サイトトップへこのカテゴリの一覧へ

F 0600-2:2015 (ISO 13073-2:2013) 

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

目 次 

ページ 

序文 ··································································································································· 1 

1 適用範囲························································································································· 2 

2 引用規格························································································································· 2 

3 用語及び定義 ··················································································································· 2 

4 適用······························································································································· 2 

4.1 概要 ···························································································································· 2 

4.2 適用に関する検討事項 ···································································································· 3 

4.3 環境リスク評価の構造及び手順 ························································································ 3 

5 防汚方法に用いる殺生物性活性物質のリスクのレビュー ·························································· 4 

5.1 概要 ···························································································································· 4 

5.2 殺生物性活性物質が“比較的低リスク”であると暫定的にみなされた場合の評価 ······················· 4 

5.3 特定のタイプの海洋環境が殺生物性活性物質の排出先とみなされた場合の評価 ·························· 4 

6 暴露評価························································································································· 5 

6.1 排出シナリオの作成 ······································································································· 5 

6.2 PECの決定 ··················································································································· 6 

7 適切なPNECの選択 ········································································································· 7 

8 リスクキャラクタリゼーション ··························································································· 7 

9 類似の防汚方法のリスク評価 ······························································································ 7 

10 懸念物質 ······················································································································· 7 

11 リスク評価報告書 ··········································································································· 8 

附属書A(規定)リスク評価報告書に必要な最低限の情報 ··························································· 9 

F 0600-2:2015 (ISO 13073-2:2013) 

(2) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,一般財団法人日本船舶技術研究協会(JSTRA)

から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経

て,国土交通大臣が制定した日本工業規格である。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。国土交通大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。 

JIS F 0600の規格群には,次に示す部編成がある。 

JIS F 0600-1 第1部:船舶の防汚方法に用いる殺生物性活性物質の海洋環境リスク評価法 

JIS F 0600-2 第2部:殺生物性活性物質を用いた船舶の防汚方法の海洋環境リスク評価法 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

F 0600-2:2015 

(ISO 13073-2:2013) 

船舶及び海洋技術− 

船舶の防汚方法に関するリスク評価− 

第2部:殺生物性活性物質を用いた船舶の 

防汚方法の海洋環境リスク評価法 

Ships and marine technology-Risk assessment on anti-fouling systems  

on ships-Part 2: Marine environmental risk assessment method for  

anti-fouling systems on ships using biocidally active substances 

序文 

この規格は,2013年に第1版として発行されたISO 13073-2を基に,技術的内容及び構成を変更するこ

となく作成した日本工業規格である。 

なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。 

船体没水部にフジツボ,藻類などの汚損生物が付着すると,水に対する船体の推進抵抗が増加して燃料

消費の増加をもたらすとともに,外来生物の移動によって海洋環境に重大な害を及ぼす可能性がある。こ

の問題に対する手段として,汚損生物の付着を抑制する殺生物性活性物質に依存する防汚方法(例えば,

防汚塗料)を船体に適用している。殺生物剤として使用された有機スズ化合物(防汚塗料においてかつて

使用された)の海洋生物及び人体への有害な影響が世界的に懸念されてきた。有機スズ化合物が継続して

使用されることを防止するため,有害物質を含む防汚方法の使用を規制する法的拘束力のある国際的枠組

みが国際海事機関(IMO)において審議された。その結果,2001年10月にロンドンで行われたIMO外交

会議において,船舶の有害な防汚方法の規制に関する国際条約(AFS条約)が採択され,2008年9月に発

効した。 

この条約には,条約の枠組み内の多種の有害な防汚方法を取り扱うことを想定し,防汚方法をリスク評

価するプロセスの記述を含んでいる。条約の附属書2及び附属書3では防汚方法が環境に有害であり,船

舶への使用制限の必要性を判断するために必要な情報のリストを示しているが,この判断を行うための海

洋環境リスク評価方法は提示していない。一方で,AFS条約とともにIMOが採択した決議3では,締約

国に対し,殺生物性活性物質を含む防汚方法の試験方法及び評価方法並びに性能標準を調和させるための

作業を適切な国際的な討議の場で継続することを提言している。 

これらを背景に,防汚方法で使用する殺生物性活性物質の科学的な環境リスク評価のための国際的方法

が国際的に求められている。この規格は,制度が存在しない又は制度が未発達の国々における制度導入へ

の現実的なアプローチ(すなわち,自主規制又は自主認可制)による当該国の水域環境保護の進展を支援

するために,制定した。 

F 0600-2:2015 (ISO 13073-2:2013) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

適用範囲 

この規格は,殺生物性活性物質を添加した船舶に適用する防汚方法(いわゆる防汚塗料)によって生じ

得る悪影響から海洋環境を保護するためのリスク評価法を規定する。この評価法は,適切に変更すること

によって淡水域に適用することもできる。 

この規格は,有害性の評価のための試験方法を特定するものではなく,特定の防汚方法の使用制限を推

奨するものでもない。また,特定の物質を用いる防汚方法の効果試験法を規定するものでもない。 

次の防汚方法の使用はこの規格の対象ではない。 

− 船舶の建造,保守・修理,又は船舶リサイクルにおける適用及び除去で用いる防汚方法 

− 2004年の船舶のバラスト水及び沈殿物の規制及び管理のための国際条約に従い,船舶のバラスト水及

び沈殿物中の有害な水生生物及び病原体を管理することを目的として用いる防汚方法 

− 釣りを目的とした釣具・浮標・浮き,漁業又は養殖業(網,ケージなど)で用いる機器への適用 

− 防汚製品の研究開発を目的として試験的に船舶に適用した防汚方法及び小形パネル 

注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。 

ISO 13073-2:2013,Ships and marine technology−Risk assessment on anti-fouling systems on ships− 

Part 2: Marine environmental risk assessment method for anti-fouling systems on ships using 

biocidally active substances(IDT) 

なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ

とを示す。 

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。この引用

規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS F 0600-1 船舶及び海洋技術−船舶の防汚方法に関するリスク評価−第1部:船舶の防汚方法に用

いる殺生物性活性物質の海洋環境リスク評価法 

注記 対応国際規格:ISO 13073-1:2012,Ships and marine technology−Risk assessment on anti-fouling 

systems on ships−Part 1: Marine environmental risk assessment method of biocidally active 

substances used for anti-fouling systems on ships(IDT) 

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS F 0600-1によるほか,次による。 

3.1 

懸念物質(substance of concern) 

GHS分類システム(United Nations, 2009)の“水生環境有害性”の急性水生有害性又は長期水生有害性

の区分1又は区分2として分類され,排出シナリオに基づいて海洋環境に排出される意図的に加えた非殺

生物性物質。 

適用 

4.1 

概要 

この規格及びJIS F 0600-1で規定したように,海洋環境保護のためにリスク評価を行う。防汚方法にお

ける殺生物性活性物質のリスクを確認するために,この規格に準拠したリスク評価を行わなければならな

F 0600-2:2015 (ISO 13073-2:2013) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

い。この規格では,JIS F 0600-1でリスク評価を行った殺生物性活性物質を使用した防汚方法に対してリ

スク評価を実施する。この評価では,特定の環境において当該防汚方法が利用できるかどうかを決定する

ためにリスクを分類する。 

この規格は,次の用途に対する最小限のガイドラインを提供する。 

− 政府機関による防汚方法の規制 

− 事業者団体又は第三者による事業者のために実施する自主規制及び認定制度 

− 事業者が製品開発のために行う評価 

この規格によって,防汚方法による海洋環境への環境リスクの定量的判定が可能となり,その方法の環

境リスクが許容範囲内かどうかを決定することができる。 

この規格は,川,湖などの淡水域に対するリスクを評価するために変更することができる。淡水域に求

められる排出シナリオの定義には特別な注意を払う必要があり,十分な配慮をもって淡水環境で見られる

種への影響を考慮することが望ましい。 

4.2 

適用に関する検討事項 

この規格は,防汚方法による海洋(及び必要に応じ淡水)環境リスクを定量化する方法を提供するが,

防汚方法の使用及び商品化を直接規制したり承認したりするものではない。箇条8に規定した防汚方法の

リスクキャラクタリゼーションの結果として,“海洋環境への高リスクの可能性”に分類されることは,そ

の防汚方法の使用を禁止することを直接意味していない。追加的な緩和措置,暴露評価の精緻化又は対象

環境の継続的モニタリングなどによって,環境暴露量が低減するような一定の条件下での使用は容認され

ることがある。 

防汚方法に含まれている殺生物性活性物質は,この規格を使用する評価の前にJIS F 0600-1に基づいて

リスクを評価しなければならない。通常,JIS F 0600-1のリスク評価によって海洋環境への“低リスク”

又は“比較的低リスク”として分類された物質をこのリスク評価に用いることが望ましい。例外的にJIS F 

0600-1のリスク評価によって海洋環境への“リスク懸念”として分類された物質を用いる場合,5.1の規

定に従って特別な注意を払わなければならない。 

この規格に基づき申請者が提出した全てのデータについては,申請者に帰属する所有権が確保されなけ

ればならない。これらのデータは,データの所有者からの書面による事前承認なしには他の申請者が使用

できないように措置されなければならない。 

4.3 

環境リスク評価の構造及び手順 

環境リスク評価方法は,JIS F 0600-1に基づいた殺生物性活性物質のリスクのレビュー,暴露評価,有

害性評価結果の引用及びリスクキャラクタリゼーションの四つの手順から構成される。予測環境濃度

(PEC)と予測無影響濃度(PNEC)との比(PEC/PNEC)をリスク評価の定量的指標として用いる。リス

ク評価の手順の概要を図1に示す。 

background image

F 0600-2:2015 (ISO 13073-2:2013) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

図1−殺生物性活性物質を用いた船舶の防汚方法の環境リスク評価の構成及び手順 

防汚方法に用いる殺生物性活性物質のリスクのレビュー 

5.1 

概要 

意図的に防汚方法に追加した殺生物性活性物質の海洋環境へのリスクが,JIS F 0600-1に基づいて“低

リスク”又は“比較的低リスク”として分類されているかどうかを確認しなければならない。 

殺生物性活性物質のいずれかが“リスク懸念”とみなされている場合でも,5.3の規定のように特定のタ

イプの海洋環境における当該製品の使用を考慮してもよく,その場合は,当該製品の使用制限又は当該環

境のモニタリング実施を条件としてもよい。当該制限には,当該製品を使用できる環境,最大許容溶出速

度,当該製品を使用できる期間及びニッチエリアへの使用のような特定の用途又は塗装面積の制限を含め

てもよい(含めなくてもよい。)。 

当該防汚方法に用いる全ての殺生物性活性物質が“低リスク”又は“比較的低リスク”の場合,当該防

汚方法の使用は可能である。しかしながら,次のいずれかに該当する場合,JIS F 0600-1の殺生物性活性

物質のリスク評価と同じ条件を当該防汚方法にも適用しなければならない。 

a) 殺生物性活性物質がJIS F 0600-1において一定期間比較的低リスクであると暫定的にみなされた場合 

b) JIS F 0600-1において特定のタイプの海洋環境が殺生物性活性物質の排出先とみなされた場合 

5.2 

殺生物性活性物質が“比較的低リスク”であると暫定的にみなされた場合の評価 

防汚方法の殺生物性活性物質のいずれかがJIS F 0600-1の附属書Bの段階2のレベル1評価の結果,一

定の期間“比較的低リスク”であると暫定的にみなされた場合,この防汚方法の海洋環境へのリスク評価

もこの期間暫定的に認められる。 

5.3 

特定のタイプの海洋環境が殺生物性活性物質の排出先とみなされた場合の評価 

この規格では,殺生物性活性物質の暴露評価は,JIS F 0600-1に従って殺生物性活性物質のリスク評価

を実施した特定のタイプの海洋環境にだけ適用する。特定のタイプの海洋環境で行ったリスク評価を他の

タイプの海洋環境のリスク評価に直接適用することはできない。 

新しいタイプの海洋環境に防汚方法を用いる場合は,その新しい環境それぞれに対してリスク評価を実

施しなければならない。 

JIS F 0600-1に 

よる活性物質の 

リスクのレビュー 

JIS F 0600-1 

による再評価 

F 0600-2:2015 (ISO 13073-2:2013) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

注記 例えば,防汚方法が小形ボート及びヨット用の防汚塗料であり,塗料に含まれている殺生物性

活性物質Xが代表的な海洋環境の“航路”及び“外洋”を対象としてJIS F 0600-1の暴露評価

を行っている場合であって,“物質Xが海洋環境に対して比較的低リスク”と評価した場合,

この防汚塗料に含まれている他の殺生物性活性物質について港,マリーナなどの航路及び外洋

以外のタイプの海洋環境に対してリスク評価を実施している場合であっても,この防汚方法は

航路及び外洋の海洋環境に対してだけ比較的低リスクであるとみなす。当該防汚塗料が港及び

マリーナでも比較的低リスクであることを示すためには,典型的な適用環境として港及びマリ

ーナを追加して殺生物性活性物質XのJIS F 0600-1の暴露評価を行う必要があり,防汚塗料が

これらのタイプの海洋環境においても低リスク又は比較的低リスクであることを示す必要があ

る。 

暴露評価 

6.1 

排出シナリオの作成 

排出シナリオとは,防汚方法における殺生物性活性物質の使用パターン,暴露源及び経路を定義する一

連のパラメータのことである。物質及び暴露環境の両方の物理化学的パラメータを考慮に入れることによ

って,シナリオを用いて環境への排出の分配の定量化が可能になる。 

6.1.1 

検討すべき海洋環境のタイプ 

船舶に使用する防汚方法の供用期間については,殺生物性活性物質が溶出する海洋環境を特定すること

が望ましい。検討すべき海洋環境には次のタイプがある。 

− 外洋(参考:開放系海域における航路) 

− 航路(参考:外洋よりも閉鎖的な水域における航路) 

− 港湾(参考:商業港) 

− マリーナ 

その他の水域(例 より広大な水域)についても検討の必要な場合がある。 

製品の用途及び排出海域によっては,上記の環境タイプを全て検討する必要のない場合もある。ただし,

5.3の規定は順守する。 

6.1.2 

排出シナリオの定義 

検討中の海洋環境タイプの選択に続き,暴露海域の典型的なサイズを決める代表シナリオを示すことが

望ましい。例えば,典型的な港湾の長さ,幅及び深さを定義することが望ましい。排出シナリオは,定義

したシナリオの適切な物理化学的・水力学的パラメータを考慮に入れてPECを計算できるだけの十分な情

報を準備することが望ましい。PECを算出するためのシナリオを設定する場合に検討すべき典型的パラメ

ータは次のとおりである。 

a) 殺生物性活性物質の溶出速度 

− 殺生物性活性物質の溶出速度(単位面積及び単位時間当たりの殺生物性活性物質の質量) 

注記 溶出速度の決定方法はJIS F 0600-1の5.2に記載されている。 

b) 排出に関係するパラメータ 

− 停泊船舶の総数及び航行船舶の総数 

− 航行船舶の比率 

− 停泊船舶の比率 

− 船舶の没水表面積(例えば,船舶の長さ別に設定した表面積) 

F 0600-2:2015 (ISO 13073-2:2013) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

− 当該製品の塗装船舶の割合 

c) 対象海域のレイアウト 

− 対象海域の長さ,幅(又は表面積)及び深度 

− 対象海域と非対象海域との間の境界の幅及び深さ(例 平均海水面以下の湾口交換面積,湾口の深

さ) 

d) 水質 

− 温度 

− 塩分 

− pH 

− シルト濃度(粒径63 µm未満,mg/Lで表記) 

− 有機炭素の割合[底質の有機炭素濃度(乾燥質量)] 

− 懸濁有機炭素(POC)及び溶存有機炭素(DOC)濃度(mg OC/L) 

− 水層中の浮遊粒子状物質 

e) 水文学 

− 干満による海水交換速度(単位時間当たり単位断面積当たりの流入水量及び流出水量) 

− 対象海域につながる河川及び流れの水量(単位時間当たり単位断面積当たりの流入水量及び流出水

量) 

f) 

環境媒体 

− pH 

− 混合底質層の厚さ 

− 溶存有機炭素 

注記 このリストの限りではない。 

6.1.3 

パラメータの設定要件 

全てのパラメータは,現実的な最悪シナリオに設定する必要がある。当該シナリオの例は,OECD排出

シナリオ文書(OECD, 2005)に掲載されている。シナリオを作成する際に,現実に即した最悪シナリオで

あることを確認することが重要である。例えば,港湾のリスクを評価する場合,評価者は対象国から適切

な港湾部分の寸法を調査し,その国の港湾の典型的寸法が明らかになれば,それらのサイズのデータをベ

ースとして,適切な統計的尺度(例 平均長,又はデータセットの長さの95パーセンタイル値)を選ぶ

ことが望ましい。 

6.2 

PECの決定 

各排出シナリオ及びそれぞれの関連する環境区分のPECは,6.1.2及び6.1.3で決定したパラメータ及び

検討中の各特定物質に関連した特性を用いて決定することが望ましい。 

典型的パラメータは,次のものを含んでもよい。 

− 殺生物性活性物質の分解速度(非生物分解及び/又は生物分解) 

− 粒子吸着率(又は粒子に結合している殺生物性活性物質と海水中に溶存している当該物質との比率) 

− 有機炭素分配係数(KOC) 

− 殺生物性活性物質の生物濃縮係数 

PECを算出する場合,シナリオで定義した全てのパラメータを考慮に入れることによって環境負荷を判

断できる適切な数学的モデルを選ぶことが望ましい。通常,PECはMAMPECなどの専用のコンピュータ

プログラムで計算される。JIS F 0600-1の附属書Hに使用できる検証済みのモデルの例を記載している。 

F 0600-2:2015 (ISO 13073-2:2013) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

懸濁物質における有機炭素分配係数(KOC)は,吸着試験(OECD TG106)又はHPLC法(OECD TG121)

で求められる。 

浮遊物質における海水の体積分率,懸濁物質における固体の体積分率,固相密度及び懸濁物質における

有機炭素の重量分率の平均値・標準値の例が技術ガイダンス文書(European Commission, 2003)に記載さ

れている。 

必要に応じ,BCF,平均魚消費率,海水PEC(PECSW)などのパラメータを用いて捕食者・哺乳類に対

する環境予測濃度(PECpred)を決定することが望ましい。 

PECの決定に使用するモデル自体が適切に検証されていることが重要である。モデルの検証報告書をリ

スク評価報告書の一部に含めることが望ましい。 

適切なPNECの選択 

防汚方法に含まれる殺生物性活性物質に対して使用するPNEC値は,JIS F 0600-1においてリスク評価

の計算に用いたものと同じにしなければならない。 

注記 排出環境では殺生物性活性物質間の毒性学的相互作用が生じる可能性が理論的にはある。こう

した相互作用の影響評価が有害性評価に必要となる可能性もある。しかしながら,こうした相

互作用の評価のために確立された科学技術はなく,検証されたモデルもない。したがって,こ

うした相互作用が懸念される場合,それらの構成物質間の潜在的相互作用に関する専門家の判

断を要求してもよい。 

リスクキャラクタリゼーション 

殺生物性活性物質を使用する防汚方法のリスク評価では,暴露評価から算出したPECと引用したPNEC

との比率すなわちPEC/PNECに基づいて,防汚方法に含まれているそれぞれの殺生物性活性物質に対して,

また海洋環境別に,供用期間中の海洋環境へのリスクを推定するものとする。 

評価したいずれかの環境において,いずれかの殺生物性活性物質に対してPEC/PNECが1以上になった

場合,その防汚方法は“海洋環境へのリスクが高い可能性がある”とみなされる。含まれる全ての殺生物

性活性物質に対して評価した全ての環境でPEC/PNECが1未満の場合,その防汚方法は“海洋環境へのリ

スクが低い”とみなされる。 

類似の防汚方法のリスク評価 

ある防汚方法をリスク評価するに当たっては,ブリッジング(代替法:他の防汚方法に同じデータを適

用する)及びウェービング(回避法:当該防汚方法のデータを取得しなくてもよい)による既存データの

再利用に基づいて類似の配合の他の防汚方法のリスク評価を代用してもよい。こうしたブリッジング及び

ウェービングの適用が認められるのは,例えば,同じ活性物質を含む塗料が参照できる場合,参照する防

汚方法と同等か低いリスクである場合,ブリッジング及びウェービングを適用することが科学的及び技術

的に正当であると専門家によって判断される場合などである。 

10 懸念物質 

防汚製品の配合が3.1で定義した“懸念物質”を含む場合,特別な注意を要さなければならない。化学

物質の分類及び標識化の国際調和システム(GHS)(United Nations, 2009)のルールに基づき,防汚製品を

“水生環境有害性”と表示するために十分な濃度である場合,JIS F 0600-1及びこの規格に従って各懸念

F 0600-2:2015 (ISO 13073-2:2013) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

物質のリスク評価を行う。 

11 リスク評価報告書 

この規格に従って行ったリスク評価については,評価に用いた情報及びその結果を含むリスク評価報告

書を作成しなければならない。リスク評価報告書で記載すべき最低限必要な情報は,附属書Aに規定する。 

background image

F 0600-2:2015 (ISO 13073-2:2013) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書A 

(規定) 

リスク評価報告書に必要な最低限の情報 

A.1 リスク評価報告書に必要な最低限の情報 

この附属書は申請のため提出される防汚方法のリスク評価報告書に含める必要がある最低限のデータ及

び情報について説明する。これらのデータ及び情報は,適正な環境リスク評価が行われたことを裏付ける

ために使用される。 

この附属書に記載された要求項目以外の重要な関連データ及び情報もリスク評価報告書に記載すること

が望ましい。 

ブリッジング及びウェービングを適用した場合,リスク評価報告書にその論理的根拠を記載しなければ

ならない。 

表A.1−リスク評価報告書に必要な最低限の情報 

項目 

要求データ 

申請者 

申請者の氏名,住所及び連絡先 
製造業者名 

製品の同定 

製品名 
製品識別コード番号 
物理的状態及び色 
製品組成 

各殺生物性活性物質の同定 

製造業者名及び工場所在地 
一般名及び別名 
化学名(IUPAC) 
CAS番号及びその他の登録番号 
分子式及び構造式 
分子量 
製品に含まれる殺生物性活性物質の濃度 
JIS F 0600-1適合宣言書 

各懸念物質の同定 

製造業者名 
一般名及び別名 
化学名(IUPAC) 
CAS番号及びその他の登録番号 
分子式及び構造式 
分子量 
製品に含まれる懸念物質の濃度 

標的生物への効果及び各殺生物性活性
物質の用途 

溶出速度及びその決定方法 
最終使用者及び用途 
供用期間 

各殺生物性活性物質の環境濃度の予測
に関する情報 

モデル及びパラメータ 
PEC 

各物質の有害性評価 

PNEC 

GHS分類及び表示 

防汚方法のGHS分類における水生環境有害性(急性
及び慢性)の表示内容(分類区分,シンボル,危険
有害性情報及び注意書き) 

background image

10 

F 0600-2:2015 (ISO 13073-2:2013) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

表A.1−リスク評価報告書に必要な最低限の情報(続き) 

項目 

要求データ 

リスクキャラクタリゼーション 

海洋環境のPEC/PNEC 

要約 

殺生物性活性物質を使用する船舶の防汚方法の環
境リスク評価結果の概要 

注記 “製品組成”の対象には次のものも含まれる。 

− 意図的に加えた殺生物性活性物質 
− 意図的に加えた非殺生物性物質で,GHSに基づいて水生環境有害性(急性及び長期)

の区分1又は区分2に分類される物質(懸念物質) 

参考文献  

[1] European Commission (2003) Technical Guidance Document on Risk Assessment in support of 

Commission Directive 93/67/EEC on Risk Assessment for new notified substances, Commission 

Regulation (EC) No 1488/94 on Risk Assessment for existing substances, Directive 98/8/EC of the 

European Parliament and of the Council concerning the placing of biocidal products on the market 

(Part II), Institute for Health and Consumer Protection, European Chemicals Bureau. EUR 20418 

EN/2 

[2] OECD 2005, EMISSION SCENARIO DOCUMENT ON ANTIFOULING PRODUCTS, OECD 

Environmental Health and Safety Publications. Series on Emission Scenario Documents No. 13. 

Environment Directorate, Organisation for Economic Co-operation and Development. 

ENV/JM/MONO(2005)8 

[3] OECD Guidelines for the Testing of Chemicals, Test No. 106: Adsorption‒Desorption Using a 

Batch Equilibrium Method 

[4] OECD Guidelines for the Testing of Chemicals, Test No. 121: Estimation of the Adsorption 

Coefficient (Koc) on Soil and on Sewage Sludge using High Performance Liquid Chromatography 

(HPLC)  

[5] United Nations. Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals (GHS). 

Third, New York, Geneva, Revised Edition, 2009