般の腐食に関する雰囲気のpH変化の影響はよく知られている。かなりの研究がなされているの

で,応力腐食への影響についても著しくなくはないことが分かっている。試験期間中の雰囲気pHの変化

は,試験開始時のpHと同様に重要である。試験中のpHの変化は試験液の体積,試験片の暴露表面積及び

試験時間に依存する。試験片の小さな暴露面積に対して比較的大きな体積の試験液を用いれば,又は試験

期間中に試験液を補充していけば,大きな暴露面積に対して小さな試験液容積を用いた場合に比べて,pH

の変化は小さくなるであろうし,破断時間の差異も多分小さいであろう。事実,試験液の量が非常に少な

くても多くても,ある系では破壊が全く起こらない。もし,試験がアノード促進法で行われるなら,特に,

応力腐食セルに対極電極を挿入したような場合には,pH変化のこうした影響は更に増幅されるであろう。

事実,電気化学的な促進法を用いたある場合には,試験液の分解がかなりの程度起こる可能性があり,そ

のために自然腐食電位下でおこる破壊機構とは大きく異なってしまうかもしれない。こうした問題を克服

するために緩衝試験液がしばしば使われるが,その使用も,また,割れ機構を変えるかもしれないし,場

合によっては応力腐食の破壊モードを押さえ込んでしまう。 

6.3.4 

酸素は割れを発生させる腐食反応において重要な役割を果たしており,酸素の濃度のわずかな変化

も大きな影響を及ぼす。したがって,ある種のアルミニウム合金を通気した試験液中で試験すると数時間

で破壊するが,脱気した試験液中で,さらに長時間の試験を行っても割れないということになる。酸素は

意図的に溶存させることも脱気させることもでき,これによって酸素が存在することによって起こるだろ

う影響を見いだすことができる。かくはん又は噴霧による試験液中への酸素の添加は,連続浸漬よりも噴

霧試験の場合の方がアルミニウム合金の破壊時間が非常に短くなるということに反映されている。 

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6.3.5 

早くから指摘されているように,普通に使用されている試験液による結果は,その環境が実際の使

用環境にどの程度対応しているかということにかかわらず,ある範囲の合金の相対的な感受性を示すとし

ばしば仮定される。ある環境での試験結果から導いた結論を他の環境における結果へと適用することが危

険であるということは,もし実験室的データを工業機器の合金選定及び設計に用いようとするならば,で

きる限り使用条件をシミュレートすることの必要性を示している。 

6.3.6 

実環境をシミュレートすることに関していえば,例えば,裂け目及び界面を通って熱移動の起こる

ような場所において局部的な雰囲気の濃縮が起きるかもしれないということ,及び,全体の雰囲気が割れ

の原因とはなっていないかもしれないということを覚えておくことは重要である。これの別の例は,応力

腐食割れに先立って発生する孔食によって生じるもので,この場合には,割れに直結する雰囲気特性は孔

食の成長段階においてもたらされる。同様に,き裂先端の雰囲気は全体の雰囲気とは異なっているかもし

れないことも認識しておくべきである。このことは,予き裂入り試験片でも,また,平滑試験片から成長

したき裂先端であっても,同じである。 

6.4 

電気化学的因子 

6.4.1 

応力腐食割れに含まれる化学反応の電気化学的特性は,割れが外部電源からの電流及び電圧の負荷

によって影響されることを許す。しばしば,アノード方向への電位の移行は割れに対する感受性を増加さ

せ,カソード電流の負荷は,割れを抑制するか防止すると仮定されている。割れ機構の細部に依存して,

これは正しいかもしれないし,そうでないかもしれない。例えば,ある合金が水素の侵入の結果として割

れ感受性を示すとすれば,電位を変えることの効果は,上記したのと逆になるかもしれない。なぜなら,

上記の考えは,割れ機構として活性経路に沿った溶解が含まれると仮定しているからである。応力腐食試

験片に流れる電流を増加させたり,電位を調整する通常の目的は,データ収集が目的である場合には,実

験室試験での破壊時間を短縮したり,再現性を改善するためである。しかし,電気化学的方式を用いると

しても,その効果は単に割れの動力学に影響するだけであると考えない方がよい。なぜなら,負荷電流は,

また,電位をも変えるであろうし,このことは異なる挙動をもたらすであろうからである。したがって,

破壊機構が自然腐食電位下において行われた試験と変わることなく,得られたデータが使用状態と十分に

対応しているということを確認するための適切な配慮がなされるまでは,応力腐食試験における電気化学

的方式は用いられるべきでない。 

6.4.2 

割れに及ぼす電位の影響は系ごとに違っている。しかし,この問題に関する幾つかの見方は,炭素

鋼の割れに関して通常は議論されてきたといえる。幾つかの試験結果は,この種の材料がどのような試験

液に浸漬されるか,例えば,水酸化物,炭酸塩又は硝酸塩溶液中に浸漬されるかによって,種々の電位範

囲で破壊することを示している。それぞれの試験液中におけるこの材料の自然腐食電位は,通常,硝酸塩

溶液中では割れ発生範囲内にあり,その他の試験液では割れ発生の範囲外にある。このことは,これら特

定の試験条件下では,破壊が硝酸塩溶液中では自然腐食電位で起きるが,水酸化物や炭酸塩溶液中では割

れが発生しないだろうということを示している。このことは,後者二つの雰囲気中において,炭素鋼が自

然腐食電位下では決して応力腐食割れによる破壊を起こさないということを意味するものではない。これ

は単に,これらの試験に用いられたこの特定の試験液中における,この特定の鋼が,自然腐食電位では破

壊しないということを意味するにすぎない。もちろん,自然腐食電位は材料の組成,表面状態及び雰囲気

組成に依存している。 

18 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

6.4.3 

したがって,意図的に添加又は不純物として存在しているような雰囲気中のある種の物質の少量添

加は,電位を負荷しなくとも腐食電位を応力腐食が起こる割れ範囲内に移行させる原因となり得る。これ

は,水酸化ナトリウム溶液中への鉛塩化物微量添加の影響として説明されており,この場合,鉛がなけれ

ば割れない実験室試験におけるか性割れが,鉛添加で引き起こされることがよく知られている。鋼の組成

における別の小さな変化についても,少なくとも部分的には似たような説明が与えられている。つまり,

割れ抵抗性を増加させる炭素鋼への少量のアルミニウム添加及び抵抗性を低下させる銅添加の効果は,割

れ傾向における当然の効果として,前者はより卑な腐食電位に,後者はより貴な腐食電位になるというこ

とに起因している。これらの例は,100mV程度以下という比較的小さな電位変化でも,割れ挙動の非常に

大きな変化を引き起こし得るということを示している。こうした事実は,特に実際の破壊をシミュレート

しようとする実験室試験においては,環境条件の再現性,特に正確な適正電位の再現性が必要であること

を意味している。 

6.4.4 

応力腐食は電位が臨界範囲を超えたときにだけ生じるということが確認されているので,割れが使

用中の装置において生じているかどうかをオンラインの電位測定によってモニターすることが可能である。

さらに,ある種の状況下では,インヒビターとして働く物質の添加,又は陰極防食及び陽極防食の採用に

よって,電位を臨界範囲外に保つことによって応力腐食の危険性を低減又は完全に回避することができる。 

6.4.5 

明らかに実際の条件からかけ離れてしまい,試験の経費も上昇するが,実験室試験でポテンシオス

タットを使用することは,特定の電位に調整するのに最も効果的な方法であり,結果もよりよく再現でき

るという付加的利点もある。ガルバノスタットを用いる方式はポテンシオスタットを使用するよりも安価

にでき,ある種の状況下ではやはり有用である。しかしながら,上述の電位の影響が試験しようとする系

に対しては適正でないということが分かっていないのであれば,印加電流密度は電位が自然腐食電位から

大きくは動かない程度に比較的小さくしなければならない。機構的な研究が電気化学的試験を必要とする

ことはしばしばある。しかし,実際の破壊の研究を目的とする実験室的な仕事にとっては,自然腐食電位

での試験(実環境で測定される電位)がしばしば最も妥当である。しかしながら,自然腐食電位は表面状

態及び暴露時間などの多くの因子に依存しており,そのため,同じ雰囲気中であっても,機械加工された

り,研磨された表面をもつ試料の実験室試験で得られる値は,いわゆる黒皮及びさび付いた表面をもつ使

用状態の試料から得られる値とはかなり異なるであろうということを理解することは重要である。時間因

子を低減するため,又は再現性を向上させることを目的に,使用中における破壊をシミュレートするため

に電気化学的な調整を採用しようとすることの判断は,上述した条件が満足される場合にだけ妥当である。

そうでない場合には,もし,実験室データの再現性が十分でないならば,より良い方式は適切な条件で統

計的に意味のある試験を行うことである。 

6.4.6 

応力腐食挙動に及ぼす電位の大きな影響の観点から,試験液中に浸漬される試験装置の金属部品か

ら試験片を絶縁する予防策をとることが必要である。 

6.4.7 

き裂先端での電位,特に予き裂入り試験片が用いられた場合のき裂先端の電位は,き裂が現れる表

面又は電位が普通に測定される表面の電位とは,異なるかもしれないことに留意することは重要である。

き裂に沿った電位の変化は時には非常に小さい(数mV程度)。しかし,別の状況下では数百mVに達する

時もある。 

7. 試験片形状と作製 

7.1 

概要 

19 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

7.1.1 

試験片寸法は最初に考慮する要因の一つであるが,結果的な選択は妥協を含む多くの因子に依存し

てなされる。適切な金属学的条件にするための材料価格及び入手の可否が,一方では可能な試験片の寸法

を制限し,実際には,試験装置(例えば,使用する負荷系,試験チャンバーの体積など)の制約によって

制限される。他方,大きな試験片を用いることにはバルク材料をよりよく再現するという利点があり,ま

た,例えば,非常に細い線のように小さい断面積の試験片を用いた場合に生じ得る全面腐食及び孔食の問

題も避けられる利点がある。 

7.1.2 

結晶粒の形状及び方位,若しくは何らかの残留応力に関係して,バルク材料から採取した試験片の

方向は重要な考慮因子である。非金属介在物及び第二相粒子の存在も,また,この点において重要である。 

7.1.3 

ときには,実用中の破壊を踏まえて応力腐食試験が計画され,破断した部材が材料として用いられ

る。ミクロき裂の成長を調べるためにき裂のある部分から試験片を採取する必要がない限り,き裂のない

ことが確実な部分からだけ試験片を採取することが重要である。試験片を作製するための材料を選択する

場合には,部材中の材料組織におけるどのような違いにも配慮しなければならない。 

7.1.4 

試験片には識別記号又は番号か刻印が望ましい。しかし,試験結果に影響を及ぼさないよう,試験

片上の刻印の位置には注意すべきである。例えば,板曲げ試験片の端部といった,試験領域からできるだ

け離れた位置にすべきである。 

7.2 

表面状態 

7.2.1 

応力腐食き裂の発生には幾つかの初期表面反応を必然的に伴うため,試験片の表面状態は試験結果

に著しい影響を及ぼす。表面仕上げによる最も明りょうな変化は,前処理方法の違いによる表面形状の変

化である。その一方で,表面では残留応力が残されており,組成及び組織の局部的変化も表面層に生じや

すいということもよく分かっている。それゆえ,試験計画時にはこれらの問題を考慮することが重要であ

る。 

7.2.2 

軟質,かつ,高延性な材料及び大きな断面積の試験片と比較して,硬質,かつ,切欠き感受性の高

い材料及び非常に小さな断面積の試験片の場合には,表面形状はより大きな影響を及ぼすと考えられ,実

際,そのとおりである。したがって,黄銅の応力腐食割れは表面形状がかなり変化しても大きな違いを示

さないが,高強度鋼を研削したようなもの,特にミクロき裂を導入するような方法で試験した場合には,

割れ抵抗性に著しい減少が生じうる。表面形状の変化の影響は,試験片の断面積に逆比例して変わるだろ

うと予測される。 

7.2.3 

残留応力は不均質な塑性変形,例えば,機械加工によって生じたり,熱影響及び相変態に伴う体積

変化などの間接的原因でもたらされたりして,試験片表面に残されている。組成の局所変化もまた起こり

得る。応力腐食試験片表面での残留応力は,寿命に影響することがよく知られている。他の条件が同じな

らば,圧縮応力は破断時間を増加させ,引張応力は短くする。機械的性質などに別の悪影響を及ぼさない

ならば,残留応力は適切な熱処理によって除去又は最小にすることができる。 

7.2.4 

残留応力の何らかの影響は別にしても,試験片の表面層に生じた組織変化は,その部分自身の特性

としてある種の合金の応力腐食挙動にとって重要である。それゆえ,塑性変形自体の割れ抵抗性に及ぼす

影響は非常に大きく,変形又はその後の熱による局部的相変態も試験結果に影響を与える。こうした影響

は,機械加工した表面をもつ18Cr/8Ni鋼の破断時間が電解研磨された面をもつ試料の破断時間よりも短く

なる(約1/4)ことの原因となり,また,研磨によって表面に非焼き戻しマルテンサイトの薄い層が生成

した高強度焼き入れ焼き戻し鋼試験片の応力腐食割れ感受性が高くなる原因になる。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

7.2.5 

前処理が完全であっても,試験片作製後の熱処理は表面組成にごくわずかの変化を生じうる。例え

ば,鋼の脱炭や黄銅の脱亜鉛であって,これらは応力腐食抵抗性に非常に著しい変化を引き起こす。同様

に,酸化皮膜は,特にそれが熱処理及び熱間加工中の高温で形成された場合には,応力腐食試験結果に影

響し,特にき裂発生が寿命の大半を占める場合の結果には影響すると考えられる。 

7.2.6 

試験片表面の仕上処理が何らかの化学的又は電気化学的処理を含むときは,そうした処理から生じ

る何らかの残留物による汚染を最小にするように注意しなければならない。ある場合には,機械的前処理

による問題を克服するために電解研磨が用いられるが,この方式の利用は,別の問題の原因となり得る。

水素を発生させる化学処理及び電気化学的処理は,水素誘起損傷感受性をもつ材料に用いてはならない。

ある場合には,こうした処理は試験結果に影響する特定相の選択溶解をも伴う。 

7.2.7 

表面仕上の影響に関する比較的少ない実験結果の大部分は,系統的に計画された研究というよりは

むしろ,少数の特定の実験から得られたものであるので,結果を解釈するときに,これらの影響に留意す

べきであると繰り返すほかはない。予き裂入り試験片の使用によってこれらの影響が避け得ると考えるの

は,多くの理由から妥当ではない。もちろん,その理由の一つは,実際の技術的状況では上述した影響の

ある種のものが,実際に存在することである。 

7.3 

面積の影響 ある材料の応力腐食試験結果は,試験片の暴露面積に依存する。通常,この影響は結

果のばらつきとして現れ,したがって,この影響を最小にするために試験片は十分な大きさにすべきであ

る。 

7.4 

予き裂入り試験片 

7.4.1 

文献には,応力腐食の実験室的研究において平滑試験片に代わるノッチ付き試験片を用いた例が多

く含まれている。これは,再現性を改善する,又は同一の試験条件では平滑試験片に割れを発生させるこ

とができない場合がある,また,き裂の位置が予測できれば,き裂成長速度といった幾つかのパラメータ

ーの測定が容易である,などの理由による。しかし,破壊力学の発展に伴い,疲労荷重の負荷によって普

通は導入されるノッチからの鋭い予き裂をもつ試験片を用いた応力腐食試験の全く新しい分野が形成され

ている。この解説の目的としては,この方式がき裂の進展先端における応力場を定義する応力拡大係数K

なるパラメーターを含むということを指摘しておくだけで十分である。この概念は,特に高強度材料に関

しては,かなりの実用的な重要性をもっている。なぜなら,構造物は製造工程及び使用中にできる傷をし

ばしば含んでおり,そうした傷の重要性は,それらが応力腐食き裂として伝ぱしやすいかどうか,又はも

し伝ぱするとすれば,それらは構造物が安全性を失うまでにどの大きさまでの伝ぱが許容されるのか,と

いうことで評価され得るからである。 

7.4.2 

応力腐食抵抗性を評価するための平滑試験片を選択する際の難しさは,そうした試験が用いられて

きた比較的短い期間の間に多くの試験片の種類が開発されたという意味で,一見したところでは予き裂入

り試験片の場合と同程度であると思うかもしれない。しかし,試験片形状の違いは応力拡大係数によって

関係付けられるので,異なる試験によるデータが比較でき,したがって,試験片形状の選択という問題は

一見したほどには難しくない。もし,線形弾性解析という概念を適用するのであれば,唯一最大の困難さ

は,高延性材料に対しては大きな試験片寸法を必要とするということである。大部分の使用中における応

力腐食破壊は高延性材料の比較的薄い部分で生じるようであるから,この点に問題のあることは明らかで

ある。しかしながら,寸法的な線形弾性解析の要求に厳密には従わない予き裂入り試験片の使用も,その

結果が同様な厚さの実際の使用状態にだけ適用されるのであれば,ある場合にはまだ意味がある。 

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7.4.3 

破壊力学的検討とは全く別に,実際の使用状態のシミュレーションという点に関して,応力腐食き

裂を予き裂から発生させるのが容易であるという点に関して,又はときには単一き裂からの伝ぱがもたら

す利点に関して,予き裂入り試験片の使用が適している例がときどきある。予き裂入り試験片を用いた試

験に対してときどきなされる主張,すなわち,応力腐食にはある大きさの応力集中への到達をもたらす腐

食ピットの形成が常に関与しているという誤った仮定に基づき,予き裂入り試験片ではそれが初めから達

せられているので,平滑試験片に生じる割れの発生段階が省略されてしまっているという主張は,完全に

正しいとは限らない。したがって,ピット,切欠き及び予き裂の形状は,応力分布に与える影響に関係し

た問題と同様に,電気化学的問題としても重要である。これは,局部的な電気化学的条件を生じるには形

状的不連続性が必要であるという理由による。雰囲気組成又は電極電位に関していえば,それは応力腐食

き裂の伝ぱに必要である。予き裂入り試験片を用いることに対する異論もたびたびなされてきた。例えば,

粒界応力腐食割れとなる試験片に粒内予き裂を導入することの妥当性及び,試験片を腐食環境中に入れた

ときには溶解によってき裂が鈍化する可能性があるのに,かなりの費用をかけて非常に鋭いき裂を導入す

る必要性などについてであるが,これらは実際の材料にはそうした鋭い不連続性が実際に存在していると

いう点を見逃している。事実,予き裂入り試験片を用いた試験の主な利点の一つは,構造物を安全な状態

に保てる構造物中の最大許容欠陥寸法が計算できるデータが得られることにある。しかし,破壊力学の概

念がもはや適用できなくなる欠陥寸法の下限と,負荷応力の上限が存在することに留意しなければならな

い。特に,約0.1mm以下の欠陥寸法への破壊力学の適用及び,局部応力が降伏応力に近い場合への適用は,

こうした状況下では最大許容欠陥寸法の予測がもはや信頼できないので,注意して扱わなければならない。 

7.4.4 

予き裂入り試験片を用いる試験方式の一つのあり方は,異なる実験室における結果に何らかの差が

見られる場合に,下限界応力拡大係数を決定するための負荷増加法を使うことにある。ステップ負荷と直

接負荷法によって得られた値の間には密接な関連性が報告されているので,前者の方法でも負荷速度に対

する何らかの依存性が得られる。 

7.4.5 

過去においては,平滑試験片についての試験は不適切なもので,予き裂入り試験片を用いた試験が

意味ある結果を与える唯一の試験方法であるとみなす傾向があった。同様に,全く反対の観点の考えもあ

った。しかし,幸いなことに,そのような狭い観点の考え方は近年急速に減少した。平滑試験片で応力腐

食き裂がある距離を伝ぱしたような場合には,電気化学的な違いはあるかもしれないが,少なくとも応力

拡大係数に関しては,その試験は割れが予き裂から発生した試験と区別できないと考えることが合理的で

ある。 

7.4.6 

応力腐食試験の開始前に疲労予き裂の初期長さを測定するときには,き裂の湾曲化が起こるかもし

れないことを念頭におくべきである。すなわち,真の最大き裂長さは試験片表面で行った測定から推定し

たものより大きいかもしれない。 

8. 応力腐食試験セル 

8.1 

応力腐食試験において試験片と雰囲気を納める試験セルは,雰囲気に対して不活性であり,試験片

に対して電気化学的な反応を起こさない何らかの材料(通常はガラスである)で作られた容器であること

が必要である。高濃度の水酸化ナトリウム溶液におけるガラス容器の浸食のようなよく知られた影響に加

えて,必ずしも明りょうでないほどの相互作用も起こりうる,ということを指摘しておくことも価値があ

るだろう。そのような例は,高温の高純度の水環境においては,低合金鋼の応力腐食挙動に大きな影響を

与えるほどのシリカが標準的な実験器具用ガラスから溶け出す,ということにみられる。 

22 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

8.2 

割れが表面で発生し,それによって熱移動が起こる場合,その影響を組み入れた試験セルの設計が

必要になるかもしれない。なぜなら,熱移動を起こした界面での試験液の成分の濃縮は,特に,表面の沈

殿物が蒸発による濃縮を許すが,全体の雰囲気との混合を妨げる場合には,割れの伝ぱに重要な役割を果

たすかもしれないからである。この典型的な例は,熱的な絶縁状態にあるステンレス鋼配管の割れ発生と,

リベット接合された軟鋼のボイラーにおけるか性割れである。 

こうした濃縮条件下での割れ発生の条件をシミュレートする方法が幾つか開発されている。 

8.3 

既述(6.3.3参照)したように,浸漬される試験片表面積と試験液体積の関係も,試験セル設計に対

して明らかな関係をもっている。 

9. 応力腐食試験の開始 応力腐食試験の開始は,応力を加えた試験片に試験雰囲気を接触させることで

あると考えることができるが,試験開始時に別種の反応が起こるかもしれないため,操作の順序が結果に

影響することもある。すなわち,屋外暴露試験では試験を開始する時期が破断時間に大きな影響を与える。

また,試験片の向き,例えば,曲げ試験片で引張応力のかかる面が上向きか下向きか,又は他の角度に向

いているかなども同様である。実験室的な試験においてさえ,試験片が雰囲気にさらされた時間と応力が

負荷された時間との関係が結果に影響することがある。また,同じことが試験温度に到達するまでの時間

及びある電気化学的状況が加えられるまでの時間についていえる。7.4.4で述べた予き裂入り試験片への負

荷増加法によって得られる観察結果もまた,こうしたことと関係がある。 

10. 結果の評価と処理 

10.1 応力腐食試験方法の数が年を追って増加したのと同様に,結果の評価方法も数多い。結果を破断時

間の形で採る原始的で単純なU字曲げ試験から,より精巧な技法まで出現している。 

試験方法の選択が多くの因子に依存するのと同じように,評価方法も多くの要因に依存するが,場合に

よっては非常に単純な方法だけで評価できることを知っておいた方がよい。それでも,特定の技法の限界

を認識しておくことも大切である。 

10.2 最も古い試験評価方法は試験片の破断時間(又は破断しない時間)であり,これは今でも非常に広

く用いられている。この方式における制約,すなわち,前述した(5.2参照)例えば,応力負荷フレームの

剛性,材料の破壊じん性,環境の浸食性,発生したき裂の数,試験片の厚さなどについては,留意してお

かねばならない。 

10.3 応力腐食抵抗性の観点からは,ある応力での破断時間で材料の比較を行うのは一般的方法であるが,

同一の装置を用いた場合でもこれが必ずしも正しいとはいえないことがある。比較に対するより十分な基

礎は,下限界応力レベル,又は予き裂入り試験片の場合には下限界応力拡大係数で与えられると思われる。

これには,適切な応力と破断時間曲線を測定する必要がある。単一の初期応力/初期応力拡大係数で数多

くの繰り返し試験を行うより,広範囲の初期応力/初期応力拡大係数で試験を行う方が望ましい。しかし,

この方法を用いても試験方法の種類によっては,結果に多少のばらつきが出るかもしれない。例えば,定

荷重試験での下限界応力レベルは定ひずみ条件の場合より低く得られる傾向がしばしばみられる。さらに,

ある一つの試験液で得られた限界値は他の場合には適用できないと考えられるように,試験結果は試験環

境に依存する。 

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10.4 もし,試験片の数を少なくする必要があるのなら,下限界応力を求めるために2等分探索法を用い

ることができる。最初の試験は特定の初期応力,例えば,素材の引張強さの半分で行われることが望まし

く,その後の試験は引き続く試験において破壊するか否かによって,図に示したようなスケジュールにし

たがって異なる応力レベルで行われるのがよい。 

10.5 幾つかの試験方法では,最初のき裂が現れるまでの時間が判定基準として用いられるが,この判定

法には幾つもの問題がある。試験中に試験片の検査を行う場合には,表面を汚さないように注意しなけれ

ばならない。き裂を検出するために用いる溶液には,応力腐食割れを促進するような有害な不純物がかな

りの量含まれている場合がある。検査のために試験片を取り出した後に再び試験片を再暴露することは,

最終結果に影響することがあることに留意し,再暴露しないで済むように同じ応力レベルで多くの試験片

を用いることが望ましい。 

しばしば試験片の検査に低倍率の顕微鏡が用いられるが,き裂の検出は観察系の分解能に依存するので,

こうした場合には,標準倍率(すなわち,20倍)が用いられるべきである。 

10.6 応力腐食の定義によって,応力腐食は複合作用を含んでいるために,試験された試験片が応力腐食

割れによって破壊したかどうか確かめるためには,環境の独立した影響が分離して評価されるのが望まし

い。試験計画としては,比較のために試験の種々段階において検査することのできる,応力を負荷してい

ない試験片の暴露も含まれることが望ましい。 

10.7 低ひずみ速度試験の結果は,種々のパラメータを用いて評価できる。応力腐食割れの影響は,到達

最大荷重又は破断までの伸びのいずれかとして,荷重−変位曲線に反映される。したがって,これらを割

れ感受性の表現として使ってもよいし,断面減少率を用いることもできる。ある場合には,荷重と延性の

組合わせが比較の有用な基準を与える。その他の方法としては,破断時間がしばしば有用な評価方法であ

り,その結果は,普通同じ温度の不活性環境下で行われた,同じひずみ速度での破断時間によって割り算

することによって標準化される。ときには,破面の様相が応力腐食感受性の評価に用いられ,その環境で

の延性破壊の割合がパラメータとされる。 

10.8 応力腐食き裂進展速度又は下限界応力拡大係数は,ときには重要な情報で,設計技術者には必要と

され,これらは数日の試験で測定することができる。ある種の制約はあるが,予き裂入り試験片の使用は,

き裂進展速度の評価に特に有効である。き裂の進展は,例えば,コンプライアンス変化,アコースティッ

クエミッション,電位差法,X線などの多くの方法でモニターできる。種々の時間間隔でき裂深さを求め

るという中断試験によって,平滑試験片も,き裂進展速度の測定に用いることができる。下限界応力拡大

係数も,また,上述の観察結果又は予き裂入り試験片の荷重増加法によって得ることができる。 

10.9 大部分の実験的研究では,通常,応力腐食試験結果は一般的な統計的方式を用いて処理される。可

能な場合は,常に得られた結果は,この方法で確認されることが望ましい。 

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図 下限界応力決定のための2等分探索法 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書2(参考) 

金属及び合金の腐食−応力腐食割れ試験− 

第2部:板曲げ試験片の作製と試験 

この附属書(参考)は,本体及び附属書(規定)に関連する事柄を補足するもので,規定の一部ではな

い。この附属書は,この規格の利用者の便宜を図るため,この規格に引用されているISO 7539-2 : 1989を

翻訳したものである。 

注意 高強度材料から作られた板曲げ試験片は急速に破壊することがある。したがって,破片が高速

で飛び,危険な場合がある。試験片の設置者及び検査員はこの可能性に留意し,危険の防護策

を採らねばならない。 

1. 適用範囲 

1.1 

ISO 7539のこの部は,金属の応力腐食感受性を評価するための,板曲げ試験片の形状,作製方法,

及び試験方法に関するものである。 

ISO 7539のこの部で使用されている“金属”という用語には“合金”も含まれる。 

1.2 

板曲げ試験片は種々形状の製品に適用できる。これらは基本的に薄板,厚板又は平滑な押出し材に

適用される。これらは通常,矩形断面をもつ平滑な試験片であるが,鋳造品,線及び棒,又は円形断面を

もつ機械加工試験片にも適用できる。また,溶接部材にも適用できる。 

1.3 

試験片の作製及び負荷に用いる装置は,ともに単純,かつ,安価であるので,板曲げ試験片は複合

試験及び大気暴露試験に特に適している。 

1.4 

通常,板曲げ試験片は定ひずみ条件下で試験されるが,定荷重下でも行われる。いずれの場合にお

いても,割れが発生したときの試験片の局部的な曲率変化は,き裂伝ぱ中の条件をも変える。“試験応力”

としては試験開始時に存在する最大表面引張応力が採れる。 

2. 引用規格 下記の規格はこの規格の参考となる条項を含んでおり,ISO 7539のこの部の規定を構成す

る。この規格の公布ときには各々表記されている版が有効である。すべての規格はいずれ改定されるもの

であり,ISO 7539に基づく協定を結ぶ当事者は,下記に示す規格の最新版を適用することの可能性を検討

することが望まれる。IEC及びISO の参加団体は,現在有効な国際規格の登録を常に行うことが必要であ

る。 

ISO 7539-1 : 1987 Corrosion of metals and alloys−Stress corrosion testing−Part 1 : General guidance on 

testing procedures. (金属及び合金の腐食−応力腐食割れ試験−第1部:試験手順の一般的解説) 

ISO 7539-4 : 1987 Corrosion of metals and alloys−Stress corrosion testing−Part 4 : Preparation and use of 

uniaxially loaded tension specimens(金属及び合金の腐食−応力腐食割れ試験−第4部:単軸引張試

験片の作製と試験) 

3. 定義 ISO 7539-1で与えられる定義が,ISO 7539のこの部のために適用される。 

4. 原理 

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4.1 

この試験は矩形又は円形断面をもつ板曲げ試験片に応力を負荷する方法と,応力を負荷した試験片

を特定の試験環境下に暴露する方法とからなる。 

4.2 

5.4に示すように,板曲げ試験片の外側における引張負荷応力の大きさは,試験片寸法,試験片の弾

性定数,たわみの量から計算される。 

4.3 

板曲げの応力計算に用いられる式は弾性範囲内でだけ適用可能であることから,板曲げ試験片は弾

性限界内での試験にだけ使用される。 

4.4 

応力を負荷した試験片を試験環境に暴露した後のき裂発生までの時間及び,き裂の発生が認められ

ない下限界応力は,その試験環境のその応力レベルにおける材料の応力腐食抵抗性の指標として用いられ

る。 

4.5 

所定の材料及び環境において,同一の試験片を用いて試験した場合においてさえ,試験結果には大

きなばらつきがあるので,繰り返し試験がしばしば必要である。 

4.6 

暴露期間中における応力緩和の可能性は,試験片が高温にさらされるときには特に注意する必要が

ある。この緩和は,もし,試験温度における影響をシミュレートするのにクリープのデータが利用できる

なら,推測することができる。熱膨張の差異も,また考慮すべきである。 

5. 試験片 

5.1 

概要 

5.1.1 

識別記号及び番号は試験片の端部に刻印されるのが望ましい。この部分は最も応力の低い部分であ

り,識別記号を刻印しても割れを発生させない。 

5.1.2 

機械的性質を測定する試料は同一の熱処理バッチからとらねばならない。また,応力腐食試験片と

同一の材料片からとられることが望ましい。 

5.2 

試験片の形状 

5.2.1 

板曲げ応力腐食試験片は,通常,矩形断面で均一な厚さの金属の平滑な条である。また,均一な円

形断面をもつ長い線及び棒であってもよい。 

5.2.2 

ISO 7539-4に規定されているように,板曲げ応力腐食試験は,均一な矩形又は円形断面のゲージ部

をもつ試験片を,より大きな断面をもつジグに取り付けて行ってもよい。 

5.3 

表面仕上げ 

5.3.1 

線又は棒試験片,及び薄板,厚板又は押出し形材から切り出された平滑試験片は,元の表面を残し

た状態で試験することが望ましい。これは,元の表面の組織がその下層の組織とは異なっていることがよ

くあるからである。 

5.3.2 

別の合金との比較のために元の表面状態の影響を除きたいのなら,少なくとも0.25mmの深さまで

研削又は機械加工するべきである。これは元の表面の欠陥部を除くには十分であるが,外周部の再結晶層

を完全に除去できるとは限らない。そこで,研削又は機械加工による最大削り代は,エッチング後の材料

の組織観察によって決定することが望ましい。機械加工及び研削を行うたびに,反対側の面についても所

定量を除去することが望ましい。これは機械加工によってもたらされる上下面の等しくない残留ひずみに

よって試験片が変形するのを防ぐためである。また,せん断によって生じる冷間加工層を除くために,す

べての端部は同様に研削又は機械加工されるべきである。 

5.3.3 

化学的又は電気化学的な表面処理は,溶解作用が端部でより強くなる傾向にあり,平面部よりも制

御しにくいので,矩形断面の試験片に用いるのは一般に好ましくない。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

5.3.4 

化学的又は電気化学的な表面処理を行う場合は,材料組織の選択溶解及び好ましくない残留物の生

成がないような条件が,確保されるように注意しなければならない。 

5.3.5 

試験片表面に水素を発生させるような化学的又は電気化学的な表面処理は,水素誘起損傷感受性の

ある材料に対して使用してはならない。 

5.3.6 

試験前に,試験片表面の汚染物を除去するために脱脂すべきである。その後,直ちに試験を開始す

るか,試験を開始するまで汚染及び劣化が避けられるようにして保管すべきである。 

5.4 

応力負荷方法 

5.4.1 

定ひずみ試験方法 

5.4.1.1 

負荷方法 図1に定ひずみ条件で応力をかける6通りの方法を示す。2点負荷,3点負荷及び4

点負荷が,板曲げ試験片で用いられる基本的な三つの負荷モードである。2重張り曲げ試験片,全面支持

曲げ試験片,レバー式負荷試験片は4点負荷の特別な場合である。 

5.4.1.2 

2点負荷 

5.4.1.2.1 

2点負荷試験片の最大応力は凸面の中央部で生じ,試験片端部で0にまで減少する。 

5.4.1.2.2 

図1a)に示すように,2点負荷の平滑試験片は幅15〜25mmで長さ110〜255mmにとるべきであ

る。試料厚さt,正味の長さL,ジグ長Hは,5.4.1.2.4に従って計算される必要応力を与えるように選定す

る。また,応力の誤差を許容限内に維持するために,(L−H) /Hが0.01と0.50の間に保たれるように選定

する。ジグ長175〜215mmのジグに厚さ0.8〜1.8mmの試験片を保持することは,アルミニウムでの約

200MN/m2から鋼での約1 500MN/m2程度までの範囲の試験応力で,超高張力鋼及びアルミニウム合金を試

験するのに適している。 

5.4.1.2.3 

試験片をジグに取り付ける際は,過負荷,変形又は不直性に注意すべきである。 

5.4.1.2.4 

凸部表面の中心点での近似的弾性応力は,次の式から計算される。 

L=(ktE/σ)sin−1(Hδ/ktE) 

L:試験片長さ(単位:m) 

σ:最大応力 (N/m2)  

E:弾性率 (N/m2)  

H:ジグ長 (m)  

t:試験片厚さ (m)  

k:1280,経験的定数 

この式は,以下の場合にだけ用いるべきである。 

Hδ/ktE=1.0 

この式は,コンピューターによる数値計算,又はサイン関数の級数展開によって解くことができる。 

5.4.1.2.5 

応力のより厳密な計算は,理論的に正確な大たわみ解析に基づく。 

弾性限以上の応力の計算は弾塑性解析によって行われる。 

5.4.1.3 

3点負荷 

5.4.1.3.1 

3点負荷試験片の最大引張応力は凸表面の中心で発生し,外側の支持部で0になるまで直線的

に減少する。3点負荷試験片の欠点は,最大応力領域に近接した中央支持部ですき間腐食の起きる可能性

があることである。中央支持による圧力は,また,計算された長さ方向の最大引張応力域に未知の2軸応

力を発生させる。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

5.4.1.3.2 

3点負荷試験片は,通常,幅15〜50mmで,長さが110〜250mmの平板である。試験片厚さは

材料の機械的性質及び利用できる製品形状に依存する。試験片寸法は特別な要望があれば変更可能である

が,寸法比率は守るべきである。 

5.4.1.3.3 

図1b)に示すように,試験片は端部近傍で支持され,中央で球体の先端をもつネジによって強制

的に曲げられる。 

5.4.1.3.4 

凸表面の中央での弾性応力は次の関係から計算される。 

σ=6Ety/H2 

σ:最大引張応力(単位:N/m2) 

E:弾性率 (N/m2)  

t:試験片厚さ (m)  

y:最大たわみ量 (m)  

H:外側の支点間距離 (m)  

5.4.1.4 

4点負荷 

5.4.1.4.1 

4点負荷では,内側の支点間における凸表面で均一な長さ方向の引張応力が得られる。 

応力は内側の支点から外側の支点に向かって直線的に0まで減少する。4点負荷試験片は,2点又は3

点負荷試験片よりも一般に大きな均一負荷領域を与えるので,溶接材及び溶射又は塗装などによる被覆材

の研究に特に適している。 

5.4.1.4.2 

4点負荷試験片は,通常,幅15〜50mmで,長さ110〜250mmの平板である。試験片の厚さは

材料の機械的性質及び利用できる製品形状に依存する。試料寸法は特別な要望があれば変更可能であるが,

寸法比率は守るべきである。 

5.4.1.4.3 

図1c)に示すように,試験片は端部近傍で支持され,内側の二つの支点で強制的に曲げられる。

内側の支点は外側の支点間の中央線に対して対称でなければならない。 

5.4.1.4.4 

内側の支点間の凸表面の弾性応力は,次の関係から計算される。 

σ=12Ety/ (3H2−4A2)  

σ:最大引張応力(単位:N/m2) 

E:弾性率 (N/m2)  

t:試験片厚さ (m)  

y:外側の支点間における最大たわみ (m)  

H:外側の支点間距離 (m)  

A:内側と外側の支点間距離 (m)  

しばしばA=H/4とされる。 

5.4.1.4.5 

内側の支点間の弾性応力を計算する別の方法としては,次の関係が用いられる。 

σ=4Ety'/h2 

h:内側の支点間距離 (m)  

y':内側の支点間におけるたわみ (m)  

注意 この式は5.4.1.4.4の式でA=0とした特別の場合である。 

5.4.1.4.6 

上記の関係は小さなたわみ(y/h又はy'/hが0.1未満)を基礎にしている。小さなゲージ寸法の

試験片では,たわみはこれよりも大きくなる。したがって,上記の関係は近似的なものにすぎない。より

厳密な応力値は,応力腐食試験片と同じ材料で同じ寸法の試験片にひずみゲージを張り付け,同じように

負荷することで得られる。 

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5.4.1.5 

2重張り曲げ試験片 

5.4.1.5.1 

2重張り曲げ試験片では,スペーサーと接触している線の間の凸部表面では均一な長さ方向の

引張応力が得られる。応力はこの線から試験片端部に向かって直線的に0まで減少する。通常,2重張り

曲げ試験片は4点負荷ジグで扱われてきた材料よりも厚い部材に適用される。 

5.4.1.5.2 

2重張り曲げ試験片は通常,幅25〜50mmで,長さ125〜250mmの2枚の平板からなる。試験

片厚さは材料の機械的性質及び利用できる製品形状に依存する。 

5.4.1.5.3 

2枚の帯板を中央に配したスペーサーを介して両試験片端が接するまで互いに反対側に曲げる。

それらは図1d)に示すように,その位置で溶接又はボルトで固定する。 

5.4.1.5.4 

スペーサーと接している線の間の試験片凸部表面における弾性応力は,次の関係で計算される。 

σ=(3Ets)/{H2[1−(h/H)][1+(2h/H)]} 

σ:最大引張応力 (N/m2)  

E:弾性率 (N/m2)  

t:試験片厚さ (m)  

s:スペーサーの厚さ (m)  

H:試験片の長さ (m)  

h:スペーサーの長さ (m)  

5.4.1.5.5 

スペーサーの長さhをH=2hに選ぶと,5.4.1.5.4の式は単純になる。 

σ=3Ets/H2 

5.4.1.5.6 

上記の関係は小さなたわみ (s/H<0.2) を基礎にしている。小さなゲージ寸法の試験片では,た

わみはこの関係よりも大きくなる。したがって,上記の関係は近似的なものに過ぎない。より厳密な応力

値は,応力腐食試験片と同じ材料で同じ寸法の試験片にひずみゲージを張り付け,同じように負荷するこ

とで得られる。 

5.4.1.6 

全面支持曲げ試験片 

5.4.1.6.1 

全面支持曲げ試験片では,支持された点の間の凸部表面において均一な長さ方向の引張応力が

得られる。全面支持曲げ試験片は,材料の寸法が4点負荷に用いるには小さすぎる場合に利用できる。例

えば,圧延板の厚さ方向から試験片を採ったような場合である。 

5.4.1.6.2 

全面支持曲げ試験片の寸法は,それが採られた部材に強く依存する。32mm×10mm×厚さ1mm

の高力アルミニウム合金では十分満足する結果が得られるので,これに近い寸法比がとられるべきである。 

5.4.1.6.3 

支持ブロックの外径は,必要応力を与える曲率半径の凸部表面を生じるように選定される。図

1e)に示すように,支持ブロックの一端で試験片を固定し,ブロックの表面に沿って押し下げ,その後に反

対端を固定する。 

5.4.1.6.4 

固定端間の凸部表面における弾性応力は,5.4.1.4.5に与えられた関係で,hを固定端内側の距離

とすることで計算される。 

5.4.1.7 

レバー式負荷 

5.4.1.7.1 

図1f)(ii)に示す種類のレバー式負荷試験片では,凸部表面の最大引張応力は中心線との交点で生

じる。レバー式負荷試験片は,材料寸法が通常の4点負荷には小さすぎる場合に利用できる。例えば,試

験片が圧延材の板厚方向にとられたような場合である。 

5.4.1.7.2 

レバー式負荷試験片と試験ジグの推奨寸法は,図1f)(i)〜(iii)に示す。 

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5.4.1.7.3 

試験片に負荷するためには,上下のレバーの溝に試験片を取り付け,P点に所定の荷重をかけ

て負荷する。これは引張試験機を用いても,又は重りを載せることで行ってもよい。そうしておいてから,

荷重を除去したあとでも試験片とレバーが同じ相対的位置を保つように,固定ナットをしっかりと締める。 

5.4.1.7.4 

試験片の中心線で交差する弾性応力は,弾性率,試験片寸法,Pにかけられた荷重から計算す

る。 

5.4.2 

定荷重試験方法 5.4.1.3,5.4.1.4,及び5.4.1.7に述べた3点負荷,4点負荷,及びレバー式負荷用

のジグは,試験片をたわませるためのネジに代わって,バネ及び重りを使うことで定荷重用のジグに改造

できる。こうした方法は5.4.1に記載した定ひずみ試験方法よりも一般的でなく,ISO 7539のこの部でも

詳細は記さない。 

6. 試験手順 

6.1 

環境試験の選択される条件は試験目的に依存するが,理想的には,合金の予定用途に合った,又は

予想される使用条件に匹敵する条件と同じであるべきである。実際には,多くの標準環境がランク付けの

ために使用されているが,予測される使用条件との関係において得られた結果を注意深く解釈することが

重要である。 

6.2 

可能ならば,試験片が試験環境下に置かれた後に,応力を負荷することが推奨される。他方,負荷

された試験片はできるだけ早く試験環境に暴露すべきである。 

6.3 

可能ならば常に,板曲げ試験片に負荷するジグ及びレバーは,接触腐食の可能性を避けるために試

験片と同じ材料にすべきである。 

6.4 

プラスチック製のジグ及びレバーは,応力腐食試験中にクリープ及び水の吸収による大きな変形が

起こらないならば,使用することができる。 

6.5 

負荷用のネジは,試験環境に対して抵抗性のある材料で作るべきである。 

6.6 

応力を負荷しない試験片も,応力を負荷した試験片と同じ条件で同じ時間だけ暴露することが推奨

される。そうすることで,結果の相対的評価によって負荷応力の影響が同定できる。薄板及び例えば,溶

接材のような構造接合材から試験片をとって試験する場合には,応力を負荷しなくとも応力腐食破壊を引

き起こすほどに残留応力の大きいことがあり,また,残留応力のない場合と比較する必要があるほどに小

さな負荷応力で破壊する場合もある。金属はまた,負荷応力がなくとも腐食雰囲気との接触によって,例

えば,孔食,粒界腐食などによって,機械的性質の劣化を起こす。そのため,負荷応力の影響は応力を負

荷していない試験片の挙動と比較することによってだけ評価できる。 

6.7 

もし,試験片を数少なくする必要があるならば,下限界応力を決定するために2等分探索法が使え

る。例えば,最初の試験は材料の引張り強さの半分の初期応力で行い,その後の試験では,引き続く試験

において破壊が起こるか起こらないかによって,ISO 7539-1の図に示したスケジュールにしたがって負荷

応力の割合を変えて試験する。 

7. 試験結果の評価 

7.1 

試験片を連続的に観察することは通常不可能であるから,試験片はあらかじめ決められた時間間隔

で,き裂の発生が調べられる。この時間間隔は試験材料の試験条件下における経験的な予測応力腐食寿命

で選択される。通常,試験が進むにつれてこの時間間隔は長くとる。 

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7.2 

き裂の存在は5〜10倍の拡大鏡を使った目視観察で判定される。もし,試験片がただ1個の又は数

個のき裂を含むだけであるなら,試験片の湾曲形状がキンクを起こすことで変わるかもしれない。これは

割れた試験片の同定に役立つ。もし,大量の腐食生成物が生成されたならば,き裂が隠されてしまうかも

しれないので,その場合には,割れが起きたかどうかを判定するためのより高倍率での金属学的な検査の

ために,試験片を取り出す必要がある。 

7.3 

定荷重条件下で行われた試験では,き裂は急速に伝ぱするので,破断時間は試験片の破壊時間とし

てとることができる。 

8. 試験報告 試験の報告には次の情報を含むことが必要である。 

a) 組成と調質,製品形態,試験片をとった断面厚さ,などを含む試験材料の詳細。 

b) 試験片の方向,形状,寸法と表面状態。 

c) 応力負荷方法。 

d) 暴露環境及び暴露期間。 

e) 割れの判定方法。 

f) 

検査と観察のデータ及び割れ発生のデータ。 

g) 試験片中のき裂発生位置。 

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図1 定ひずみ負荷試験片 

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附属書3(参考) 

金属及び合金の腐食−応力腐食割れ試験− 

第3部:U字曲げ試験片の作製と試験 

この附属書(参考)は,本体及び附属書(規定)に関連する事柄を補足するもので,規定の一部ではな

い。この附属書(参考)は,この規格の利用者の便宜を図るため,この規格に引用されているISO 7539-3 : 

1989を翻訳したものである。 

注意 高強度材料から作られたU字曲げ試験片は急速に破壊することがある。したがって,破片が高

速で飛び,危険な場合がある。試験片の設置者及び検査員はこの可能性に留意し,危険の防護

策をとらねばならない。 

1. 適用範囲 

1.1 

ISO 7539のこの部は,金属の応力腐食に対する感受性を調べるための,U字曲げ試験片の設計,作

製及び試験方法に関して規定している。 

ISO 7539のこの部で使われている“金属”という用語には“合金”も含む。 

1.2 

U字曲げ試験は種々形状の製品に適用できる。それらは主に矩形断面の平滑試験片を作れる薄板,

厚板又は平らな押出し材であるが,線及び棒又は円形断面の機械加工された試験片にも使える。溶接接合

部材にも適用可能である。 

1.3 

U字曲げ試験片は,所定の環境中で金属が応力腐食割れ感受性をもつかどうかを確認するためにし

ばしば使われる。この試験は,材料の特定の用途における感受性を実験室で区分するため,及び使用環境

における材料の破壊に対する危険性を評価するために用いられる。 

1.4 

この試験方法の基本的な利点は単純なことで,現場的に利用しやすいことである。欠点は応力を正

確には定量化できないことで,もし,それが必要ならば,別の応力負荷方法を用いることが望ましい。 

2. 引用規格 以下の規格はこの規格の参考規定を含んでおり,ISO 7539のこの部の規定を構成する。こ

の規格の公布ときには,表示された版が有効である。すべての規格はいずれ改定されるものであり,ISO 

7539のこの部に基づいて協定を結ぶ当事者は,下記に示す規格の最新版を適用することの可能性を検討す

ることが望まれる。IEC及びISO の参加団体は,現在有効な国際規格の登録を常に行うことが必要である。 

ISO 7539-1 : 1987 Corrosion of metals and alloys−Stress corrosion testing−Part 1 : General guidance on 

testing procedures(金属及び合金の腐食−応力腐食割れ試験−第1部:試験方法の一般的解説) 

3. 定義 ISO 7539-1に与えられた定義が,ISO 7539のこの部に対して適用される。 

4. 原理 

4.1 

この試験方法は,U字型に曲げた金属片を腐食媒体に暴露することと,試験片表面に拡がる降伏点

にまで達するような初期引張応力をそのまま保つことからなる。試験片を作る際には,種々の量の冷間加

工が導入されるので,その変形量が初期状態にある材料の傾向と比較したときの応力腐食割れ傾向に,影

響を与えるかもしれない。 

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4.2 

この試験は使用条件をシミュレートした実験室環境に試験片を暴露することで行われるか,又は興

味ある場所での実際の使用環境下において行われる。 

4.3 

この試験方法の目的は,その材料が予定している用途に適しているかどうかを確認するためか,又

は使用条件下にある既存のプラントの材料の応力腐食割れの危険性を評価するためかの,いずれかである。 

4.4 

所定の材料及び環境において,同試験片を用いて試験した場合においてさえ,試験結果には大きな

ばらつきがあるので,繰り返し試験がしばしば必要である。もし,試験片寸法や方向が異なったり,異な

った負荷手順がとられると,結果はさらにばらつく。 

5. 試験片 

5.1 

種々の試験片形状及び寸法が利用できるが,図1にはよく用いられる試験片の例を示す。図2は試

験片の成型法の例を示す。すき間のような条件をシミュレートするために,最初の試験片の上に第2の試

験片を被せることもでき,それによって二つの試験片の間にすき間を作ることができる。また,複合試験

片を試験することもできる[図1d)参照]。 

5.2 

成形後に締結部品で試験片に負荷する場合には,成形過程の最後で与えられた変位にまで,試験片

の変位が戻されていることを確認しなければならない。 

5.3 

使用条件下で使う試験片は,測定系から動かないように確実に固定しなければならない。また,検

査及び取り外しの容易であることが望ましい。試験片の設計と固定方法は総合して考えるべきである。 

5.4 

もし,二つ以上の材料をその測定系に入れるなら,試験片は電気化学的な影響を避けるために,電

気的に絶縁しなければならない。 

5.5 

試験片は,圧延方向及び熱処理などの要因を考慮した適正な材料からとることが望ましい。 

もし,必要があるなら,溶接試験片も試験すべきであるが,その際には,試験片の作製時に,使用形態

について留意すべきである。 

5.6 

実験室的な試験においては,き裂の検出が容易であることから,細かな表面仕上げがしばしば用い

られるが,実際の使用状態の試験においては,そのプラントを再現する表面仕上げで試験する方法が採用

されるべきである。さらに詳しい表面状態に関しては,ISO 7539-1を参照されたい。 

図1 代表的なU字曲げ 

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図2 U字曲げ試験片の負荷方法 

5.7 

試験する前に試験片は脱脂すべきで,その後も注意して取り扱うべきである。 

5.8 

成形後の試験片は,試験環境に暴露する前に,生じているかもしれないき裂について検査すること

が望ましい。後の比較のために用いる予備の試験片を用意することも望ましい。 

5.9 

識別のために試験片に記号を付ける必要がある場合は,ISO 7539-1に示された方法に従うのがよい。 

6. 試験方法 

6.1 

試験の目的は,通常の設計条件とともに,運用開始時,終了時及び起こりうる他の条件変化をも含

む全期間にわたって,考えられるすべての使用条件下で試験することが望ましい。 

6.2 

流体層の界面は,温度こう配のある箇所,濃縮の起きるような箇所,又は局部的な沸騰の起きるよ

うな箇所と同様,応力腐食割れを起こしやすい領域である。 

流体の化学組成にこう配を生じるような箇所,特に,酸化剤又は還元剤の濃縮が起こるような箇所も,

また,危険領域である。こうした因子も試験片の設置場所を決める際には考慮するべきである。 

6.3 

安全に検査でき取り外すことのできる試験片の設置場所も,主要な問題である。特に,高圧下に置

かれた装置では,あらゆる場所で試験することは不可能かもしれない。 

7. 結果の評価 

7.1 

試験片を検査する前に,引張応力の緩和,例えば,締結時の割れによって,その試験が無効になら

なかったかどうかを点検する必要がある。 

7.2 

試験片の検査は,通常,目視又は低倍率の拡大鏡によって行われる。実験室的な試験においては,

周期的な検査を行い,き裂が最初に観察される暴露時間を決定するために,反復試験片がしばしば用いら

れる。しかし,使用状態における試験では,反復試験片の使用と定期的な検査はあまり現実的でない。こ

のような場合には,試験片は,使用状態において予測されるすべての変化を取り込むに十分な任意の長期

間にわたる暴露後に,検査されることが望ましい。普通は,稼働中のプラントについては5週間から10

週間の試験期間で十分と考えられる。 

7.3 

微小き裂を開かせるために,さらに応力を負荷することもある。試験片断面の金属学的検査が微小

き裂の検出に用いられたことが望ましい。 

7.4 

あるき裂は応力腐食以外に起因しているかもしれないので,もし,き裂が検出されたならば,比較

のために腐食環境に暴露されていない同様の負荷試験片を調べてみることが必要である。 

7.5 

この試験方法は,基本的には合否試験方法と見なすべきで,挙動における重要でない差異,例えば,

最初のき裂が見つかる時間及びき裂寸法などは,重視すべきでない。 

36 

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7.6 

応力腐食以外の何らかの理由によって割れが起きたと肯定的に判定できないならば,観察された割

れは破壊を示すものと考えるのがよい。 

7.7 

実際の使用条件での試験で,ある一定の暴露期間後に割れが観察されなければ,その試験中の条件

と大きく変わった使用条件でない限り,それは実用挙動を示すものと考えるべきである。 

8. 試験報告 試験報告には次の情報を含むことが必要である。 

a) 組成と調質,製品形態,試験片を採取した断面厚さを含む材料の詳細。 

b) 試験片の方向,形状,寸法と表面状態。 

c) 使用条件での試験における試験片の設置位置を含む,試験環境。 

d) 観察を行った時間とき裂が認められた時間。 

37 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書4(参考) 

金属及び合金の腐食−応力腐食割れ試験− 

第4部:単軸引張試験片の作製と試験 

この附属書(参考)は,本体及び附属書(規定)に関連する事柄を補足するもので,規定の一部ではな

い。この附属書(参考)は,この規格の利用者の便宜を図るため,この規格に引用されているISO 7539-4 : 

1989を翻訳したものである。 

1. 適用範囲 

1.1 

ISO 7539のこの部は,金属の応力腐食感受性評価のための単軸引張試験片の設計,作製及び試験方

法について規定する。 

ISO 7539のこの部で使われている“金属”という用語には“合金”も含まれる。 

1.2 

引張試験片は厚板,棒,線,薄板,管,及び溶接,リベット又は他の方法で接合された部品など,

幅広い形態の製品の試験に適用できる。また,ノッチ入り試験片も,使用できる(5.1.3参照)。 

1.3 

単軸引張試験片は,定荷重,定ひずみ,又は荷重及びひずみ増加形の,いずれかを負荷できる装置

を使って定量的に負荷される。 

2. 引用規格 以下に示す規格はこの規格の参考となる条項を含んでおり,ISO 7539のこの部の規定を構

成する。この規格の公布時においては各々表記されている版が有効である。すべての規格はいずれ改定さ

れるものであり,ISO 7539のこの部に基づく協定を結ぶ当事者は,以下に示す規格の最新版を適用するこ

との可能性について検討することが望まれる。IEC及びISOの参加団体は,現在有効な国際規格の登録を

常に行うことが必要である。 

ISO 6892 : 1984 Metallic materials−Tensile testing(金属材料−引張試験) 

ISO 7539-1 : 1987 Corrosion of metals and alloys−Stress corrosion testing−Part 1 : General guidance on 

testing procedures(金属及び合金の腐食−応力腐食割れ試験−第1部:試験方法の一般的解説) 

ISO 7539-6 : 1989 Corrosion of metals and alloys−Stress corrosion testing−Part 6 : Preparation and use of 

precracked specimens(金属及び合金の腐食−応力腐食割れ試験−第6部:予き裂入り試験片の作

製と試験) 

3. 定義 ISO 7539-1で与えられる定義が,ISO 7539のこの部に関して適用される。 

4. 原理 

4.1 

この試験方法は,7条に示すパラメーターの一つ以上を用いて,定荷重,定ひずみ,又は荷重及びひ

ずみの増加形で試験片に負荷し,応力腐食感受性を評価する方法である。 

4.2 

腐食環境は,応力を負荷しない環境と材料の同じ組合せにおいて観察されるよりも,応力を負荷し

た材料の性質のより大きな劣化を招く。この促進された劣化は,応力腐食感受性評価の目的に応じて,多

くの異なる方法によって評価できる。 

38 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

4.3 

応力腐食による劣化の最も一般的な形態は,き裂の発生と成長を伴うことで,もし,試験が十分な

時間継続されたならば,そうしたき裂の一つ又はそれ以上のものが,試験片全体の破壊を間違いなく起こ

すであろう。全面破壊に至らなくても,試験片の機械的性質は,き裂生成の程度又は孔食及び腐食溝の成

長に依存して,害されるであろう。 

4.4 

所定の材料及び環境において,同試験片を用いて試験したとしても,試験結果には大きなばらつき

があるので,繰り返し試験がしばしば必要である。もし,試験片の大きさ及び方向が異なっていたり,異

なる負荷が与えられた場合には,試験結果はさらに大きくばらつくであろう。 

5. 試験片 

5.1 

概要 

5.1.1 

一定断面の試験片であれば,円形,角形,矩形,環状又は特殊な場合には,他の形状でもよい。 

5.1.2 

初期応力をある範囲で変化させる目的で,テーパー付きのゲージ部をもつ試験片を使うこともでき

る。 

5.1.3 

機械的なノッチを入れた試験片又は,そこからさらに機械的な予き裂を発生させた試験片もまた使

える。ノッチ入り試験片の場合,ノッチ近傍には3軸応力状態が存在する。加えて,ノッチ底における軸

応力は,ノッチ底の最少断面積を用いて誘導した公称応力よりも大きくなる。ノッチ部での最大応力は,

この公称応力と特定のノッチ形状に対する応力集中係数KTの積で計算できる。予き裂試験片に関しては,

ISO 7539-6で別に扱われている。 

5.1.4 

受渡当事者間の協定によって,最終製品を製造条件下で試験してもよい。 

5.1.5 

通常の引張試験に用いられる機械加工された試験片の寸法比率は,応力腐食試験においては重要で

ない。しかし,比較のためには,ISO 6892に準じた引張試験用試験片を用いることが望ましい。 

5.1.6 

き裂発生を助長する応力集中を最小限に抑えるため,機械加工した試験片には,つかみ部と平行部

の間に適当な半径の肩部をもたせることが望ましい。この肩部の半径は少なくとも引張試験と同程度に応

力腐食試験でも重要で,別に規定した場合を除いて,適切な国際規格に準拠すべきである。き裂の発生は,

もし,適当な丸味が付けられていないとすると,方形及び矩形のような断面をもつ試験片のりょう部では

き裂発生が促進される。 

5.1.7 

つかみ部は試験機のホルダーに合った任意の形状でよい。試験片のつかみ部が腐食試験環境から絶

縁されていないと,問題の生じる場合がある(6.3参照)。 

5.1.8 

基本的には試験される部材の寸法に応じて,広範な試験片寸法が利用可能である。しかし,応力腐

食試験の結果の評価は試験片の断面積によって大きく影響され得るので,研究目的に応じて試験片寸法を

注意深く考慮することが望ましい。 

5.1.9 

定荷重試験装置の数は,試験片をつなぐことで少なくできる。これらの試験片は,試験片の破断に

よる除荷を防止するように設計された負荷ジグによってつながれる。 

5.1.10 次のような場合には,小さな断面積の試験片も利用できる。 

a) 製品形状に直接関係している。 

b) 試験により便利である。 

c) 試験結果が早く得られる。 

d) 小さな応力腐食き裂の存在に非常に敏感である。 

他方,小さな断面積の試験片は機械加工がより難しく,その挙動は非軸荷重,孔食及び他の浸食形態,

例えば,全面腐食,といった外的応力集中に影響されやすい。機械加工した試験片の場合,標点間距離10mm

39 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

以上,幅3.0mm以上が望ましい。 

5.2 

試験片の作製 

5.2.1 

ある材料と環境の組合せにおいて,応力腐食割れが発生するまでの時間に及ぼす表面状態の著しい

影響はよく分かっている。特に重要なのは,応力集中,機械的な損傷及び化学的な汚染を防ぐことである。

供給されたままの,又は製造されたままの表面を評価する必要がない限り,通常行われる最終仕上げは機

械加工した後に脱脂することである。表面の凹凸による応力の増加は通常,低強度じん性合金よりも高強

度合金の応力腐食き裂発生に対してより重要である。二乗平均平方根粗さ (rms) で1μm以下の表面品位

を確保することが望ましい。 

5.2.2 

最終仕上げでは,表面に残留応力及び金属組織の変化を生じさせるような,過熱及び過剰な応力負

荷は避けるべきである。ある場合には,試験片作製後の熱処理,化学研磨及び電解研磨がそうした影響を

克服するのに有効なこともある。研磨残さによる表面の汚れは最小限に抑えるように注意すべきである。 

5.2.3 

電解研磨すれば,表面の機械仕上げから生じる上述のような問題点がなくなって,常に正確な結果

が得られるとは考えないほうがよい。 

5.2.4 

最終表面仕上げが化学的な処理である場合には,材料組織の選択溶解及び表面に望ましくない残さ

が生成しないような条件を確保するように注意すべきである。 

5.2.5 

水素を発生するような化学的又は電気化学的処理は,水素誘起損傷感受性のある材料に用いてはな

らない。 

5.2.6 

識別のために試験片に記号を付ける必要のある場合には,ISO 7539-1に示された方法に準拠するこ

とが望ましい。 

6. 試験方法 

6.1 

試験環境条件は試験の目的に応じて選択されるが,理想的には合金の予定された用途に合った環境,

又は予想される使用環境と同等の環境にすべきである。実際には,ランク付けのために多くの標準環境が

用いられているが,得られた結果は予想される使用環境との関係で注意して解釈される必要がある。 

6.2 

もし,可能ならば,試験片は試験環境に暴露された後に負荷されることが推奨される。そうでない

場合には,応力負荷後,可能な限り早く試験環境に暴露されることが望ましい。 

6.3 

可能ならば,常につかみ部は腐食環境との接触から絶縁されることが推奨される。これが不可能な

場合,次のような問題が起きるかもしれない。 

a) つかみジグが試験片と違う材料で作られていたならば,電食が結果に影響するかもしれず,電気的な

絶縁が必要になる。 

b) つかみジグと試験片の狭い空間領域ですき間腐食が起こり,応力の不連続性がそうした領域における

早すぎる応力腐食破壊を引き起こすかもしれない。 

c) すき間の問題は,試験装置からの試験片の脱落という問題をも引き起こす。この種の問題は,装置の

適切な設計,すき間のある箇所への保護コーティングの利用,又はつかみ部の断面積を平行部よりも

大きくすることで,避けることが望ましい。 

40 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

6.4 

応力を負荷しない試験片も,負荷した試験片と同じ環境に同じ時間だけ暴露されることが推奨され

る。これによって,結果を比較評価することで負荷応力の影響が同定できる。薄板及び例えば,溶接材の

ような構造接合材から試験片をとって試験する場合には,応力を負荷しなくとも応力腐食破壊を引き起こ

すほどの残留応力の大きいことがあり,また,残留応力のない場合と比較する必要があるほどに小さな負

荷応力で破壊する場合もある。金属は,また,負荷応力がなくとも腐食雰囲気との接触によって,例えば,

孔食及び粒界腐食などによって,機械的性質の劣化を起こす。そのため,負荷応力の影響は応力を負荷し

ていない試験片の挙動と比較することによってだけ評価できる。 

6.5 

試験が荷重及びひずみの増加型であり,前面破壊まで暴露する場合には,特に,腐食環境とともに

不活性環境でも試験すべきことが推奨される。これは,不活性条件でのデータを基準として,腐食環境の

影響の比較評価を可能にする。高力アルミニウム合金及び鋼を含むある種の材料では,大気中での試験を

不活性環境での試験と見なすことは適当でない。 

6.6 

試験片数を減らした場合には,下限界応力を決定するために2等分探索法を用いてもよい。例えば,

最初の試験は材料の引張り強さの半分の初期応力で行い,その後の試験では,その試験において破壊が起

こったか起こらなかったかによって,ISO 7539-1の図に示したスケジュールにしたがって負荷応力の割合

を変えて試験する。 

7. 結果の評価 

7.1 

割れ感受性評価に最もよく用いられるパラメーターは最終破断時間で,妥当な精度で普通は簡単に

測定できる。破断時間は種々因子の中でも初期負荷応力に依存するが,この依存性の特徴はすべての材料

及び環境において同じではないことで,特定の初期負荷応力での破断時間の比較は誤った解釈をもたらす

可能性がある。ばらつきを評価するために同じ応力レベルで多数の繰り返し試験を行うよりも,特定の初

期応力での繰り返し試験を少なくし,最終破断が起こらない下限界応力を決定するために異なる初期応力

で試験片を暴露することの方が推奨される。 

7.2 

全面破壊が起こらない場合には,ある任意の時間で試験を終えるのが普通である。そうした試験片

は,全面破断を起こすところまでは伝ぱしていなくとも,き裂を含んでいるかもしれない。もし,必要な

らば,全面破断に至らなかった試験片はすべて,腐食生成物を除去した後に,き裂について調べることが

望ましい。 

7.3 

試験片の単位長さ当たりのき裂数は応力腐食感受性,特に,応力腐食き裂の発生に関する感受性の

比較評価に用いることができる。こうした方法を用いる場合には,例えば,試験片断面の金属学的な検査

では肉眼で見えない小さなき裂も検出できるであろうから,き裂数を決定する方法の規定が望ましい。 

7.4 

平均き裂進展速度は,試験片が完全に破壊した場合には,破面で測定された最大き裂長さを,最終

破断に至らなかった試験片ではその断面で測った最大き裂長さに,試験時間数の逆数を乗じることによっ

て求められる。このパラメーターは,普通はあり得ないが,試験開始時から割れが発生していると仮定し

ているにもかかわらず,こうした測定はより正確に求めた結果とかなりよく一致することがしばしば認め

られている。 

7.5 

最終破断に至らなかった試験片を,暴露期間の終了時に機械的試験によって評価してもよい。き裂

の存在を最も妥当に反映しやすいパラメーターは,引張強さと断面減少率のような延性に関するものであ

る。 

41 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

8. 試験報告 試験報告書には次のような情報を含むことが必要である。 

a) 組成と調質,製品形態,試験片をとった断面厚さ,などを含む試験材料の詳細。 

b) 試験片の方向,形状,寸法と表面状態。 

c) 応力負荷方法。 

d) さら露環境と暴露期間。 

e) 試験結果の評価に用いた方法(破断時間,き裂の数と位置,平均き裂進展速度,残留強度と延性)。 

42 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書5(参考) 

金属及び合金の腐食−応力腐食割れ試験− 

第5部:C−リング試験片の作製と試験 

この附属書(参考)は,本体及び附属書(規定)に関連する事柄を補足するもので,規定の一部ではな

い。この附属書(参考)は,この規格の利用者の便宜を図るため,この規格に引用されているISO 7539-5 : 

1989 (E) を翻訳したものである。 

1. 適用範囲 

1.1 

ISO 7539のこの部では,金属の応力腐食に対する感受性を試験するためのC−リング試験片の形状,

作製方法,負荷方法,暴露方法,及び評価方法を規定している。C−リングにおける応力の状態と分布に

関する解析法も示されている。 

ISO 7539のこの部で使用される“金属”という用語には“合金”も含まれる。 

1.2 

C−リングは,溶接部品を含む多種多様な製品形態のすべての金属の応力腐食割れ感受性を決定でき

る用途の広い経済的な試験片である。管,棒,厚板の試験に対して特に適している(図1参照)。また,ノ

ッチ入り試験片も使用できる(5.3.8参照)。 

1.3 

C−リング試験片には,定荷重か定ひずみのいずれかを負荷できる簡単な装置を使用して,決められ

たレベルの応力が加えられる。 

2. 引用規格 次の規格は,この規格の参考となる条項を含んでおり,ISO 7539のこの部の規定を構成す

る。この規格の公布ときには各々表記されている版が有効である。すべての規格はいずれ改定されるもの

であり,ISO 7539のこの部に基づく協定を結ぶ当事者は,下記に示す規格の最新版を適用することの可能

性を検討することが望まれる。IEC及びISOの参加団体は,現在有効な国際規格の登録を常に行うことが

必要である。 

ISO 7539-1 : 1987 Corrosion of metals and alloys−Stress corrosion testing−Part 1 : General guidance on 

testing procedures(金属及び合金の腐食−応力腐食割れ試験−第1部:試験方法の一般的解説) 

ISO 7539-6 : 1989 Corrosion of metals and alloys−Stress corrosion testing−Part 6 : Preparation and use of 

precracked specimens(金属及び合金の腐食−応力腐食割れ試験−第6部:予き裂入り試験片の作

製と試験) 

3. 定義 ISO 7539-1で与えられた定義が,ISO 7539のこの部のために適用される。 

4. 原理 

4.1 

この試験方法は,7条に示されている一つ又はそれ以上のパラメーターを用いて,応力腐食感受性を

決定する観点で,試験片に定荷重又は定ひずみを与える方法である。 

4.2 

腐食環境は,応力を負荷しない環境と材料の同じ組合せで観察されるよりも,負荷された材料の性

質の大きな劣化を引き起こす。この促進された劣化は,応力腐食感受性の評価目的に応じて,種々の方法

で評価される。 

43 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

4.3 

応力腐食による劣化の最も一般的な形態は,き裂の発生と成長を含むことであるが,試験が十分な

時間にわたって続けられたならば,き裂の一つ,又はそれ以上のものは間違いなく試験片の全面破壊を引

き起こす。 

4.4 

公称上の同じ試験片で試験した場合においてさえ,ある金属のある環境における試験結果には大き

な変化がでやすいので,繰り返し試験がしばしば必要である。もし,試験片が異なる寸法及び方向でとら

れたり,異なる負荷方法がとられたならば,試験結果はより大きく変化するだろう。 

4.5 

負荷された試験片を試験環境に暴露した後のき裂発生時間,又はそれ以下ではき裂が現れない下限

界応力は,採用された応力レベルにおけるその環境でのその材料の応力腐食抵抗性の指標として用いるこ

とができる。 

5. 試験片 

5.1 

試験片形状 

5.1.1 

C−リングの寸法は広範囲に変えることができるが,外径が15mm以下のC−リングは,機械加工

の困難さが増すことと,負荷応力の精度が低下するため,推奨できない。リングの寸法は応力状態に影響

するので,これらに対する考察を5.2で規定している。図2はC−リング作製に対する典型的な寸法を示

している。 

5.1.2 

方向性のある結晶粒組織をもつ厚い断面部材について試験する場合には,C−リングは,主応力の

方向が応力腐食割れに対する最小抵抗性をもつ面に垂直となるように方向付けるのが基本である。もし,

リングをそのような方向に向けられない場合には,応力の分かっていない箇所及び計算された応力よりも

低い応力の箇所で,中心を外れて割れることになるであろう(5.3.3参照)。したがって,適切な指示が作

業者に与えられねばならない。C−リング試験片は,ノッチ入り又は疲労予き裂入り試験片としても使用

できる。この場合の応力状態は,ノッチ入り試験片については5.3.8で考察されており,予き裂入り試験片

についてはISO 7539-6で考察されている。 

5.2 

応力の考察 

5.2.1 

C−リング試験片において最も重要な応力は,円周応力である。これは均一ではない。厚さ方向に

こう配をもっており,一方の表面での最大引張応力から反対の表面での最大圧縮応力まで変化する。応力

は,また,C−リングの円周方向で変わり,各ボルト穴での0から負荷ボルトの反対側の円弧中心での最

大値まで変わる。附属書Aで計算される応力は,円弧の中央におけるリングに沿った線上においてだけ与

えられるものである。そのため,もし,応力がC−リングの引張り表面におけるひずみの測定で決められ

るのならば,ひずみゲージは,最大ひずみを示す円弧の中央に取り付けられねばならない。応力は,幅対

厚さ及び直径対厚さの比に依存してリングの幅方向で変化する。もし,図3a)と3b)に示されたように負荷

されるならば,一般には,外表面の引張り応力は中央部よりも端部で大きく,図3c)で示される負荷であ

るなら,内表面の引張り応力は中央より端部で小さくなる。 

5.2.2 

C−リングの応力系におけるもう一つの特徴は,二軸応力の存在である。すなわち,円周方向の応

力とともに横方向の応力が生じる。横軸応力は幅中央における最大値から端部での0まで変化し,円周応

力と同じ様相を呈する。一般に,横軸応力は幅対厚さの比の減少とともに,また,直径対厚さの比の増加

とともに,減少する。 

5.2.3 

ノッチ入りC−リングの場合には,3軸応力状態がノッチ底において生じる。さらに,ノッチ底に

おける円周応力は公称応力より大きくなり,通常は塑性域に入ると考えられる。 

44 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

5.2.4 

C−リングがかなりの残留応力をもつ部材から機械加工された場合,又は機械加工後の焼き入れを

含む熱処理を受けていた場合には,内部応力が存在するかもしれない。これらは計算応力に誤差をもたら

す。 

軸方向に切断する前と後に管の直径を測定することが必要で,こうした測定を行うことで管の残留応力

を計算できる。 

5.2.5 

暴露期間中における緩和の可能性も,特に試験片が高温にさらされるときには,考慮されるべきで

ある。緩和特性は,リングと負荷ボルト双方のクリープデータが利用できれば,見積もることができる。 

注意 もし,リングとボルトが異なる熱膨張係数をもっていたなら,負荷応力は試験温度が上昇した

ときには大きく変わる。また,もし,プラスチック絶縁物が電食を避けるために使用されてい

るなら,応力緩和の可能性が予期されねばならない。 

5.3 

応力負荷方法 

5.3.1 

C−リング試験片は通常,リング直径の中央に位置するボルトを締め付けることによって,リング

の外表面に引張り応力を生じるように,定変位条件下で負荷される[図3a)参照]。 

5.3.2 

C−リングは,また,図3c)に示すように,リングを拡げて内表面に引張応力を生じさせるように

逆方向に負荷することもでき,又は選択できるのであれば,図4のように,C−リングのアームを変位さ

せるくさび開口型負荷法も利用できる。後者の方法では,電食を避けるためにC−リングと同じ材料で精

密加工されたくさびを挿入することで,必要な変位が与えられる。くさびを挿入するための適切なジグは

図4に示されている。 

5.3.3 

C−リング試験は,適当な校正バネを負荷ボルト上に取り付けることで,近似的な定荷重条件に改

造することもできる[図3b)参照]。 

5.3.4 

最も正確な負荷方法は,引張り状態に負荷されている表面に円周方向と横方向のひずみゲージを取

り付け,ひずみ測定器が所定のひずみを示すまでボルトを締め付けることである。 

円周方向の応力呪σcと横軸方向の応力σtは,これらが弾性範囲内にある場合には,次の式で計算される。 

σc=[E/(1−μ2)](εc+μεt) 

σt=[E/(1−μ2)](εt+μεc) 

ここで, 

E:弾性率 (N/m2)  

μ:ポアソン比 

εc:円周方向のひずみ 

εt:横軸方向のひずみ 

薄肉のC−リングにひずみゲージを使用するときは,リング表面からのゲージの変位に対する補正がな

されるべきである。ゲージと接着剤のすべてのこん跡は,試験前にC−リングから取り除かねばならない。 

弾性限を越える応力の計算は,弾塑性解析に基づいて行える。 

5.3.5 

同じ合金で同じ寸法の多数のリングに負荷する場合は,それぞれのリングでひずみゲージによる測

定を行うのは不便であるので,リングの変位に対する円周方向応力の校正曲線を決めておくことが便利で

ある。 

45 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

5.3.6 

C−リングに弾性ひずみだけを与えるに必要な圧縮量と,弾性ひずみの大きさは理論的に予測でき

る。そのため,附属書Aに示された修正張り曲げの式に基づいて,個々のリング寸法に対する必要弾性応

力を生じさせる変位を計算することによって,C−リングに負荷することができる。この方法によって計

算された応力と,試料に取り付けたひずみゲージによって測定された応力とは,よい一致を示すことが認

められている。 

5.3.7 

これとは別に,C−リングに種々の変位を負荷した場合について,試験片全体の応力−ひずみ分布

は,応力解析の有限要素法を用いて計算できる。このような解析は,十分に確立された有限要素プログラ

ムと有限要素法に十分精通した技術者によって行われるべきである。この方法は通常,より複雑な形状を

もつ試験片,又は単純な理論解析ができない負荷形態に対して用いられる。 

5.3.8 

ノッチ入り試験片(5.2.3参照)に対しては,公称応力はノッチ底で測ったリング外径を用いて計

算される。ノッチ部の最大応力は,特定のノッチに対する公称応力と応力集中係数KTの積で計算される。 

5.4 

機械加工と表面処理 

5.4.1 

管及び棒の製造されたままの表面を試験する必要がないなら,高品位に機械仕上げされた表面が最

も望ましい。中実部材からリングを切り出すときには,過熱,塑性変形,又は金属表面に残留応力が生じ

るのを避けるようにあらかじめ注意を払わなければならない。機械加工は,最終切削が1μm/rms以下の清

浄な仕上げ面を与えるようにすべきである。 

金属の流動層を生じるようなラップ仕上げ,機械研磨,及び,類似の操作は避けるべきである。 

5.4.2 

試験片の表面は,暴露前に脱脂されるべきである。化学的又は電気化学的処理は,酸化物層の除去

及び機械加工によって変形した表面金属の薄い層を取り除くために用いる。もし,こうした化学的又は電

気化学的処理が採用された場合には,金属組織の選択溶解が起こったり,表面に望ましくない残留物が生

成することがないような条件が確保できるように,注意を払わなければならない。試験片表面で水素が発

生するような処理は,水素誘起損傷感受性のあるような材料に使ってはならない。 

5.4.3 

表面仕上げは,負荷領域の最終的な脱脂を除いて,C−リングに負荷する前に行うべきである。 

5.4.4 

最終仕上げの後には,表面仕上げを損なうような指紋の付着及び何らかの手荒な取り扱いなどを避

けるよう,あらゆる注意を払わなければならない。 

5.5 

試験片の識別 

5.5.1 

試験片の番号は,C−リングの切断した方の一端に刻印するのがよい。ボルト穴間のある程度以上

に負荷された円弧上には,どのような種類の識別があっても行ってはならない。第2のナットを用いて,

非金属テープを負荷ボルトに取り付けてもよい。 

5.5.2 

くさび開口型の負荷試験片については,くさびを挿入した部分に隣接したC−リング外表面に刻印

してもよい。 

6. 試験方法 

6.1 

C−リングは寸法が小さく,負荷方法が単純であるから,ほとんどどんな種類の腐食環境にも暴露す

ることができる。試験片は,ある程度以上の応力のかかった部分が腐食媒体に接する以外には,何も起こ

らないように支持されるべきである。 

46 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

6.2 

C−リング,負荷ボルト,ナット,又は挿入されたくさび及び試験ラックの間に,電食が起こらない

ように注意が払われるべきである。保護は,図5a)とb)に示すような絶縁ブッシュ,又は図5c)のような被

覆によってできる。リングと負荷ジグの間で発生し,それによってC−リングの応力状態を変えるような

すき間腐食も,避けるべき基本の一つである。図5c)のような被覆はこの目的にも適している。選択され

た被覆材及び絶縁剤は,腐食環境を汚染したり劣化させてはならない。 

6.3 

試験片は,応力負荷後,直ちに試験環境に暴露するか,暴露するまで汚染及び劣化を避けるように

して保管されねばならない。 

7. 試験結果の評価 

7.1 

負荷された試験片が試験環境に暴露されてからき裂が認められるまでの時間,又はそれ以下ではき

裂が発生しない下限界応力は,採用された応力レベルでのその試験環境におけるその材料の応力腐食抵抗

性の指標として用いることができる。 

7.2 

割れは通常,応力腐食割れ感受性のある合金の高応力を負荷したC−リングでは明りょうに現れる。 

7.3 

割れは,低応力を負荷したC−リング及びより抵抗性のある合金では,特に,腐食生成物がき裂を

覆ってしまうような場合には,あまり明りょうではなくなるかもしれない。 

7.4 

もし,C−リングが破断しないなら,割れの認識できる程度に基づいて,ある任意の破壊に対する臨

界条件が採用されねばならない。 

肉眼又は低倍率の拡大鏡によるき裂検査が普通である。 

7.5 

この検査によってもき裂とは明りょうに確認できない徴候があった場合には,試験者は,次のいず

れかの処置をとるべきである。 

a) この割れの疑いに気付いた時間と日を記録し,試験片の暴露を継続して,この最初の徴候が破断時間

であることを示すそれ以上の成長が起きるかどうかを検査をする。 

b) 試験片の暴露を取り止め,この気付いたき裂が割れであるかどうかを確かめるために,断面を金属学

的に検査する。 

7.6 

破壊した又はき裂の入ったC−リングの金属学的な検査は,破壊が応力腐食割れに起因するものか,

又はその他の形態の腐食によるものかを決定するのに役立つ。 

8. 試験報告 

8.1 

破壊した試験片の数と,各試験片の破断時間を記載するのに加えて,特に次の点について報告する

ことが必要である。 

a) 応力負荷の方法。 

b) 負荷応力の大きさ。 

c) 試験片の方向。 

d) 寸法と表面状態。 

e) 試験環境。 

f) 

試験時間。 

g) 破断の基準。 

8.2 

次の情報を含む,試験した材料についての完全な情報を報告することが望ましい。 

a) 合金種又は規格番号。 

b) 試験材料の組成。 

47 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

c) 製造履歴。 

d) 熱処理。 

e) 機械的性質。 

48 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書5A(規定) 

C−リング試験片の応力計算式 

必要応力を与える最終直径は,次の式によって計算できる。 

Df=D±∆D 

∆D=σπd2/4EtZ 

ここに, 

D:負荷前のC−リングの外径 (mm)  

Df:最大応力点を通る中央線に対して直角に測定された負荷C−リングの外径 (mm)  

σ:比例限内における必要応力 (MN/m2)  

∆D:与えられた応力でのDの変化 (mm)  

D:平均直径 (d−t) (mm)  

t:リングの厚さ (mm)  

E:弾性係数 (MN/mm2)  

Z:湾曲したはりに対する補正係数(附属書5図A.1参照) 

表A.1のような表は,ある寸法のC−リングを多く試験する場合の繰り返し計算を避けるために作られ

ている。 

この方法における誤差の主な原因は,C−リング寸法の測定にある。外径19mm,厚さ1.50mmの典型的

なC−リングでいえば,測定が0.03mm近くの精度でできれば,計算における任意誤差は3%を超えない。

また,誤差はより長い,より厚いリングでは小さくなる。しかしながら,応力負荷前後の外径の測定にお

ける0.03mmの誤差は,必要応力の大きさとリングの外径に依存して,実際に生じる応力にかなりの影響

を与えるであろう。上記したリングの寸法についていえば,σ=350MN/m2に対する∆Dの±3%の誤差から,

σ=35MN/m2に対する±30%の誤差範囲になるであろう。 

background image

49 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書5図1 種々製品からの試験片の採取方法 

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50 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書5図2 C−リング試験片の例 

附属書5図3 C−リングへの負荷方法 

附属書5図4 くさび開口型の装置に適したジグ 

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51 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書5図5 すき間腐食及び電食からの保護 

附属書5表A.1 公称外径19mm,厚さ1.50mmの,弾性率100 000MN/m2である合金のC−リングに,

500MN/m2の応力を負荷するときの変位∆D。 

単位 mm 

厚さ 

外径 

18.88 

8.91 

18.94 

18.97 

19.00 

19.03 

19.06 

19.09 

19.12 

1.41 

0.899 

0.902 

0.905 

0.907 

0.910 

0.913 

0.916 

0.919 

0.922 

1.42 

0.892 

0.894 

0.897 

0.900 

0.903 

0.906 

0.910 

0.912 

0.915 

1.43 

0.885 

0.887 

0.890 

0.893 

0.896 

0.899 

0.902 

0.905 

0.908 

1.44 

0.878 

0.881 

0.884 

0.887 

0.890 

0.892 

0.895 

0.898 

0.901 

1.45 

0.871 

0.874 

0.877 

0.880 

0.883 

0.886 

0.889 

0.892 

0.895 

1.46 

0.865 

0.868 

0.871 

0.874 

0.876 

0.879 

0.882 

0.885 

0.888 

1.47 

0.858 

0.861 

0.864 

0.867 

0.870 

0.873 

0.876 

0.878 

0.881 

1.48 

0.851 

0.854 

0.857 

0.860 

0.863 

0.866 

0.869 

0.871 

0.874 

1.49 

0.845 

0.848 

0.851 

0.853 

0.856 

0.859 

0.862 

0.865 

0.867 

1.50 

0.839 

0.842 

0.844 

0.847 

0.850 

0.853 

0.856 

0.859 

0.861 

1.51 

0.833 

0.835 

0.838 

0.841 

0.844 

0.847 

0.849 

0.852 

0.854 

1.52 

0.827 

0.829 

0.832 

0.835 

0.838 

0.841 

0.843 

0.845 

0.848 

1.53 

0.821 

0.823 

0.826 

0.829 

0.832 

0.835 

0.837 

0.839 

0.842 

1.54 

0.815 

0.817 

0.820 

0.823 

0.825 

0.829 

0.831 

0.833 

0.836 

1.55 

0.808 

0.811 

0.814 

0.817 

0.820 

0.823 

0.825 

0.827 

0.830 

1.56 

0.802 

0.805 

0.808 

0.811 

0.814 

0.817 

0.819 

0.821 

0.824 

1.57 

0.797 

0.800 

0.802 

0.805 

0.808 

0.811 

0.813 

0.815 

0.818 

1.58 

0.791 

0.794 

0.797 

0.799 

0.802 

0.805 

0.807 

0.810 

0.813 

1.59 

0.785 

0.788 

0.791 

0.793 

0.796 

0.799 

0.802 

0.804 

0.807 

1.60 

0.780 

0.783 

0.785 

0.788 

0.791 

0.793 

0.796 

0.799 

0.801 

注意1. あるC−リングに予定応力σを負荷するに必要な変位は,そのC−リングに対応する外径と厚さ

の数値に500

σを乗じて得られる。 

2. 弾性率Eの異なる材料に対しては,別の表から計算するか,又はこの表にある∆Dの値にE× 

10−6の逆数を乗じてもよい。 

background image

52 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書5図A.1 湾曲したはりに対する補正係数 

53 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書6(参考) 

金属及び合金の腐食−応力腐食割れ試験− 

第6部:予き裂入り試験片の作製と試験 

この附属書(参考)は,本体及び附属書(規定)に関連する事柄を補足するもので,規定の一部ではな

い。この附属書(参考)は,この規格の利用者の便宜を図るため,この規格に引用されているISO 7539-6 : 

1989を翻訳したものである。 

1. 適用範囲 

1.1 

ISO 7539のこの部では,応力腐食感受性を明らかにするための予き裂入り試験片の形状,作製方法,

使用についての手順を扱っている。ノッチ入り試験片に関する推奨方法は附属書Aに示している。 

ISO 7539のこの部において使用されている“金属”という用語には“合金”を含む。 

1.2 

き裂先端における弾性的な拘束条件を維持する必要があるので,予き裂入り試験片は薄板及び線材

などの薄肉部材の評価には適さず,一般に,厚板,棒材及び鍛造材を含む厚肉部材に適用される。また,

溶接部材にも適用できる。 

1.3 

予き裂入り試験片は,定荷重又は単調増加形の荷重を加えることのできる装置によって負荷される

か,又は荷重点に一定の変位を与えるジグによって負荷される。 

1.4 

予き裂入り試験片の特に大きな利点は,既知の応力が負荷された既知の形状の部材について,それ

以上では応力腐食割れが起きるかもしれない臨界欠陥寸法を知るデータが得られることである。応力腐食

き裂伝ぱ速度の決定もまた可能である。 

2. 引用規格 下記の規格はこの規格の参考となる条項を含んでおり,ISO 7539のこの部の規定を構成す

る。この規格の公布ときには各々表記されている版が有効である。すべての規格はいずれ改定されるもの

であり,ISO 7539のこの部に基づく協定を結ぶ当事者は,下記に示す規格の最新版を適用することの可能

性を検討することが望まれる。IEC及びISOの参加団体は,現在有効な国際規格の登録を常に行うことが

必要である。 

ISO 7539-1 : 1987 Corrosion of metals and alloys−Stress corrosion testing−Part 1 : General guidance on 

testing procedures(金属及び合金の腐食−応力腐食割れ試験−第1部:試験方法の一般的解説) 

3. 定義 ISO 7539のこの部に対し,以下の定義とISO 7539-1に与えられた定義が適用される。 

3.1 

き裂長さ,a き裂先端から,ノッチ開口部又は試験片形状に依存した荷重点軸までのいずれかとし

て測定された,有効き裂長さ。 

3.2 

試験片幅,W 裏面から,ノッチを含む面又は試験片形状に依存した荷重負荷面までとして測定さ

れた,試験片の有効幅。 

3.3 

試験片厚さ,B 

3.4 

サイドグループでの減少厚さ,B 

3.5 

試験片の半値高さ,H 

3.6 

負荷荷重,P 

54 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

3.7 

荷重点軸での変位,Vγ 

3.8 

荷重点線からの変位,V 

3.9 

弾性率,E 

3.10 応力拡大係数の係数,Y ある荷重と試験片寸法に対するあるき裂長さについての応力拡大係数に関

係した,特定の試験片形状に対する応力解析から導かれる係数。 

3.11 平面ひずみ応力拡大係数,KI 開口変位型のき裂先端における弾性応力場の増幅を独自に定義する,

応力×長さの次元をもつ,負荷加重,き裂長さと試験片形状との間の関数 

KI=負荷応力・長さ(単位N・m−3/2) 

3.12 初期応力拡大係数,KIi 

3.13 平面ひずみ破壊じん性値,KIC 塑性変形が強く拘束された状態での応力拡大係数の増加条件下で生

じる,急速で大きな,環境に影響されないき裂の拡大が生じるKIの臨界値。 

3.14 KICの暫定値,KQ 平面ひずみ支配のバリッド条件が満たされたときには,KQ=KICとなる。 

3.15 応力腐食割れ感受性に対する下限界応力拡大係数,KISCC塑性変形が強く拘束された状態,すなわち,

平面ひずみ支配条件下での,特定の試験条件における,それ以上では応力腐食割れが発生し成長する応力

拡大係数。 

3.16 KISCCの暫定値,KQSCC 平面ひずみ支配に対するバリッド条件が満足されたときには,KQSCC=KISCC

となる。 

3.17 疲労応力拡大係数,Kf 疲労サイクルの最大応力に対応する平面ひずみ応力拡大係数。 

3.18 疲労応力拡大係数範囲,∆Kf 

3.19 0.2%耐力,Rp0.2 

3.20 負荷応力,σ 

3.21 形状補正因子,Q 

3.22 疲労応力比,R 疲労サイクルにおける応力の最小値と最大値との算術比。 

3.23 き裂進展速度:連続的なき裂モニター法によって測られた,応力腐食き裂伝ぱの瞬間値。 

3.24 平均き裂進展速度:応力腐食によるき裂長さの変化を試験期間で除して計算された,き裂伝ぱの平

均速度。 

3.25 試験片方位 3軸表示における,第1に負荷方向,第2にき裂成長方向として表した試験片の破壊面。

3軸はX, Y, Zで表され,Z軸は材料製造時の主加工応力方向(厚さ方向)に,X軸は結晶粒の流れ方向(長

さ方向)に,Y軸はZ軸及びX軸に垂直な方向にとる(図6参照)。 

4. 原理 

4.1 

予き裂入り試験片の使用は,製造時又はその後の使用中のいずれにおいても,き裂状の欠陥の発生

が構造物中では全く起こらないとは保証できないと認めたものである。さらに,このような欠陥の存在は,

平滑試験片の定荷重試験では現れないかもしれないある種の材料,例えば,チタン,の応力腐食割れを引

き起こす。線形弾性破壊力学の原理は,予き裂をもつ試験片及び構造物中のき裂先端における応力状態を,

平面ひずみ応力拡大係数で定量化するのに使える。 

4.2 

この試験では,疲労によって機械的ノッチから成長させたき裂を含む試験片に,荷重点での定荷重

又は定変位で負荷し,又は荷重を増加させながら,化学的な浸食性のある環境に試験片を暴露する。その

目的は,環境ほう助き裂の進展が起こる条件を応力腐食割れの下限界応力拡大係数KISCCと,き裂伝ぱの

動力学で定量化することである。 

55 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

4.3 

得られた経験的データは,大形構造物中の応力が,例え欠陥が存在していようとも環境ほう助割れ

の発生を助長するには不十分であることを,又は設計寿命若しくは予測期間内に生じるであろうき裂成長

が,不安定破壊の危険性なしに,許容される大きさであることを,保証するための設計又は寿命予測に利

用できる。 

5. 試験片 

5.1 

概要 

5.1.1 

破壊じん性試験に用いられる種々の標準試験片形状のものが利用できる。用いる試験片の種類は,

試験される材料の形態,強度及び応力腐食割れ感受性,又は試験目的に依存する。 

5.1.2 

基本条件は,塑性変形がき裂先端近傍に限られるような3軸条件(平面ひずみ)が十分に保持され

るような試験片寸法でなければならない。破壊じん性試験での経験によれば,バリッドなKICの測定のた

めには,き裂長さaと厚さBはともに,次の式以下であってはならない。 

2

2.0

p

IC

2.5

RK

また,可能ならば,aとBがともに少なくとも次の式を満足する以上に大きな試験片とし, 

2

2.0

p

IC

4

RK

十分な拘束を確保して用いることが望ましい。 

破壊力学の観点からは,KISCCの一定値が得られる最小厚さをこの時点で規定することはまだできない。

応力腐食中の浸食環境の存在は,破壊までの延性の程度を減少させるかもしれないし,それによって,塑

性変形を限定するに必要な試験片寸法も小さくなるかもしれない。しかし,不適当な拘束の危険性を最小

限にするため,破壊じん性試験に使われるのと類似の臨界条件が,試験片寸法に対して採用されることが

望ましい。すなわち,aとBはともに次の式以下でなく, 

2

2.0

p

I

2.5

RK

また,多分,次の式以下でもないことが望ましい。 

2

2.0

p

I

4

RK

ここで,KIは試験中の負荷応力拡大係数である。 

最終的に決定された下限界応力拡大係数値は,バリッド性に対する検証として,これらの式の最初の方

の式のKIに代入されるべきである。 

56 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

5.1.3 

もし,試験片がKISCCの決定のために用いられる場合には,最初の試験片寸法はその材料のKISCC

の概算値(まずは,KISCC値を過大評価するほうが好ましいので,実際に必要と思われる寸法よりも大きい

試験片を用いることが望ましい。)に基づくべきである。実際の応用に当たっては,バリッド性に対する条

件を満足するには不十分な厚さの材料が使用されているならば,特定の応用に対してだけ適用できるよう

な下限界応力拡大係数値KQSCCを間違いなく与えるであろう類似厚さの試験片を試験することが許される。

応力拡大係数の関数として応力腐食き裂成長挙動を決定することが求められる場合には,試験片寸法は,

き裂成長速度が測定される範囲の最大応力拡大係数からの概算に基づくべきである。 

5.1.4 

次の2種の基本的な試験片の種類を用いることができる。 

a) 負荷ボルトを組み込むことで常に試験片自身に負荷のかかる定変位試験のための試験片。 

b) 荷重の外部負荷を必要とする定荷重試験のための試験片。 

5.1.5 

試験片自身に荷重が負荷された定変位試験片は,外部から荷重を負荷する装置を必要としなくても

よいため経済的である利点がある。それらは小形であるために,実際の使用環境に暴露する際にも簡便で

ある。それらは,疲労予き裂からの応力腐食き裂の発生によって,KISCCを決定するのに用いることができ

る。最も,その際には,限界値を正確に求めるために多数の試験片が用いられなければならない。また,

定変位は,き裂伝ぱに伴って応力拡大係数が次第に減少していく条件での試験であるから,これらの試験

片はき裂伝ぱの停留によってKISCCを決定するのに使用できる。この場合には,単一の試験片で原理的に

は十分であるが,5.1.6に記述された欠点を考慮して,実用的には幾つかの(3個以上)試験片を用いるこ

とが推奨される。 

5.1.6 

定変位試験片は,次のような欠点をもっている。 

a) 負荷された荷重は,変位の変化によって間接的に測定できるだけである。 

b) 酸化物の形成及び腐食生成物は,負荷変位及び荷重を変えてしまうき裂表面のくさび開口物として働

いたり,腐食因子の侵入を阻害するき裂口の遮へい物として働いたりし,また,電気抵抗法でのき裂

長さ測定の精度を損なったりする。 

c) き裂の分岐,鈍化及び面内からの逸脱が,き裂停留データをバリッドでなくすることがある。 

d) き裂の停留は,正確な測定が困難であるような,ある任意の速度以下のき裂成長として定義されなけ

ればならない。 

e) き裂成長間の負荷系の弾性緩和が,予期以上の変位の増加及び高負荷の原因となることがある。 

f) 

試験片の時間依存過程に起因する塑性緩和が,予期以上の低負荷の原因となることがある。 

g) き裂発生を遅延させる荷重負荷の前に,試験雰囲気にさらすことが時として不可能である。 

5.1.7 

定荷重試験片の利点は,応力パラメータが明確に定量化できることである。き裂の成長はき裂開口

を増加させるので,酸化膜がき裂進展を妨げたり,くさびとして開口させるようなことはほとんどない。

き裂長さの測定は様々な連続的モニター法で容易にできる。試験材料の形態,利用できる試験設備,又は

試験目的に応じて,広範な試験片形状のものが利用できる。このことは,曲げ又は引張負荷条件下でのき

裂成長が試験できることを意味する。この種の試験片は,一連の試験片を用いて疲労予き裂からの応力腐

食き裂の発生を調べることでKISCCを決定するため,又はき裂成長速度を測定するために用いることがで

きる。定荷重試験片は,不必要な潜伏期間の危険性を避けるために,試験環境に暴露してから負荷するこ

ともできる。 

57 

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5.1.8 

定荷重試験片の主な欠点は,高価でかさばる外部負荷系が必要になるということである。曲げ試験

片は比較的単純なカンチレバービーム装置で試験することができるが,引張試験片では定荷重クリープ破

壊装置及びそれに類似の試験装置を必要とする。この場合,試験片の破壊による除荷を防ぐように設計さ

れた負荷ジグで試験片をつなぐことによって,高価という点を軽減できる。このような負荷系の大きさは,

実用条件下で定荷重試験片を試験することは困難であることを意味しているが,実用系から抽出した環境

中でなら試験できる。 

5.2 

試験片の形状 附属書6図1は,応力腐食試験に用いられる幾つかの予き裂入り試験片形状を示す。 

5.2.1 

定荷重試験片には二つの異なる種類がある。 

a) き裂長さの増加につれて応力拡大係数が増加するもの。 

b) き裂長さに対して応力拡大係数が実質的に一定であるもの。 

種類a)は,KIの関数としてKISCCを決定すること及びき裂伝ぱ速度の研究に適している。方,種類b)は

応力腐食機構の基礎研究に適している。 

5.2.2 

K増加形の定荷重試験片は,引張り又は曲げ負荷で使用できる。試験片形状に依存して,引張負荷

試験片は,次のようなき裂先端での応力を作り出すことができる。すなわち,優先的な引張応力(中央に

き裂をもつ厚板のような遠方負荷形),又はかなりの曲げ成分を含む応力(コンパクトテンション試験片の

ようなき裂線負荷形)などを作り出すことができる。き裂先端における大きな曲げ応力の存在は,応力腐

食試験におけるき裂経路の安定性に悪影響を及ぼすことがあり,ある種の材料では,き裂の分岐を容易に

することがある。曲げ試験片は,3点曲げ,4点曲げ,又はカンチレバー曲げジグで負荷する。 

5.2.3 

定K定荷重試験片は,ダブルトーション・シングルエッジき裂厚板試験片のようなねじり負荷,

又は等高形のダブルカンチレバービーム試験片のような引張負荷で用いられる。引張りで負荷したとして

も,後者の試験片では,き裂成長が面内から外れるような傾向をもたらすき裂線曲げ応力を伴うが,これ

はサイドグループを用いることで抑制できる。 

5.2.4 

定変位試験片は,通常,一方のアームに負荷ボルトを取り付け,反対側のアンビル又は第2の負荷

ボルトに突き当てるようにした,自己負荷形で負荷される。二つの種類が利用できる。 

a) き裂先端に対する試験片裏面端の近さがき裂先端の応力場に影響する,T形くさび開口負荷 (T-WOL) 

試験片のような (W-a) 支配形試験片。 

b) き裂先端の応力場に及ぼす影響が無視できるほど十分に裏面がき裂先端から離れている,ダブルカン

チレバービーム試験片 (DCB) のような (W-a) 独立形試験片。 

5.2.5 

上記した多くの試験片の形状はそれぞれに特有の利点があり,そのため,応力腐食試験にしばしば

用いられる。それぞれの利点には次のようなものがある。 

a) カンチレバー曲げ試験片は機械加工が容易で,定荷重下では安価に試験できる。 

b) コンパクトテンション (CTS) 試験片は,定荷重試験に対しては材料の必要量が最小で済む。 

c) 自己負荷形ダブルカンチレバービーム (DCB) 試験片は,使用環境下における定変位での試験が容易

にできる。 

d) T形くさび開口負荷 (T-WOL) 試験片は,やはり自己負荷形であって,定変位試験としては小形であ

る。 

e) C型試験片は,長さ方向を向いたき裂の円周方向での伝ぱを研究するために,厚肉円筒から機械加工

して使用する。 

これらの試験片種類それぞれの標準試験片形状の詳細は,附属書6図2a)〜e)に示している。 

58 

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5.2.6 

必要ならば,例えば,もし,疲労き裂の発生と伝ぱを十分に制御することが困難であるような場合

には,附属書6図3に示したようなシェブロンノッチ型も利用できる。もし,必要なら,内角は90°から

120°に増やすこともできる。 

5.2.7 

定変位試験片に変位を与える場合のように,き裂開口変位の測定が必要な場合には,附属書6図

4a)に示すように,変位ゲージを取り付けるためのナイフエッジをノッチ開口部に機械加工で入れることが

できる。また,別に,附属書6図4b)に示すように,試験片のノッチの両側に別々のナイフエッジをネジ

止め又は接着することもできる。適切なテーパービーム型変位ゲージについての詳細は附属書6図4c)に

示している。 

5.3 

応力拡大係数の考察 

5.3.1 

多様な形状の試験片及び構造物に含まれるき裂の先端で働く応力拡大係数KIは,弾性論を使えば,

次の式で表すことができる。 

KI=Q・σ・a 

ここで 

Q:形状係数 

σ:負荷応力 

a:き裂長さ 

5.3.2 

特定の形状及び負荷方法の試験片についてのKIの解は,有限要素応力解析によって,又は試験片

コンプライアンスの理論的若しくは実験的決定によって得ることができる。 

5.3.3 

KI値は,き裂長さに関係した無次元の応力拡大係数の係数Yに基づいて計算でき,次のような関係

になる。ここに,Wは試験片の幅,Hは試験片の半値高さで,a/W又は (W-a) 独立形試験片においては,

Yはa/Hによって表される。 

コンパクトテンション試験片又はC型試験片では, 

W

B

P

Y

K =

I

T形くさび開口負荷試験片では, 

a

B

P

Y

K =

I

ダブルカンチレバービーム試験片では, 

H

B

P

Y

K =

I

5.3.4 

き裂の分岐傾向などを抑制するためにサイドグルーブを付けた試験片を使用する必要のある場合

には,浅いサイドグルーブ(通常,両面に試験片厚さの5%をとる。)が使われる。半円形又は60°V型サ

イドグルーブのいずれかが利用できるが,試験片厚さの50%にも達する半円形サイドグルーブを使った場

合でさえ,き裂を望ましい進展面に保つことが常に可能ではないことに留意すべきである。サイドグルー

ブを採用した場合,グルーブによって減少した厚さBnの応力拡大係数への影響は,上述の式でBを

)

(

n

B

B

で置き換えることによって考慮できる。しかし,応力拡大係数へのサイドグルーブの影響はまだ

確立されたとはいえず,特に深いサイドグルーブを使用するような場合には,補正係数を注意して取り扱

うべきである。 

5.3.5 

応力腐食試験によく使用される形状の試験片についてのYの解は,附属書6図5a)〜e)に示されて

いる。 

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5.4 

試験片の作製 

5.4.1 

必要な方位の試験片(附属書6図6参照)は,可能ならば,完全に熱処理してから機械加工される

べきである。もし,完全な熱処理材から機械加工することが容易でない材料の試験片であるならば,ノッ

チを入れる又は最終仕上げをする前に最終熱処理を施してもよいが,その場合には最終加工後に各面当た

り少なくとも0.5mmを厚さから削除する。しかし,熱処理が有害な表面状態,残留応力,焼入れ割れ又は

ひずみなどをもたらさないならば,最終機械仕上げした試験片に熱処理を施してもよい。 

5.4.2 

機械加工後は,その後の疲労予き裂導入又は応力腐食試験中におけるき裂先端の汚染を防止するた

めに,完全な脱脂を行うことが望ましい。電気抵抗測定法によるき裂モニターのための電極を試験片には

んだ付け及びろう付けで取り付ける必要がある場合は,フラックス残さを除去するために,予き裂を入れ

る前にこの操作を行い,脱脂することが望ましい。 

5.5 

試験片の識別 

試験片の識別記号は,試験片のノッチのある面又はノッチと平行な端面に,押印又は刻印する。 

6. 疲労き裂の導入と伝ぱ 

6.1 

疲労き裂導入に用いる機械は,応力分布がノッチに対して対称であり,負荷荷重が±2.5%以下の精

度である負荷方法のとれるものであるべきである。 

6.2 

応力条件と同様,疲労予き裂導入時の環境条件も,その後の応力腐食試験における試験片の挙動に

影響を及ぼすことがある。ある種の材料では,予き裂導入操作時に応力腐食試験環境を導入すると,通常

の延性粒内疲労き裂モードから応力腐食割れにより類似したようなモードへと変化してしまう。これはそ

の後の応力腐食割れの発生を容易にし,KISCCの連続的な開始値をもたらしてしまう。しかしながら,予き

裂導入操作後,直ちに応力腐食試験を開始することができる設備でない限り,き裂先端に残留した腐食物

質が腐食侵食してき裂鈍化を引き起こすことがある。さらに,繰り返し負荷条件に対する腐食疲労破壊の

より高い感受性のために,浸食環境下で予き裂が導入された場合には,結果の再現性の害されることもあ

る。さらに,予き裂導入時の環境の制御には,より精巧な設備が必要になる。このような理由から,当事

者間の合意がない限り,疲労予き裂の導入は普通の実験室大気環境で行われることが推奨される。 

6.3 

試験片には,0〜0.1のR値範囲における疲労荷重で,試験片側面におけるどちらか大きい方のき裂

伝ぱが,ノッチから少なくとも2.5%W又は1.25mm以上に伝ぱするまで,疲労負荷によって予き裂が導入

されるべきである。き裂は高KI値で開始させてもよいが,最後の0.5mmのき裂伝ぱの間は,疲労予き裂

導入は可能な限り低い(もし,可能ならば予測されるKISCCより低い)最大応力拡大係数下で行われるべ

きである。 

6.4 

疲労き裂の最終長さは,平面ひずみ支配に対する要求を満たしていることが必要である。すなわち, 

2

2.0

p

I

5.2

>

R

K

a

この条件は,最終的なa/W比が0.45〜0.55である場合に満足される[(W-a) 独立形試験片を除く]。 

6.5 

き裂による応力場とノッチのそれとの間の相互作用を避けるために,き裂は附属書6図7に示すよ

うな限定された範囲にあるべきである。 

6.6 

応力拡大係数解析のバリッド性を確保するために,疲労予き裂のどの部分もノッチ面から10°以上

ずれた面内にはないこと,及び,長さの差異が5%Wを超えないことを保証するよう,試験片の両面につ

いて疲労予き裂が検査されるべきである。 

60 

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7. 試験方法 

7.1 

概要 

7.1.1 

試験に先立ち,厚さBと,幅W又は半値高さH[(W-a) 独立型試験片の場合]が,き裂面から10%W

を超えない線上において0.1%W(又はH)以内の精度で測定されなければならない。試験片両面における

疲労予き裂の平均長さも測定されなければならず,その値は必要な初期応力拡大係数KIを得るに要する荷

重の評価に用いられる(ISO 7539-1参照)。 

7.1.2 

環境的な試験条件は,試験目的に依存するであろうが,理想的には,合金の予定用途に対応する,

又は予測される使用条件に対応する条件と同じにすべきである。 

7.1.3 

電気化学的な分極法は,導電性の水溶液環境に暴露された試験片になら,参照電極を用いることで

適用できる。しかし,応力腐食き裂先端での電位的な状態は,き裂長さが増すにつれて大きな変化を生じ

ることになるであろうし,それは応力腐食割れの機構を考察する場合には,考慮されなければならないと

いうことには留意すべきである。 

7.1.4 

実行できるなら,試験環境に暴露した後に,試験片に負荷されることが推奨される。それができな

ければ,応力が負荷された試験片は,負荷後できるだけ早く試験環境に暴露されるべきである。 

7.1.5 

できるなら常に,負荷点は腐食環境に接しないようすべきことが推奨される。それが不可能な場合

には,次のような問題を生じるかもしれない。 

a) もし,負荷系及び付帯装置(電気抵抗き裂モニター法に用いる電極のような)が試験片と異なる材料

で作られていれば,接触電位効果が結果に影響するかもしれず,その場合には電気的な絶縁が必要に

なる。 

b) すき間腐食が,負荷系と試験片の間の限られた空間の内部で生じるかもしれず,負荷ピンなどの早期

破損の原因となるかもしれない。 

こうした問題は,試験環境媒体が試験片のノッチ,予き裂及び予想されるき裂成長領域の近傍を循環す

るように作られた附属書6図8に示すような局部環境セルを使用することで克服できる。すき間の問題は

試験片が試験セルから出る部分でも起こり得るが,これはセルの適切な設計及びそのような部分に保護コ

ーティングを施すことで回避すべきである。もし,試験片の全浸漬が想定されているのであれば,負荷点

は腐食から保護されるべきである。 

7.2 

き裂停留によるKISCCの決定 

7.2.1 

定変位試験片は,き裂停留によるKISCCの決定に用いることができる。一般的には,この目的のた

めには単一の試験片で十分であるが,誤差のある結果を得る危険性を減じるために幾つかの試験片で試験

することが推奨される。 

7.2.2 

き裂停留によるKISCCの決定のためには,予き裂入り試験片は保持ジグに固定し,可能ならば,環

境媒体はノッチ底部に供給されるべきである。 

7.2.3 

試験片のアームは,予測されるKISCC値を超えるあらかじめ定められたKIiを与えるために,ボルト

を回すことで変位を加えられる。過剰の変位は避けなければならない。負荷線における変位Vyは,附属書

6図9に示した方法によって,ノッチ開口部に位置したナイフエッジでの変位ゲージで測定された変位V

に関係付けることができる。変位ゲージの感度は,微弱信号の過剰増幅による誤差を最小にするために,

20mV/mm以下にしてはならない。ゲージの直線性は,0.5mmまでの変位については,真の変位からのず

れが3μm (0.003mm) を超えないように,また,より大きな変位に対しては記録値の1%を超えないように

すべきである。 

61 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

7.2.3.1 

(W-a) 独立型のDCB試験片では,あるa/H値についての必要応力拡大係数KIiを得るために必要

な変位は,附属書6図5a)に示すKIとVyとの関係から計算できる。 

7.2.3.2 

(W-a) 依存型のT-WOL試験片では,ある特定のき裂長さの比a/Wについての必要応力拡大係数

値を得るに必要な変位の計算には,附属書6図5b)に示した関係を用いた独特のコンプライアンス校正に

ついての知識が必要である。平滑でサイドグルーブをもつT-WOL試験片についての典型的なコンプライ

アンス校正曲線は附属書6図10に示している。負荷後には,変位ゲージは取り除かれるべきである。 

7.2.4 

いったん試験片が環境に暴露されたならば,き裂長さは経過時間の関数としてモニターされる。こ

れは直接的な光学測定又は背面のひずみ測定のような間接的方法によって行える。き裂進展が起きたなら

ば,応力拡大係数は減少する。き裂長さと時間との間の関係のこう配は,き裂成長速度を与えるが,これ

は通常,き裂長さ対時間曲線の図上微分法によって決定される。き裂は最後には停留するであろうから,

そこからKISCCを得る。しかし一般に,き裂は非常に遅い速度でも伝ぱするので,KISCCは任意に選ばれた

き裂成長速度として表される。停留成長速度の最も妥当な値は,対象となっている材料/環境系に依存し

ているので,当事者間の合意に基づくものでなければならない。高強度合金については,約0.1nm/s(約

10−7mm/s)の速度が妥当であるといわれているが,実際の実験では応力腐食き裂が1pm/s (10−9mm/s) 以下

の成長速度でも伝ぱすることが示されている。き裂停留までの時間は,KISCCの概略が知られていれば,

KISCCに近いKIi値を用いることで大きく減少させることができる。 

7.2.5 

き裂停留が生じたと判断されたら,き裂長さを決定し,仮のKISCC値を与える応力拡大係数を計算

する。これは変位ゲージを再度取り付け,変位を読むことで行える。試験片はその後,除荷され,次に,

相当荷重を測定するために引張試験機で再負荷される。その後さらに,試験片は切断して,最大と最小の

最終応力腐食き裂長さが,0.5%W近傍と次の3つの位置において測定されるべきである。 

25%B; 50%B; 75%B。 

これら3箇所の最終測定値の平均が,KISCCの計算における有効き裂長さとして使われるべきである。 

下記のような場合には,その試験はバリッドでない。 

a) これら最終3箇所での測定値のいずれか二つの間の差が2.5%Wを超えたとき。 

b) 最大と最小のき裂長さの差が5%Wを超えたとき。 

c) き裂面のある部分がノッチ面から10°を超すこう配の面内にある場合。 

d) 係数 

2

2.0

p

ISCC

5.2

R

K

が試験片厚さ又はき裂長さより大きいとき。 

7.3 

き裂発生によるKISCCの決定 

7.3.1 

定荷重又は定変位試験片がき裂発生によるKISCCの決定に使用できる。 

7.3.2 

き裂発生によってKISCCを決定するには,複数の試験片が必要である。7.3.2.1及び7.3.2.2に述べら

れた二つの方法を使うことができる。 

7.3.2.1 

時間が限られており,試験片と試験装置にゆとりのある場合には,KISCCがあると予想される範囲

を含む種々のKIi値で,一連の試験片を同時に暴露することが最も望ましい。 

62 

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7.3.2.2 

時間に余裕がある場合には,KISCCの値は2等分探索法を用いることによって,より高い精度と試

験片及び装置のより優れた経済性とをもって,決定することができる。この場合には,最初の試験片は,

推奨された方法を用いて材料の破壊じん性値KIC(又は,もし,バリッドでなければKQ)を決定するのに

用いる必要がある。この値はKISCCの上限となる。その後,KICの半分の初期応力拡大係数で最初の応力腐

食試験が実施され,さらにその後,その試験での破壊(又はき裂進展)の有無によって,例えば,ISO 7539-1

に示したようなスケジュールに基づき,異なるKICの分率で試験されるべきである。 

7.3.3 

定変位試験片が使用された場合には,変位は7.2.2及び7.2.3に示した推奨法によって負荷されるべ

きである。定荷重試験片については,必要な応力拡大係数をもたらすのに必要な荷重は,図5c)及びd)に

示したような関係によって計算できる。負荷に使用される試験機は,±1%の精度で負荷力を測定できる装

置であり,その後の試験環境への暴露ができる限り円滑に行えるものであることが望ましい。 

7.3.4 

試験は所要荷重又は変位が付与された後に,できるだけ速やかに開始する。それ以上で応力腐食割

れを発生する暫定KISCC値の決定には,任意の試験期間を選定してよい。この試験期間は,問題となって

いる材料と環境に依存するであろうから,関係当事者間の合意に基づくべきである。しかし,過去の試験

によれば,チタン合金で10h,超高強度低合金鋼で100h,低強度鋼,マルエージ鋼種類の高合金鋼及びア

ルミニウム合金で1 000hが,ほぼ最少値であろう。 

7.3.5 

試験期間中,き裂長さは試験環境に応じて光学的方法で定期的にモニターされるか,又は電気抵抗,

背面ひずみ,変位ゲージなどの代替方法によって連続的にモニターされる。こうした測定はき裂発生の検

知と,応力拡大係数の関数としてのき裂成長速度の測定を可能とする。 

7.3.6 

試験期間を満了したら,試験片は破壊のこん跡について検査されることが望ましい。もし,破断し

ていないなら,試験片を切断し,0.5%W近傍と以下に示す3箇所で最大及び最小の疲労予き裂長さを測定

すべきである。 

25%B ; 50%B ; 75%B。 

これら3箇所の測定値の平均を,KQSCCの計算における有効き裂長さとして使用することが望ましい。 

次に該当しなければ,試験はバリッド,すなわち,KQSCC=KISCCである。 

a) 上記最後の3箇所での測定値のいずれか二つの間の差が2.5%Wを超えたとき。 

b) 最大と最小のき裂長さの差が5%Wを超えたとき。 

c) 疲労き裂面のどこかの部分が,ノッチ面から10°以上傾いた面にあるとき。 

d) 疲労き裂面が一つでないとき。すなわち,複数のき裂核形成の影響があるとき。 

e) 係数

2

2.0

5.2

p

ISCC

R

K

が試験片厚さ又はき裂長さより大きいとき。 

f) 

疲労き裂長さが不明確なとき。 

応力腐食き裂進展の認められた場合には,KIi値はKISCCを超えている。一連の試験が終わったならば,

KISCC値は応力腐食き裂の進展が認められなかったもののなかの最大のKIi値になる。 

7.3.7 

もし,時間的に許されるなら,KISCCの暫定値の信頼性は,同じ応力拡大係数で試験期間を1けた

増した継続応力腐食試験によって確認できる。この継続試験は,き裂進展の兆候のあった場合にだけ必要

である。別なやり方としては,暴露時間内に破断した試験片の破断時間をKIi値に対してプロットし,附属

書6図11に示したように,その曲線がKISCCに漸近していくかどうかを確かめることで,KISCCの時間依存

性に関する何らかの情報を集めることもできる。 

63 

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8. 試験報告 試験結果の報告には,8.1〜8.6に規定する情報が含まれねばならない。 

8.1 

組成,調質,機械的性質を含む試験材料の詳細,製品形態及び試験片をとった断面厚さ。 

8.2 

化学組成,電気化学的条件,温度,圧力,及び適用方法(例えば,全浸漬,噴霧など)を含む試験

環境。 

8.3 

それぞれの試験片についての以下の情報。 

a) 試験片の種類と負荷方法 

b) 厚さB(及び,サイドグルーブがあるならばBn) (mm)  

c) 幅W (mm)  

d) 半値高さH[(W-a) 独立型試験片だけ] (mm)  

e) 疲労き裂 

1) き裂伝ぱの最後部分での疲労応力拡大係数Kf 

2) 疲労応力比R 

3) 予き裂導入時の温度と雰囲気 

f) 

疲労予き裂長さa 

g) 初期応力拡大係数KIi 

h) 環境に暴露開始時間と負荷開始時間及び全暴露時間 

i) 

き裂が進展したかどうか(定変位試験片の場合には,き裂停留) 

j) 

破壊が起きたかどうか及びその破断時間 

k) 附属書6図6に示したような,き裂面と伝ぱ方向 

8.4 

KIC(もし,バリッド条件が満足されていないならばKQ)。 

8.5 

き裂発生から求めたものか停留から求めたものかと,用いた臨界条件を含むKISCC(又は,バリッド

条件が満足されていなければKQSCC)。 

8.6 

可能ならば,き裂成長データ(平均値又は応力拡大係数の関数)。 

64 

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附属書6A(規定) 

応力腐食試験用ノッチ入り試験片の使用 

A.1 適用範囲 

A.1.1 破壊力学的な試験片は,構造物及び部材に存在する鈍化ノッチで環境ほう助割れが発生しうる条件

を評価することが求められる場合には,疲労予き裂のない鈍化ノッチ条件でも試験できる。 

A.1.2 1.2及び1.3に概要を示したのと類似の基本形状及び負荷方法が,鈍化ノッチ入り試験片にも適用で

きる。 

A.2 量記号 予き裂入り試験片に関する定義(第3項)に加えて,次の記号を適用する。 

l:試験片形状に依存した,ノッチ底からノッチ開口部又は荷重点軸までの距離。 

σn:公称応力。 

σme:弾性に基づく最大ノッチ応力。 

σmk:破壊力学的方法に基づく量大ノッチ応力。 

εTh:ある試験条件下で,それ以上では環境ほう助割れが発生も成長もしない,ノッチ表面ひずみの臨

界値。 

σTh:ある試験条件下で,それ以上では環境ほう助割れが発生も成長もしない,ノッチ応力の臨界値。 

r:ノッチ底半径。 

Kt:理論的な弾性応力集中係数。 

K'I:ノッチ深さと負荷荷重によって計算した見かけのき裂先端応力拡大係数。 

M:曲げモーメント。 

μ:ポアソン比。 

A.3 原理 

A.3.1 この試験は,機械的ノッチを含む試験片を荷重点で定荷重又は定変位のいずれか,又は単調増加型

の荷重を与えるかして,化学的浸食環境下に暴露する試験方法である。目的は,最大弾性ノッチ応力σme

の計算値から評価される臨界表面ひずみεThによって,環境ほう助き裂進展の起こりうる条件を定量化する

ことである。 

A.3.2 得られる経験的データは,鈍化ノッチ入り試験片の弾性的に計算した最大応力に基づく最大ひずみ

と,調べようとしている構造物及び部材中の最大ひずみとの間に妥当な相関性があるとすれば,構造物中

の応力が環境ほう助割れを引き起こすには不十分であることを保証するための設計目的に利用できる。 

A.4 試験片 

A.4.1 概要 予き裂入り試験片として5.に規定したのと類似形状の鈍化ノッチ入り試験片が,疲労予き裂

を入れずに利用できる。 

65 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

A.4.2 試験片形状 予き裂入り試験片の場合と同様,ノッチ底での平面ひずみ支配条件の確保が満足され

ねばならない。なぜなら,そういう条件下ではノッチ底の塑性域が拘束されているので,ある材料につい

ての弾性的に計算された最大ノッチ応力の単独の関数として,弾性と塑性の和の全ノッチひずみが妥当な

近似となるであろうからである。したがって,塑性域寸法とノッチ底半径はともに,ノッチ深さに比較し

て小さくすべきである。したがって,次の条件が推奨される。 

a) ノッチ深さlと厚さBを,次の式より小さくならないようにする。 

2

2.0

p

I'

5.2

RK

ここに,K'Iは負荷荷重とノッチ深さから計算した見かけの応力拡大係数である。 

b) ノッチ底半径rは,次の式の比率において0.2を超えてはならない。 

)

(

l

W

r

r

A.4.3 応力の考察 

A.4.3.1 最大ノッチ応力は,公称応力σnと弾性的応力集中係数Ktの積で弾性的に計算できる。 

A.4.3.2 弾性応力集中係数Ktは,弾性有限要素解析によって決定するか,公表されている表によるか,又

は次のような関係式から評価できる。 

n

mk

t

σ

K

σ

ここに, 

γ

π

σ

I

mk

'

2K

後者の方法の精度は,ノッチ底半径の増加にともなって低下することに留意すべきである。 

A.4.3.3 公称応力σnは,試験片形状に依存する。曲げ試験片については, 

B

l

W

M

)

(

6

n

σ

ここに,Mは曲げモーメントである。 

コンパクトテンション試験片については, 

1

)

(

)

(

3

)

(

n

l

W

B

l

W

B

l

W

P

σ

A.4.4 試験片の作製 

A.4.4.1 試験片へのノッチ入れは,対象部品の製造をシミュレートした機械加工条件を用いて,熱処理の完

了後に行われることが望ましい。 

A.4.4.2 予き裂入り試験片に比べて,ノッチ入り試験片でのき裂発生荷重はより大きいので,0.6・l/Wのオ

ーダーよりいくらか大きなノッチ深さを用いることが必要である。 

A.4.4.3 試験前に完全な脱脂を行う。 

A.5 試験方法 

A.5.1 それ以上ではその材料が環境ほう助割れ感受性をもつ下限界表面応力σThは,き裂発生によるKISCC

の決定について7.3で概説したのと同様の方法で,定変位又は定荷重試験片を用いて決定できる。 

66 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

A.5.2 それ以上ではその材料が環境ほう助割れ感受性をもつ下限界表面ひずみεThの相当値は,次の近似式

で評価できる。 

E

Th

2

Th

)

1(

σ

μ

ε

A.6 試験報告 第8項に規定した関係あるデータに加え,それぞれの試験片について次の情報を含むこと

が必要である。 

a) ノッチ半径r' 

b) ノッチ深さl0 

c) ノッチ加工の方法と用いた加工パラメーター(これらがノッチの表面状態に影響し,そのため,環境

ほう助割れの発生に必要な条件に影響するので)。 

background image

67 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

上記の試験片に対する応力拡大係数は、公表されている文献のものが利用できる。 

附属書6図1 応力腐食試験用の予き裂入り試験片形状 

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68 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書6図2a) カンチレバー曲げ試験片の比寸法と許容公差 

附属書6図2b) コンパクトテンション試験片の比寸法と許容公差 

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69 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

注意1.  “A”面は,0.002 H TIR以内でできるだけ直角,かつ,平行であるべきである。 

 2. 点“B”の両側は,0.001 H以内で上面及び底面から等しい距離になければならない。 
 3. ボルトの中心線は,1 in以内で試験片中央線に垂直とする。 
 4. ボルトは試験片と同じ材料で,細かいピッチで,角又はアレン頂部とする。 

附属書6図2c) ダブルカンチレバービーム試験片の比寸法と許容公差 

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70 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

注意1. 表面は,0.002 H TIR以内でできるだけ直角,かつ,平行でなければならない。 

 2. ボルト中心線は,1in以内で試験片中央線と直角にする。 
 3. ボルトは試験片と同じ材料で,細かいピッチで,角又はアレン頂部とする。 

附属書6図2d) T型くさび開口型試験片の比寸法と許容公差 

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71 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

注意 

すべての表面は,0.002W TIR以内で,できるだけ直角,かつ,平行とする。“E”面は,0.02W 
TIR以内で“Y”表面と直角とする。 

附属書6図2e) C型試験片の比寸法と許容公差 

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72 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書6図3 シェブロンノッチ 

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73 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

注意 適正な強度が確保されるならば,上記のナイフエッジは接着剤で固定してもよい。 

附属書6図4 変位ゲージ取付け位置のナイフエッジ 

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74 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書6図4c) テーパー付きビーム型変位ゲージの詳細 

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75 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書6図5a) ダブルカンチレバービーム試験片の応力拡大係数の解[(W-a) 独立型] 

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76 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

a

B

YP

K=

I

ここに,

5

4

3

2

6.

754

3.

1186

6.

730

8.

195

96

.

30

W

a

W

a

W

a

W

a

W

a

Y

この式は弾性コンプライアンス理論から誘導でき,その精度とバリッド性の限界は十分には分かっていな

いが,0.3≦a/W≦0.8の範囲で適用できる。最大の信頼性を得るには,経験的なコンプライアンス校正法を

用いることが推奨される。 

附属書6図5b) T型くさび開口型負荷試験片についての応力拡大係数の解 

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77 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

W

B

YP

K=

I

ここに,

3

3

1

1

1

21

.6

W

a

W

a

Y

これによりS=1.5W 

この式は応力解析とコンプライアンスの複合法によって最初に誘導された。その精度とバリッド性の限界

は十分には分かっていないが,0.2≦a/W≦0.6の範囲で適用できる。最大の信頼性を得るには,経験的なコ

ンプライアンス校正法を用いることが推奨される。 

附属書6図5c) カンチレバー曲げ試験片に対する応力拡大係数の解 

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78 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

W

B

YP

K=

I

ここに,

4

3

2

3

6.5

72

.

14

32

.

13

64

.4

886

.0

1

2

W

a

W

a

W

a

W

a

W

a

W

a

Y

この式は0.2≦a/W≦1.0の範囲で,±0.5%の精度をもつと考えられる。 

附属書6図5d) コンパクトテンション試験片に対する応力拡大係数の解 

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79 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

W

B

YP

K=

I

ここに,

×

×

2

9

7

5

3

1

1

1

22

.0

1

5.0

54

.1

1

1.

369

0.

582

7.

397

2.

106

23

.

18

r

r

W

a

W

a

W

X

W

a

W

a

W

a

W

a

W

a

Y

この式は0.45≦a/W≦0.55の範囲で1%以内の精度をもつと考えられる。しかし,0≦X/W≦0.7で0≦r1/r2

≦1の場合には,より広い範囲0.3≦a/W≦0.7で適用でき,その場合の精度は2%以内と考えられる。 

附属書6図5e) C型試験片に対する応力拡大係数の解 

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80 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書6図6 破面の同定 

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81 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書6図7 ノッチ及び疲労き裂の包括限界寸法と形状 

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82 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書6図8 破壊力学的試験片に対する腐食セルの位置 

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83 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書6図9 VとVy値の測定位置との関係 

附属書6図10 中央荷重線におけるT型くさび開口負荷型試験片コンプライアンスの比較 

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84 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書6図11 破断時間を基にした試験方法によって得られる応力腐食データの模式的説明 

85 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書7(参考) 

金属及び合金の腐食−応力腐食割れ試験− 

第7部:低ひずみ速度試験 

この附属書(参考)は,本体及び附属書(規定)に関連する事柄を補足するもので,規定の一部ではな

い。この附属書(参考)は,この規格の利用者の便宜を図るため,この規格に引用されているISO 7539-7 : 

1989を翻訳したものである。 

1. 適用範囲 

1.1 

ISO 7539のこの部は,水素誘起割れを含む金属の応力腐食割れ感受性を評価するための低ひずみ速

度試験の試験方法を規定している。 

ISO 7539のこの部で使用されている“金属”という用語には“合金”も含まれる。 

1.2 

低ひずみ速度試験は,厚板,棒,線,薄板,管を含む広範な製品形態に適用できる。また,これら

の複合体及び溶接部材にも適用できる。ノッチ又は予き裂入り試験片も平滑試験片と同様に使用できる。 

1.3 

この試験の基本的な利点は,特定の金属と環境との組合せにおける応力腐食割れに対する感受性を

迅速に評価できることである。 

2. 引用規格 下記の規格はこの規格の参考となる条項を含んでおり,ISO 7539のこの部の規定を構成す

る。この規格の公布ときには各々表記されている版が有効である。すべての規格はいずれ改定されるもの

であり,ISO 7539のこの部に基づく協定を結ぶ当事者は,下記に示す規格の最新版を適用することの可能

性を検討することが望まれる。IEC及びISOの参加団体は,現在有効な国際規格の登録を常に行うことが

必要である。 

ISO 7539-1 : 1987 Corrosion of metals and alloys−Stress corrosion testing−Part 1 : General guidance on 

testing procedures(金属及び合金の腐食−応力腐食割れ試験−第1部:試験方法の一般的解説) 

ISO 7539-4 : 1989  Corrosion of metals and alloys−Stress corrosion testing−Part 4 : Preparation and use of 

uniaxially loaded tension specimens(金属及び合金の腐食−応力腐食割れ試験−第4部:単軸引張試

験片の作製と試験) 

ISO 7539-6 : 1989  Corrosion of metals and alloys−Stress corrosion testing−Part 6 : Preparation and use of 

precracked specimens(金属及び合金の腐食−応力腐食割れ試験−第6部:予き裂入り試験片の作

製と試験) 

3. 定義 ISO 7539のこの部の目的のため,次の定義とISO 7539-1記載の定義が適用される。 

3.1 

クリープ 初期荷重を負荷した後の試験片の時間に依存した機械的変形。 

3.2 

破断伸び 試験中に生じたゲージ長さ増加分の,元のゲージ長さに対する比で,パーセント表示し

たもの。 

3.3 

最大荷重 全面破断までの試験中に到達した荷重の最大値で,複合材の場合にはそのうちの一つの

部材の破断に対応する荷重。 

86 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

3.4 

公称応力−伸び曲線 その時点での負荷荷重と試験片の元の断面積から計算される公称応力を,荷

重測定時のゲージ長さの伸びに対してプロットしたもの。 

3.5 

断面減少率 試験中に生じた最大断面積減少の,元の断面積に対する比で,パーセント表示。 

3.6 

歪速度 最初は平滑である引張試験片のゲージ長さの初期増加速度。 

4. 原理 

4.1 

この試験は,第7項に列挙したパラメーターの一つ又はそれ以上を参照して応力腐食感受性を決定

するために,特定の環境に暴露されている間に,試験片に漸増するひずみに負荷するものである。 

4.2 

腐食雰囲気は,材料がゆっくりした動的ひずみを受けていないときの材料と環境の同じ組合せに比

べて,応力の負荷された材料のより大きな性質の劣化の原因となりうる。この促進された劣化は普通,割

れの発生と成長によっており,応力腐食感受性評価の目的に応じて種々の方法で評価される。 

4.3 

この試験は,最初は平滑である試験片,ノッチ入り又は予き裂入り試験片を用いて,引張り又は曲

げによって行われる。この試験の最も重要な特徴は,その材料中でき裂発生又は成長の起こるような領域

である比較的遅いひずみ速度を負荷することにある。それゆえ,低ひずみ速度試験と呼ばれる。 

5. 試験片 

5.1 

種々の形状及び寸法の試験片が使用できるが,最も普通にはISO 7539-4とISO 7539-6記載のものが

使用される。 

5.2 

上記における試験片の形状,作製及び取付けに関する注意は,低ひずみ速度試験用試験片にも同様

に適用される。 

6. 試験方法 

6.1 

低ひずみ速度試験に必要な装置は,変位速度の選択が可能であり,発生する荷重に耐えられる能力

をもつものである。初めは平滑である試験片の試験に最もしばしば用いられる変位速度は,1mm・s−1〜

1μm・s−1 (10−3s-1〜10−7s−1) の範囲である。 

6.2 

ノッチ入り又は予き裂入り試験片は,割れを特定の場所に限定したい場合に使用できる。例えば,

溶接材の熱影響部を試験する場合,又は材料の場所によって異なるひずみ速度が生じるかもしれないよう

な,ある範囲の機械的性質をもつ試験片のような場合である。ノッチ入り又は予き裂入り試験片は,引張

りより曲げがより重要であるような荷重条件を持ち込むためにも利用できる。 

6.3 

初めは平滑である試験片,特に,平行ゲージ部をもつ試験片では,試験開始時のひずみ速度は容易

に定義できる。しかし,いったん割れが発生しある程度成長すると,びすみはき裂先端近傍に集中するよ

うになり,ひずみ速度は最初と同じでなくなるかもしれない。き裂先端及びノッチ部におけるひずみ速度

の厳密な解として利用できるものはまだないが,有効ひずみ速度は平滑試験片に加えられる同じ変位速度

に対するものよりは高くなるであろう。 

6.4 

この試験では,試験片を全面破断するまで行い,それから応力腐食割れ感受性を調べるために破壊

モードが評価されるか,又はある中間の段階で試験を中断し,それからき裂発生及び成長の程度を調べる。 

87 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

6.5 

経験によれば,最初に行う試験としては,平滑な試験片に1μm・s−1 (10−6s−1) 付近のひずみ速度範囲

で引張応力を負荷することが適しているであろう。この試験で応力腐食割れが起こっていなくても,その

系で応力腐食割れ感受性がないとは必ずしもいえない。なぜならば,感受性は他のパラメーターとともに

ひずみ速度にも依存するからである(附属書A参照)。もし,最初の試験で応力腐食割れの兆候がなけれ

ば,その後の試験は10μm・s−1 (10−5s−1) 又は0.1 (10−7s−1) のような他のひずみ速度で行われるべきである。

もし,非常に遅いひずみ速度での試験時間短縮のために予負荷を行うのであれば,7.4.3に記した注意が重

要となるであろう。 

6.6 

試験の開始ときには割れるべき条件がなくとも,所定の材料/環境系における割れ発生条件は時間依

存性をもっているかもしれない。こうした状況下では,応力腐食割れは,割れに対する必要な環境条件が

確立されるまでの必要時間が経過する前に,過負荷による破壊が起こらないと保証できる十分に低いひず

み速度の場合にだけ,観察されるであろう。この種の困難さは,場合によっては,動的ひずみの負荷前に

ある時間だけ試験片を試験環境に暴露することで回避できる。 

6.7 

試験環境条件の選択は試験目的に依存するが,理想的には,材料の予定用途に対応したもの,又は

予想使用条件と同等であるべきである。実際には,ランク付けの目的で多くの標準環境が使用されている

が,得られた結果から実用挙動を予測することは,その系についての理解の程度,又は経験との相関性の

程度に依存している。 

6.8 

可能ならば常に,試験片のつかみ部分は腐食環境に接しないようにすることを推奨する。もし,こ

れができない場合には,次のような問題が生じるであろう。 

a) もし,つかみ部分が試験片と異なる材料でできているなら,接触腐食効果がほとんど常に結果に影響

を及ぼすであろうし,その場合には電気的な絶縁を要する。 

b) つかみ部と試験片のすき間の境界内ですき間腐食が起こる可能性があり,応力の不連続性がそうした

領域における早すぎる応力腐食破壊を引き起こしうる。 

c) すき間腐食の問題は試験片が試験セルから出る部分でも起こり得るが,これはセルの適切な設計,そ

うした部分の保護コーティング,又は平行部よりも試験片の断面積を大きくすることなどで避けられ

る。 

6.9 

この試験が単に応力腐食割れが起こるか否かを知るために使われる場合には,試験片へのひずみ負

荷は環境に接触させた後に行うことが推奨される。 

6.10 試験片が低ひずみ速度試験で完全破断まで行われる場合には,その試験片は同じ温度と同じ速度で,

腐食環境下とともに不活性環境下でも試験することが推奨される。これは,不活性条件での基準データを

用いて,腐食環境の効果の相対的評価を可能にする。高力アルミニウム合金及び鋼を含むある種の材料で

は,大気中での試験を不活性環境下での試験と同じと仮定することは十分でないかもしれない。 

6.11 ひずみを負荷しない試片を,ひずみ負荷試片と同じ環境に暴露することも推奨される。金属はひず

み負荷がない場合においてさえ腐食環境との接触で機械的性質の劣化を起こすことがある(例えば,孔食

及び粒界腐食など)。したがって,ひずみ負荷の効果は負荷しない試験片の挙動との比較によってだけ評価

できる。 

6.12 試験中の温度の変動は,特に非常に低いひずみ速度及び高温の場合には,それ自身がひずみ速度を

変化させることがある。それが結果に大きく影響するのであれば,避けなければならない。 

88 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

7. 結果の評価 

7.1 

試験片が全破断した場合,応力腐食割れの証拠は一般に,低倍率の顕微鏡による二次割れの観察,

又は破面のフラクトグラフィーによる破壊モードの変化の観察によって明らかとなる。 

7.2 

応力腐食き裂の平均速度は,完全に破断した試験片の破面,又は完全破断に至らなかった試験片中

の,測定された最長き裂長さに試験時間の逆数を乗じることで求めることができる。このパラメーターは

割れが試験開始時に発生したと仮定しているが,実際には必ずしもそうではない。それにもかかわらず,

この種の測定は,より正確に測定したものとかなりよい一致をしばしば示す。予き裂入り試験片では,き

裂成長のモニターには別の方法があり(ISO 7539-6参照),それによってき裂速度が測定できる。 

7.3 

試験環境と不活性環境に暴露された同じ試験片の比較は,応力腐食割れに対する感受性の評価に利

用できる。割れに対する感受性の増大は,次の式の比の1との差の増大によって示される。 

 (試験環境での試験片の結果)/(不活性環境での試験片の結果) 

これは,同じ初期ひずみ速度に対する次のパラメーターの一つかそれ以上に対して適用される。 

a) 破壊時間。 

b) 断面減少率及び破断伸びで評価される延性。 

c) 到達最大荷重。 

d) 公称応力/伸び曲線で囲まれた面積。 

e) 破面での応力腐食割れの百分率。 

7.4 

低ひずみ速度試験は,あるひずみ速度において,それ以上では検知できる割れの起きる下限界応力

を決めるためにも利用できる。ある系においては,下限界応力はひずみ速度の関数であろう。したがって,

試験は内輪の値の得られることが保証できるように考慮して,その系に対する適正なひずみ速度範囲で行

われるべきである。採用すべき試験方法は,7.4.1〜7.4.4に記載したスケジュールにしたがって,それぞれ

のひずみ速度で,異なる応力範囲について,多数の試験片を使って試験することである。 

7.4.1 

最初の試片は完全破断に到らせ,7.2の手順で平均応力腐食割れ速度を求める。 

7.4.2 

次いで,他の表面欠陥とは容易に区別でき,約500倍の金属組織学的検査で正確に測定できる最小

き裂長さに,平均応力腐食き裂速度で除することによって,下限界応力を超えてき裂発生を検知できる最

少時間を評価する。この時間は,それぞれの試験における応力変化を最小にするための,その後の試験に

おける試験時間として採用する。応力範囲は低速のひずみ負荷中に生じる応力範囲として定義する。 

7.4.3 

第2の試験片は,応力腐食割れが起こらないような比較的速い速度条件で,適当な応力レベル,例

えば,最初の試験で観測された引張強さの50%,に到達するまで荷重を負荷する。その後,次に負荷する

ひずみ速度以下と考えられる速度にまで時間依存性変形が減少してくるまで,変位を一定に保持する。こ

の期間は,ある種の系では数日のオーダーになるほど,かなり長いかもしれない。割れに対する環境条件

がこれで確立されるので,低速のひずみ負荷がその後に開始される。試験は7.4.2のような適切な期間の経

過後に終了する。試験片はき裂の状態を,望ましくは軸断面の顕微鏡観察で調べ,平均き裂速度を求める。 

7.4.4 

その後の試験は,例えば,ISO 7539-1に記した2等分探索法にしたがって選定した初期応力を用い

て,それ以下では割れの兆候が全くなく,それ以上では平均き裂速度が認められる値として定義される下

限界値が決まるまで行う。各試験の応力範囲を平均き裂速度に対してプロットすることは,下限界値の決

定に役立つ。 

8. 試験報告 試験報告には次の情報を含むことが必要である。 

a) 組成,調質,製品形態,断面厚さを含む,試験片を採取した材料の全情報。 

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H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

b) 試験片の方向,形状,寸法と表面仕上げ状態。 

c) 平滑試験片についての初期ひずみ速度,予き裂入り及びノッチ入り試験片についての変位又はCOD

速度を含む,ひずみ負荷方法。 

d) 負荷された負荷電位及び電流密度,温度,圧力などを含む,試験環境。 

e) 試験結果を定義するのに用いた方法(完全破断までの時間,き裂の数と位置,平均き裂速度,残存強

度と延性,破面における応力腐食割れの百分率)。 

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90 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書7A(参考) 

ひずみ速度(6.5参照) 

ある系において応力腐食を引き起こすであろう最も速いひずみ速度は,応力腐食き裂速度に依存するら

しい。一般的には,応力腐食き裂速度が低いほど,割れを引き起こすに必要な初期ひずみ速度は遅くなる。

幾つかの系における,割れを引き起こす初期ひずみ速度は附属書表A.1に示す。 

附属書表A.1 

系 

初期ひずみ速度 

μm・s−1 

塩化物溶液中でのアルミニウム合金 

 1 

アンモニア溶液中での銅合金 

 1 

炭酸塩,水酸化物又は硝酸塩溶液中でのフェライト鋼 

 1 

クロム酸/塩化物溶液中でのマグネシウム合金 

10 

高温水中でのニッケル基合金 

   0.1 

塩化物溶液中でのステンレス鋼 

 1 

高純度水中でのステンレス鋼 

 1 

塩化物溶液中でのチタン合金 

10 

91 

H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

JIS H 8711原案作成委員会 構成表 

氏名 

所属 

(委員長) 

大 西 忠 一 

大阪府立大学工学部 

(委員) 

嵯 峨 常 生 

東京都立工業高等専門学校 

高 谷 松 文 

千葉工業大学 

江 藤 武比古 

株式会社神戸製鋼所 

箕 田   正 

住友軽金属工業株式会社 

松 本 英 幹 

古河電気工業株式会社 

小松原 俊 夫 

スカイアルミニウム株式会社 

北 尾 吉 延 

社団法人日本航空宇宙工業会 

小笠原 静 夫 

社団法人日本鉄道車輌工業会 

小 林 幹 雄 

アルミニウム建築構造推進協議会 

大 西 重 雄 

社団法人日本造船工業会 

橋 本 繁 晴 

財団法人日本規格協会 

村 山 拓 己 

通商産業省基礎産業局 

大 嶋 清 治 

通商産業省工業技術院 

(事務局) 

小 原   久 

社団法人日本アルミニウム協会