2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
D 1608-1993
自動車ガソリン機関用
フューエルフィルタ試験方法
Fuel filter test method for automotive gasoline engines
1. 適用範囲 この規格は,主として自動車のガソリン機関に使用するフューエルフィルタ(以下,フィ
ルタという。)の試験方法について規定する。ただし,フィルタは,燃料ポンプの吸込み側配管中に設置さ
れるものについて適用し,吐き出し側配管中に設置されるものには適用しない。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS D 1601 自動車部品振動試験方法
JIS D 1617 自動車ディーゼル機関用フューエルフィルタ性能試験方法
JIS D 3606 自動車用電気駆動式燃料ポンプ
JIS K 2201 工業ガソリン
JIS K 2202 自動車ガソリン
JIS K 2204 軽油
JIS Z 8703 試験場所の標準状態
JIS Z 8901 試験用ダスト
2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次のとおりとする。
(1) 定格流量 受渡当事者間の協定による油流量又は所定の油流量。リットル毎分 (l/min) で表す。
(2) スラリ 試験油と試験用コンタミナントを混合したもの。
(3) コンタミナント捕そく容量 圧力損失の増加が指定値に達するまでにフィルタが捕らえたコンタミナ
ント量。グラム (g) で表す。
(4) 圧力損失 フィルタ出入口の静圧の差。メガパスカル (MPa) で表す。
(5) 清浄効率 試験油中のコンタミナントのフィルタ入口に対するフィルタ出口の質量比。パーセント
(%) で表す。
3. 試験項目 フィルタの試験項目は,次のとおりとする。
(1) 圧力損失試験
(2) コンタミナント捕そく容量及び清浄効率試験
(3) フィルタエレメントの強度試験
(4) 耐圧漏れ試験
(5) 耐圧破壊試験
(6) 振動試験
2
D 1608-1993
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(7) 高温放置試験
(8) 低温放置試験
(9) ガソリン浸せき試験
(10) パイプの曲げ及びねじり試験
4. 試験装置
4.1
圧力損失,コンタミナント捕そく容量及び清浄効率試験装置 3.(1)及び3.(2)の試験装置は,原則と
して図1に示すとおりとし,次による。
(1) 試験装置の油タンクAは,底面の形状が円すい状で,6.1及び6.2に規定された試験を行うのに十分な
容量をもつものとする。
なお,ポンプ吸込み側は,油タンク底面の円すいの先端から取り出し,添加したコンタミナントが
底面に付着するのを避けるものとする。
(2) 油タンクAには,かくはん機を付け,かくはん羽根はできるだけ油タンクの底部に入れる。
なお,かくはん羽根の一例を付図1に,油タンクAの一例を付図2に示す。
(3) 油タンクBは,6.2に規定された試験を行うのに十分な容量をもつものとする。
(4) ポンプAは,JIS D 3606に適合するポンプを用いるのが望ましい。
(5) 回路の管の内径は,6mmとし,内面は滑らかで,断面は円形であって,配管に際しては,試験中接続
部や曲がり部などに,コンタミナントが付着しないような構造及び形状とする。
図1 圧力損失・コンタミナント捕そく容量及び清浄効率試験装置
備考 8d,12dなどは,圧力計,供試フィルタ近辺の配管の直線部分の長さを示す。
なお,dは配管の内径である。
4.2
フィルタエレメント強度試験装置 3.(3)の試験装置は,原則として図2に示すとおりとする。圧力
計の取付位置は,4.1の図1と同じとする。
3
D 1608-1993
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図2 フィルタエレメント強度試験装置
4.3
耐圧破壊試験装置 3.(5)の試験装置は,原則として図3に示すとおりとする。
図3 耐圧破壊試験装置
5. 試験条件
5.1
試験室の一般条件 試験室の温度及び湿度は,特に指定のない限り,JIS Z 8703に規定する常温・
常湿とする。
5.2
試験油 試験油は,特に指定のない限り,JIS K 2201の5号とする。ただし,試験油中の固形物(石
油エーテル不溶解分)は,2mg/l以下が望ましい。
また,3.(5)耐圧破壊試験で使用する試験油は,JIS K 2204の2号とし,3.(9)ガソリン浸せき試験で使用
する試験油は,JIS K 2202の2号とする。
5.3
試験用コンタミナント 試験用コンタミナントは,特に指定のない限り,JIS Z 8901の8種とする。
5.4
スラリ スラリは,試験油100mlに試験用コンタミナント8gの割合で混合したものとする。
6. 試験方法
6.1
圧力損失試験
(1) 4.1の図1の試験装置を用い,仕切弁A・B・Cを開き,仕切弁D・E・F,及び流量調整弁Bを閉じて,か
くはん機は停止した状態とする。
(2) 油タンクAに試験油を入れ,油温が23±5℃であることを確認してから,ポンプAを駆動し,流量調
整弁Aで流量を調整しながら,フィルタに試験油を0から定格流量まで流し,定格流量の20%,40%,
60%,80%及び100%の各流量段階で圧力損失を測定する。
6.2
コンタミナント捕そく容量及び清浄効率試験
(1) 4.1の図1の試験装置を用い,仕切弁A・B・C・E,及び流量調整弁A・Bを開き,仕切弁D・Fを閉じ,
19.9lの試験油を油タンクAに入れ,ポンプA及びBを駆動して試験油を回路に循環させ,回路中の
4
D 1608-1993
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
気泡をすべて抜く。同時に試験油の温度が23±5℃であることを確認する。
(2) ポンプを停止し,仕切弁Aを閉じて,かくはん機を200回転/分で作動させながら,スラリ100mlを
添加し,5分間かくはんする。
(3) 仕切弁Bを閉じて,仕切弁A・Eを開き,ポンプBを駆動して,流量調整弁Bでバイパス回路の流量
を1.5l/minになるよう調整して5分間流す。
(4) 仕切弁Fを開き,仕切弁Eを閉じて,試験油採取管Bから300mlの試験油を採取し,この中に含まれ
るコンタミナント量を分析して,コンタミナント濃度を計算し,これを試験開始時の油タンクA内の
コンタミナント濃度とする。
(5) 試験油採取後直ちに仕切弁Fを閉じ,仕切弁Eを開けて,更に仕切弁B・Dを開け,仕切弁Cを閉じ,
ポンプAを駆動して流量調整弁Aで主回路の流量を定格流量又は1l/minに速やかに調整し,このと
きを試験時間0とする。
なお,バイパス回路の流量が1.5l/minであることを確認する。
(6) 試験開始1分後,2分後,4分後,以後4分ごとに試験油採取管Aから300ml採取し,同時に圧力損
失を記録する。
(7) フィルタの圧力損失の増加が指定値に達したとき,試験油採取管A及びBから,それぞれ300mlずつ
採取し,試験時間を記録して試験を終了する。
(8) 清浄効率は,採取した試験油中のコンタミナント量の分析結果を用い,次の式によって算出する。
2
0
f
im
m
m
+
=
············································································ (1)
ここに, m0: 油タンクA内の平均コンタミナント濃度 (g/l)
mi: 6.2(4)で試験油採取管Bから採取した試験開始時の油タンクA
内のコンタミナント濃度 (g/l)
mf: 6.2(7)で試験油採取管Bから採取した試験終了時の油タンクA
内のコンタミナント濃度 (g/l)
100
0
0
×
−
=
m
m
m
n
n
η
······································································ (2)
ここに,
ηn: 試験開始n分後の瞬間清浄効率 (%)
mn: 6.2(6)及び6.2(7)で試験油採取管Aから採取した試験開始n分
後の,ろ過された後の試験油中のコンタミナント濃度 (g/l)
(
)
(
)
(
)
(
)
{
}
T
n
n
n
Λ
Λ
Λ
+
−
−
+
+
−
×
+
−
×
+
−
×
=
4
2
4
1
2
0
1
4
2
1
η
η
η
η
η
··········· (3)
ここに,
η: フィルタの清浄効率 (%)
T: 圧力損失が指定値に達するまでの時間 (min)
ただし,式中の括弧内は試験油採取の時間間隔 (min) を示す。
(9) コンタミナント捕そく容量は,次の式によって算出する。
100
0
η
=
T
Q
m
C
······································································· (4)
ここに, C: コンタミナント捕そく容量 (g)
Q: 試験を行った定格流量 (l/min)
6.3
フィルタエレメントの強度試験
(1) 4.2の図2の試験装置を用い,6.2の試験を終了したフィルタを設置し,タンクに試験油10lを入れる。
(2) 仕切弁A・B・Cを開いてポンプを駆動し,回路中の空気を抜く。
(3) ポンプを停止し,仕切弁Aを閉じて,かくはん機を作動しながら,スラリ100mlを油タンクに入れる。
5
D 1608-1993
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(4) 仕切弁Aを開いて,再びポンプを駆動し,仕切弁B・Cでフィルタの流量を1l/minに調整しながら,
圧力損失が,特に指定のない限り0.1MPaになるまで通油する。
備考 10分以内に圧力損失が目標値に達しないときは,更にスラリを100ml添加する。
(5) 圧力損失が目標値に達したら,仕切弁Bを開きながら調整して,30秒間その圧力を保持した後,仕切
弁Cを閉じてポンプを停止する。
(6) フィルタを取り外して分解し,エレメントの破壊の有無を観察して記録する。
6.4
耐圧漏れ試験 特に指定のない限り0.2MPaの空気圧をフィルタの内部に加え,フィルタを水中に没
して,3分間以上保持し,各部からの空気漏れの有無を確認し,その後取り出して,永久変形その他の欠
陥の有無を観察し記録する。
6.5
耐圧破壊試験 4.3の図3の試験装置を用い,フィルタケース内にJIS K 2204の2号を完全に充満さ
せ,手動式油圧ポンプで徐々に圧力をかけ,フィルタケースが破壊に至るまでの最高圧力を記録する。
備考 油圧回路内に空気が残っているとフィルタケースが破壊したとき,試験油が飛散し危険である
から十分注意する必要がある。耐油性透明合成樹脂板などで測定者と試験装置の間を隔離する
こと。
6.6
振動試験 振動試験は,JIS D 1601の規定によって行う。ただし,試験条件は受渡当事者間の協定
による。
6.7
高温放置試験 高温放置試験は,フィルタを100℃の周囲温度で,96時間保持した後,常温に戻し
て6.4の耐圧漏れ試験を行う。
備考 高温放置中のフィルタに試験油が付着していると危険であるから十分注意する必要がある。
6.8
低温放置試験 低温放置試験は,フィルタを−30℃の周囲温度で96時間保持した後,常温に戻して
6.4の耐圧漏れ試験を行う。
6.9
ガソリン浸せき試験 フィルタをJIS K 2202の2号に,23±5℃にて96時間浸せきした後,6.4の耐
圧漏れ試験を行う。
6.10 パイプの曲げ及びねじり試験 パイプの曲げ及びねじり試験は,次による。
(1) 曲げ試験 フィルタの本体を動かないようにしっかりと固定し,パイプの先端にパイプと直角方向に
受渡当事者間の協定によって定められた荷重をかけ,パイプの有害な変形,つぶれ,割れ,その他の
欠陥の有無を観察し記録する。
(2) ねじり試験 フィルタの本体を動かないようにしっかりと固定し,パイプの先端に受渡当事者間の協
定によって定められたねじりモーメントをかけ,パイプの有害な変形,つぶれ,割れ,その他の欠陥
の有無を観察し記録する。
7. 採取した試験油の分析 6.2の(4),(6)及び(7)で採取した試験油は,その中に含まれるコンタミナント
の質量を測定するために,JIS D 1617の7.1(コンタミナント捕そく容量及び清浄度)の方法によって分析
する。
6
D 1608-1993
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
付図1 かくはん羽根の形状(例)
付図2 タンクAの形状・寸法(例)
自動車航空部会 自動車用エンジン部品専門委員会 構成表(昭和57年3月1日制定のとき)
氏名
所属
(委員会長)
柳 原 茂
工業技術院機械技術研究所
清 水 達 夫
運輸省自動車局
西 中 真二郎
通商産業省機械情報産業局
大久保 和 夫
工業技術院標準部
杉 本 隆 義
財団法人日本自動車研究所
橋 本 秀 夫
社団法人日本自動車整備振興会連合会
大 鹿 澄 男
トヨタ自動車工業株式会社第4技術部
高 井 正 之
日産自動車株式会社第一機関設計部
高 原 昭 二
三菱自動車工業株式会社開発本部
飯 塚 善 得
株式会社本田技術研究所
森 吉 弘 志
東洋工業株式会社エンジン開発部
武 井 辛 蔵
ダイハツ工業株式会社エンジン部
鈴 本 作 良
社団法人日本自動車部品工業会
菊 川 敏 男
東京濾器株式会社技術研究所
豊 島 専 吉
日本電装株式会社フィルタ技術部
手 島 正 博
株式会社土屋製作所
山 崎 俊 昭
日本濾過器株式会社技術部
角 屋 輝 一
東洋濾機製造株式会社技術部
(事務局)
松 川 東 一
工業技術院標準部機械規格課
鈴 木 一 規
工業技術院標準部機械規格課
(事務局)
笹 尾 照 夫
工業技術院標準部機械規格課(平成5年2月1日改正のとき)