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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

F 6708-1996 

船用カーゴウインチ 

Shipbuilding−Cargo winches 

1. 適用範囲 この規格は,船に装備する電動及び油圧駆動カーゴウインチ(以下,ウインチという。)に

ついて規定する。 

2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次のとおりとする。 

(1) 呼び荷重 シングルデリックで2個の滑車を用いた揚貨装置の最大フック荷重に相当する荷重。 

呼び荷重は,歯車切換え式の場合を含めて,4.のウインチ要目表によることが望ましい。 

(2) 呼び巻上速度 呼び荷重を一層巻きにして巻き上げる速度。 

(3) ドラム荷重 ロープを呼び巻上速度で一層巻きに巻き込むときにドラムにかかるロープの最大張力。 

(4) 右(左)勝手 図1に示すように操作位置からウインチに向かって駆動源又は減速機がドラムの右(左)

側にあるもの。 

図1 

3. 基本設計 

3.1 

強度 

3.1.1 

ドラム荷重に対し,ウインチ各部の応力は,材料の降伏点の40%以下とする。 

3.1.2 

駆動源が発生する最大トルクに対し,ウインチ各部の応力は,材料の降伏点の90%以下とする。 

3.2 

操縦装置の操作方向 操縦装置は,丸ハンドルでは時計方向に,レバーでは操縦者側に操作すると

き,荷重を巻き上げる。 

3.3 

ブレーキ装置 

3.3.1 

ウインチは,操縦装置が中立(零)位置又はブレーキ位置にある場合及び動力が断たれた場合に作

動する自動ブレーキ装置を備えなければならない。 

備考 油圧ブロック方式も自動ブレーキ装置の中に含まれるが,この場合は手動ブレーキなども設け

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F 6708-1996  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

るものとする。 

3.3.2 

ブレーキ装置は,ドラム荷重の1.5倍以上の荷重を停止又は保持できなければならない。 

また,動力が断たれた場合の荷重を下ろす手段を備えなければならない。 

3.3.3 

かん脱可能なドラムの回転を阻止するロック装置又はブレーキ装置を備えなければならない。 

この装置は,原則としてドラム荷重の1.5倍以上の荷重を保持できるものとする。 

3.3.4 

ブレーキ装置は,ショック荷重を発生させるようなものであってはならない。 

3.4 

ドラム ドラムのフランジの外径は,作動状態で最外層ロープ外端からロープ径の2.5倍以上の余裕

をもたなければならない。ただし,ロープ脱落防止用の特別な装置を設けた場合にはこの限りではない。 

ドラム径は使用ロープ径の18倍以上とする。 

4. ウインチ要目 ウインチの要目は,次の表1による。 

表1 

ドラム荷重(呼び荷重) kN 

22 

35 

56 

90 

140 

180 

最小呼び巻上速度 

m/min 

30 

19.2 

12 

7.2 

− 

− 

60 

37.8 

24 

15 

9.6 

7.2 

− 

− 

48 

30 

19.2 15 

着地時の最高速度 m/min(参考) 

15 

12 

12 

7.2 

4.8 

5. 安全装置及び保護装置 ウインチには,次の安全装置及び保護装置を設けなければならない。 

(1) 運転中における無電圧及び過負荷に対する安全保護装置 

(2) ワイヤロープをドラムに4巻きした状態で,ドラム荷重の2倍の荷重に耐えるワイヤロープ止め 

(3) ワイヤロープガード 

6. 付着品 ウインチには,直属の注油装置(グリースニップル,グリースカップなど)を備えなければ

ならない。 

7. 検査 

7.1 

工場検査 工場検査は,製造所の工場で行い,検査の成績を記録することが望ましい。 

7.1.1 

形式検査 形式検査は,各形式ごとに代表機1台に対し7.1.1(1)及び7.1.1(2)の規定によって行い,

異状があってはならない。 

なお,この検査は受渡当事者間で協議のうえ形式承認証で置き換えることができる。 

(1) 負荷検査 負荷検査は,次によって行う。 

(1.1) ドラム荷重で30分間連続巻上げ,巻下げ(各サイクル間に20秒間の休止をしてもよい。)を有効リ

フト10m以上で行う。 

歯車切換え式の場合は,切換え後5分間の同試験を追加する。 

(1.2) 7.1.1(1)(1.1)の検査中に,次の項目を計測する。 

(a) 

軸受の温度上昇値 

(b) 

巻上げ,巻下げ速度 

(c) 

入力 

(1.3) ドラム荷重で,ブレーキ検査を行い,荷重の移動を点検する。 

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自動ブレーキ装置の作動確認は,巻下げ時動力を断って行う。 

(2) 過負荷検査 ドラム荷重の1.25倍に相当する荷重で巻上げ,巻下げを行い,巻下げ中に少なくとも3

回停止させること。 

7.1.2 

個別検査 個別検査は,次によって行い,異状があってはならない。 

(1) 30分間(正逆各15分間)無負荷で最大速度運転を行う。 

(2) 歯車切換え式の場合は,切換え後5分間の同一検査を追加する。 

(3) 7.1.2(1)の試験中に次の項目を点検又は計測する。 

(a) 油漏れがないことの確認 

(b) 軸受の温度上昇値 

(c) 異常音の有無 

(d) 入力 

(e) ドラム回転速度(正,逆) 

(4) 最終試験としてウインチを全速度域で運転し,振動を点検する。 

7.2 

船上検査 船上検査は,揚貨装置全体の検査時に行い,少なくとも一度,デリックの試験荷重で巻

上げ,巻下げを行う。 

ウインチに作用する荷重は,ドラム荷重の1.25倍を超えない範囲とする。 

8. 製品の呼び方 ウインチの呼び方は,規格名称,駆動源の別(電動駆動の場合はE,油圧駆動の場合

はH),右勝手 (R),左勝手 (L) の別及び呼び荷重×呼び巻上速度による。ただし,規格名称の代わりに,

規格番号を用いてもよい。 

例 船用電動カーゴウインチ(右) 22kN×30m/min 

船用油圧カーゴウインチ(左) 22kN×30m/min 

9. 表示 ウインチには,見やすい所に次の事項を記載した耐食性銘板を取り付ける。 

(1) 名称 

(2) 呼び荷重×呼び巻上速度 

(3) 製造年月 

(4) 製造業者名又はその略号 

(5) 製造番号 

(6) 質量 

参考 要具及び予備品 要具及び予備品は,次のとおりとする。これらはJIS F 0902に規定する箱に

納め,要具表及び予備品表を添付するのがよい。 

(1) 要具は,参考表1のとおりとする。 

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F 6708-1996  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

参考表1 

品名 

所要数量 

分解,組立又は予備品の交換用特殊要具 

一式 

(2) 予備品 予備品は,ウインチ装備台数及び駆動源によって異なるので,予備品の品目,数量は,消耗

の度合,台数,重要度などを考慮して当事者間で協議のうえ決定する。 

関連規格 JIS F 0902 船用予備品箱