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B 7547-1:2020  

(1) 

目 次 

ページ 

1 適用範囲························································································································· 1 

2 引用規格························································································································· 1 

3 用語及び定義 ··················································································································· 1 

4 設備及び測定器 ················································································································ 2 

4.1 設備及び測定器の要件 ···································································································· 2 

4.2 設備及び測定器の設置環境 ······························································································ 4 

5 特性試験方法 ··················································································································· 4 

5.1 一般 ···························································································································· 4 

5.2 試験環境 ······················································································································ 4 

5.3 入出力特性試験 ············································································································· 4 

5.4 環境感受性試験 ············································································································· 6 

6 校正方法························································································································· 7 

6.1 一般 ···························································································································· 7 

6.2 標準器 ························································································································· 7 

6.3 校正環境 ······················································································································ 8 

6.4 装置の構成 ··················································································································· 8 

6.5 装置の設置及び点検 ······································································································ 11 

6.6 校正の準備 ·················································································································· 12 

6.7 校正圧力点及び測定回数 ································································································ 12 

6.8 測定 ··························································································································· 12 

6.9 記録 ··························································································································· 13 

6.10 校正値の算出 ·············································································································· 14 

6.11 校正結果の報告 ··········································································································· 14 

7 校正の不確かさ評価 ········································································································· 14 

7.1 要因の抽出 ·················································································································· 14 

7.2 各要因の定量化方法 ······································································································ 15 

7.3 不確かさの合成 ············································································································ 17 

7.4 拡張不確かさ ··············································································································· 17 

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(2) 

まえがき 

この規格は,産業標準化法第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人日本計量機器工業連合会(JMIF),

国立研究開発法人産業技術総合研究所(AIST)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,産業標準原

案を添えて日本産業規格を制定すべきとの申出があり,日本産業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣

が制定した日本産業規格である。これによって,JIS B 7547:2008は廃止され,その一部を分割して制定し

たこの規格に置き換えられた。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。 

JIS B 7547の規格群には,次に示す部編成がある。 

JIS B 7547-1 第1部:一般用 

JIS B 7547-2 第2部:高圧気体用 

日本産業規格          JIS 

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圧力計の特性試験方法及び校正方法− 

第1部:一般用 

Procedures of characterization and calibration for pressure gauges- 

Part 1: General 

適用範囲 

この規格は,圧力計の校正,試験,検査などにおいて標準器として使用する圧力計の特性試験方法及び

校正方法について規定する。ただし,液体圧力で校正を受けた標準器による高圧気体用圧力計の特性試験

方法及び校正方法は除く。また,重錘形圧力天びんには適用しない。 

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。この引用

規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS Z 8103 計測用語 

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS Z 8103によるほか,次による。 

3.1 

特性試験 

圧力計の計量性能を評価するために実施する試験。入出力特性試験及び環境感受性試験がある。 

3.2 

レンジ 

圧力計が測定対象とする圧力範囲。 

3.3 

スパン 

与えられたレンジの上限値と下限値との差の絶対値であって,レンジの幅を表す数値。 

3.4 

標準器 

被試験器又は被校正器に印加する標準となる圧力を発生又は測定する測定器。 

3.5 

被試験器 

試験を受ける圧力計。 

3.6 

被校正器 

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校正を受ける圧力計。 

3.7 

管理精度 

使用者が管理目標にする精度。製造業者の製品仕様,製品規格などで示す精度を参照して決定する。 

3.8 

絶対圧力 

完全真空を基準とした圧力。 

3.9 

ゲージ圧力 

大気圧を基準とした圧力。正のゲージ圧力と負のゲージ圧力とがある。 

3.10 

差圧 

任意の圧力を基準とした圧力。 

3.11 

ライン圧力 

差圧において基準となる圧力。ベース圧力又は基準圧力ともいう。 

3.12 

ゼロ点 

圧力を印加しないときの,被試験器又は被校正器の出力。ゲージ圧力の測定では,圧力計の接続口が大

気に開放されているときの出力,絶対圧力の測定では,接続口が真空排気されているときの出力,差圧の

測定では,二つの接続口にライン圧力だけが印加されているときの出力となる。 

3.13 

圧力基準高さ 

標準器,被試験器又は被校正器の圧力値が得られる基準となる高さ位置。 

3.14 

ヘッド差 

標準器の圧力基準高さと,被試験器又は被校正器の圧力基準高さとの差。 

3.15 

禁油 

石油類,油脂類その他可燃性のものを使用しないこと。 

3.16 

禁水 

水及び水分を含むものを使用しないこと。 

設備及び測定器 

4.1 

設備及び測定器の要件 

使用する設備及び測定器は,安全が確認されたものを使用し,それぞれ最大試験圧力又は最大校正圧力

に対して十分な耐圧があるものを用いなければならない。また,大気と接触する可能性のある接続要素及

び測定器のどの部分にも,腐食する可能性のあるじんあい(塵埃)又は不純物を含んでいてはならない。 

4.1.1 

配管 清浄で,きず,変形などがない配管を用いなければならない。圧力媒体を流すために使用す

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る機器間の接続には,できるだけ短く断面積の大きい配管を使用する。大きく変形することなく最大試験

圧力又は最大校正圧力に耐えるものを使用する。 

なお,真空排気に用いる配管は,配管抵抗が小さく,また内壁に油分などの汚れが付着していないもの

を用いる。 

4.1.2 

継手 機器への接続は,圧力範囲,圧力媒体,及び配管に対応した継手を用いる。また,接続が緩

んだときのために圧力媒体の逃げ穴を開けた継手を用いることが望ましい。 

4.1.3 

バルブ 開閉の際に体積の変化が少なく,最大試験圧力又は最大校正圧力を超える締切能力のある

バルブを用いなければならない。 

4.1.4 

圧力調整器 圧力調整器は,試験又は校正において最小圧力から最大圧力まで安定して加圧・減圧

ができ,漏れのないことを確認したものを用いる。 

4.1.5 

真空ポンプ 絶対圧力の測定で真空排気してゼロ点測定を行う場合,真空ポンプは,配管内を被試

験器又は被校正器の読取り分解能以下に排気できるものを用いる。 

4.1.6 

真空計 絶対圧力の測定で真空排気してゼロ点測定を行う場合,被試験器又は被校正器の接続口の

圧力が測定できる真空計を,接続口に近接した場所に設置する。 

4.1.7 

環境測定器 次の要件を満たす測定器を室内の適切な場所に設置する。いずれも目標とする校正の

不確かさに応じて,校正済み又は検査済みの測定器を適切に選択する。 

a) 試験環境又は校正環境の温度範囲を測定できる温度計 

b) 試験環境又は校正環境の相対湿度範囲を測定できる湿度計 

c) 試験環境又は校正環境の圧力範囲を測定できる大気圧計 

4.1.8 

高さ測定器 ヘッド差の測定を行う場合,目標とする校正の不確かさに応じて,適切な高さ測定器

を用いる。ノギス,ハイトゲージ,カセトメータなどがある。 

4.1.9 

水準器 装置の設置場所の水平を確認できる測定器を用いる。気泡式水準器などがある。 

4.1.10 

角度の測定器 環境感受性試験において姿勢差を評価する場合に使用する測定器で,傾ける角度

を測定できるものを用いる。傾斜計,角度計などがある。 

4.1.11 

圧力媒体 使用する圧力媒体は,次のa) 又はb) の要件を満たさなければならない。製造業者が

使用を禁じている媒体は使用しない。 

なお,標準器が上位の標準器によって校正を受けたときと同じ圧力媒体を用いることが望ましい。上位

標準による校正時と異なる圧力媒体を用いる場合は,校正値への影響量を評価する。その影響量が大きい

場合は,補正を行う。 

a) 気体 

− 清浄で乾燥している。 

− 使用する装置に対して腐食性がなく安定している。 

− 気体の温度が周囲温度にほぼ等しい。 

b) 液体 

− 使用する装置に対して腐食性がなく,装置に影響を及ぼさない。 

− 液体及びその蒸気が校正作業者,周囲環境などに影響を及ぼさない。 

− 製品の表示又は依頼者によって禁油の指示がある場合,試験又は校正後の除去方法によらずオイル

(マシン油など)を圧力媒体として用いない。 

− 製品の表示又は依頼者によって禁水の指示がある場合,試験又は校正後の除去方法によらず水を圧

力媒体として用いない。 

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− 被試験器又は被校正器の使用時の媒体と,試験又は校正に使用する液体が異なる種類の場合は,受

渡当事者間の協定による。 

4.2 

設備及び測定器の設置環境 

使用する設備及び測定器は,a)〜f) を満足する環境に設置しなければならない。 

a) 性能に影響を与えるような振動がない。 

b) 作業中に設置姿勢が変化しない。 

c) 性能に影響を与えるような磁界を発するトランス,高圧電線などが付近にない。 

d) 性能に悪影響を与えるような電波障害がない。 

e) 電源を必要とする場合は,供給電源電圧変動が使用上影響を与えない。製造業者又は使用者によって

電源条件が定められている場合は,それに従う。 

f) 

作業者の健康に悪影響のない安全に配慮した大気環境である。 

特性試験方法 

5.1 

一般 

圧力計の入出力特性を求めるための方法は,5.3による。環境感受性試験は,5.4による。 

5.2 

試験環境 

試験環境は,次による。 

− 周囲温度:15 ℃〜35 ℃ 

− 相対湿度:30 %〜80 % 

5.3 

入出力特性試験 

5.3.1 

校正作業から入出力特性を求める方法 

次のa)〜k) の特性値は,校正作業の結果に基づき,図1を参考にして求める。校正作業の詳細は,箇条

6による。試験は,最大校正圧力及び最小校正圧力を含む5点以上で行うことを推奨する。内挿校正式を

推定する場合は,式の次数に応じて必要な校正点及び点数を選択する。特性値は圧力値で表現することを

基本とするが,相対値で表現してもよい。相対値の場合は,スパンに対する相対値か,読み値に対する相

対値かを明記する。 

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図1−入出力特性図 

a) 表示値の偏差 各測定点における被校正器の表示値(出力値)と標準となる圧力との差(表示値−標

準値) 

b) 昇圧校正曲線 圧力を最小校正圧力から最大校正圧力まで上昇させたときの,各測定点の表示値の偏

差の平均値を結ぶ曲線 

c) 降圧校正曲線 圧力を最大校正圧力から最小校正圧力まで下降させたときの,各測定点の表示値の偏

差の平均値を結ぶ曲線 

d) 校正曲線 昇圧校正曲線と降圧校正曲線との平均値を結ぶ曲線 

e) 両端基準直線 校正曲線の最小校正圧力点と最大校正圧力点とを結んだ直線 

f) 

校正曲線の最小二乗近似直線 校正曲線の最小二乗近似から求められる直線 

g) 直線性 直線性の基準として用いた線(例えば,両端基準直線又は校正曲線の最小二乗近似直線)と

校正曲線との差の絶対値の最大値。直線性の基準として用いた線を明記する。 

h) ヒステリシス差 各測定点における昇圧校正曲線と降圧校正曲線との差 

i) 

最小校正圧力点の偏差 最小校正圧力において校正曲線が示す偏差 

j) 

最大校正圧力点の偏差 最大校正圧力において校正曲線が示す偏差 

k) 繰返し性 実験標準偏差(標本標準偏差)に同じ。n回の測定値の平均値と各測定値との差を求め,

これの二乗和の(n−1)分の1を開平した値をいう。 

5.3.2 

識別限界 

各測定点において入力を少しずつ変化させ,出力が変化した最大入力と最小入力との差を読み取り,そ

の最大値を識別限界とする(図2参照)。 

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図2−識別限界(入力の微小な変化と出力との関係) 

5.3.3 

表示の安定性 

レンジの下限値,上限値又はゼロ点で,読み取った被試験器の表示変動幅を表示の安定性とする。 

5.3.4 

ライン圧力による影響 

差圧計については,次の測定を行う。 

a) ゼロ点 印加するライン圧力は,差圧計の最小ライン圧力から最大ライン圧力まで特性評価上必要な

圧力及び点数(一般的には,4等分にした5点)とし,それぞれのライン圧力下における差圧ゼロの

出力の変化量を測定する。 

b) スパン 印加するライン圧力は,差圧計の最小ライン圧力から最大ライン圧力まで特性評価上必要な

圧力及び点数(一般的には,4等分にした5点)とし,それぞれのライン圧力下におけるレンジの下

限値及びレンジの上限値を測定し,スパンの変化量を求める。 

5.3.5 

経時変化 

入出力特性試験を,製造業者の推奨する期間などを参考に適切な期間をおいて繰返し行い,ゼロ点の出

力,スパンなどの特性の変化を観察する。そのうちで管理を必要とする項目については,経時変化による

試験項目とする。 

5.4 

環境感受性試験 

5.4.1 

一般 

圧力計の使用環境が,機器の特性に影響するかどうかを確認するために必要な試験を行う。 

外部条件は,試験中の圧力計のどの部分においても,目標値を行過ぎないように変化させなければなら

ない。製造業者又は使用者によって,他の限界値が定められていない場合は,この規格で定めた限界値を

用いることが望ましい。 

5.4.2 

周囲温度 

試験温度は,被試験器を通常使用するときの温度範囲を考慮し,使用温度の上限及び下限を含むことと

する(図3参照)。被試験器を温度試験槽の中に設置し,被試験器の温度が安定するまで待った後,6.8に

よって校正を行うか,レンジの下限値又はゼロ点,及びスパンの変化量を測定することで,周囲温度特性

を評価する。試験温度を変化させる際には,急激な温度変化によって被試験器に熱ストレスを与えてはな

らない。 

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図3−温度の設定例 

5.4.3 

湿度 

試験湿度は,被試験器を通常使用するときの湿度範囲を考慮し,使用湿度の上限及び下限を含むことと

する。被試験器を湿度試験槽の中に設置し,被試験器の温度及び湿度が安定するまで待った後,6.8によっ

て校正を行うか,レンジの下限値又はゼロ点,及びスパンの変化量を測定する。試験湿度を変化させる際

は,急激な湿度変化によって結露が生じないように注意する。 

5.4.4 

姿勢 

被試験器を標準取付姿勢から前後,左右に傾け,レンジの下限値又はゼロ点,及びスパンの変化量を測

定する。傾斜方向及び傾斜角度は,校正する状態を考慮して決定する(図4参照)。 

姿勢差の評価方法に関して,特に製造業者の指定がない場合には,被試験器の標準取付姿勢から前後,

左右に傾けたときの出力の最大変化量を姿勢差とする。傾ける角度は,±3度を基本とする。 

図4−姿勢差の評価方法 

校正方法 

6.1 

一般 

校正は,被校正器及び標準器を同一圧力・同一環境条件に置いて,両方の測定器の応答を比較する直接

比較法とする。校正方法は,6.2〜6.11による。製造業者又は使用者によって特別な要求がある場合には,

その要求を満足する内容で校正を実施する。 

6.2 

標準器 

6.2.1 

標準器の選択 

測定する圧力の種類に応じ,標準器として使用できる測定器の例を次に示す。 

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a) ゲージ圧力の校正 

1) ゲージ圧力用の重錘形圧力天びん 

2) 出力がゲージ圧力の圧力計 

3) 出力が絶対圧力の圧力計と大気圧計との組合せ 

4) 負のゲージ圧力の場合,絶対圧力用の重錘形圧力天びんと大気圧計との組合せ 

b) 絶対圧力の校正 

1) 絶対圧力用の重錘形圧力天びんと真空計との組合せ 

2) 出力が絶対圧力の圧力計 

3) ゲージ圧力用の重錘形圧力天びんと大気圧計との組合せ 

4) 出力がゲージ圧力の圧力計と大気圧計との組合せ 

c) 差圧の校正 

1) 重錘形圧力天びん2台の組合せ 

2) 圧力計2台の組合せ 

3) 差圧計 

6.2.2 

標準器の要件 

標準器は,a)〜c) の条件を満足しなければならない。 

a) 標準器を含めた校正システムの拡張不確かさが,被校正器の管理精度よりも小さい。一般的には,1/3 

以下が望ましい。 

b) 国家標準又は国際単位系(SI)に対するトレーサビリティが確保されている。 

c) 定期的に校正され,性能を維持及び管理されている。 

6.3 

校正環境 

校正は,a)〜d) の条件を満たす室内環境下において,全ての手順を実施することが望ましい。 

a) 周囲温度:18 ℃〜25 ℃(校正中の1時間当たりの温度変化は1 ℃以内) 

b) 相対湿度:30 %〜80 % 

c) 大気圧:86 kPa〜106 kPa。校正時に気圧が急激に変動するような状況の下(例えば,台風の場合など)

では校正は行わない。 

d) 気流の影響を受けるような校正を行う場合は,校正時の気流の影響を軽減するため,ドアの開閉及び

人の出入りを制限する。 

6.4 

装置の構成 

装置の構成は,次による。 

a) ゲージ圧力用の装置 正のゲージ圧力用の装置例を,図5に示す。図は標準器として,ゲージ圧力用

の圧力標準器を使用する場合[6.2.1 a) の1) 及び2)]を想定している。圧力媒体として気体を使用す

る場合は,4.1.11 a) に規定する気体の入ったボンベを,液体を使用する場合は,4.1.11 b) に規定する

液体の入った液体加圧ポンプを圧力源として使用する。被校正器に印加する圧力は,圧力調整器,圧

力調整バルブ及び開放バルブで制御する。 

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標準器

被校正器

圧力調整器

開放バルブ

圧力調整

バルブ

圧力源

図5−正のゲージ圧力用の装置例 

b) 絶対圧力用の装置 気体を圧力媒体とする絶対圧力用の装置例を,図6に示す。図は標準器として,

絶対圧力用の重錘形圧力天びん及び真空計を使用する場合[6.2.1 b) の1)]を想定している。圧力源

は,気体ゲージ圧力に対するものと同じであるが,大気圧以下の圧力を発生できるように真空ポンプ

A及び周囲圧力排気用の真空ポンプBを追加する。接続パイプ内を清浄に保つため,真空ポンプには

適切な附属品(オイルミストトラップ,換気バルブなど)を備えなければならない。 

なお,大気圧より高い絶対圧力を測定する場合は,標準器としてゲージ圧力用の圧力標準器及び大

気圧計を使用してもよい。この場合は,図5に基づいたシステムを使用する。この絶対圧力の値は,

大気圧計で測定した大気圧とゲージ圧力用の圧力標準器で測定した圧力値とを合計することで得られ

る。 

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圧力源

標準器

被校正器

圧力調整器

開放バルブ

圧力調整

バルブ

真空ポンプA

真空ポンプB

真空計

開放バルブ

開放バルブ

図6−気体を圧力媒体とする絶対圧力用の装置例 

c) 差圧用の装置 差圧用の装置例を,図7に示す。図は標準器に2台の圧力標準器を使用する場合[6.2.1 

c) の1) 及び2)]を想定している。圧力源は,ゲージ圧力用の装置のものと同じである。ライン圧力

は,導通バルブを開いた状態にして,圧力調整バルブを開き設定する。最終圧力調整は,圧力調整器

を使用して行う。次に,導通バルブを閉じた後,対応する圧力調整器を使用して要求された差圧を設

定する。また,標準器1及び標準器2は,差圧計に置き換えることができる。この場合は,図5に基

づいたシステムを使用し,差圧計及び被校正器の二つの接続口をそれぞれ接続して,圧力調整器によ

って差圧を設定する。 

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標準器1

圧力調整器

開放バルブ

圧力調整

バルブ

圧力源

被校正器

標準器2

開放バルブ

圧力調整器

導通バルブ

図7−差圧用の装置例 

6.5 

装置の設置及び点検 

6.5.1 

装置の設置 

装置の設置に当たっては,a)〜i) の事項に留意して設置しなければならない。 

a) システム全体の熱平衡を達成するために,動作を開始する最低6時間前に校正を行う部屋に全ての装

置を設置する。 

b) 被校正器は,その機器の製造業者の仕様に従って設置する。接続配管した後,機器の姿勢に変化のな

いように注意する。 

c) 被校正器の圧力基準高さは,標準器の圧力基準高さとそろえて設置することが望ましい。 

d) 被校正器と標準器との間には,フィルタ,圧力逃がしバルブ及び戻しバルブを配置しないことが望ま

しい。配置する場合は,その前後に測定に影響する圧力差が生じないことを確認する。 

e) 配管及び接続要素に漏えい(洩)があってはならない。 

f) 

電位及び静電気の影響を避けるための接地機能がある場合は,必ず接地する。 

g) 操作上の安全を考慮して設置する。特に,圧力範囲によっては,安全装置を備える必要がある。また,

配管系統の破裂,抜けなどは,作業者に危険が及ぶので,その防止に細心の注意を払わなければなら

ない。 

h) 圧力媒体として気体を使用する場合は,測定前に接続配管から液体を全て除去しなければならない。 

i) 

圧力媒体として液体を使用する場合は,測定前に接続配管から気体を全て除去しなければならない。 

6.5.2 

点検 

校正を行う前に,被校正器に,装置(特に標準器)に適さない腐食性液体が含まれていないか点検を行

う。また,校正後にも汚れ及び破損がないか点検を行う。 

12 

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6.6 

校正の準備 

6.6.1 

ヘッド差の測定 

4.1.8の要求を満たす測定器を使用して,標準器と被校正器とのヘッド差を測定する。被校正器の圧力基

準高さは,製造業者又は使用者の指定がある場合は,それに従う。圧力基準高さが示されていない圧力計

の場合は,接続口の中心,端面,指針の中心などを圧力基準高さとする。 

6.6.2 

ウォームアップ 

ウォームアップの時間は,製造業者の指定による。指定がない場合は,校正の結果に与える影響が無視

できるまでウォームアップを続ける。 

6.6.3 

漏れの確認 

校正を行う圧力範囲において,標準器,被校正器及び配管を含む装置から結果に影響する漏れがないこ

とを確認する。a)〜c) の確認は,媒体の温度が安定した状態で行う。また,漏れの確認作業においては,

急激な昇圧及び降圧(衝撃)を避ける。 

a) 圧力調整器によって最大校正圧力を加え,放置後,圧力の漏れがないことを確認する。最大校正圧力

における1分間当たりの圧力降下が,最大校正圧力の0.2 %以下である場合,その圧力回路は漏れが

ないと考える(被校正器の公称精度より大きい場合も含む。)。 

なお,負のゲージ圧力の場合は,最大校正圧力を最小校正圧力に読み替え,1分間当たりの圧力上

昇を観察する。 

b) 被校正器の内部における漏れを確認する場合には,加圧後,接続口の直近で閉止し,製造業者の仕様

を満足することを確認する。製造業者による確認方法が指定されている場合にはそれに従う。 

c) 差圧用の装置においてライン圧力を変化させて校正を行う場合には,高圧側及び低圧側の両方の接続

口に同じ圧力(ライン圧力)を加え,最大ライン圧力でも漏れがないことを確認する。 

6.6.4 

圧力保持時間 

最大校正圧力及び最小校正圧力において,出力を3分以上測定し,出力が安定するまでの時間を参考に

して各圧力点における圧力保持時間を決定する。出力が安定したか否かは,読取り分解能又は表示安定性

を目安に判定する。 

6.6.5 

ゼロ点調整 

依頼者との合意の下で,ゼロ点又は製造業者の指定する圧力点において表示値又は出力の調整を行う。 

6.7 

校正圧力点及び測定回数 

a) 校正圧力点は,製造業者の製品仕様を参照し,依頼内容又は使用圧力範囲に応じた校正圧力点及び点

数とする。点数は,通常5点以上が推奨される。 

b) 測定回数(昇圧・降圧過程の繰返し)は,3回以上とする。 

6.8 

測定 

6.8.1 

測定手順 

測定手順は,次による。 

a) ゼロ点の表示値を報告する場合,又は校正値の算出に使用する場合,ゼロ点における被校正器の表示

値を記録するか,又はゼロ点調整を行う。 

b) 印加圧力を最初の校正圧力点に達するまで変化させる。定めた圧力保持時間の後に,印加圧力,表示

値などを記録する。以後,必要な校正圧力点において,測定を実施する(図8参照)。印加圧力は,校

正圧力点を行過ぎないように変化させる。 

c) b) の終了後,a) を行う。 

background image

13 

B 7547-1:2020  

d) 校正実施手順において定められた時間をおいて,a)〜c) を6.7 b) に規定する回数を繰り返す。 

6.8.2 

測定における留意点 

測定における留意点は,次による。 

a) 各校正圧力点における圧力保持時間は,6.6.4で決定した時間とする。 

b) 印加圧力とその公称圧力との差は,3 %以内に調整しなければならない。 

c) 依頼者から指示があった場合,又は校正実施手順において定められている場合には,測定開始前に,

標準器,校正装置,配管及び被校正器に,圧力を印加する(予備加圧)。 

図8−校正における圧力印加過程の例(昇圧・降圧の1往復だけ図示) 

6.9 

記録 

校正を行うときは,次の項目を記録する。 

a) 必須の項目 

1) 校正実施者名 

2) 被校正器の製造業者,型式及び機器番号 

3) 被校正器の読取り分解能 

4) 標準器と被校正器とのヘッド差 

5) 標準器及び校正値に影響を与える校正用機器の製造業者,型式及び機器番号などの識別情報 

6) 校正実施年月日 

7) 測定時刻(各圧力における測定ごとに) 

8) 校正中の周囲温度 

9) 校正中の周囲の相対湿度 

10) 校正中の大気圧 

11) 標準器及び被校正器の示す値 

12) 校正値に影響を与える校正用機器の示す値 

13) 圧力保持時間 

14) ライン圧力(差圧の場合) 

b) 必要に応じて記録する項目 

14 

B 7547-1:2020  

1) 圧力算出に用いた重力加速度 

2) 使用圧力媒体 

3) データ個数及び取得条件,接続方法など(コンピュータなどで測定値を取得する場合) 

4) 被校正器の設置姿勢 

5) 予備加圧をした場合は,その事実 

6) ゼロ点調整をした場合は,その事実 

7) ゼロ点における被校正器の表示値 

8) タッピングをした場合は,その事実(アナログ指示機構をもつ圧力計の場合) 

6.10 校正値の算出 

被校正器の圧力基準高さにおける圧力値pは,標準器の圧力基準高さにおける圧力値psにヘッド差の補

正値phを加え,次の式によって求める。 

p=ps+ph 

標準器の出力は,6.2.1で測定器を組み合わせる標準器を選択した場合,組合せに応じて大気圧計又は真

空計の出力を含む。 

ヘッド差の補正値は,次の式によって求める。 

ph=(ρf−ρb) ghd 

ここに, 

ρf: 圧力媒体の密度 

ρb: 周囲空気の密度 

g: 重力加速度 

hd: ヘッド差 

なお,圧力媒体の密度は,実測値,製造業者の技術資料,又は各種データベースからの推定値を使用す

る。周囲空気の密度は,温度,相対湿度及び大気圧から求める。重力加速度は,実測値又は各種データベ

ースからの推定値を使用する。 

注記 周囲空気の密度の算出は,JIS B 7616のA.2(周囲空気の密度)を参照する。 

6.11 校正結果の報告 

校正結果は,各校正圧力点における被校正器の表示値と標準となる圧力値の対応関係及び校正の拡張不

確かさを報告する。不確かさは,箇条7によって算出する。 

なお,被校正器の表示値又は標準となる圧力値を公称値に換算して表示してもよい。 

校正の不確かさ評価 

7.1 

要因の抽出 

不確かさの算出に当たっては,次に示す各要因を評価する。合成標準不確かさuへの寄与率が小さい要

因は省略することができる(ISO/IEC Guide 98-3参照)。 

a) 印加した圧力の不確かさus 

b) 繰返し性による不確かさua 

c) ヒステリシス差による不確かさuh 

d) 読取り分解能又は表示安定性による不確かさud 

e) 温度特性に起因する不確かさut 

f) 

姿勢特性に起因する不確かさui 

g) 公称圧力値への換算に起因する不確かさul 

15 

B 7547-1:2020  

h) ライン圧力による不確かさupl 

7.2 

各要因の定量化方法 

7.2.1 

一般 

各要因の不確かさは,箇条5及び箇条6に従って測定した特性値,及び被校正器の仕様から7.2.2〜7.2.9

に従って定量化する。 

7.2.2 

印加した圧力の不確かさus 

標準器によって印加した圧力の不確かさは,標準器の校正の不確かさusc,標準器の使用環境の違いによ

る不確かさuse,標準器の経時変化による不確かさust,標準器が圧力計の場合の不確かさusd及びヘッド差

補正の不確かさuphをそれぞれa)〜e) によって評価し,次の式によって合成することで求める。 

なお,6.2.1で測定器を組み合わせる標準器を選択した場合,使用する全ての測定器について評価する。 

2

ph

2

sd

2

st

2

se

2

sc

s

u

u

u

u

u

u

+

+

+

+

=

a) 標準器の校正の不確かさusc 標準器の校正の標準不確かさは,次の式によって求める。 

k

U

u

sc

sc=

ここに, 

Usc: 校正証明書に記載された標準器の拡張不確かさ 

k: 包含係数 

b) 標準器の使用環境の違いによる不確かさuse 標準器が校正されたときの環境と,標準器として校正に

用いるときの環境との違いによる不確かさuseを考慮する必要がある。 

標準器の使用環境の違いによる不確かさとしては,具体的には,次の不確かさなどが挙げられる。 

− 標準器の温度特性による不確かさ 

− 標準器の設置状態による不確かさ 

− 重力加速度による不確かさ(標準器が重錘形圧力天びんの場合) 

− 空気密度による不確かさ(標準器が重錘形圧力天びんの場合) 

− 上位の標準器による校正時と異なる圧力媒体を用いる場合には,圧力媒体の違いによる不確か

さ 

c) 標準器の経時変化による不確かさust 標準器が校正された時点から時間の経過に伴い,校正値が変化

することによる不確かさを考慮する。直近の校正値と過去の校正値とを比較したときの正側への最大

の変化量がa+,負側への最大の変化量がa−の場合には,一様分布を仮定して標準不確かさustを,次

の式によって求める。 

(

)

3

2

st

++

=

a

a

u

d) 標準器が圧力計の場合の不確かさusd 標準器として圧力計を使用し,その校正値から内挿校正式を求

めて表示値を補正する場合には,内挿結果と校正値との差の絶対値の最大値を3で除した値を標準

器の内挿校正式の標準不確かさとする。より詳細な評価を行うために別の評価方法を用いてもよい。

また,目標とする不確かさに応じて7.2.3〜7.2.9に規定する不確かさを標準器に対しても考慮する。こ

れら全ての標準不確かさの合成標準不確かさを,標準器が圧力計の場合の不確かさusdとする。 

e) ヘッド差補正の不確かさuph ヘッド差補正の不確かさは,校正圧力点ごとに,次の式によって求め

る。 

16 

B 7547-1:2020  

(

)(

)

(

)

(

)

2

2

2

2

ph

d

f

d

b

f

b

dg

f

b

hd

u

hu

hu

hu

u

ρ

ρ

ρρ

ρρ

=

+

+

+

g

g

g

ここに, 

g: 重力加速度 

hd: ヘッド差 

ρf: 圧力媒体の密度 

ρb: 周囲空気の密度 

ug: 重力加速度の標準不確かさ 

uhd: ヘッド差測定の標準不確かさ 

uρf: 圧力媒体の密度の標準不確かさ 

uρb: 空気密度の標準不確かさ 

7.2.3 

繰返し性による不確かさua 

繰返し性による標準不確かさuaは,校正方法に応じて求められた実験標準偏差saから,次の式によって

求める。 

a

a

s

u

n

=

ここに, 

sa: 昇圧・降圧のそれぞれの校正圧力での実験標準偏差のう

ち,昇圧・降圧のいずれか大きい方の値 

n: 測定(繰返し)回数 

7.2.4 

ヒステリシス差による不確かさuh 

ヒステリシス差による標準不確かさuhは,評価したヒステリシス差の最大値を基に,次の式によって求

める。 

3

2

h

h

D

u=

ここに, 

Dh: ヒステリシス差の最大値 

なお,昇圧・降圧ごとに不確かさを算出する場合は,不確かさ要因として含まなくてもよい。 

7.2.5 

読取り分解能又は表示安定性による不確かさud 

読取り分解能又は表示安定性による標準不確かさudは,次の式によって求める。 

3

2

d

d

δ

u=

ここに, 

δd: 読取り分解能,表示値の安定性又は識別限界のいずれか

大きい方の値 
 読取り分解能は,デジタル表示機構又はデジタル信号
出力をもつ圧力計にあっては表示又は出力の1デジット
の値,アナログ指示機構をもつ圧力計にあっては最小読
取り値。 
 識別限界は,圧力変換器などに対して考慮する。 

7.2.6 

温度特性に起因する不確かさut 

温度特性による標準不確かさutは,被校正器の温度特性の仕様から,次の式によって求める。 

3

2

t

t

t

δ

β

u=

ここに, 

βt: 1 ℃当たりの温度特性の仕様値 

δt: 校正中の周囲温度の変動幅 

温度特性の仕様値がゼロ点とスパンとに分けて表記されている場合,βtは次の式によって求める。 

17 

B 7547-1:2020  

+

=

s

c

st

0t

t

Ρ

Ρ

β

β

β

ここに, 

β0t: 1 ℃当たりのゼロ点(最小校正圧力点)の温度特性の仕

様値 

βst: 1 ℃当たりのスパンの温度特性の仕様値 

Pc: 校正圧力とレンジの下限値との差 

Ps: 被校正器のスパン 

注記 必要な場合には,被校正器の温度特性を特性評価から求める(5.4.2参照)。 

7.2.7 

姿勢特性に起因する不確かさui 

姿勢(角度)特性による標準不確かさuiは,次の式によって求める(5.4.4参照)。 

3

i

i

i

i

δ

D

Ε

u =

ここに, 

Ei: 試験で得られた姿勢差 

Di: 試験で与えた傾斜角度 

δi: 校正中の被校正器の姿勢(角度)の変動 

7.2.8 

公称圧力値への換算に起因する不確かさul 

校正曲線を用いて,校正圧力の校正結果を,その近傍での公称圧力値の校正結果に換算する場合の標準

不確かさulは,次の式によって求める。 

3

p

l

l

δ

e

u=

ここに, 

el: 図1の校正曲線の各校正圧力点における傾き 

 なお,校正曲線の最大の傾きを代表値として用いても
よい。 

δp: 校正圧力と公称圧力との差 

7.2.9 

ライン圧力による不確かさupl 

差圧計の場合には,ライン圧力の影響による標準不確かさを考慮することが望ましい。ライン圧力によ

る不確かさは,製造業者の仕様又は特性試験(5.3.4参照)から,次の式によって求める。 

3

pl

pl

pl

pl

δ

D

E

u =

ここに, 

Epl: 試験で得られたライン圧力による影響 

Dpl: 試験で与えたライン圧力の差 

δpl: ライン圧力の変化量 

7.3 

不確かさの合成 

各不確かさから合成標準不確かさuは,次の式によって求める。 

2

pl

2

l

2

i

2

t

2

d

2

h

2

a

2

s

u

u

u

u

u

u

u

u

u

+

+

+

+

+

+

+

=

7.4 

拡張不確かさ 

被校正器の校正の拡張不確かさUは,合成標準不確かさuに包含係数kを乗じて次の式によって求める。 

U=k×u 

包含係数は,拡張不確かさが信頼の水準約95 %に対応する区間となるように決定する。 

なお,有効自由度が十分に大きい場合には,k=2を採用する。 

18 

B 7547-1:2020  

注記 包含係数kの算出方法については,ISO/IEC Guide 98-3の附属書Gに記載されている。 

参考文献 JIS B 7610 重錘形圧力天びん 

JIS B 7616 重錘形圧力天びんの使用方法及び校正方法 

ISO/IEC Guide 98-3:2008,Uncertainty of measurement−Part 3: Guide to the expression of 

uncertainty in measurement (GUM:1995)