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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

G 1234-1981 

鋼中のテルル定量方法 

Methods for Determination of Tellurium in Steel 

1. 適用範囲 この規格は,鋼中のテルル定量方法について規定する。 

引用規格: 

JIS G 1201 鉄及び鋼の分析方法通則 

2. 一般事項 定量方法に共通な一般事項は,JIS G 1201(鉄及び鋼の分析方法通則)による。 

3. 方法の区分 鋼中のテルル定量方法は,次のいずれかによる。 

(1) 塩化第一すず還元吸光光度法 この方法は,テルル含有率0.3%未満の試料に適用する。 

(2) ビスムチオールII抽出吸光光度法 この方法は,テルル含有率0.001%以上0.06%未満の試料に適用す

る。 

4. 塩化第一すず還元吸光光度法 

4.1 

要旨 試料を硝酸及び過塩素酸で分解して過塩素酸白煙を発生させ,乾固近くまで濃縮後,塩酸溶

液とする。溶液中のテルルを塩化第一すずで還元してアラビアゴムで懸濁させ,吸光度を測定する。 

4.2 

適用分野 試料がモリブデン1%以上及びセレンを含む場合には適用できない。 

4.3 

試薬 試薬は,次による。 

(1) 塩酸 

(2) 塩酸 (1+1, 1+100) 

(3) 硝酸 (1+1) 

(4) 過塩素酸 

(5) 鉄 できるだけ純度の高い鉄で,テルルを含有しないか,又はテルル含有率ができるだけ少なく既知

であるもの。 

(6) 塩化第一すず溶液 塩化第一すず(2水塩)50gを塩酸50mlで溶解したもの。この溶液は必要の都度

調製する。 

(7) アラビアゴム溶液 アラビアゴム末5gに水100mlを加え十分かき混ぜて溶解し,残さは脱脂綿を用

いてろ過したもの。この溶液は必要の都度調製する。 

(8) 標準テルル溶液 (200μgTe/ml)  金属テルル(99.9%以上)0.500gをはかり取ってビーカー (300ml) に

移し,時計ざらで覆って硝酸 (1+1) 10mlと塩酸10mlを加えて加熱分解する。常温まで冷却後500ml

のメスフラスコに移し,水で標線まで薄めて標準原液 (1mg Te/ml) とした後,必要の都度これを水で

正しく5倍に薄めたもの。 

4.4 

試料はかり取り量 試料は,原則として0.50gをはかり取る。 

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G 1234-1981  

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4.5 

操作 

4.5.1 

試料溶液の調製 試料溶液の調製は,次による。 

(1) はかり取った試料をビーカー (300ml) に移して時計ざらで覆い,硝酸 (1+1) 5ml及び過塩素酸8ml

を加えて加熱分解し,過塩素酸の濃厚な白煙を発生させてクロムを重クロム酸に酸化する。 

(2) 加熱を続け,塩酸1〜2mlずつを数回加えてクロムの大部分を塩化クロミルとして揮散させる(1)。 

(3) 更に加熱して乾固近くまで濃縮する。しばらく放冷した後,塩酸 (1+1) 10mlを加え,加熱して塩類

を溶解し,約5分間静かに煮沸する。冷却後,水10mlを加えてから,ろ紙(5種A)でろ過し(2),塩

酸 (1+100) で洗浄する。ろ液と洗液は100mlのメスフラスコに集め,液量を約40mlとする。残さは

捨てる。 

注(1) クロム含有率1%未満の試料は,4.5.1(2)のクロム揮散操作を省略してもよい。 

(2) けい素含有率1%未満の試料は,ろ過操作を省略してもよい。 

4.5.2 

呈色 4.5.1で得た試料溶液の液温を約30℃とし,塩化第一すず溶液〔4.3(6)〕5mlを加え,直ちに

アラビアゴム溶液〔4.3(7)〕2mlを加え,軽く振り混ぜ水で標線まで薄める。 

4.5.3 

吸光度の測定 4.5.2で得た呈色溶液の一部を光度計の吸収セルに取り,波長420nm付近の吸光度

を測定する。 

4.6 

検量線の作成 検量線(3)(4)は,次のようにして作成する。 

数個のビーカー (300ml) を準備し,それぞれにはかり取った鉄〔4.3(5)〕0.500gを移して,標準テルル

溶液0〜8mlを段階的に正確に加えて時計ざらで覆う。これらに硝酸 (1+1) 5ml及び過塩素酸8mlを加え

て加熱分解し,過塩素酸の濃厚な白煙を発生させる。以下4.5.1(3)〜4.5.3の手順に従って操作し,吸光度

と呈色溶液中のテルル量との関係を求めて検量線とする。 

注(3) 試料と組成が類似し,テルル含有率既知の数個の標準試料を用いて検量線を作成することがで

きる。この場合は,テルル含有率の異なる3個以上の標準試料を選ばなければならない。これら

の標準試料を4.5.1〜4.5.3の手順に従って操作し,吸光度を測定して,吸光度とテルル含有率と

の関係を求めて検量線とする。 

(4) 検量線の作成に使用した鉄中にテルルが含まれる場合は,はかり取った鉄中のテルル量を,標

準テルル溶液として添加したテルル量に加算する。 

4.7 

計算 4.6で作成した検量線に4.5.3で得た呈色溶液の吸光度をそう入して,テルル量 (g) を求め,

試料中のテルル含有率を,次の式によって算出する。 

100

(%)

×

=WA

テルル

ここに 

A: 試料溶液中のテルル量 (g) 

W: 試料はかり取り量 (g) 

4.8 

分析精度 この方法による分析精度は,表1による。 

表1 

単位% 

テルル含有率 

室内標準偏差 

室間標準偏差 

0.023(5)以上0.3未満 

0.0245×〔Te (%)〕+0.0003 0.0743×〔Te (%)〕+0.0016 

注(5) この数値は,分析精度の決定のために用いられた試料のテルル含有率の最低

値である。 

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5. ビスムチオールII抽出吸光光度法 

5.1 

要旨 試料を硫酸と過酸化水素で分解して過マンガン酸カリウムでテルルを酸化する。溶液中の鉄

をMIBKで抽出分離した後,テルルを塩酸で還元してMIBKに抽出し,更に水で逆抽出する。ピロりん酸

ナトリウムを共存させてビスムチオールIIを反応させ,テルルとビスムチオールIIとの錯体を形成させて

四塩化炭素に抽出し,吸光度を測定する。 

5.2 

試薬 試薬は,次による。 

(1) 塩酸 

(2) 塩酸 (4+3, 1+1) 

(3) 硝酸 

(4) 硝酸 (1+1)  

(5) 硫酸 (1+1, 1+9) 

(6) 鉄 できるだけ純度の高い鉄で,テルルを含有しないか,又はテルル含有率ができるだけ少なく既知

であるもの。 

(7) 過酸化水素水 (1+1)  

(8) ピロりん酸ナトリウム 

(9) 過マンガン酸カリウム溶液 (1w/v%) 

(10) メチルイソブチルケトン(MIBKと略記する) 

(11) ビスムチオールII溶液 ビスムチオールII (C8H5N2S3K) 0.1gを水に溶解して100mlとし,かっ色びん

に保存する。 

(12) 四塩化炭素 

(13) 洗浄溶液 りん酸一カリウム(2水塩)6.8g,ほう酸ナトリウム(十水塩)5g及びエチレンジアミン

四酢酸二ナトリウム二水塩 (EDTA) (C10H14N2Na2O8・2H2O) 7.8gを水に溶解して1000mlとしたもの。 

(14) 標準テルル溶液 (50μgTe/ml)  標準テルル溶液の調製は,次による。 

金属テルル(99.9%以上)0.500gをはかり取ってビーカー (300ml) に移し,時計ざらで覆って硝酸 (1

+1) 20mlを加えて加熱分解し,硫酸 (1+1) 50mlを加える。常温まで冷却後,500mlのメスフラスコ

に移して水で標線まで薄め,標準原液 (1mgTe/ml) とする。この溶液25mlを分取してビーカー (300ml) 

に移し入れ,硫酸 (1+1) 5mlを加え,加熱して硫酸の白煙を発生させた後放冷する。硫酸 (1+1) 50ml

を加えて常温まで冷却後,500mlのメスフラスコに移し,水で標線まで薄める。 

5.3 

試料はかり取り量 試料は,原則として1.0gをはかり取る。 

5.4 

操作 

5.4.1 

試料溶液の調製 はかり取った試料をビーカー (300ml) に移して時計ざらで覆い,硫酸 (1+9) 

50mlを加えて加熱分解し,過酸化水素水 (1+1) 20mlを加えて酸化する。更に加熱を続け,1〜2分間煮沸

して過剰の過酸化水素を分解する。常温まで冷却後,水で100mlのメスフラスコに洗い移して標線まで薄

める。 

5.4.2 

鉄の分離 鉄の分離は,次による。 

(1) 5.4.1で得た試料溶液(6)を表2に従って分取し,分液漏斗 (100ml) に入れる。過マンガン酸カリウム溶

液 (1w/v%) を滴加して振り混ぜ,過マンガン酸カリウムの赤紫色が消えなくなってから更にその

0.5mlを過剰に加え,振り混ぜて5分間放置する。 

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表2 

テルル含有率% 

分取量ml 

0.001 以上 0.01未満 

20 

0.01 以上 0.04未満 

10 

0.04 以上 0.06未満 

 5 

(2) 次に表2に従って分取量と同量の塩酸を加えて室温まで冷却後,MIBK30mlを加え,約1分間激しく

振り混ぜる。静置後有機相を水流ポンプにつないだ毛細管で吸い上げる(7)(8)。再びMIBK20mlを加え

て約1分間激しく振り混ぜる。静置後水溶液相をビーカー (300ml) に移す。分液漏斗に塩酸 (4+3) 5ml

を加えて,約30秒間軽く振り混ぜ静置後,水溶液相を元のビーカー (300ml) に合わせる。 

注(6) この溶液中に残さを認めた場合は,乾燥ろ紙(5種B)を用いてろ過する。最初のろ液は捨て,

次のろ液を用いる。 

(7) 水流ポンプと毛細管の間に,有機相を捕集するための空びんを入れる必要がある。 

(8) 鉄はMIBKを用いて再抽出するとほとんど除去されるので,1回目の吸い上げ時にあまり無理

をしてテルルを含んでいる水溶液相を吸い上げないように注意する。 

5.4.3 

テルルの抽出 5.4.2で得た試料溶液を約10分間以上加熱し,液量が約10ml以下となるまで濃縮

してテルルを還元した後,常温まで冷却する。塩酸 (1+1) で分液漏斗 (100ml) に移し,液量を30mlとす

る。MIBK10mlを加えて約1分間振り混ぜる。静置後水溶液相を捨てる。有機相に塩酸 (4+3) 10mlを加

えて約30秒間軽く振り混ぜる。静置後水溶液相を捨てる。次に有機相に水10mlを加えて約1分間激しく

振り混ぜる。静置後水溶液相をビーカー (100ml) に移す。再び有機相に水5mlを加えて約1分間激しく振

り混ぜる。静置後水溶液相を主液の入ったビーカー (100ml) に移し,塩酸1mlを加えて煮沸してMIBKを

追い出し,液量が約10mlとなるまで濃縮し冷却する。 

5.4.4 

呈色 5.4.3で得た試料溶液にピロりん酸ナトリウム0.5gを加え振り混ぜて溶かした後,水で分液

漏斗 (100ml) に移し,液量を約20mlとする。ビスムチオールII溶液〔5.2(11)〕0.7mlをメスピペットを用

いて加えて振り混ぜ,1〜2分間放置する(9)。四塩化炭素10mlを正確に加えて1分間激しく振り混ぜる。

静置後,有機相を別の分液漏斗に移し,直ちに洗浄溶液〔5.2(13)〕20mlを加え,約30秒間振り混ぜて静

置する。 

注(9) 呈色後から有機相を洗浄するまでは直射日光があたらない所で操作する。 

5.4.5 

吸光度の測定 5.4.4で得た下層の有機相を直ちに乾燥ろ紙(5種A)を用いてろ過し,最初のろ液

を捨てる。次のろ液の一部を光度計の吸収セル(10)に取り,四塩化炭素を対照液として,波長330nm(11)又

は372nm付近における吸光度を測定する。 

注(10) 330nmで測定するときは石英セルを用いる。 

(11) テルル含有率が0.01%未満のときは,原則として光源に重水素放電管を用い,330nmの波長で

吸光度を測定する。 

5.5 

検量線の作成 検量線(12)(13)は,次のようにして作成する。 

数個のビーカー (300ml) を用意し,それぞれにはかり取った鉄〔5.2(6)〕1.000gを移して,標準テルル

溶液を表3に従って段階的に正確に加えて時計ざらで覆う。これらに硫酸 (1+9) 50mlを加え加熱分解し,

過酸化水素水 (1+1) 20mlを加えて酸化する。更に加熱を続けて1〜2分間煮沸して過剰の過酸化水素を分

解する。熱源から降ろし,常温まで冷却する。次に水で100mlのメスフラスコに洗い移し,標線まで薄め

る。以下,5.4.2〜5.4.5の手順に従って操作し(14),吸光度とテルル含有量との関係を求めて検量線とする。 

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表3 

テルル含有率 % 

標準テルル溶液分取量 ml 

測定波長 nm 

0.001 以上 0.01未満 

0〜 3 

330 

0.01 以上 0.06未満 

0〜10 

372 

注(12) 試料と組成が類似したテルル含有率既知の標準試料を用いて検量線を作成することができる。

この場合,表3に示すそれぞれのテルル含有率範囲内で,テルル含有率の異なる3個以上の標準

試料を選ばなければならない。これらの標準試料を5.4.1〜5.4.5の手順に従って,操作し,吸光

度を測定して,吸光度と呈色溶液中のテルル含有率との関係を求めて検量線とする。 

(13) 検量線の作成に使用した鉄中にテルルが含まれる場合は,はかり取った鉄中のテルル量を,標

準テルル溶液として添加したテルル量に加算する。 

(14) 分取量は10mlとする。 

5.6 

計算 5.5で作成した検量線に5.4.5で得た呈色溶液の吸光度をそう入して,テルル量 (g) を求め,

試料中のテルル含有率を,次の式によって算出する。 

100

(%)

×

×

=

B

W

A

テルル

ここに 

A: 試料溶液中のテルル量 (g) 

W: 試料はかり取り量 (g) 

B: 試料溶液の分取比 

5.7 

分析精度 この方法による分析精度は,表4のとおりである。 

表4 

単位% 

テルル含有率 

室内標準偏差 

室間標準偏差 

0.001以上0.06未満 

0.0460×〔Te (%)〕+0.0006 

0.0537×〔Te (%)〕+0.0007 

鉄鋼部会 鉄及び鋼の分析方法専門委員会構成表 

氏名 

所属 

(委員会長) 

後 藤 秀 弘 

東北大学 

須 藤 恵美子 

科学技術庁金属材料技術研究所 

林   俊 太 

工業技術院標準部 

飯 田 芳 男 

成蹊大学 

神 森 大 彦 

社団法人日本化学会 

岸 高   寿 

社団法人日本鉄鋼協会 

榎 並 豊一郎 

日産自動車株式会社 

永 山   宏 

株式会社日立製作所 

宮 原 和 男 

日立金属株式会社 

栗 原 国 勝 

日本冶金工業株式会社 

鈴 木 孝 範 

株式会社日本製鋼所 

大 槻   孝 

新日本製鉄株式会社 

針間矢 宣 一 

川崎製鉄株式会社 

井樋田   睦 

日本鋼管株式会社 

藤 野 允 克 

住友金属工業株式会社 

伊 藤 六 仁 

大同特殊鋼株式会社 

谷 口 政 行 

株式会社神戸製鋼所 

加 藤 智 也 

愛知製鋼株式会社 

(事務局) 

吉 田 信 之 

工業技術院標準部材料規格課 

田 中 利 穂 

工業技術院標準部材料規格課