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B 9946:2019  

(1) 

目 次 

ページ 

序文 ··································································································································· 1 

1 適用範囲························································································································· 1 

2 引用規格························································································································· 1 

3 用語及び定義 ··················································································································· 1 

4 構成······························································································································· 3 

5 仕様項目及び要求性能 ······································································································· 5 

6 耐オゾン性材料 ················································································································ 8 

7 処理装置の使用エネルギー管理 ··························································································· 8 

8 処理装置及び処理装置周辺でのオゾン濃度管理 ······································································ 9 

9 オゾン濃度測定方法 ········································································································· 10 

10 定期保守・点検 ············································································································· 16 

附属書A(規定)オゾン発生量の算出方法 ··············································································· 17 

附属書B(参考)オゾン発生部及びオゾン反応部の要求性能に関する補足事項 ································ 18 

附属書C(規定)発生オゾン濃度特性曲線 ··············································································· 20 

附属書D(規定)オゾン漏えい箇所の確認方法 ········································································· 22 

附属書E(参考)オゾン濃度測定方法における補足事項 ······························································ 24 

附属書F(参考)定期保守・点検留意項目 ················································································ 29 

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(2) 

まえがき 

この規格は,産業標準化法第16条において準用する同法第12条第1項の規定に基づき,特定非営利活

動法人日本オゾン協会(JOA)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,産業標準原案を添えて日本産

業規格を改正すべきとの申出があり,日本産業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本産

業規格である。これによって,JIS B 9946:2011は改正され,この規格に置き換えられた。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。 

注記 工業標準化法に基づき行われた申出,日本工業標準調査会の審議等の手続は,不正競争防止法

等の一部を改正する法律附則第9条により,産業標準化法第12条第1項の申出,日本産業標準

調査会の審議等の手続を経たものとみなされる。 

  

日本産業規格          JIS 

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排水・用水用オゾン処理装置− 

仕様項目及びオゾン濃度測定方法 

Ozone treatment apparatus for water and wastewater including  

other oxidation uses-Specifications of apparatus and  

measurement methods for ozone concentration 

序文 

この規格は,2011年に制定されたが,その後の耐オゾン性材料などの技術的進展,普及状況などに対応

するために改正した。 

なお,対応国際規格は,現時点で制定されていない。 

この規格の利用者は,人為的に製造するオゾン及びその関連装置について,強制法規の適用を含めその

取扱いに精通していなければならない。また,オゾンの測定時には作業従事者の健康に留意する。 

適用範囲 

この規格は,工業排水,工業用水,下水,上水などの分野でオゾンを用いて処理を行う排水・用水用オ

ゾン処理装置(以下,処理装置という。)に求められる一般的な仕様項目(要求性能)及びオゾン濃度測定

方法について規定する。 

この規格は,定格オゾン発生量(オゾンを発生する工程が複数系列の場合は,その総量)が0.5 kg/h以

上の処理装置を対象とする。 

なお,オゾン発生量の算出方法は,附属書Aによる。 

注記 処理装置とは,オゾンの発生,反応及び分解する工程をもつ装置で,かつ,オゾン濃度管理点

(以下,管理点という。)でオゾン濃度を適切に測定し,有機物及び微量有害物質の分解,消毒,

脱色・脱臭などの処理を行う装置をいう。 

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS B 7957 大気中のオゾン及びオキシダントの自動計測器 

JIS B 8265 圧力容器の構造−一般事項 

JIS K 0804 検知管式ガス測定器(測長形) 

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。 

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3.1 

オゾン(ozone) 

酸素原子3個からなる分子。 

3.2 

オゾン発生量(generated ozone amount) 

オゾン発生器で単位時間当たりに製造されるオゾンの量。 

3.3 

オゾン濃度(ozone concentration) 

単位体積又は単位質量当たりのオゾンの体積,質量又はモル数。 

3.4 

化学分析(chemical analysis) 

吸収瓶又は捕集容器に捕集された試料の分析方法のうち,滴定法,吸光光度法などで,連続分析以外の

分析方法。 

3.5 

オゾン濃度計(ozone monitor) 

試料のオゾン濃度を連続的に測定する機器。 

3.6 

オゾン検知器(ozone detector) 

簡易的にオゾン濃度を測定する機器及び器具。 

3.7 

発生オゾン濃度(generated ozone concentration) 

オゾン発生器出口のオゾン濃度。 

3.8 

オゾン注入率(ozone dosage) 

単位処理水量(m3)に注入するオゾンの量(g)。濃度の単位(g/m3又はmg/L)をもつ。 

3.9 

排オゾン濃度(waste ozone concentration) 

オゾン反応部出口のオゾン濃度。 

3.10 

排気オゾン濃度(exhaust ozone concentration) 

排オゾン処理部出口のオゾン濃度。 

3.11 

オゾン必要量(required ozone amount) 

処理に必要なオゾンの量。 

3.12 

溶存オゾン濃度(dissolved ozone concentration) 

水中に溶解しているオゾン濃度。 

3.13 

環境オゾン濃度(ambient ozone concentration around ozone treatment apparatus) 

処理装置周辺の環境雰囲気のオゾン濃度。 

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3.14 

発生オゾン濃度特性曲線(characteristic curve between ozone generator-input power and generated ozone 

concentration) 

オゾン発生器への入力電力とそのときに得られる発生オゾン濃度との関係を示した特性曲線。 

3.15 

質量法(gravimetric method) 

採取した液体の質量を測定することで体積に換算し,定量する方法。 

3.16 

容量法(volumetric method) 

ピペットなどで,液体体積を一定量採取し,定量する方法。 

3.17 

入力電力(input power) 

電源装置入口側での電力。 

3.18 

電力原単位(electrical power consumption rate) 

単位オゾン発生量当たりの入力電力量(kWh/kg-O3)。オゾン発生部の性能指標に用いられる。 

注記 収率[単位入力電力量当たりのオゾン発生量(kg-O3/kWh)]でオゾン発生の性能を示す場合も

ある。 

構成 

処理装置は,原料ガス供給部,オゾン発生部,オゾン反応部及び排オゾン処理部から構成される(図1

参照)。図1には,処理装置内の管理点をM1〜M4及び処理装置周辺の管理点をM5で示してある。 

図1−処理装置の構成図 

a) 原料ガス供給部 オゾン発生部に原料ガスを供給する装置であり,原料ガスを空気とする場合は,1)

の空気供給装置を用いる。原料ガスを酸素とする場合は,2)の空気中の酸素を富化する装置又は3)の

液体酸素を気化して供給する装置を用いる。 

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1) 空気供給装置 送気装置(ブロワ又はコンプレッサ),空気冷却装置,空気乾燥装置などで構成する

装置。 

− 送気装置は,空気冷却装置に原料ガスとなる空気を圧送する装置。 

− 空気冷却装置は,送気装置で圧縮した空気の冷却を行う装置で,空冷式,水冷式及び冷凍式があ

る。各方式を併用する場合もある。 

− 空気乾燥装置は,冷却した空気を除湿する装置。除湿には,アルミナゲル,ゼオライトなどを用

いて水分を吸着除去する。複数の吸着装置をもち,吸着と再生とを交互に行い連続的に乾燥空気

を得る。 

2) 酸素供給装置(空気を原料として酸素を供給する場合) 送気装置,酸素富化装置などで構成する装

置。 

− 送気装置は,酸素富化装置に原料となる空気を圧送する装置。 

− 酸素富化装置は,空気中の酸素を富化する装置。窒素,二酸化炭素などを吸着剤で吸着し90 %以

上の酸素を得る。 

注記 酸素富化装置は,酸素製造装置又は酸素発生装置ともいう。 

3) 酸素供給装置(液体酸素から酸素を供給する場合) 液体酸素貯蔵塔,気化装置などで構成する装

置。 

− 液体酸素貯蔵塔は,液体の酸素を貯蔵する装置。 

− 気化装置は,液体酸素貯蔵塔から供給された液体酸素を気化させる装置。 

b) オゾン発生部 次に示すオゾン発生器,電源装置,冷却装置などで構成する。オゾン発生方式は,一

般に放電方式(誘電体バリア放電又は沿面放電)が用いられている。 

1) オゾン発生器 酸素を含んだ原料ガス中で,主に放電によって酸素からオゾンを人為的に発生させ

る装置。 

2) 電源装置 オゾン発生器にオゾン発生に適した電圧及び周波数で電力を供給する装置で,その多く

はインバータ,昇圧トランスなどの組合せで構成する。 

3) 冷却装置 オゾン発生器を冷却する装置で,空冷式又は水冷式とする。 

c) オゾン反応部 反応装置,溶解装置などで構成する。 

1) 反応装置 オゾンを水に溶解し,被処理物質と反応させる装置。 

2) 溶解装置 オゾンを水に溶解する装置。溶解方式は,散気,下降流注入,インジェクタ又は機械か

くはん(攪拌)のいずれかの方式とする。 

d) 排オゾン処理部 次に示す排オゾン分解装置,排オゾン吸引装置などで構成する。ただし,反応装置

の気密が保たれる場合には,排オゾン吸引装置は不要である。 

1) 排オゾン分解装置 反応装置から放出されたオゾンを酸素に分解する装置。分解方式は,活性炭,

触媒,熱分解などとする。 

2) 排オゾン吸引装置 排オゾンを吸引し,反応装置から排オゾン分解装置に送るために用いる装置。

主にファンが用いられる。 

e) 管理点 通常,図1のM1〜M5に示す箇所でオゾン濃度を測定する。気相のオゾン濃度を測定する管

理点M1,M3〜M5と液相のオゾン濃度を測定する管理点M2とがある。これらの管理点における測

定値を基にして,処理装置の性能確認,運転制御,保守管理などを行う。 

管理点に適用する測定方法として,次に示すものがある。 

− オゾン濃度測定のための化学分析 

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− オゾン濃度測定のためのオゾン濃度計 

− 簡易測定のためのオゾン検知器 

注記 オゾン処理装置各部の構成(詳細)については,参考文献[1]参照。 

仕様項目及び要求性能 

5.1 

原料ガス供給部 

5.1.1 

仕様項目 

処理装置の製造業者及び利用者(以下,受渡当事者という。)は,次に規定する仕様項目について,適切

な仕様内容を決める。 

a) 原料ガス性状(ガス種,露点温度及び酸素濃度) 

b) 原料ガス流量 

c) 使用温度,使用湿度及びその他使用雰囲気に関わる事項 

5.1.2 

要求性能 

原料ガス供給部の要求性能は,次による。 

a) 供給ガスの露点温度(大気圧下)は,−50 ℃以下としなければならない。ただし,やむを得ない事情

があり,例えば,受渡当事者間で協定した場合は,この限りではない。 

b) 空気供給装置及び酸素供給装置(空気を原料として酸素を供給する場合)は,使用圧力及び容器の大

きさによって,JIS B 8265の規定に適合しなければならない。 

c) 定められた規模以上の酸素供給装置(液体酸素から酸素を供給する場合)は,JIS B 8265の規定に適

合するほか,高圧ガス保安法,消防法などの関連する法規に適合しなければならない。 

d) 送気装置を使用する場合は,その容量に応じて騒音規制法及び振動規制法の規定を考慮しなければな

らない。 

e) 空気供給装置において冷凍機を使用する場合は,高圧ガス保安法の規定に適合しなければならない。 

f) 

酸素濃度が25 %以上の供給ガスに接する部分は,禁油処理を施さなければならない。 

5.2 

オゾン発生部 

5.2.1 

オゾン発生器 

5.2.1.1 

仕様項目 

受渡当事者は,次に規定する仕様項目について,適切な仕様内容を決める。 

a) オゾン発生量及び発生オゾン濃度 

b) 冷却方式,一次側冷媒温度及び水質(水冷の場合) 

c) 使用温度,使用湿度,その他使用雰囲気に関わる事項 

d) 最大使用圧力 

5.2.1.2 

要求性能 

オゾン発生器の要求性能は,表1による。 

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表1−オゾン発生器の要求性能 

項目 

要求性能 

オゾンの漏えい 

オゾン発生器からオゾンの漏えいがあってはならない。 

接地 

オゾン発生器は,使用電圧及び容量に応じて適切な接地工事を施さな
ければならない。 

材料 

オゾンと接触する部位は耐オゾン性材料を使用しなければならない。 

絶縁抵抗(充電部−接地間) 

直流電圧1 000 Vを印加して5 MΩ以上。 

機械的耐圧力 

− 安全弁,圧力スイッチなどを設け,圧力の上昇を防止する対策を

しなければならない。 

− 最大使用圧力の水圧にあっては1.5倍,気圧にあっては1.25倍の

圧力を加圧して漏れがあってはならない。 

禁油処理 

オゾン又は25 %以上の酸素に接する部分には,禁油処理を施す。 

注記 オゾン発生器の要求性能に関する補足事項は,B.2参照 

5.2.2 

電源装置 

5.2.2.1 

仕様項目 

受渡当事者は,次に規定する仕様項目について,適切に仕様内容を決める。 

a) 入力電流,入力電圧及び入力周波数 

b) 出力電流,出力電圧及び出力周波数 

c) 電源容量 

d) 使用温度,使用湿度及びその他使用雰囲気に関わる事項 

5.2.2.2 

要求性能 

電源装置の要求性能は,表2による。 

なお,絶縁耐力試験の試験電源は,周波数50 Hz又は60 Hzのほぼ正弦波形の交流で,その容量は500 VA

以上の性能をもち,試験電圧をゼロから規定値まで一様に上昇できる機能を備えることが望ましい。 

表2−電源装置の要求性能 

項目 

要求性能 

接地 

機器の鉄台及び金属製外箱には,使用電圧,目的及び容量に応じて適
切な接地工事を施さなければならない。また,使用場所の状況に応じ
て漏電遮断器を設ける。 

絶縁抵抗 

直流電圧1 000 Vを印加して5 MΩ以上。 

絶縁耐力 

電圧をゼロから一定割合(電圧計で読み取れる速さ)で次の規定試験
電圧まで上昇させた後,1分間保持しても異常のないことを確認する。 
− 定格電圧2.2 kV超え3.6 kV以下の場合は,10 kV 
− 定格電圧3.6 kV超え7.2 kV以下の場合は,16 kV 

高電圧・高周波 

感電防止対策(保護カバー,インターロックなど)及び高周波対策(フ
ィルタなど)を施さなければならない。 

注記 電源装置の要求性能に関する補足事項は,B.3参照。 

5.2.3 

冷却装置 

5.2.3.1 

仕様項目 

受渡当事者は,次に規定する仕様項目について,適切な仕様内容を決める。 

a) 冷却能力 

b) 冷媒 

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c) 使用温度,使用湿度及びその他使用雰囲気に関わる事項 

5.2.3.2 

要求性能 

冷却水,冷却風などによる冷却部の腐食,耐久性を考慮した設計がされていなければならない。 

5.3 

オゾン反応部 

5.3.1 

反応装置 

5.3.1.1 

仕様項目 

受渡当事者は,次に規定する仕様項目について,適切な仕様内容を決める。 

a) オゾン注入率 

b) 処理水量 

c) 反応装置容量 

d) 反応装置水深 

e) 使用温度,使用湿度,その他使用雰囲気に関わる事項 

5.3.1.2 

要求性能 

反応装置の要求性能は,次による。 

a) 反応装置で水処理をする間,反応装置は密閉されていなければならない。ただし,気密性が低いコン

クリートなどで構成された反応装置の場合,水面上の気相部は,排オゾン吸引装置によって負圧に維

持されなければならない。 

b) オゾン又はオゾン水と接する部位は,耐オゾン性材料を使用しなければならない。 

c) 反応装置からオゾン発生器への処理水の逆流を防止する手段が講じられていなければならない。 

注記 反応装置の要求性能に関する補足事項は,B.4参照。 

5.3.2 

溶解装置 

受渡当事者は,次に規定する仕様項目について,適切な仕様内容を決める。 

a) 溶解方式 

b) ガス流量 

c) 使用温度及び使用圧力 

5.4 

排オゾン処理部 

5.4.1 

排オゾン分解装置 

5.4.1.1 

仕様項目 

受渡当事者は,次に規定する仕様項目について,適切な仕様内容を決める。 

a) 分解方式 

b) 分解剤の種類及び充塡量(分解剤を使用する場合) 

c) 適応できる排オゾン濃度の範囲,排ガス温度及び排ガス流量 

d) 使用温度,使用湿度,その他使用雰囲気に関わる事項 

5.4.1.2 

要求性能 

排オゾン分解装置の要求性能は,次による。 

a) 排オゾン分解能力は,排気オゾン濃度を0.4 ppm未満に分解できる性能をもたなければならない。 

b) オゾンと接触する部位は,濃度レベルに応じた耐オゾン性材料を使用しなければならない。 

c) オゾン反応部からの排ガスに泡その他のオゾン分解を阻害する物質が含まれている場合には,排オゾ

ン処理装置の性能を確保するため,排ガスの消泡装置,水洗装置などを設けなければならない。 

d) 熱分解方式の場合は,使用温度に応じた材料を使用しなければならない。また,人が直接高温部に接

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触しないような構造を具備するとともに,消防法を遵守し,他の機器に対し熱遮断を行う,又は隔離

距離を確保しなければならない。 

注記 人及び環境への安全性を考慮して,オゾンの排出基準濃度を0.4 ppm未満としているが,この

濃度は,大気汚染防止法施行令別表五に定められるオキシダントの重大緊急報発令基準濃度に

合致する。 

5.4.2 

排オゾン吸引装置 

受渡当事者は,次に規定する仕様項目について,適切な仕様内容を決める。 

a) 排オゾン吸引ファン能力(吸引流量,吸引圧力など) 

b) 適応できる排オゾン濃度の範囲及び排ガス温度 

c) 使用温度,使用湿度,その他使用雰囲気に関わる事項 

耐オゾン性材料 

オゾン又はオゾン水と接触する各構成部の装置本体及び附属機器,配管,弁,センサ,継手,シール,

パッキンなどには,耐オゾン性材料を使用しなければならない。これらの部分に使用する耐オゾン性材料

の例を,表3に示す。 

耐オゾン性材料は,オゾンの使用状況(乾燥か湿潤かの別,高濃度か低濃度かの別など)に応じて使い

分ける。また,定期交換によって機能及び性能が確保できる材料を使用する。 

注記 耐オゾン性を高めるために,耐オゾン性材料の表面に,更にPFA,PTFE,PVC などのライニ

ング加工,チタン板張りなどを施す場合がある。 

表3−耐オゾン性材料の例 

構成部名 

装置名 

耐オゾン性材料(例) 

オゾン発生部 

オゾン発生器 

SUS304,SUS316L,SUS821L,SUS323L,SUS329J3L,ガラス,セラ
ミック,アルミニウム(耐食性処理),PTFE,EPDM,CSM,FFKM 

冷却装置 

SUS304,SUS821L,SUS323L,チタン,FRP,黄銅 

オゾン反応部 

反応装置 

コンクリート,モルタル,SUS304,SUS316L,SUS821L,SUS323L,
SUS329J3L,PVDF,PVC,PTFE,FRP a),EPDM,CSM,FFKM 

溶解装置 

セラミック,SUS304,SUS316L,SUS821L,SUS323L,SUS329J3L,
PVDF 

排オゾン処理部 

排オゾン分解装置 

SUS304,SUS821L,SUS323L,PTFE,PVDF,FRP a),EPDM,CSM,
FFKM 

排オゾン吸引装置 

SUS304,SUS821L,SUS323L,PVC,FRP a) 

注a) 100 ppm未満のオゾン濃度に限定して使用することができる。 

処理装置の使用エネルギー管理 

原料ガス供給部,オゾン発生部,オゾン反応部及び排オゾン処理部で使用される電力量を定期的に計測

し,その運用,点検及び保守に活用することを,本処理装置の利用者に推奨する。特に,オゾン発生部で

は,電力原単位を定期的に調査し,この経時変化を参考にして,適切な点検及び部品交換を行うことがで

きるようにするのが望ましい。 

なお,これらは,発生オゾン濃度,原料ガス流量,冷却温度などの影響を受けることに注意する必要が

ある。 

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処理装置及び処理装置周辺でのオゾン濃度管理 

8.1 

管理のためのオゾン濃度測定 

処理装置は,オゾン反応部で求められるオゾン必要量に応じてオゾン発生量及び/又はオゾン濃度を管

理しなければならない。管理は,管理点におけるオゾン濃度測定(箇条9参照)によって実施する。各管

理点でのオゾン濃度測定の内容を,表4に規定する。 

表4−管理点におけるオゾン濃度測定 

管理点 

M1 

M2 

M3 

M4 

M5 a) 

測定対象の名称 

発生オゾン濃度 

溶存オゾン濃度 

排オゾン濃度 

排気オゾン濃度 

環境オゾン濃度 

測定対象構成部 

オゾン発生部 

オゾン反応部 

排オゾン処理部 

排オゾン処理部 

処理装置周辺 

オゾンの存在状態 

気相 

液相 

気相 

気相 

気相 

説明 

オゾン発生器か
らオゾン反応装
置に供給される
オゾン濃度を測
定する。 

反応装置内の水
中に溶解したオ
ゾン濃度を測定
する。 

反応装置から排
出された未溶
解・未消費のオ
ゾン濃度を測定
する。 

排オゾン分解装
置で処理した後
のオゾン濃度を
測定する。 

装置周辺の雰囲
気及び装置漏え
いのオゾン濃度
を測定する。 

注a) 環境オゾン濃度(M5)の監視については,公益社団法人日本産業衛生学会による許容濃度等の勧告値(参考

文献[2]),米国産業衛生専門官会議の許容濃度(参考文献[3])及び8.2.3参照。 

8.2 

管理点でのオゾン濃度測定方法 

8.2.1 

設置・切替時 

処理装置の設置時,移設時,更新時,オーバーホール時などの設置・切替時には,オゾン発生部及び排

オゾン処理部においてあらかじめ定めた性能が確保されていること,並びに処理装置周辺において漏えい

などによる環境への影響がないことを,オゾン濃度によって確認しなければならない。設置・切替時のオ

ゾン濃度測定方法を,表5に規定する。 

表5−設置・切替時の各部でのオゾン濃度測定方法 

管理点 

M1 

M2 

M3 a) 

M4 a) 

M5 

オゾン濃度測定方法 

化学分析又はオ
ゾン濃度計 

受渡当事者間で
測定の要否及び
測定方法を協定
する。 

化学分析又はオ
ゾン濃度計 

化学分析又はオ
ゾン濃度計 

受渡当事者間で
測定の要否及び
測定方法を協定
する。 

注a) 管理点M3及びM4では,濃度の目安を得る目的でオゾン検知器を用いる場合がある。ただし,設計した性

能の確認には,オゾン検知器は利用できない。 

8.2.2 

運用時 

処理装置の通常運転時,維持管理時などの運用時には,処理装置内でのオゾンの発生状況又は濃度を確

認することによって,反応部に供給されるオゾン量に過不足がなく適切な処理が行えるよう処理装置の運

転を制御する。制御の方法は,次に示すa)オゾン注入率制御,b)溶存オゾン濃度制御又はc)排オゾン濃度

制御とし,それぞれ管理点M1〜M3でオゾン濃度を測定して制御する。運用時の各管理点におけるオゾン

濃度測定方法を,表6に規定する。 

運用時は,管理点M1〜M3のうち少なくとも1か所以上でオゾン濃度を測定して処理装置を制御するこ

ととし,その測定箇所及び制御方法は受渡当事者間で協定する。ただし,オゾン発生器の定格オゾン発生

量が2 kg/h未満の場合には,附属書Cに規定する発生オゾン濃度特性曲線を用いて確認する方法でもよい。 

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10 

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表6−運用時の各管理点におけるオゾン濃度測定方法 

管理点 

M1 

M2 

M3 

オゾン濃度測定方法 

化学分析又はオゾン濃度計 

受渡当事者間で測定方法を
協定する。 

受渡当事者間で測定方法を
協定する。 

a) オゾン注入率制御とは,オゾン注入率を一定に制御することをいう。設定された注入率から算出され

るオゾン発生量と比較して過不足が発生した場合,電力及び/又はガス流量を制御して,オゾン注入

率を調節する。 

b) 溶存オゾン濃度制御とは,反応装置内の溶存オゾン濃度を一定に制御することをいう。設定された溶

存オゾン濃度と比較して過不足が発生した場合,電力及び/又はガス流量の制御によって,要求され

た溶存オゾン濃度に調節する。 

c) 排オゾン濃度制御とは,オゾン反応部から排出された排オゾン濃度でオゾン注入率を制御することを

いう。設定された排オゾン濃度と比較して過不足が発生した場合,電力及び/又はガス流量の制御に

よって,設定した排オゾン濃度に調節する。 

8.2.3 

環境オゾン濃度の確認 

処理装置周辺のオゾン濃度[環境オゾン濃度(M5)]が異常値を示したときには,処理装置の運転停止

も含めた対策を施さなければならない。そのような異常の原因として,第一に排オゾン分解装置の能力不

足が疑われるため,運転状況下で排気オゾン濃度(M4)を測定し,排出基準濃度(0.4 ppm)及び環境オ

ゾン濃度(M5)と比較するとよい。その結果,排出基準濃度より高い場合,又はM4≧M5となった場合

には,排オゾン分解装置の処理能力があらかじめ定めた能力値以下と判断し,排オゾン分解装置の点検及

び保守を行う。一方,排出基準濃度以下で,かつ,M4<M5となった場合は,排オゾン分解装置の処理能

力に問題はないと判断し,オゾン反応部及びオゾン発生部のオゾン漏えいを確認する。 

例えば,オゾン処理装置が屋内に設置されている場合,環境オゾン濃度計を設置して常時監視すると,

オゾン漏えいなどの異常に対して速やかに対応することができ,安全管理上の利点が高まる(参考文献[4],

[5]参照)。ただし,部屋の通気性及び換気機能にもよるが,外気環境中の光化学大気汚染によって,室内

の環境オゾン濃度計の指示にプラスの誤差が生じる場合があるので,このことに注意し,安全を確保でき

るよう環境オゾン濃度計の設定値を受渡当事者間で協定する。一方,オゾン処理装置が屋外に設置されて

いる場合,又は十分に換気が行われていて実質的に開放されているような場合には,必ずしも常時監視す

る必要はない。 

なお,測定の必要性は受渡当事者間で協定し,適切な測定方法を選択する。また,漏えいの箇所を特定

するには,気密試験,石けん水などを用いたガス漏れ試験,附属書Dに示した方法などが適用できる。 

オゾン濃度測定方法 

9.1 

化学分析 

9.1.1 

化学分析の種類及び原理 

化学分析の種類及び原理の概要を,表7に示す。 

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表7−化学分析の種類及び原理の概要 

化学分析の種類 

原理の概要 

測定対象 

よう素滴定法 

オゾンとよう化物イオンとの反応によって生成するよう素の量を,チオ硫
酸ナトリウム溶液を用いて滴定し,オゾン濃度を算出する。 
他の化学分析又はオゾン濃度計の校正標準として用いる。 

気相・液相 

紫外線吸光光度法 

オゾンの紫外域における吸光度を分光光度計で測定し,オゾン濃度を算出
する。液相の測定では,液中のオゾンの吸収を測定する直接法と液相から
気相置換したオゾンの吸光度を測定する間接法とがある。 

気相・液相 

インジゴ吸光光度法 

オゾンとの反応によって脱色されたインジゴの濃度を分光光度計で測定
し,吸光度の減少からオゾン濃度を算出する。 

液相 

注記 オゾン濃度測定方法における補足事項は,附属書E参照。 

9.1.2 

試料採取の注意事項 

オゾンは,気相・液相の別にかかわらず自己分解及び反応が速く,液相においては気散するため,試料

採取に当たっては次の点に注意する。 

a) 気相及び液相に共通する試料採取の注意事項 

1) 管理点の濃度を代表する箇所から採取する。 

2) 測定のために用いる器材のオゾンと接触する部位は,オゾンに対して反応性の低いガラス,ふっ素

樹脂,ステンレス鋼などの材料を用いる。 

3) 試料の導入管は,可能な限り短く,かつ,採取速度を大きくし,接触時間をできるだけ短くする。

また,配管内に付着している油脂などのオゾン反応成分を除去するなど表面の安定化を図るため,

あらかじめ一定時間以上オゾン含有気体を通気するか,又はオゾン含有液を通液しておく。 

4) 測定の妨害になる成分が混入している場合は,必要に応じてその影響を除去するために,適切な前

処理をする。 

b) 気相における試料採取の注意事項 

1) 採取試料の標準状態における体積を得るために,採取試料の体積に加えて採取時の温度及び圧力を

測定する。 

2) 採取試料の体積は,既知容積の容器に採取する方法と,次に示す流量計を用いて連続的に採取する

方法とがあり,目的に応じて適切な方法を選択する。 

2.1) 流量計は,湿式ガス流量計又はフロート式ガス流量計を用い,目的及び要求精度に応じて適切に

選択し,適正な箇所に設置する。 

2.2) 湿式ガス流量計を用いる場合は,流量計に封入されている液体温度の飽和蒸気圧による体積の補

正をする。 

2.3) フロート式ガス流量計を用いる場合は,測定気体の主要成分に適合するものを使用し,要求精度

に応じてオゾンを含め成分組成に基づく補正をする。 

c) 液相における試料採取の注意事項 

1) 空気,酸素及びオゾンを含有する気泡の混入は,測定値に誤差を与えるため避ける。 

2) 試薬は,できるだけ速やかにオゾンと反応させる。そのため,試薬の入った容器に,試料を採取す

る質量法を用いることが望ましい。特に,排水などオゾンの分解が速い試料においては,質量法を

用いる(E.3〜E.5参照)。 

3) 容量法を用いる場合は,試料採取後速やかに試薬と混合する。 

4) 紫外線吸光光度法を用いる場合も,試料採取後できるだけ速やかに測定に供する。 

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注記 試料がアルカリ性の場合は,オゾンの分解が進みやすいため特に注意する。この場合,試料を

酸性にすることによって,オゾンの自己分解を遅らせることができる。また,試料によっては

共存物質との反応によるオゾンの分解も遅らせることができる。 

9.1.3 

各管理点において適用する化学分析 

各管理点において適用する化学分析は,表8による。 

表8−各管理点において適用する化学分析 

管理点 

対象濃度範囲例a) 

適用する化学分析b) 

M1 
(気相) 

空気原料:0〜50 g/m3(N) 
酸素原料:0〜200 g/m3(N) 

設置・切替時 

よう素滴定法 

運用時 

よう素滴定法,紫外線吸光光度法 

M2 
(液相) 

0〜10 mg/L 

設置・切替時 
運用時 

よう素滴定法,インジゴ吸光光度法 
紫外線吸光光度法 

M3 
(気相) 

0〜10 g/m3(N) 

設置・切替時 
運用時 

よう素滴定法,紫外線吸光光度法 

M4 
(気相) 

0〜1 ppm 

設置・切替時 
運用時 

JIS B 7957 附属書3の2.(中性よう化
カリウム法による方法) 

注a) オゾンの質量濃度と体積濃度との換算は,次による(JIS B 7957参照)。 

− 0 ℃,101.325 kPa(標準状態)でオゾン2.141 g/m3(N)が1 000 ppm 
− 20 ℃,101.325 kPaでオゾン1.995 g/m3が1 000 ppm 

b) オゾン濃度測定方法における補足事項は,附属書E参照。 

9.2 

オゾン濃度計 

9.2.1 

オゾン濃度計の種類及び原理 

オゾン濃度計の種類及び原理の概要を,表9に示す。 

表9−オゾン濃度計の種類及び原理の概要 

オゾン濃度計の種類 

測定原理の概要 

測定対象 

紫外線吸収式 

紫外域254 nm付近でのオゾンの吸光度を測定し,オゾン濃度を算出する。 

気相 

直接法 

紫外線領域260 nm付近での液中のオゾンの吸光度を測定し,溶存
オゾン濃度を算出する。 

液相 

間接法 

液中のオゾンを気相へ置換後,気相オゾン濃度の測定をし,分配係
数及び水温で補正することによって溶存オゾン濃度を算出する。 

隔膜ポーラログラフ式 隔膜を透過したオゾンが電極で還元されるときに,透過オゾン量に比例して

発生する電極間電流を測定し,オゾン濃度を算出する。 

液相 

定電位電解式 

オゾンが電解液に溶解したときに生成するよう素を,電極で還元するときに
流れる電流として測定し,オゾン濃度を算出する。 

気相 

注記 オゾン濃度測定方法における補足・推奨事項は,附属書E参照。 

9.2.2 

試料採取の注意事項 

オゾン濃度計を使用する場合の試料採取に当たっては,オゾンの自己分解及び他の物質との反応が速い

ことを考慮して,測定原理に適した方法で実施する。 

a) 気相及び液相に共通する試料採取の注意事項 

1) 管理点の濃度を代表する箇所から採取する。 

2) 試料の導入管のオゾンと接触する部分は,オゾンに対して反応性の低いガラス,ふっ素樹脂,ステ

ンレス鋼などの材料を用いる。 

3) 試料の導入管は,可能な限り短く,かつ,採取速度を大きくし,接触時間をできるだけ短くする。

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また,配管内に付着している油脂などのオゾン反応成分を除去するなど表面の安定化を図るため,

あらかじめ一定時間以上オゾンと接触させておく。 

4) 測定の妨害になる成分が混入している場合は,必要に応じてその影響を除去するために,適切な前

処理をする。 

b) 気相における試料採取の注意事項 ダスト,妨害ガス及び水蒸気が共存し,オゾン濃度の測定に影響

を及ぼす場合は,必要に応じてその影響がないように9.2.4 a) に規定する前処理を行う。 

c) 液相における試料採取の注意事項 液相におけるオゾンは,自己分解及び気相への散逸が大きいため,

次の点に注意する。 

1) 配管内の空隙部及び試料水の滞留部が生じないように配管を構成する。 

2) 試料水中に浮遊物質などの存在が考えられる場合には,これらがオゾン濃度計に混入しないように

9.2.4 b) に規定する前処理を行う。 

9.2.3 

管理点の個別の注意事項 

管理点における個別の注意事項を,表10に示す。 

表10−管理点における個別の注意事項 

管理点 

注意事項 

M1 
(気相) 

試料採取口には,流量調整が可能で不要時にガスの遮断ができる弁を取り付けることが望ましい。 

M2 
(液相) 

試料水に圧力がない場合,試料採取系の最終段階に脈動の少ないポンプを挿入し,採取する。直接ポン
プなどで吸引する場合,通水直後は,残留する気泡への散逸,配管内のオゾン分解などによって誤差が
生じないように必要な安定時間を確保する。 
配管が長い場合又は屈曲が多く管内に析出物などが付着するおそれのあるときは,随時洗浄を行う。 
流量が変動すると配管内の付着物及び沈殿物が流出することがあるため,試料採取時及び採取直前に流
量を変更してはならない。 

M3 
(気相) 

試料採取圧力が正圧でも低い場合又は負圧になっている場合は,試料採取ポンプで吸引する。また,試
料採取配管の施工を行う場合,途中で高湿ガス中の凝縮水などによる水たまりが生じるような配管は避
ける。 

M4 
(気相) 

排オゾン分解装置では,処理剤を通過するオゾンの流速が不均一になり,部分的にオゾン処理能力が低
下する場合があるので,排オゾン吸引装置の出口で濃度が均一な箇所から採取を行うことが望ましい。 

M5 
(気相) 

処理装置及び配管の漏えいをいち早く確認できるような箇所で試料採取を行う。特に,ガス圧の高い配
管の接合部分などの近傍から試料採取を行うことが望ましい。 

9.2.4 

前処理 

前処理は,次による。 

a) 気相 気相の試料採取において,水蒸気,ダストなどが含まれ,それらの影響で測定結果に誤差を生

じる可能性がある場合は,適切な前処理をする。気相の管理点における前処理フロー例を,図2及び

図3に示す。 

1) フィルタ 試料ガス中に含まれるダスト,ミストなどの粒子状物質を除去する。材質は,オゾンと

の反応性の低いふっ素樹脂などが適しており,使用時は試料通過速度も大きくし,オゾン濃度の減

少を抑える。このほか,フィルタ面に付着した物質によってオゾンの分解が生じることがあるため,

フィルタは随時交換する必要がある。特に,管理点M4及びM5の測定のときには,試料採取管の

内壁に付着した物質によってオゾンが分解することを防ぐために,試料採取点の直近に取り付ける。 

2) トラップ 採取したガス中に混入した水分及び試料採取管内で凝縮した水を,試料から分離する。 

3) 除湿器 水蒸気の干渉を受ける測定方式では,必要に応じて試料ガス中の水蒸気を除去する電子除

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湿器又は膜式ドライヤーを使用する。 

図2−気相の管理点M1,M4及びM5における前処理フロー例 

図3−気相の管理点M3における前処理フロー例 

b) 液相 オゾン濃度計の種類,特性などによって影響の差はあるが,一般的に試料水中の浮遊物質及び

気泡は,測定誤差の原因となるので,フィルタ及び試料に含まれる気泡を取り除く気液分離器などを

設ける。 

液相の管理点M2における前処理フロー例を,図4に示す。 

図4−液相の管理点M2における前処理フロー例 

9.2.5 

各管理点において適用するオゾン濃度計 

各管理点において適用するオゾン濃度計は,表11による。 

表11−各管理点において適用するオゾン濃度計 

管理点 

対象濃度範囲例a) 

適用するオゾン濃度計 

M1 
(気相) 

空気原料:0〜50 g/m3(N) 
酸素原料:0〜200 g/m3(N) 

設置・切替時 
運用時 

紫外線吸収式 

M2 
(液相) 

0〜10 mg/L 

設置・切替時 
運用時 

紫外線吸収式(間接式又は直接式) 
隔膜ポーラログラフ式 

M3 
(気相) 

0〜10 g/m3(N) 

設置・切替時 
運用時 

紫外線吸収式 

M4 
(気相) 

0〜1 ppm 

設置・切替時 
運用時 

紫外線吸収式 

M5 
(気相) 

0〜1 ppm 

設置・切替時 
運用時 

紫外線吸収式(検出下限0.001 ppm) 
定電位電解式(検出下限0.001 ppm) 

注a) 表8の注a)に同じ。 

9.3 

オゾン検知器 

9.3.1 

オゾン検知器の種類及び原理 

オゾン検知器は,漏えい又は精度を要求しない濃度の目安を得るための手段として用いる。オゾン検知

フィルタ 

気液分離器 

オゾン濃度計 

試料採取点 

試料採取管 

トラップ 

除湿器 

フィルタ 

オゾン濃度計 

試料採取点 

試料採取点 

フィルタ 

オゾン濃度計 

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器の種類及び原理の概要を,表12に示す。 

表12−オゾン検知器の種類及び原理の概要 

オゾン検知器の種類 

測定原理の概要 

測定対象 

半導体式 

オゾンが吸着されることによって生じる半導体の電気抵抗の変化を測定し,
オゾン濃度を算出する。 

気相 

検知管式 

インジゴを付着した担体が封入されたガラス管内に,一定容積の試料を通気
したときのオゾンによる変色層の長さから,オゾン濃度を算出する。 

気相 

液中のオゾンを気相に置換して気相用検知管によって溶存オゾン濃度を算出
する。 

液相 

9.3.2 

試料採取の注意事項 

試料採取に当たっては,オゾンを取り扱う装置の配管周辺からの漏えいをいち早く確認できるような箇

所で,次の各オゾン検知器の測定原理に適した方法によって行う。 

a) 半導体式オゾン検知器の設置方法及び試料採取方法 開放雰囲気中に設置し,自然に拡散したオゾン

を測定する方法と,雰囲気の試料ガスを送気又は吸引して測定する方法とがある。 

1) 周囲の温度及び水分の影響が大きい。特に,自然拡散によるオゾン測定の場合,空調などの気流の

影響で検知素子の温度が変化し,感度が変動するため,これらの影響の少ない場所を選定する。 

2) 測定範囲上限を超えるオゾンに検知器が長時間さらされると,感度が低下する場合があるため,こ

のような場所には長時間用いない。 

b) 検知管式オゾン検知器の試料採取方法 検知管式オゾン検知器の試料採取方法は,次による。 

1) 気相 試料の採取には,JIS K 0804に規定するガス採取器を用いる。 

2) 液相 検知管式オゾン検知器の試料採取例を,図5に示す。 

2.1) 試料を採取する容器は,事前に試料で数回置換洗浄を行う。 

2.2) 採取する試料は,シリンジなどの採水器で速やかに採取する。 

2.3) 採取した試料を散気筒に移し,エアレーションしながら試料に含まれるオゾンの全量を検知管に

通気する。 

フィルタ

ポンプ

逆止弁

散気筒

テフロン栓

検知管

図5−検知管式オゾン検知器の管理点M2における試料採取例 

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9.3.3 

各管理点において適用するオゾン検知器 

各管理点において適用するオゾン検知器は,表13による。 

表13−各管理点において適用するオゾン検知器 

管理点 

対象濃度範囲例a) b) 

適用するオゾン検知器 

M2 
(液相) 

0〜10 mg/L 

設置・切替時 
運用時 

検知管式 

M3 
(気相) 

0〜10 g/m3(N) 

設置・切替時 

検知管式 

運用時 

− 

M4 c) 
(気相) 

0〜1 ppm 

設置・切替時 
運用時 

検知管式 

M5 
(気相) 

0〜1 ppm 

設置・切替時 
運用時 

半導体式,検知管式 

注a) 検知管による濃度測定値は,通常,常温・常圧時における値である。 

b) 対象濃度範囲は,この規格の対象とする処理装置において計測され得る範囲であり,

現存するオゾン検知器が全測定範囲を測定できるものとは限らない。 

c) 管理点M4に適用するオゾン検知器は,精度及び選択性はあまり問わないが,0.1 ppm

の感度が検知できるもの。 

10 定期保守・点検 

10.1 作業従事者 

処理装置及びオゾン濃度計は,定期的な保守・点検及び部品交換を実施しなければならない。処理装置

の使用者及び保守・点検に従事する者(以下,従事者という。)は,例えば,オゾン安全管理士のようなオ

ゾンに関する高度な知識をもたなければならない。 

10.2 計画・マニュアル策定 

処理装置及びオゾン濃度計の定期点検項目,立入制限区域,及び保守管理時期などの計画,並びに保守

点検マニュアルは,受渡当事者間で事前に協定しておく。 

10.3 作業環境 

10.3.1 立入制限 

使用者は,従事者以外が立入制限区域内に入らないよう措置を講じなければならない。 

10.3.2 オゾン濃度の確認 

従事者は,管理点M5のオゾン濃度が0.1 ppm以下であることを確認するとともに,例えば,携帯型の

オゾン濃度計などオゾンを検知できる手段を携帯して,作業する。 

10.4 記録及び保存 

従事者は,保守・点検結果を記録・保存しなければならない。その結果は,受渡当事者間で共有する。 

注記 定期保守・点検留意項目を附属書Fに示す。 

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附属書A 

(規定) 

オゾン発生量の算出方法 

A.1 オゾン発生量の算出方法(箇条1参照) 

オゾン発生器で酸素がオゾンに変化すると,酸素3分子からオゾン2分子が生成されることから体積が

減少するため,オゾンガス流量Qoutは,原料ガス流量Qinに比べ減少する。オゾンガス流量Qoutと原料ガ

ス流量Qinとの関係は,式(A.1)で表すことができる。 

×

×

+

×

×

=

−3

in

out

10

4.

22

2

48

2

48

C

Q

Q

 ·············································· (A.1) 

ここに, 

Qin: 発生器入口における原料ガス流量[m3/h(N)] 

Qout: 発生器出口におけるオゾンガス流量[m3/h(N)] 

C: 発生オゾン濃度[g/m3(N)] 

気体の流量及び濃度は,標準状態(0 ℃,101.325 kPa)に換算し,単位の後に(N)を付けて表す。 

オゾン発生量については,オゾンガス流量を正確に測定することが困難なため,一般的に原料ガスの流

量Qinを測定し,式(A.1)の換算式で求めたQoutと化学分析又はオゾン濃度計で得られた発生オゾン濃度C

とを用いて,式(A.2)でオゾン発生量Y(g/h)が算出できる。 

Y=CQout ··············································································· (A.2) 

オゾンガス流量を正確に測定するには,発生オゾン濃度に適合した流量測定機器を使用する必要がある。

しかし,測定対象となるオゾン発生器の発生オゾン濃度は,制御などによって任意に変動し,これに伴い

気体の密度も変化することから,正しい流量を測定するには,それぞれのオゾン濃度での流量測定機器を

用意することが必要となり,現実的な測定方法にならない。そのため,一般には,上記の換算方法が採用

されている。式(A.1)で換算しない場合のオゾン発生量の誤差は,発生オゾン濃度が高くなるにつれて大き

くなり,発生オゾン濃度50 g/m3(N)及び200 g/m3(N)において,それぞれ,およそ+1 %,+4.5 %になる。 

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附属書B 

(参考) 

オゾン発生部及びオゾン反応部の要求性能に関する補足事項 

B.1 

一般 

オゾン処理装置に使用するオゾン発生部は,高周波・高電圧を印加してオゾンを発生させる特殊機器で

ある。また,水を処理するオゾン反応部は,オゾン発生部と溶解装置を介して配管でつながっているだけ

であり,潜在的な危険要素がある。この附属書では,これらの部位の安全に関わる補足事項について記載

する。 

B.2 

オゾン発生器(5.2.1.2参照) 

オゾン発生器の要求事項に関する補足事項は,次による。 

a) 絶縁抵抗(直流電圧1 000 Vを印加して5 MΩ以上) オゾン発生器のように高周波・高電圧を印加す

る特殊機器の絶縁抵抗を取り決めたJISがないため,制御機器に対する規格JEM 1021(参考文献[6]

参照)を準用している。 

b) 絶縁耐力 オゾン発生器の電極部分は放電する部分であり,通常の絶縁耐力試験を行うと,漏れ電流

よりも放電電流の方が大きくなり合否判定ができない。各製造業者は,それぞれ独自の試験条件(直

流又は交流で高電圧を印加)を設定して絶縁耐力試験を実施しており試験条件の統一ができないため,

この規格では試験条件を規定していない。 

絶縁耐力の試験電圧は,電気事業法などの関連する法令(参考文献[7],[8]及び[9]参照),JEC 0201

(参考文献[10]参照)及びJEM 1021の各種規格が参考となる。この中で試験電圧が最も低くなる“電

気設備の技術基準の解釈”(参考文献[9]参照)に記載されている試験電圧以上で絶縁耐力試験を行う

のが望ましい。 

製造業者は,使用者に対しオゾン発生器の保守点検期間・方法について必要に応じて文書で通知す

る必要がある。 

c) 機械的耐圧力(水圧試験で1.5倍,空気圧で1.25倍以上) オゾン発生器をゲージ圧力0.2 MPa未満で

運転する場合,第二種圧力容器の適用範囲に含まれないが,安全面を考慮して耐圧力試験はJIS B 8265

及びJIS B 8266を適用している。耐圧検査では,試験圧力条件はJIS B 8265を,試験圧力保持時間は

JIS B 8266をそれぞれ準用している。圧力試験として,基本的には水圧試験が規定されているが,水

での試験が難しい場合は,空気圧での試験を認めている。水圧試験の場合は,設計圧力の1.5倍で,

気圧試験の場合は設計圧力の1.25倍で試験することが規定されている。 

d) 禁油処理(オゾン又は25 %以上の酸素に接する部分は禁油) 高圧酸素中では燃焼の危険性が高くな

る。空気中では燃焼しない金属も酸素中では激しく燃焼する。したがって,酸素を扱う設備では,油

脂,金属粉など燃えやすい異物の混入は発火の原因となりやすい。また,オゾンの場合は酸素よりも

反応性が高いので,オゾンと接触する部分に油脂などの有機物が付着しているとオゾンと反応して発

熱し,その発熱作用によってオゾンの分解が促進され,場合によっては爆発に至る危険性がある。 

B.3 

電源装置(5.2.2.2参照) 

電源装置の要求事項に関する補足事項は,次による。 

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a) 絶縁抵抗(オゾン発生器と同等以上であること) 高周波・高電圧を印加する特殊機器の絶縁抵抗を

取り決めたJISがないため,JEM 1021(参考文献[6]参照)を準用している。 

b) 絶縁耐力試験電圧(インバータ,変圧器,リアクトル及び制御回路主回路) 高周波・高電圧を印加

する特殊機器の絶縁耐力を取り決めたJISがない。電源装置のもたなければならない絶縁耐力として,

法的強制力をもつ電気事業法における電気設備に関する技術基準第14条,第17条及び第18条に電路,

変圧器及び器具の試験電圧が規定されている。一方,この規格で対象とする処理装置の場合,下水及

び上水処理向けオゾン発生部のほとんどの電源装置においては利用者からJEC(電気学会電気規格調

査会標準規格)及びJEM(日本電機工業会規格)に適合することが求められており,その要求試験電

圧は電気事業法電気設備技術基準の試験電圧よりも厳しい。このため,JEC 2440,JEC 2200,JEC 2210

及びJEM 1021を準用している(参考文献[6],[11]〜[13]参照)。 

c) 絶縁耐力試験方法 絶縁耐力試験方法は,JIS C 60664-1:2009に規定する耐電圧試験を参考にしてい

る。 

B.4 

反応装置からの逆流防止[5.3.1.2 c) 参照] 

反応装置からの逆流防止の要求事項に関する補足事項は,次による。 

被処理水が,反応装置からオゾン発生器に逆流すると高電圧印加部の短絡の原因となる。そこで,発生

器をオゾン注入点の水位より高い位置に設置する工夫又は注入点の水位より発生器が低くなる場合には,

注入管を反応装置の高水位以上の位置まで立ち上げてから注入し,ラインに逆流防止用の弁を設置するな

ど逆流防止の対策を講じる。対策例を,図B.1及び図B.2に示す。また,インジェクタ方式及び機械かく

はん(攪拌)方式でも,オゾン注入管への対象水の逆流が生じるおそれがある場合には,逆流防止用の弁

の設置などの対策を講じる。 

図B.1−逆流防止対策例(その1) 

図B.2−逆流防止対策例(その2) 

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20 

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附属書C 
(規定) 

発生オゾン濃度特性曲線 

C.1 一般 

オゾン発生器の入力電力と発生オゾン濃度との間には,同一発生環境下において,発生器固有の一定の

関係がある。あらかじめこれらの関係を発生オゾン濃度特性曲線として得ておくと,入力電力を測定する

ことで,発生オゾン濃度を概算することができる。 

C.2 発生オゾン濃度特性曲線の適用範囲について(8.2.2参照) 

この規格では,ランニングコストを考慮して,処理水量5 000 m3/日以上を,オゾン濃度の測定結果に基

づいてオゾン濃度制御を行うことが必須の範囲とした。5 000 m3/dは,オゾン注入率10 g/m3から,式(C.1)

に従って算出すると2.0 kg/hに相当する。 

Y=λa・Qw/24 ··········································································· (C.1) 

ここに, 

Y: オゾン発生量(g/h) 

λa: 通常オゾン注入率(g/m3) 

Qw: 排水処理量(許容下限)(m3/d) 

定格オゾン発生量が2.0 kg/h未満では,処理コスト単価も大きくなることから,発生オゾン濃度特性曲

線を化学分析又はオゾン濃度計の代替として使用できる範囲とし,最適な手法は受渡当事者間で協定する。 

C.3 発生オゾン濃度特性曲線(8.2.2参照) 

発生オゾン濃度特性曲線とは,オゾン発生器で発生するオゾン濃度と,オゾン発生器への入力電力との

関係を示した特性曲線である(図C.1参照)。この関係は,オゾン発生器の性能を示した資料として用いる

ことができるほか,運転管理にも用いることができる。 

図C.1−発生オゾン濃度特性曲線(例) 

特性曲線は,数表として示される場合もある。入力電力については,発生濃度の代わりに,最大入力電

力を100 %とした設定率で表示する場合もある(表C.1参照)。 

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21 

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表C.1−発生オゾン濃度特性(例) 

入力電力(W) 

500 

1 000 

1 500 

2 000 

設定率(%)(最大電力に対する割合) 

25 

50 

75 

100 

発生オゾン濃度[g/m3(N)] 

50 

100 

135 

160 

C.4 利用上の留意事項(8.2.2参照) 

特性曲線又は数表に影響を与えるガス種(酸素又は空気),ガス流量,ガス圧力,冷却水温度,冷却水量

など必要な設定条件を付記する。また,設定条件は,定期点検時に見直す。 

22 

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附属書D 
(規定) 

オゾン漏えい箇所の確認方法 

D.1 一般 

管理点M5でオゾンの漏えいを検出しても,どこで漏えいしているかを特定することが困難な場合が多

い。このような場合,オゾン漏えいの可能性のある場所にこの附属書に記載する方法を適用することで,

漏えいの箇所及び程度を発見することができる。特に,処理装置の接続部分などに適用すると有効である。 

なお,この方法は,気密試験(定期点検,修理,設置・切替時などの装置停止時),石けん水などを用い

たガス漏れ試験(日常点検及び定期点検時)などによる確認によっても漏えいが認められなかった場合に

適用する方法である。 

D.2 作業環境の事前確認(8.2.3参照) 

作業環境の事前確認は,次による。 

a) 作業環境雰囲気の換気が,十分に行われていることを確認する。 

b) 作業環境雰囲気のオゾン濃度が,0.1 ppm以下であることを確認する。 

D.3 漏えい箇所の確認方法の手順(8.2.3参照) 

確認方法の手順は,次による。 

a) 10 %よう化カリウム溶液1)を調製する。 

b) 漏えい確認部分に,紙,布などの担体を密着する。 

c) 10 %よう化カリウム溶液1)を,密着した担体に吹き付ける。 

d) 密着状態で30分程度放置する。 

e) オゾン漏えいの有無を目視で確認する。オゾンの漏えいがある箇所は,茶色に変色する。 

注記 オゾン漏えい箇所の検出例(配管フランジ部)を,図D.1に示す。 

注1) 10 %よう化カリウム溶液とは,溶液100 mL中に10 gのよう化カリウムが含まれている溶液

をいう。 

D.4 補足事項(8.2.3参照) 

a) 市販のよう化カリウムでんぷん試験紙を用いてもよい。この場合は,青く変色する。 

b) 試薬の担体は,オゾンと反応して変色する試薬を安定に担持でき,かつ,通気性のよいもので,かつ

使用期間においてオゾンの劣化を受けないものであればよい。 

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図D.1−オゾン漏えい箇所の検出例(配管フランジ部) 

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附属書E 

(参考) 

オゾン濃度測定方法における補足事項 

E.1 

一般 

オゾン濃度の測定方法には,化学分析として,よう素滴定法をはじめインジゴ吸光光度法,紫外線吸光

光度法などがあり,機械分析としては,紫外線吸収式,隔膜ポーラログラフ式など種々の方法,原理に基

づくものがある。また,処理装置ではオゾン濃度が低い場合,オゾンの分解速度が速い場合などがあり,

オゾン濃度の測定において注意を必要とする。この附属書では,化学分析における定量下限値,オゾンの

分解速度が速い場合の試料採取方法,各種オゾン濃度計の測定原理の他,測定の繰返し再現性,各測定方

法の測定結果間の相関性など,この規格を利用するオゾン処理関連の技術者に参考になると考えられる情

報を補足事項として記載する。 

E.2 

化学分析方法への補足事項 

E.2.1 よう素滴定法及びその定量下限値(9.1.1及び9.1.3参照) 

よう素滴定法及びその定量下限値に関する補足事項は,次による。 

a) 希釈チオ硫酸ナトリウムの使用(チオ硫酸ナトリウム濃度:0.000 25 mol/L) 既存のよう素滴定法で

用いられているチオ硫酸ナトリウムの濃度は0.005 mol/Lであるが,溶存オゾン濃度が低濃度の場合に

は滴定量が少ない。このような場合には,チオ硫酸ナトリウム濃度を0.000 25 mol/L(20倍希釈)と

しても信頼性の高い測定が可能である(参考文献[14]参照)。 

b) 定量下限値(9.1.3参照) 滴定試料の採取容量が200 mL程度の場合,よう素滴定法の定量下限値は

0.25 mg/L程度である(参考文献[14]参照)。 

E.2.2 インジゴ吸光光度法における試料吸光度の補正(9.1.1参照) 

インジゴ吸光光度法を用いる場合,試料そのものが波長600 nmにおいて吸光度をもつときには,補正

が必要である。質量法の場合の濃度算出式を式(E.1)に示す。 

S

S

B

D

S

I

S

I

I

)

(

flV

V

A

V

V

V

A

V

A

C

+

+

=

 ··············································· (E.1) 

ここに, 

C: 試料中の溶存オゾン濃度(mg/L) 

AI,AS,AB: それぞれ使用するインジゴ溶液,試験溶液,試料そのも

のの吸光度 

f: 0.42(L/mg/cm)(検水) 

l: セル長(cm) 

VI,VS,VD: それぞれ使用するインジゴ溶液,試験溶液,希釈水の容

量(mL) 

ただし,係数fは,モル吸光係数を20 000 L/mol/cmとした場合の値である。 

f=0.42(L/mg/cm)は,1 molのオゾンの質量48 000 mgを用いて,モル吸光係数を48 000で除して求め

ることができる。 

E.3 

液相試料採取への質量法適用[9.1.2 c)参照] 

オゾンは,不安定で分解しやすく,また,気散する。そのため,既存の試験方法のように,一旦試料を

容器に採取し,その容器から一定量の試料を容量採取後,試薬を混合するという操作では,時間を要し,

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25 

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濃度測定値が測定者によってばらつくなど,誤差が大きいと考えられる。そのため質量法を採用すること

が望ましい。次にその手順を示す。 

a) よう素滴定法 三角フラスコにあらかじめ所定量のよう化カリウムを加えておき,そこに試料を採取

する。よう化カリウムを添加した状態での三角フラスコの質量をあらかじめ測定しておき,試料採取

後の質量との差から採取試料容量を算出する。採取試料質量がX gの場合,採取試料の密度は1 g/mL

として,採取試料容量はX mLとする。 

b) インジゴ吸光光度法 三角フラスコにあらかじめ所定量のインジゴ溶液を加えておき,そこに試料を

採取する。インジゴを添加した状態での三角フラスコの質量をあらかじめ測定しておき,試料採取後

の質量との差から採取試料容量を算出する。採取試料質量がX gの場合,採取試料の密度は1 g/mLと

して,採取試料容量はX mLとする。インジゴ溶液の容量についても質量測定で算出することが望ま

しい。 

E.4 

紫外線吸光光度法における液相試料の採取[9.1.2 c)参照] 

所定量の試料採取及び測定までに時間を要するため,あらかじめ手順及び所要時間を明確にしておく。

オゾンの分解が速い場合には,紫外線吸光光度法の使用は避ける。ただし,フローインジェクションなど

を用いて,試料採取から測定まで密閉系で短時間で行う場合には使用可能である。 

E.5 

オゾン濃度計(9.2.1参照) 

オゾン濃度計の要求事項に関する補足事項は,次による。 

a) 気相用紫外線吸収式オゾン濃度計 この濃度計は,気相の測定には最も利用されており,図E.1に示

す要素で構成されている{JIS B 7957の5.2.1[オゾン自動計測器(紫外線吸収方式)の構成]参照}。 

図E.1−気相用紫外線吸収式オゾン濃度計の構成例 

b) 液相用紫外線吸収式オゾン濃度計(直接法) JIS B 7957の5.2.1に規定されている濃度自動計測器を

液相用に置き換えたものである。ただし,この場合,オゾン分解器は用いない。干渉成分及び懸濁物

オゾン 
分解器 

試料セル 

流量計 

ポンプ 

光源 

測光部 

演算表示器 

試料 

排気 

切替弁 

26 

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質が含まれた試料を測定するときは,試料をエアレーションしてオゾンを除いたものを基準水として

比較測定し,オゾン濃度を求める方法を採用する。 

c) 液相用紫外線吸収式オゾン濃度計(間接法) 測定方法は,液中のオゾンを気相へ置換後,気相オゾ

ン濃度を測定し,分配係数と水温とで補正することによって,溶存オゾン濃度を測定する方法であり,

連続的に溶存オゾン濃度を測定することができる。溶存オゾンを気相に置換して間接的に測定を行う

ため,干渉成分,懸濁物質,有機物質などによる妨害の影響を受けにくく,低濃度から高濃度まで広

範囲にわたって高い精度で測定が可能である。また,汚れによる影響も受けにくく,長期安定性に優

れ保守性がよい。 

気相に置換されたオゾンの紫外線吸収量から溶存オゾン濃度は,式(E.2)によって求めることができ

る。 

CL=DCN ··············································································· (E.2) 

ここに, 

CL: 溶存オゾン濃度(mg/L) 

D: 分配係数 

T

T

D

063

.0

1

)]

15

.

273

/

(

1[

604

.0

+

+

=

T: 水温(℃) 

CN: 気液分離部の気相中のオゾン濃度[g/m3(N)] 

気相中のオゾンは254 nmの紫外線を吸収し,光の吸収量とオゾン濃度との関係は温度及び圧力の補

正項を加えると式(E.3)のようになる。 

I

I

εdP

T

C

0

N

log

15

.

273

325

.

101

=

 ····························································· (E.3) 

ここに, 

CN: 標準状態での気相中の濃度(mol/L) 

P: 試料ガスの圧力(kPa) 

T: 試料ガスの温度(K) 

ε: モル吸光係数(L/mol/cm) 

d: 測定光路長(cm) 

I0: ゼロガスの光透過量 

I: 試料ガスの光透過量 

液相用紫外線吸収式オゾン濃度計の構成例を,図E.2に示す。 

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27 

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図E.2−液相用紫外線吸収式オゾン濃度計(間接法)の構成例 

d) 隔膜ポーラログラフ式オゾン濃度計 電気化学的な分析手法の一つで,作用電極と対電極との間に電

圧をかけ,その電流からオゾン濃度を求めることができる。オゾンは作用電極で還元され,隔膜を拡

散したオゾン量に比例して両極間に流れる電流が変化する。比較的高感度で応答も早く連続測定が可

能で,濃度管理に適している。隔膜及び印加電圧の選定条件によって共存物質の影響が変化する。ま

た,隔膜を拡散するオゾンの量は,隔膜の表面の汚れなど付着物質によって阻害され負の干渉を招く

ので,1〜3か月程度ごとに隔膜の洗浄又は交換が必要である。さらに,隔膜を交換したとき1日程度

安定化させ,その後校正が必要である。 

隔膜ポーラログラフ式オゾン濃度計の構成例を,図E.3に示す。 

図E.3−隔膜ポーラログラフ式オゾン濃度計の構成例 

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28 

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e) 定電位電解式オゾン濃度計 検出部の膜を透過したオゾンがよう化物イオンとよう素酸イオンを含む

電解液に反応し,よう素を生成する。作用電極にはポテンシオスタット回路で一定電位が与えられて

おり,生成したよう素を作用電極上で還元する。この際,流れる還元電流を測定しオゾン濃度を求め

る。気相中のオゾン濃度の測定に適用する。 

定電位電解式オゾン濃度計の構成例を,図E.4に示す。ふっ素樹脂膜,作用電極,対極,照合電極

などを備えた検出部(電解セル)と定電位電源,増幅器などを備えた演算部とで構成される。検出部

は,電解液中の三つの電極がガス透過性のふっ素樹脂膜で検出ガスと分離した構造となっている。 

図E.4−定電位電解式オゾン濃度計の構成例 

E.6 

化学分析及びオゾン濃度計の繰返し性(9.1.3及び9.2.1参照) 

a) 純水系 紫外線吸光光度法,インジゴ吸光光度法,アシッドクロムバイオレットK(ACVK)吸光光

度法,隔膜ポーラログラフ式オゾン濃度計及び紫外線吸収式オゾン濃度計(間接法)の全ての測定方

法は,溶存オゾン濃度0.1〜0.5 mg/Lの範囲で十分な繰返し性をもつ(参考文献[14]参照)。 

b) 排水系 インジゴ吸光光度法,隔膜ポーラログラフ式オゾン濃度計及び紫外線吸収式オゾン濃度計(間

接法)の全ての測定方法は,溶存オゾン濃度0.1〜0.3 mg/Lの範囲で十分な繰返し性をもつ(参考文献

[14]参照)。 

E.7 

化学分析及びオゾン濃度計による測定方法間の比較(9.1.3及び9.2.1参照) 

a) 純水系 紫外線吸光光度法,インジゴ吸光光度法,ACVK吸光光度法,隔膜ポーラログラフ式オゾン

濃度計及び紫外線吸収式オゾン濃度計(間接法)の全ての測定方法は,溶存オゾン濃度に対して比例

関係が認められた(参考文献[14]参照)。 

b) 排水系 インジゴ吸光光度法,隔膜ポーラログラフ式オゾン濃度計及び紫外線吸収式オゾン濃度計(間

接法)は,溶存オゾン濃度に対して比例関係が認められた(参考文献[14]参照)。 

29 

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附属書F 

(参考) 

定期保守・点検留意項目 

F.1 

一般 

定期保守・点検では,装置の一部又は全部を停止し,密閉部の開放又は内部を分解して実施する作業も

生じる。そのため,日常点検にも増して,オゾンの暴露に留意して作業を実施することが必要である。 

この附属書は,オゾン発生器,オゾン反応装置,オゾン溶解装置,排オゾン分解装置及びオゾン濃度計

の定期保守・点検について,留意する項目を参考情報として記載する。 

F.2 

オゾン発生器(箇条10参照) 

a) オゾン発生器内には,オゾンが充満しているので,あらかじめ発生を停止し,原料ガスなどを通気し

て発生器内のオゾンを排出する。 

b) オゾン濃度計などオゾン濃度を検知できる手段で,発生器内のオゾン濃度を確認する。 

c) 発生器の本体を開く前には感電事故を防止するため,電源装置の通電を必ず遮断する。また,作業中

に電源装置に通電されないように作業中である旨の表示を行うなど,必要な措置を講じる。 

d) オゾン発生器の停止後も発生器内に残圧がある可能性があるため,発生器本体を開放する前に,配管

などから圧抜きをするなどの措置を講じる。 

e) 放電式のオゾン発生器の場合,発生器に残留電荷があるため,必ず高電圧部を接地棒で接地・放電さ

せてから作業を行う。 

F.3 

オゾン反応装置(箇条10参照) 

a) オゾン反応装置内には,オゾン発生器を停止しても,オゾンが残留しているので,あらかじめ原料ガ

スなどを通気し,反応装置内のオゾンを排出する。 

b) オゾン濃度計などオゾン濃度を検知できる手段で,反応装置内のオゾン濃度を確認する。 

c) 反応装置内で作業をする場合は,作業雰囲気中の酸素濃度を確認し,酸欠に注意する。 

F.4 

オゾン溶解装置(箇条10参照) 

オゾン溶解装置では,細孔及びノズル部分をオゾンが通過するが,これらが酸化生成物,処理水溶液中

の粒子状物質などによって目詰まりを生じ,溶解効率が低下する場合があるので,定期的な点検・保守を

実施する。 

F.5 

排オゾン分解装置(箇条10参照) 

排オゾン分解装置では,活性炭,触媒などのオゾン分解材が消費されるため,定期的に交換又は補充が

必要となる。 

F.6 

オゾン濃度計(箇条10参照) 

a) 制御及び濃度の監視を行っている場合,処理装置の運転に影響を与えないように処置をしてから作業

を行う。 

30 

B 9946:2019  

  

b) 処理装置の運用時にオゾン濃度計を取り外す場合,オゾン濃度計に接続された配管からオゾン漏えい

がないように適切に処置してから作業を行う。 

参考文献 

[1] 特定非営利活動法人日本オゾン協会 オゾンハンドブック改訂委員会(平成28年),“オゾンハンド

ブック 改訂版”,特定非営利活動法人日本オゾン協会 

[2] 公益社団法人日本産業衛生学会(2017),“許容濃度等の勧告(2017年度)”,産業衛生学雑誌,59(5),

pp.153-185 

[3] 米国産業衛生専門官会議(ACGIH)(2016),“2016 TLVs and BEIs (Threshold Limits Values for Chemical 

Substances and Physical Agents, and Biological Exposure Indices)” 

[4] 公益社団法人日本下水道協会(2014),“下水道維持管理指針(実務編)-2014-”,公益社団法人日本

下水道協会 

[5] 公益社団法人日本水道協会(平成28年),“水道維持管理指針(2016年版)”,公益社団法人日本水

道協会 

[6] 一般社団法人日本電機工業会“JEM 1021(制御機器の絶縁抵抗及び耐電圧)” 

[7] “電気事業法”,昭和三十九年法律第百七十号 

[8] “電気設備に関する技術基準を定める省令”,平成九年通商産業省省令第五十二号 

[9] “電気設備の技術基準の解釈”,平成24年6月29日改正,経済産業省大臣官房技術統括・保安審議

官 

[10] 一般社団法人電気学会 電気規格調査会(1988),“JEC 0201(交流電圧絶縁試験)” 

[11] 一般社団法人電気学会 電気規格調査会(2013),“JEC 2440:2013(自励半導体電力変換装置)” 

[12] 一般社団法人電気学会 電気規格調査会(2014),“JEC 2200:2014(変圧器)” 

[13] 一般社団法人電気学会 電気規格調査会(2003),“JEC 2210(リアクトル)” 

[14] 水野忠雄,西村文武,佐藤義雄,小坂浩司,山田晴美,中山繁樹,花里善夫,田口正樹,田坂勝芳,

高原博文,津野洋,“溶存オゾン濃度測定方法の繰り返し性評価と相互比較”,第20回日本オゾン協

会年次研究講演会講演集,107-110 

[15] JIS B 8266 圧力容器の構造−特定規格 

[16] JIS C 60664-1 低圧系統内機器の絶縁協調−第1部:基本原則,要求事項及び試験